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楽しんで詩を書く子を育てる指導 : フロー理論を用いた指導のあり方

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(1)

平成

27年

研究報告書

楽 しんで詩を書 く子 を育てる指導

― フロー理論を用いた指導のあり方 ―

兵庫教育大学大学院

学校教育研究科

教育実践高度化専攻

小学校教員養成特別 コース

Pl1060E

坂本真理子

(2)

目次 序 章 研究の 目的と方法 第

1節

問題の所在 と研究の 目的・・・

000000。

・・・・・

0000000・

1 第

2節

研究の方法 。・・・・・・・・ 。・ 0・ ・・ 。・・・・ 。・・・・・・・

02

1章

児童詩教育について 第1節 これまでの児童詩教育・

00000・

。・・・・ 。。・・

000。

・ 。・ 。3 第

2節

児童詩教育で求められ る力0・ ・・ 0・ ・・ 。・・・・・

0000000・

4

1項

児童詩の定義 。・・・・・

0000・

・・ 。・ 。・

0000。

・・ 0・ 。4

2項

児童詩指導の教育的意義・ 0。 ・・・ 。

000。

・・・・・・・・・・・5

3項

児童詩教育の内容 0・ 0・

00000・

・・・

000000000007

4項

発達段階別児童詩指導・・ 。・・・・ 0。 ・・・・・・・・・

000・

・8

2章

詩創作指導における認識の指導の具体 第1節 認識力 とは

00・

0・

00000・

・・・

00・

。・

0000・

・・

0009

1項

ものの見方・考え方

00000・

・・・・・・

00・

・・・ 。0・ ・・・9

2項

対象を提 える力・

00000000000000000・

・・・

00009

3項

知識 としての認識内容・・・・・・・・ 0・ ・・・・・・ 。・・・ 0・ ・ 10

2節

認識方法の種類 と系統的指導

00000000・

000・

0000000・

10 第

3節

感動状態の再現指導

000000。

・・・・

0000。

。・ 0。 0・

0011

4節

再生的想像のスケ ッチ法・ 0・ ・・・・

000・

0000000000012

3章

楽 しさの理論 第1節 心理的エン トロピー と最適経験・・・・・・・ 。・・・・・ 00・ ・・・・ 14 第

2節

チクセン トミハイによる楽 しさを構成す る要素・・・

00000・ 000014

3節

フロー理論・ 。

00・

・・ 0・

03●

●●●●・・・・

00。

0000015

1項

フロー とは・ 0・

00・

0000000000・

00・ 0・

0015

2項

フローの生起条件

00・

000000・

00・

00000000。

00・

15 第

3項

フロー状態モデル

00000000・

0・

00・

0000・

・・ 00・

016

4項

フロー経験による自己成長モデル・

0000・

000000000・

・ 。17 第

4節

詩創作指導におけるフロー理論の有効性

000・

・・

000・

0・

00018

4章

フロー理論を用いた詩創作指導の検討 第1節 詩創作における楽 しさの選別・・・・

000・

00・

・・

000000019

(3)

2節

詩創作における楽 しさを構成する要素・・・・・・・・・・

00・

・0・ ・19

3節

フロー理論 を用いた詩創 作指導を検討す るための視′点・・・・・・・・・・21 第

5章

実践の分析 と考察 第1節 実践の方法 と概要・・・・・・・ 0。 ・・・・・

00・

・・・・・・・・

023

1項

実践の方法・・

00。

・・・・・・・・・ 0。 ・・・・・・

00000・

23

2項

実践の概要・・・・ 。・・ 。

000・

000・

。。・・・・・・・・・・23 第

2節

実践1の実際 と分析・考察・・・ 00・ ・・・・・ 。・・・・・・・・・

024

1項

実践

1第

二次第

4時

の実際 00・ ・・・・・

00・ 00・

00000024

2項

実践1の分析・考察

0000。

・・

0000・

・・・・・ 0・

00。

・ 25

3節

実践

2の

実際 と分析・考察・ 00・ 0・

00・

。・・・・・・ 0・ ・・・・27

1項

実践

2第

二次第304・

5時

の実際・ 。・ ・・・

0000・

000・

00・ 27 第

2項

実践

2の

分析・考察

000・

0・ ・・・・

000・

00。

・・・ 。・ 。・30

4節

実践の成果 と課題

000・

0・ ・・・・・ 0・ ・・・・・ 。・・・・・ 0・ 38 終 章 本研究の成果 と今後の課題 第1節 研究の成果・

000。

00000。

・・ ・

00000000・

0000041

2節

今後の課題・・・・・・・ 。・・

0000。

・・・

00・

・・・・・・・ 。41 引用・参考文献・・J・ 口・・・・・・・・・・・・・・・・ 口・ 口・・・・・・・・42 巻末資料・・・・・・・・・・・・・・ 0・ E● ●●●●・・・・ 口・・ 3● ロロ壼●43

(4)

序章 研究の目的と方法 第1節 問題の所在 と研究の目的 現在わが国では,「生きる力」の理念のもと

,教

育活動が行われている。生きる力の育成 とは

,確

かな学カー知

,豊

かな心二徳

,健

やかな体一体 をバランスよく育むことであ り, 基礎・基本の知識 0技能の習得によつて思考力・判断力・表現力を備え

,思

いや る心や惑 動する心をもち

,た

くま しく生きるために健康である子 どもの育成である。全ての教育活 動で 目指す ところである。 かつて北原 白秋 らによつて

,情

操教育を目的 としては じめられた児童詩教育は

,世

の中 の動きに合わせなが ら発展を遂げ

,現

在 も詩の創作 として

,国

語科の中で取 り扱われてい る。歴史的価値のある児童詩は,『生活綴方辞期 において 「生活者である子 どもたちが, 自分 を とりま く自然や社会の事物

,人

間の外的内的側面 にふれた とき, 自己の内部に発生 した感動 を

,

くどくど説 明す ることな く

,よ

り直接的に他人に伝わるよ うに

,や

や 自然発 生的に

,ま

たは コ トバ を選んで

,や

や意識的に文字表現 した もの」0と定義 され てい る。 江 口季好 (1968),石田佐久馬 (1975)も同様 な定義 を示 してい る '0。 三者の定義 を総括 す ると

,児

童詩 は,「子 どもが生活 の中で捉 えた感動 を表現 した詩である」といえる。今 日 まで続 く児童詩教育の意義 として

,江

日 (1968), 日本作文の会 (19701らは

,

日本語の 美 しさや表現性 につ いて指導ができること

,認

識力 を伸 ばす こと

,す

こやかな子 どもをそ だて ること

,な

どを挙げているOD。 これまでに述べた児童詩の定義

,教

育的意義か ら分か ることは

,児

童詩教育が 「生きる 力」の知・徳 0体 の育成機能を持 っていることである。児童詩教育に

21世

紀 に求め られ る 「生 きる力」を育む とい う教育的意義 を見出す ことができる。 な らば

,子

どもに詩 を書かせ よ う取 り組むのであるが

,そ

こに壁がある。昔か ら変わ り な く書 くことに対 して 「何 を書いた らいいのか分か らない

,思

いつかない」や 「書き方が 分か らない」,「書 くのがめん どうくさい」 と

,嫌

が る子 どもが多いことである。 しか し, 最初か ら書 くことを嫌 かっていたのではない ことを

,藤

原 与一

(1965),佐

藤保 子 0今井 成治

(2010は

指摘 してい る。。書 くことへ向か う子 どもの変化 を藤原は

,自

由に好んで 書いていた こ とが

,進

級 にす るにつれて

,書

か されてい るとい う他律感 を持つ よ うにな る 日本作文の会編『生活綴方辞典』明治図書

,1958年

,p.413。 江日季好『児童詩教育入門』百合出版

,1968年

,p.17。 石田佐久馬『 ことばのひびきを大切にする 詩の鑑賞・創作指導』東洋館出版社

,1975

年,pp.42‐

4&

上掲書 の,pp.17‐

4a

日本作文の会編『児童詩教育辞典』百合出版

,1970年

,pp.47‐

4&

藤原与一『国語教育の技術と精神』新光閣書店

,1965年

,p.9&

0 め 0

(5)

か らだ,と述べている。他律感 が書 くことに向か う気持 ちを停滞 させているとす るな らば, 他律感 か ら自律感 へ

,自

己 目的的に書 くことへ向かわせ るよ うに導けばよいのである。 自己 目的的 になるためには

,内

発的動機 によるところが大 きい。心理学者

M.チ

クセ ン トミハイは

,内

発的動機 づ け としての 「楽 しさ」の研究 を行 つている。チクセ ン トミハイ は研究の中で

,フ

ロー (■

ow),す

なわち深い楽 しさの積み重ね られた

,心

理的の最適経験 が

,活

動 を 自己 目的的 に させ てい くのだ と述べ てい るつ。稿者 は

,詩

の創作 に もフローの 考 えが当てはまるのではないか と考 えている。 そ こで本研究は

,楽

しんで詩 を書 こ うとす る子を育て るために

,フ

ロー理論 を用いた詩 創 作指導 のあ り方 を検討す るもの とす る。指導内容 としては,表現す るために欠かせ ない, ものご とを提 える力や

,も

の ごとの本質等 を見抜 く力

,感

動す る力である認識力 を伸ばす ことに視点を置 くこととす る。 第

2節

研究の方法 フロー理論 を用いた詩創作指導 を検討す るにあた り

,先

行研究か ら以下に示す仮説 を立 て

,実

践 を通 して検証

,考

察 を行 つた。 仮説 詩創作指導にフロー理論を用いることで

,創

作能力の自己成長を 促 し

,楽

しさを求めて書こうとする態度を育むことができる。 第

1章

,第

2章

,児

童詩教育の意義や詩創作における認識の指導の考察を行つた。加 えて

,第

3章

では

,詩

創作指導におけるフロー理論の有効性を述べた。第

4章

及び第

5章

では

,フ

ロー理論を用いた詩創作指導のあり方を検討す るとともに

,稿

者が行つた実践に ついて,分析・考察を行つた。終章に研究の成果 と課題について述べ

,本

研究をまとめた。 つ M. 年, チクセン トミハイ (今村浩明訳)『フロー体験 p.5Q

喜びの現象学』世界思想社,1996

(6)

第1章 児童詩教育について 本章では

,児

童詩の定義を押 さえるとともに

,児

童詩教育の歴史や児童詩教育における 先人の業績を通 して

,児

童詩の教育的意義

,児

童詩教育で求められる力について述べてい く。 第1節 これまでの児童詩教育 大正時代

,児

童に童謡を歌わせることによつて情操を潤す 「情操教育」 と

,児

童に童謡 を創作 させることによつて情操生活を豊力ヽこする 「芸術教育」の面に

,童

謡の価値を見出 し

,童

謡が奨励 された。今でも歌い継がれている多 くの童謡が誕生 した。 この流れが 「童 謡運動」と呼ばれている。吉田瑞穂

(1961)は

,児

童による童謡制作が

,児

童詩の発生す る萌芽 となつたとし,児童詩萌芽期 と呼んでいる0。

1918年,鈴

木二重吉によって雑誌『 赤 い鳥』が創刊 され

,児

童の創作 した童謡作品が載せ られていつた。作品の選者になったの が

,北

原白秋である。児童詩萌芽期の『 赤い鳥』には童謡調だけでなく

,童

謡調ではある が リアルにもとづきかけた作品 (リアルにもとづきかけた童謡

)が

見 られた。主観的な感 情移入ではなく

,対

象の真実を素直に捉えよ うとしている作品である。 北原は

,子

どもが感動を自由に表現 した詩にたくさん出会 う中で

,そ

れ ら子 どもの詩を 「児童 自由詩」と名付けた。後に北原白秋は『児童 自由詩集成』(1933)の解説において, 児童 自由詩に出会つた時の感動を次のように述べているの。 その始め

,見

童作品の殆 どは

,成

人作の童語の模倣であつた。自口ち調子本意の童諾で あつた。之等の模倣童謡 よリー韓 して

,見

童本然の感動の リズム

,そ

の自由律の形式を 以て現れた作品を見た私の驚骸 と歓喜はどんなだつたか。彼等は全 く日本詩壇の 自由詩 運動を知るところなく

,自

らに彼等の 自由詩を激刺 と生み出 したのである。 北原によつて児童 自由詩が提唱 されると

,児

童 自由詩運動が全国へ と広がっていった。 しか し

,1929年

に『 綴方生活』が創刊 されると

,児

童 自由詩か ら児童生活詩へ

,児

童生活 詩運動へ と変わっていった。児童詩教育を情操統治の面だけでなく

,子

どもの生活の発展 構成に力を注 ぐよ うになっていったのである。詩の表現対象を自然に求めることから

,自

身の生活にもとづいて創作することへ転換 していった。 戦時中

,途

絶えぎるをえなかった児童詩教育は

,戦

後新 しい 日本文化の創造 と

,民

主主 義教育実践の中か ら

,次

第に注 目されるようになっていった。

1946年

に創刊 された『赤 と んl到 をはじめ,『子 どもの広場』『 き りん』などに

,児

童詩が掲載 されるようにな り

,新

吉田瑞穂『児童詩はどう発展 してきたか』少年写真新聞社

,1961年

,pp.9‐

3Q

北原白秋『鑑賞指導 児童 自由詩集成』アルス

,1933年

,pp.1観

D の

(7)

聞でも児童詩を募集するようになっていった。児童詩教育は再び全国へ と広がっていった のである。 吉田は戦後の児童詩の特徴に

,児

童生活の実態にもとづいた詩

,人

間性の解放 と美の発 見

,思

考が溶け込んだ詩

,表

現手法の多様性

,の

四つ挙げている10。 北原によつて発見 さ れた児童詩は

,主

観的感情移入によって対象を提える児童 自由詩か ら

,生

活を見つめて表 現す る児童生活詩へ

,生

活の実態を提えて考えを溶け込ませて表現す る児童詩へ と発展 し てきたのである。 図1のように変化 し

,発

展を遂げてきた児童詩であるが

,児

童詩指導の教育的意義 とは 何であろうか。第

2節

では

,児

童詩の定義を押 さえるとともに

,そ

の教育的意義について 述べていく。 児童 自由詩 リアルにもとづいた 重謡 児童生活詩 児童詩 リアルにもとづきかけた 重謡 純童堅 児童詩萌芽期 児童自由詩運動朗

生活綴方運動期

戦 中 図

1

児童詩の発展 と移 り変わ り(坂本,2016) 第

2節

児童詩教育で求め られ る力 第1項 児童詩の定義 教科書 には詩

,童

,俳

句・短歌 といつた

,詩

教材 とされ るものが多数取 り上げ られ て い る。 中で も詩は

,現

代詩

,少

年詩

,児

童詩 に分類 され る。石 田佐久間 (1975)は現代詩 を

,お

とな (詩人)力鴻1作欲求

,芸

術欲求によって作 つた詩であ り

,対

象 とす る読書はお とな

,も

しくは 自分 自身である

,と

説 明 している。少年詩については

,作

者 は現代詩 同様 にお とな (詩人

)で

あるが

,詩

人が子 どものために

,子

どもの心に訴 えかけるよ うな題材 や 主題 を選んで作 られた詩で

,読

者 は子 どもを対象 に し

,児

童詩は

,子

ども (児童

)が

作 る詩 を指す

,と

してい る11と 畑島喜久生 (1995)も石 田 と同様 に詩 を分類 している1"。

2は

,石

田 と畑 島を参考に

,詩

の分類 を表に表 した ものである。

10

前掲書 の,pp.182‐209。 11) 商掲蓬争3), pp.42‐58。

10 畑島喜久生『いまこそ子どもたちに詩を』国土社,1995年

,pp.176‐183。

(8)

1

詩の分類

(坂

本,2016) 現代詩 少年詩 児童詩 作 者 お とな (詩人) お とな (詩人) 子 ども (児童) 対象読者 お とな

,自

分 自身 を 中心に 子 ども 小学校で行 われ る詩創作の指導は,児童詩創作指導 と言えよ う。では,子 どもの作 る詩, 児童詩 は どういった詩 なの力、 石 田は児童詩 について,「児童詩 は

,子

どもの 目や耳で とらえた感動 を直裁なことばで表 現 した もので あ り

,詩

人のよ うに芸術性 をね らつて推敲 した り

,技

巧的な くふ うを加 えた りす るものではない。それは,自 然発生的であ り,「生まれた詩」とい うことがで きる。(中 略

)子

どもに とっては 日常生活 そのものが詩 になる。」 と述べている1め 『 生活綴方辞典』では,「児童詩 とは

,生

活者である子 どもたちが,自分をとりまく自然 や社会の事物

,人

間の外的内的側面にふれた とき, 自己の内部に発生 した感動を,く どく ど説明す ることなく

,よ

り直接的に他人に伝わるよ うに

,や

や 自然発生的に

,ま

たはコ ト バを選んで

,や

や意識的に文字表現 したものをい う。多くは,おとなの詩 と同 じような「行 分け」の形をとり

,そ

の映像 (イメージ

)と

感動の リズムが

,ご

く短い時間の うちに読者 の心に再現 しやすいようなコ トバの構成をとるのをふつ うとす る。」と,定義づけている1の 江 口季好

(1968)は

,「子 どもが

,生

活感動を凝縮 したことばで

,内

在律をもつて表現 したもので

,散

文 とは異なった表現 として書 くものであ り

,童

謡 0少年詩 0短歌・俳句な どはふくまない。」 としているlD。 三者の共通 している′点は,「感動を表現す る」である。児童詩 とは

,子

どもが

,生

活の中 で捉えた感動を

,素

直なことばで書き表 した詩 といえる。 では

,子

どもが生活での感動を詩 として表現すること

,子

どもに詩を書かせることに, どんな教育的意義があるのであろうか。 第

2項

児童詩指導の教育的意義 生活の中での感動を詩 として表現 させる児童詩教育において江 日は

,教

育的意義を六つ 挙げている10。 一つ 日は 「日本語の表現性について

,も

つとも鋭 く

,深

,き

び しく

,充

実 した

,徹

底 した指導ができるから」である。 日本語の微妙 さ

,光

,匂

いといった表現 性についての指導は

,詩

教育で しかできない

,散

文 (作文

)で

,効

果的な表現の細部ま 前掲書 の, 前掲書 1), 前掲書0, 前掲書0, pp.42‐4乱 p.41& p.15。 pp.17‐

4&

0 0 0 0

(9)

での指導は困難である,と述べている。言葉を選んで表現 していく詩を指導 していく中で, 日本語の美 しさや表現の豊かさなどを感 じられる表現指導が効果的に行えるのである。 二つ 日は 「認識能力を伸ぼすために」である。江 日は

,す

ぐれた詩の内容の高 さと表現 力は

,認

識能力によつて支えられていることを示 し

,詩

の表現指導が認識の指導 とな り, 表現力の向上が認識能力を発展 させていくのだと述べている。 三つ 日は 「現実か ら学ぶために」である。現実からの学びには

,教

師が子 どもにまだ知 らないことを教え学ばせることと

,直

接的な現実 (友だちとの遊びや喧嘩

,生

活の中での 発見など

)か

ら考えた りすること

,の

二つを江 日は指摘 している。言い換えれば

,子

ども は現実のなかで思考

,行

動を繰 り返す過程で学び

,成

長 してい くのである。その ときの姿 や思いを詩に書くことが

,子

どもの自己成長 を促 していくのだ と考える。 四つ 日は 「学級経営の方法 として」である。生活での感動を表現された詩から

,子

ども の心の動きが読み取れ

,児

童理解につながるのとしている。教師が理解するだけでなく, 学級内で詩を披露 し合 うことで

,子

ども同士の理解 も深 められるであろう。 五つ 日として 「す こやかな子 どもを育てるために」を挙げ

,健

やかな子 どもは健やかな 詩を書 くことから

,人

間教育と詩教育は別物ではないことを指摘 している。 さらに

,健

かな心はねば り強 く

,落

ち着いていて

,真

実を探求する心でもあるとしている。 最後に 「児童文化の創造 として」である。児童詩教育の歴史を見ても

,子

どもからの必 然性によつて児童詩が生まれ

,今

日まで受け継がれてきている。伝統的な文化 として見る ことができる。江 日の言葉を借 りるならば,「児童詩の世界は

,児

童の手による児童文化の 創造であ り

,一

つの偉大な児童文化」である。 江 日は

,児

童詩教育の意義を六つ挙げるとともに

,意

義深い児童詩教育は

,平

和で民主 的な豊かな社会の形成者 としての資質をことばによって磨くことである

,と

述べている。 日本作文の会 (19701も

,児

童詩教育の教育的意義について,日本語の表現性について の指導

,認

識力を伸ばす

,も

のの見方 0感 じ方についての指導

,学

級経営の方法 として活 用

,生

活指導に役立てる

,子

ども文化創造の価値 を

,児

童詩教育の教育的意義 として挙げ ている1つ。表

2は

,江

日と日本作文の会が挙げる教育的意義を比較 したものである。表2 が示すように

,表

現は違えども

,考

える教育的意義は同 じといえる。 では

,教

育的に意義深い児童詩教育には

,ど

のようなものがあるの力、 次項では

,児

童 詩教育の内容について述べていく。 1つ 前掲書 D,pp.47‐4税

(10)

2

児童詩教育の教育的意義の比較

(坂

本,2016) 江 ロ 日本作文の会 ① 日本語の表現性について

,徹

底 した指 導ができるから ② 認識能力を伸ばすために ③ 現実から学ぶために ④ 学級経営の方法として ⑤ すこやかな子 どもを育てるために ⑥ 児童文化の創造として 日本語の表現性についての指導 認識力を伸ばす ものの見方・感 じ方についての指導 子 どもがどんなことに感動 している ② ③ ④ かを知る ⑤ 学級経営の方法 として活用 ⑥ 生活指導に役立てる ⑦ 子 ども文イ鮪J造の価値 第

3項

児童詩教育の内容 詩教育は

,鑑

賞指導 と創作指導の二つに分けることができる。 しか しここでは

,児

童詩 教育は

,前

項で述べたよ うに 「子 どもに生活の中での感動を詩 として表現 させる教育」で あることから

,創

作指導の内容について述べることとす る。 石 田 (1975)は

,創

作指導の内容 につい て次のよ うに述べた うえで,認識の指導 と, 表現の指導 に分 けて考 えている18)。 創 作の指導は

,対

象 を見つめ

,考

え, 自分の認識 を高め

,よ

り確かな ものに し てい く,認識 の しかたその ものの指導 と, その認識 内容 を どのよ うに表現 してい く か とい う

,表

現 の指導 とに大別 され る。 両者 は当然一体不離のものであって

,す

ぐれた表現は深 い認識 にささえられてい ることが理想である。 しか し

,認

識 がす ぐれておれば必ずす ぐれた表現になると はかぎ らない。(中略

)指

導内容 を二つの 側面に分 けるわけである。 さらに石 田は

,認

識 の指導は 「考えを深 的 確 な 語 句 を 使 う 指 導   2 図 効 個 果 性 的 的 に

な 組 語 み 感 立

を て

生 る

む 指 指 導 導 想 感 考 像 動 え を

を 豊 体 深 か 験

め に

る す る 指 る 指 導 指 導 導 表 現 の 指 導 認 識 の 指 導

10 前掲書め

,pp.30‐3λ 詩の創作指導の内容

(石

田1975)

(11)

める指導」,「感動を体験す る指導」,「想像を豊かにす る指導」に

,表

現の指導は,「個性的 な語感を生み出す指導」,「効果的に組み立てる指導」,「的確な語句を使 う指導」に細分化 している。図

2は

,石

田が示す創作指導を構造化 したものである。 実際に

,六

つの指導の うち一つの指導を取 り出 して行 う時

,小

1年

生 と

6年

生で

,同

じ指導を行 うことはできない。子 どもの発達段階に応 じて内容 を見極め

,指

導を行わなけ ればならないのである。 そこで

,発

達段階に即 した指導の系統について

,第 4項

で述べることとす る。 第

4項

発達段階別児童詩指導 発達段階に即 した児童詩 (創作

)指

導を考える際

,子

どもの心理的発達や

,言

語的発達 を理解 しておかなければならない。江 日

(1968)は

,系

統立てた指導を考える上で

,各

学 年の心理的0生活的0言語的発達状況の分析が必要であることを指摘 している。その上で, 分析を行つた結果か ら,小学校各学年の指導段階を設定 している10。 石 田 (1975)も また , 学年段階に合わせた指導を考えている20。 江 日

,石

田による詩創作の指導系統 (巻末資料に添付

)か

,創

作指導は

,認

識の指導 か ら始ま り

,表

現の指導に向かつていくことが分かる。認識の指導 と表現の指導が相互に 関連 し合つて

,詩

の創作指導が行われていく。前項で示 した石 田のことばを借 りれば,「両 者は当然一体不離のものであって

,す

ぐれた表現は深い認識にささえられている」のであ り

,言

い換えれば

,表

現す るために

,認

識が必要なのである。故に

,詩

創作指導に認識の 指導が求められ,「認識力を伸ばす」ことが児童詩教育の教育的意義であるのだと考えられ る。 そこで本研究では

,表

現を支える認識の指導に着 日し

,児

童詩教育

,詩

創作指導の在 り 方を検討 していくこととす る。 前掲書 0,pp.313‐

31%

前掲書 9,pp.86‐

9Q

0 0

(12)

2章

詩創作指導 における認識の指導の具体 本 章では

,認

識 の力 とは ど うい つた力 なのか を示す とともに

,詩

倉1作指導 にお ける認 識 の指導 の具体 について検討 してい く。 第

1節

認識 力 とは 第

1項

ものの見方・ 考 え方 西郷竹彦

(1991)は

,も

の ごとの本質 0法則・真理・真実 0価値 。意味 をわか ること が

,認

識 で あ る と述べてい る2D。 そ して

,も

のの見方・考 え方 は

,わ

か りたい もの (認 識 対象

)の

わか り方 (認識方法

)で

あ り

,認

識 対象 の本質・ 法則 0真 理・真実・ 価値・ 意 味 をわか る (認識す る

)た

めには

,わ

か り方 (認識方 法

)を

知 る必要 があ る と続 けて い る。石 田

(1975)も

西郷 と同様 に

,も

のの見方 は認識 の方法であ り

,操

作の仕方 であ る と し,ものの見方(認識方法)に よつて認識 能力 を高 め るこ とがで きる と述べてい る2'。 例 えば

,車

の運転方法 を知 らなけれ ば運転で きない。 同様 に

,対

象 を どの よ うに認識す れ ば よいのか

,も

のの見方・考 え方 (認識方法

)を

知 らな けれ ば

,認

識 す るこ とはで き ない とい えるだろ う。 ものの見方 0考え方の重要性が理解で きる。 第

2項

対象 を捉 える力 石 田は

,認

識 の能力 は観 察力・ 知覚力・表現力・ 思考力・想像力だ と述べてい る。 中 で も観察力は

,認

識対象 を提 えるた めの能力 で あ るとい える。対象 を正 しく捉 えるため には

,観

察す るこ と

,あ

りのままに見 ることが欠かせ ないか らである。 江 日 (1968)│ま

,観

察力 の必要性 を次 のよ うに述べ てい る2の 先入観や偏見 で物事 を見たのでは,事物や現象 を正 しく認識す ることはできません。 正 しく観察す るためには

,人

為的 に実験 してみ た り

,統

計 を とってみた りして

,そ

の 微妙 さや変化や発展 を

,細

かな部分 も見のが さない よ うに しなければな りませ ん。そ うい う注意深 さが必要 です。 観察す ることは

,

日で見 るだけでない。触つてみる

,味

わつてみる

,嗅

いでみ る

,聞

いてみる

,の

五感の働 きがある。五感 を働かせて対象 をみ るのである。石 田の示 した知 覚力にあたる。知覚力は観察力の一つ とも考えられ る。

21)西

郷竹彦『 ものの見方・考え方

22

前掲書 9,p.83。

29

前掲書 0,p.202。 ― 教育的認識論入門 ―』明治図書

,1991年

,pp.1‐11。

(13)

3項

知識 と しての認識内容 図

3は,西

郷 に よる

,認

識対象 と

,認

識方法

,認

識 (し た

)内

容 の関係 を表 した図であ る。 図

3を

見 る と

,認

識 対象 か ら認識 内容へ の道筋 を

1本

の矢 印で記 している。 この道筋 によつて蓄積 されてい く認識 内容が

,知

識 で あ る。稿者 は

,矢

印で表 された 「ものの見方・考 え方」 の 道 筋 が

,よ

り豊 か な ものであれば

,認

識 内容 も豊 かにな る

,言

い換 えれ ば

,多

くの認識方法 を知 り

,関

連 させ な が ら認識す る ことで

,高

次 の認識 内容 を学ぶ こ と

,高

次 な知識 を得 る こ とにな るのではないか と考 える。認識方 法 と認識 内容 の双方 向の関わ りが

,認

識 において大切 な のだ とい うこ とであ る。西郷 も認識方法学 と認識 内容 の つ なが りに注 目し

,学

び得 た認識方法 と認識 内容 の二つ が,も のごとがわか る力・認識 の力であると述べてい る2つ

2節

認識 方法 の種類 と系統 的指導 子 どもに

,豊

かな認識 の力 を伸 ばす ために

,豊

かな も のの見方 。考 え方 を身 に付 けさせ なければな らない。 と

3

はい え

,教

師が 「ものの見方 0考 え方 (認識 方法)」 を理 解 していなけれ ば

,指

導 してい くこ ともできない。 ︵認 識 対 象 ︶ も の の 見 方 , 考 え 方

わ か り 方 ︵ 認 識 方 法 ︶ ︵認 識 内 0 認 識 対 象 ・ 認 識 方 法 コ認識 内容の関係 (西郷 1991) 発達途上にある子 どもには

,発

達段階に即 して学んでい くことが大切であるが

,認

識 方法を学ばせ る時

,ど

のよ うな認識方法をどんな順番で指導す ることが望ま しいのであ ろ うか。 西郷

(1991)は

,小

学校段階で取 り扱 うべき認識方法を抽出 し

,指

導系統 としてまと めている2つ。その中で西郷は,「ものの見方 0考 え方 (認識の方法

)の

なかで比べ る (比 較)と い うのは,も つ ともわか りやすい,そ してたいへん 日常的に多く用い られている, しか もきわめて基本的なもの」であると述べ,「比較」を系統の一番 目に置いている26)。 西郷はまた

,比

較にも複雑 さや難 しさに程度があることか ら

,1年

生で比較 を教 えて終 わるのではな く

,学

年が進むにつれて

,よ

り発展 した形で くり返 し学ばせなければなら ないことを指摘 している。それは

,比

較以外の認識方法について も同 じであろ う。 くり 返 し学ぶ ことで深まった認識が,「わかる」を 「よりわかる」「もつとわかる」へ と高め ていくのである。 第

1章

で述べた詩創 作指導の内容 に

,認

識の指導 として

,考

えを深める指導

,感

動を 体験す る指導

,想

像 を豊かにす る指導の三つがある。西郷の考える認識方法の系統指導 2の 前掲書 20,p.13。

2D

前掲書 0,p.3。

20

前掲書 20,p.15。 こ と ば ・ 表 現 人 間 。 も の ご と 本 質 ・ 法 則 ・ 真 理 真 実 ・ 価 値 ・ 意 味

(14)

は,「考えを深 める指導」だ といえるだろ う。表

3は

、西郷がまとめた認識方法の指導系 統表である。 表

3

認識方法の指導 系統

(西

郷 1991) 第

3節

感動状態の再現指導 ここで も う一度

,児

童詩 とは どんな ものなのか確認す る。児童詩 は

,子

どもが生活の なかで捉 えた感動 を

,素

直 な ことばで表現 した詩 であ る。身近な もの ご とを認識 し

,認

識 内容 に美 しさ

,面

白さ

,不

思議 さな どの感動 を発 見

,表

現 させ るのであ る。 感 動 を表現 させ るために,どんな指導か ら始 めた らよいのだろ うか。江 口(1968)は, 自己の感 動状態 を意識 させ再生 させ る方法か ら始 めると述べ てい る2つ。「まあ」「おや つ」 「わあつ」「あれ つ」「おお」 とい うよ うな感動詞 とともに

,感

動 の内容 を書かせ る指導 で ある。感動詞 を用 い る理 由 として江 日は

,感

動詞が 自分 のその時 の状態や感情 を

,直

接 的 に表 出 させ

,感

動 の内容 を誘導す ることを挙 げてい る。 佐藤保子 と今井成治 (2010)も 江 日と同様 に

,感

動詞 を用 いて詩 を書かせ ることを挙 げてい る28p。 佐藤 。今井 の示す方法 は

,特

徴的で ある。感動詞 として 「あい うえお」の

5文

字 を設定 し

,詩

創 作入 門期 にあ る小学校

1年

生 に指導す るのである。 ・ 発見 して 「あつ」 ・ くや しくて 「い―」 ・ 怒 つて 「う―」 ・ 疑間に思 つて 「えつ」 ・ 発見 した時 「お―」 2つ 前掲書 0,pp.129‐ 130。

")佐

藤保子・今井成治編著『 作文 シ リー ズ① たの しい児童詩の授業』 日本標準

,2010

年,pp.15‐

2Q

小 学 校 o 観 点 ︱ 目 的 意 識 、 問 題 意 識 、 価 値 意 識 1 比 較 ︱ 分 析 。 総 合   分 け る ︱ ま と め る 類 似 性 、 同 一 性 ︱ 類 比 ︵反 復 ︶ 相 違 性 ︱ ︱ ︱ ︱ 対 比 2 順 序 、 展 開 、 過 程 、 変 化 、 発 展 3 理 由 。 原 因 。 根 拠 類 別 条 件 ・ 仮 定 構 造 、 関 係 、 機 能 、 還 元 選 択 ︵ 効 果 、 工 夫 ︶ ・ 変 換 仮 説 ・ 模 式 関 連 ︵ 連 環 ︶、 相 関 、 類 推

987654

(15)

の五つ を用いて

,詩

を書かせ るのである。作 品

1,作

2は

,「あい うえお」 設 定 して詩創 作 を行 つた時 の作 品例 である。 感動詞 を用 いて詩 を書かせ る指導 は

,感

動状態 を再体験す る指導である。 導 の内容 の認識 の指導 にお ける

,考

えを深 める指導

,感

動 を体験す る指導, にす る指導の うちの,「感動 を体験す る指導」であろ う。 作 品1 作 品

2

「 う一 」 か ら始 ま る詩 (佐藤・今井 2010) を感動詞 に 詩 の創作指 想像 を豊か 「あつ」から始まる詩 (佐藤 。今 井 2010) 第

4節

再生的想像のスケ ッチ法 認識の指導である考えを深 める指導 と

,感

動 を体験す る指導について述べてきた。あ と一つ

,想

像 を豊かにす る指導があるが

,詩

創 作における想像 とは

,何

であろ うか。『 児 童詩教育辞典』には

,次

のように記 されている29p。 想像 とは

,心

の うちに思い浮かべ ることである一現実の知覚に与えられていない物 事のイメージを心に浮かべてみることである。 ①過去の経験を再生す る場合 と

,②

過去の経験 を組み合わせて新 しいイメージを作 る場合 とがある。 江 日によれば

,①

は再生的想像で

,②

は創造的想像であ り

,詩

を書 くことは再生的想 像の働 きによるものだ と述べている30)。 詩は

,生

活のなかで捉 えた感動 を心に思い浮か べて

,言

葉で再生するのであるか ら

,江

日の主張は

,正

しい と思われ る。 石 田

(1975)は

,想

像を豊かにす るための具体的な指導に

,に

スケ ッチ法を挙げてい る31)。 五官を使つて,日 で見て

,触

つてみて

,味

わってみて

,嗅

いでみて

,聞

いてみて , 対象を捉 え

,言

葉でスケ ッチするのである。言い方を変えれば

,五

官で捉えた対象を心 の中にイメー ジし

,言

葉で再生す るのである。スケッチ法は

,ま

さしく再生的想像であ 2の

前掲書

D,p.24

3の

前掲書

0,p.223。

3D

前掲書

9,pp.151‐ 153。 あ っ あ め ん ぼ が い る よ 。 あ っ 、 あ め も ふ つ て き た 。 あ し た の ぷ う る 、 ど き ど き す る 。 ン つ ︱ こ の き の こ な ん か き ら い 。 た べ ら れ な い よ 。 き ゆ う し よ く に で る と い や だ け ど た べ る 。 ま ま も き ら い な の 。

(16)

,想

像を豊かにす る指導 といえる。また

,五

官を使 つて

,対

象の捉 え方を広げよ う, 多角的に捉 えさせ よ うとす るスケ ッチ法は

,対

象を捉 える力を養 える指導 ともいえるで あろ う。 スケ ッチ法を推奨 しているのは

,石

田だけではない。野 口芳宏

(1990)は

「ことばの スケ ッチ」 として

,佐

藤 。今井

(2010)は

「五感を使つた観察」としてスケ ッチ法を示 している32)33)。 五官 をはた らかせて対象をみる力は,認識対象を捉 える基本の力である。 スケ ッチ法は

,基

本 の力を養 う指導法であることか ら

,石

,野

,佐

藤 。今井 らは, 詩創作入門期の低学年に取 り扱 うことを提唱 している。 小学校低学年

,特

1年

生の姿を佐藤・今井は,「覚えたての字で書きた くてたま らな い子」 と表現 している3の。書 く活動 を楽 しんでいるともいえる。 しか し

,学

年が進むに つれて

,書

きた くてたまらない思いか ら

,書

くことを億劫がるよ うになつて くるのが現 状である。 藤原与一

(1965)は

,書

くことへ向か う子 どもの変化 を

,次

のよ うに述べている30。 小学校低学年のころは

,ど

んなばあいにも

,書

かせれば

,か

れ らは好んで書 く。す すめれば

,自

由に

,い

ろいろなものを書いてもくる。(中略

)と

ころが

,進

級 して

,だ

んだん高学年になると,「書 くこと」を うとま しくかん じるよ うになるようである。あ んなに好んで書いていたものが

,だ

んだん書きぎらいになる。 藤原はまた

,書

きぎらいになるのは 「書か されている」 と他律感 を持つよ うになるか らだ とも論 じている。 稿者 は

,認

識力 を伸ばす指導に着 日して

,広

い視野で見つ けた発見や感動 によつて, 書きた くなる0表現 したくなる子

,

自律的に楽 しんで書 く子

,を

育てたいと考える。認 識の基本の力・対象を捉える力を養い

,想

像 を豊かにす る 「スケ ッチ法」は

,稿

者の思 いを指導に活かせ る指導法であると考 える。そこで

,本

研究の実践では

,ス

ケ ッチ法を 指導に採用 し

,詩

創 作指導のあ り方 を検討 していくこととす る。 自律的に楽 しんで書 く子, とはい うが

,書

くことの楽 しさは何であろ うか。 どのよう に生まれてくる感情であろ うか。次章では 「楽 しさ」について考察を行つてい く。 野 口芳宏『 野 口芳宏著作集 年,pp.28‐

3&

前掲書 20),pp.31‐4乞 前掲書

20,p.17.

前掲書

0,p.9a

10巻

感性を磨く詩歌の創作指導』明治図書,1990

0 0 め

(17)

3章

楽 しさの理論 本章では

,心

理学者であるM.チクセ ン トミハイが行 つた

,内

発動機づ け としての 「楽 し さ」の研究 をもとに

,我

々が感 じる 「楽 しさ」 とは何か, どの よ うに生まれて くる感情な のか とい うことを述べてい く。さらに,学習にお ける「楽 しさ」の効果や必要性 を考察 し, 楽 しさの理論 を応用 して詩創作指導に活用す ることが可能か ど うか

,検

討 してい く, 第

1節

心理的エ ン トロピー と最適経験 M.チクセ ン トミハイ (2010)は

,悲

しみや恐れ

,不

,退

屈 といつたネガテ ィブな感情 は

,精

神 に 「′い理的エ ン トロピー」 と呼ばれ る心理的無秩序 な状態 を生み出 し

,無

秩序 な 状態 を立て直すためには注意力 (心理的エネルギー

)が

必要 とな り

,他

の情報 を処理す る ために必要な注意力を効果的に用いることができないのだ と述べている36)。 また

,チ

クセ ン トミハイは

,ネ

ガテ ィブな感情の反対の幸福や力強 さ

,覚

醒感 とい つたポジテ ィブな感 情 を 「′い理的ネゲン トロピー」 と呼び

,心

理的エネル ギーは

,労

費す ることな く力 を発揮 したい方 向へ 自由に流れてい くのだ と説明 している。そ して

,チ

クセ ン トミハイ (1996) は

,心

理的ネゲン トロピーは

,人

に とつての最適経験 (optimal experience)で ある捉 え てい る3つ 学習活動 中の感情 について考 えてみ る。「嫌い」や 「苦手」を感 じる時は

,心

理的エ ン ト ロピーな状態にあ り,「楽 しい」と感 じる時は

,最

適経験の状態にあるといえよ う。す るな らば

,

日々の学習が最適経験であることが望ま しい。 では

,何

が どのよ うに最適経験 を生むのか

,チ

クセ ン トミハイの研究をもとに述べてい くこととす る。 第

2節

チクセ ン トミハイによる楽 しさを構成する要素 チ クセ ン トミハイ (19961は

,10年

以上に渡 つて

,何

が経験 を楽 しいもの (最適経験) にす るの力ヽこついて調査 を行 つた30。 国籍

,年

,性

別 関係 な く被験者 を選び

,面

接や質 問紙 によつて

,彼

らに生活が最 も充実 している時 どう感 じたか

,い

,何

を している時が 最 も楽 しかつたか等の回答 を求 める方法である。調査の結果か ら

,被

験者 が楽 しさを経験 した事柄 は極 めて多様だが

,そ

の活動が楽 しかつた理 由は相違点 よ りも類似`点の方が多か つた ことがわか り

,チ

クセ ン トミハイ は

,楽

しさを感 じる条件 は世界 中で同一であること を明 らかに した。そ してチクセ ン トミハイは

,調

査デー タか ら

,楽

しさの主要な構成要素

M.チ

クセ ン トミハイ (大森 弘訳)『フロー体験入門 ― 楽 しみ と想像の心理学』世界 思想社, 2010年, pp.30‐31。 前掲書 つ

,p.5Q

同上書,pp.61‐6λ つ D

(18)

を抽出 し

,構

成要素の組み合わせが深い楽 しさ感覚

,最

適経験を生むのだ と結論付けた。 表

4は

,チ

クセン トミハイが抽出 した

,楽

しさの主要構成要素をまとめたものである。 表

4

楽 しさの主要構成要素

(坂

本,2016) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ③ 達成できる見通 しのある課題 に取 り組 んでい る。 周 りの ことを忘れ るくらい

,活

動 に集 中 している。 活動 に明瞭な 目標がある。 直接的なフィー ドバ ックがある。 活動 中

,

自分の行為 を統制 してい る。 自己についての意識が消失す る。 時間の経過の感覚が変わる。 その活動 は, 自己 目的的である。 第

3節

フロー理論 第

1項

フロー とは チ クセ ン トミハイは

,改

めて最適経験 を次のよ うに定義 している30。 一つの活動に深 く没入 しているので他の何 ものも問題 とならなくなる状態

,そ

の経験そ れ 自体が非常に楽 しいので

,純

粋にそれをするとい うことのために多 くの時間や労力を費 やすような状態である。 そ してチクセ ン トミハイは

,最

適経験 をこの よ うに提 え

,フ

ロー (20wYと名づ けた。言 い換 えれば

,時

間がたつ のを忘れ るほ ど集 中 して活動にのめ り込み

,楽

しさと心地よさを 伴 い

,活

動 を終 えた後 に充実感 で満た され る状態がフローの状態である。 第

2項

フローの生起条件 では

,ど

のよ うな時にフローを経験す るのであろ う力、 チ クセ ン トミハイ

(2003)は

, フローが生 じる条件 として二つ挙げている40。 第一に

,現

在 の能力 を伸長 させ る (現在 の能力 よ りも高す ぎも低す ぎもしない

)と

知覚 された挑戦あるいは行為の機会であ り

,自

分の能力 に適 した水準で挑戦 しているとい う感 覚である。 第二 に

,明

瞭で手近な 目標

,お

よび進行 中のことが らについての即座のフィー ドバ ック が得 られ ることである。

30

前掲書 つ

,pa

40 M.チ

クセ ン トミハイ

,J.ナ

カム ラ 「フロー理論のこれまで」今村浩明

,浅

川希洋志 (編)『

フロー理論の展開』

1章

,世

界思想社

,2003年

,前

掲書

31),p2

(19)

これ らの条件をもつて

,詩

創作指導での活動にフローを生起 させようとするならば

,①

詩創作指導の中に

,子

ども一人一人が 「自身の能力に適 している」 と感 じられる活動を設 定 し

,②

その活動の 日標が明確で

,即

座にフィー ドバ ックを得 られる指導を考えることが 必要であると言えるであろ う。 第

3項

フロー状態モデル チクセン トミハイ と」.ナカムラは

,実

際にフロー状態に入れ るかどうかは

,知

覚 された 能力 と知覚された行為の機会 (挑戦

)と

の間の均衡 を確立できるかであ り

,そ

の均衡は本 質的に崩れやすいものであると

,フ

ロー状態にあるときの能力 と挑戦の均衡について指摘 している41と チクセン トミハイが示 したフロー状態のモデル (図

4)に

よつて

,フ

ロー状 態での能力 と挑戦の均衡の不安定 さを説明することができる

42行

為への機会(挑戦水準) が 自分の能力水準よりも大きければ

,結

果 として生 じる緊張は不安 として経験 される。挑 戦に対する能力の比率がより高 く

,依

然 として挑戦が技能よりも大きいな らば

,そ

の経験 は不安になる。フロー状態は

,行

為への機会が行為者の技能 とつ りあつている時に感 じら れ

,そ

の経験は

,自

己目的的である。技能がそれを用いる機会 よりも大きい時には

,退

屈 状態が生 じる。技能の挑戦に対す る比率が大きすぎると

,退

屈は次第に不安へ と移行 して い く。能力水準が挑戦水準を上回 りは じめると

,人

は リラックスしは じめ

,や

がて退屈を 感 じるようになる。不安や退屈 といつた経験は

,不

快な状態を避けて再びフローに入るた めに

,能

力水準と挑戦水準のいずれか

,も

しくは両方を調整 しなければな らない。 不 安 心 配

α

退 屈 不 安 行 為 の能 力 (技能) 図

4

フロー状態のモデル

(チ

クセントミハイ1979 前掲書40y,p.5。

M.チ

クセン トミハイ (今村浩明訳)『楽 しみの社会学』思索社

,1979年

,p.8Q

(20)

4項

フロー経験 による自己成長モデル チ クセ ン トミハイ (1996)は

,人

が フロー状態へ入 ろ うと能力水準や挑戦水準の調整 を 行 お うとす る と

,こ

れ までの能力 よ り高い水準方向へ押 し上げ られ ることになるとい うと 述 べている40。 これまでの能力 よ り高い水準方向へ とい うことは

,言

い換 えれば, 自己の 成長がフロー経験 に よつて起 こるとい うことである。 チ クセ ン トミハイは

,図

5のモデル を示 し

,テ

ニスを行 う少年

Aの

能力成長の過程 を説 明 してい る。 挑   戦 (高) (低)

0

/

A3

A4づ

Al

A2

i■

E

0(低

)

能 力

(高

)∞

5

フロー経験による能力成長モデル

(チ

クセントミハイ1996) 初 めてテニスをす る少年 は,最初 にボール をネ ッ トの向 こ うに打 ち返す ことに挑戦す る。 その難度 は未熟な能力に合致 しているので

,テ

ニスを楽 しむ ことができる (Alで のフロー 経験)。 少年は練習 を続 けていくと

,能

力が進歩 し

,ネ

ッ トの向 こ うへ打 ち返す ことだけに 退屈 し始 める (A2)。 も しくは

,少

年 よ り練習 を積 んだ相 手 と出会 い

,た

だボール を打ち 返す ことよ り難 しい挑戦があることを知って

,自

分 の能力の低 さに不安 を感 じるよ うにな る (A3)。 退屈 と不安 は望ま しい経験でないか ら

,少

年 はフローの状態 に戻 るよ うに動機 づ けられ る。退屈 している (A2)ならば

,挑

戦の水準 を上げれ ばよい。能力に適合す る日 標 を課す ことによって

,再

び フロー状態に入 つてい く (A4)● 不安 な状態

(A3)か

らフロ ー に戻 るには,自分 の能力 を高めることが必要である。J`戦水準を下げ

,Alに

ものること もできるが

,挑

戦すべ き対象があることを知 ると

,そ

れ を無視す ることは難 しい。能力水 準 を上げて

,フ

ロー状態に戻つてい く (A4)。 A4と Alは共 に少年がフロー状態にあること

を示 している。 どち らも同 じよ うに楽 しいのであるが

,A4は

Alよ り高次の

,複

雑 な経験 であるといえる。A4のフロー状態にあつても練習を続 けてい くと

,Alと

同様 にA4での退 屈や不安 を感 じるよ うになる。そ こで

,再

び楽 しみたい とい う動機が

,今

度は

A4よ

り高 い水準でのフローに戻 るよ うに

,少

年 を前進 させ てい く。

(21)

図5のフロー経験による自己成長モデル を見て も

,人

は同 じことを同 じ水準で長時間楽 しむ事は難 しいことがわかる。退屈や不満 を募 らせていき

,再

び楽 しもうとい う思いが能 力 を進展 さる

,も

しくは

,能

力 に見合 った挑戦の機会 を見つ けてい くのである。言い換 え れ ば

,あ

る活動でフロー状態にあるとき

,フ

ロー経験が 「楽 しさ」 とい う動機づ けによつ て人 を成長 と発見へ と導いてい くのである。 第

4節

詩創作指導 におけるフロー理論の有効性 フロー理論 によつて 「楽 しさ」 とい う内発的動機づけが人 を成長 させてい くことがわか つた。教育活動において も

,子

ども自身が楽 しさを感 じ

,楽

しさを求 めて 自ら成長 してい くことが望 まれ る。では

,詩

創 作 において

,フ

ロー理論 を用い ることは可能であるのか, 図5フロー経験による自己成長モデル に

,詩

創作 を当てはめて考察 してい く。 設定 された題材 について詩 を創作す ることを始め

,表

現す ることの楽 しさを感 じてフロ ー状態

Alに

ある とす る。同 じよ うに

,題

材 が設 定 された詩創 作 を何度 も行 つている うち に

,退

屈 を感 じるよ うになる (A2)。 または

,何

度 も詩 を創作 していて も

,散

文か ら脱 し きれず

,詩

の書き方 に不安 を感 じるよ うになる (A3)。 不安や退屈 を感 じてい る と

,フ

ロ ーに戻 るよ うに動機づ けられ る。退屈 している (A2)な らば, 自分で題材 を見つけること か ら詩の創作 を始 めるな ど

,挑

戦水準 を上げることで

,フ

ロー状態 に戻つてい く (A4)。 詩 の書 き方に不安 を感 じているな ら

,行

分 けの しかたや

,比

喩表現を学習 し

,能

力水準 を 上げてフロー に戻 つてい く (A4)。 能力水準や挑戦水準 を上げることによつて

,フ

ロー状 態 に戻 つた

A4で

,Alよ

り高次なフロー にあると言 える。 詩創作を

,フ

ロー経験の 自己成長モデル に照 らして説明す ることができた。 フロー状態 は

,能

力水準 とツ `戦 水準 (活動水準

)の

均衡 で生 じるのであるか ら

,詩

創 作 において も, 活動・課題 の水準 と詩創 作能力が均衡 しているな らば

,フ

ロー状態に入 ることは可能であ り

,楽

しさが詩創 作への動機づ けとなって

,詩

創 作能力の成長 を促す とい えるであろ う。 楽 しさを感 じなが ら,自 己の成長 を促す フロー理論は,詩創 作指導において も有効であ り, 楽 しんで書 くこと育て

,認

識力 を伸ば したい とい う稿者 の考 えに

,合

致す る理論であると いえる。

(22)

4章

フロー理論を用いた詩創作指導の検討 本章では

,指

導の中心に 「認識の指導」を置き

,フ

ロー理論 を用いた詩創作指導のあ り 方 を検討 していく。 第

1節

詩創作における楽 しさの選別 フローを経験するためには

,深

い楽 しさ感覚が必要であ り

,詩

創作にフローを生起 させ るためには

,詩

創作に楽 しさがなくてはならない。詩創作における楽 しさにはどんなもの があるのだろ う力、 石 田は

,詩

の創作指導を認識の指導 (考えを深める指導

,感

動を体験する指導

,想

像を 豊力│こす る指導

),表

現の指導 (個性的な語感 を生む指導

,効

果的に組み立てる指導

,的

確 な語句を使 う指導

)に

分類 していた (第

1章

参照)。 それ らの指導の中で

,楽

しさを見出さ れ るとするな らば

,指

導の数だけ楽 しさがあることになる。そこで

,石

田の示 した詩創作 指導の内容に照 らして

,楽

しさを抽出す る。 創作指導全体を提えれば

,詩

を作る楽 しさがあ り

,表

現の指導で考えるならば

,ま

さに 表現す る楽 しさがあるだろう。各指導内容すべてに

,楽

しさを考えていくと,「詩を作 る楽 しさ」を細分化 した形で

,認

識する楽 しさ (考えが深まる楽 しさ

,感

動す る楽 しさ

,想

像 す る楽 しさ),表現す る楽 しさ(語感を感 じる楽 し さ

,詩

を組み立て られる楽 しさ

,言

葉 を選ぶ楽 し さ

),が

抽出できる。 図

6は

,石

田の詩創作指導の内容 (図

2)に

対 応 させて

,抽

出 した楽 しさを表 したものである。 第

2節

詩創作における楽 しさを構成する要素 詩創作指導での活動にフローが生 じるか どうか は

,詩

創作における楽 しさが

,チ

クセ ン トミハイ の抽出 した楽 しさの主要構成要素を含んでいるか どうかに関係する。そこで

,詩

創作における楽 し さにどの要素が該当するのか

,検

討 しなければな らない。 ① 達成できる見通 しのある課題 に取 り組 んでいる。 ② 周 りのことを忘れるくらい

,活

動に集中 している。 詩創作における楽 しさ (坂本,2016) 考 え が 深 ま る 楽 し さ 感 動 す る 楽 し さ 想 像 す る 楽 し さ 語 感 を 感 じ る 楽 し さ 組 み 立 て ら れ る 楽 し さ   6 図 言 葉 を 選 ぶ 楽 し さ 作 る 楽 し さ 表 現 す る 楽 し さ 認 識 す る 楽 し さ

(23)

③ 活動に明瞭な目標がある。 ④ 直接的なフィー ドバ ックがある。 ⑤ 活動中

,自

分の行為が統制できる。 ⑥ 自己についての意識が消失する。 ⑦ 時間の経過の感覚が変わる。 ③ その活動は

,自

己目的的である。 以上の人つが

,チ

クセン トミハイによる楽 しさの主要構成要素である(第

3章

参照)。 れ らの要素に詩創作指導を対応 させ

,検

討 し

,表

5に

まとめた。 表

5

チクセン トミハイの「楽 しさの主要構成要素」と詩創作の楽 しさとの対応 (坂本, 2016) ① 達成できる見通しのある課題に取 り組んでいる。 ○

② 周りのことを忘れるくらい

,活

動に集中している。

▲ ③ 活動に明瞭な目標がある。 ○

④ 直接的なフィードバックがある。

⑤ 活動中

,自

分の行為が統制できる。

▲ ⑥ 自己についての意識が消失す る。 ▲ ⑦ 時間の経過の感覚が変わる。 ▲ ③ その活動は

,自

己目的的である。 ▲ ○ :あ てはまる ▲ :あ てはまる場合 もある ①の達成できる見通 しのある課題は

,指

導の上で設定可能である。②活動に集中 してい るか どうかは

,子

どもの活動に対する関心・意欲・態度にかかわつて くると考えられるた め

,子

ども自身に任せるとことが大きい。③は

,①

の課題 と共に

,設

定可能である。④子 どもへの直接的なフィー ドバ ックも

,い

くつか方法が考えられる。⑤の自分の行為が統制 できるとは,活動中の状況に応 じての対応方法がわか り,自身で対応できることであるが, 個々の子 どもの生活や学習の経験の積み重ねにより

,状

況は変わる。⑥ 自己内省意識の喪 失であるが

,他

が気にならないくらいの集中の中で生 じる。子 どもによつて異なると言え る。 しか し

,小

学校低学年は

,こ

れか ら自己内省できる視点を獲得 していく時期 にある。 そのため

,

自然に自己内省意識の喪失の状況にある。⑦は

,時

間の経つのがはや く感 じた りす ることであるが

,一

つのことに集 中している状態にあると特に感 じる。② と同じで, 子 どもの活動の取 り組み方次第で異なつてくる。③は

,詩

創作が自己目的的

,詩

を書きた いか ら詩を書 く

,と

い うことであるが

,詩

の良さや面白さを感 じていなくては

,難

しいよ

(24)

うに感 じる。子 どもの詩創作の学習状況によって異なる。 以上のことから

,詩

創作の指導の中に楽 しさの要素を設定できるとすれば, ① 達成できる見通 しのある課題 に取 り組んでいる。 ② 活動に明瞭な 目標がある。 ③ 直接的なフィー ドバ ックがある。 の二つが考えられる。楽 しんで詩創作を行 う子 どもを育てるためには

,こ

れ らの楽 しさの 要素を活動にとりこみ

,指

導を計画す る必要があると考えられ る。 第

3節

フロー理論を用いた詩創作指導を検討するための視点 本研究での実践の 目的は

,認

識の指導に着 日して

,楽

しんで書 く子を育てるフロー理論 を用いた詩創作指導のあ り方を検討す ることである。そこで

,図

2の

「詩の創作指導の内 容」 と

,第

2章

で述べた

,認

識の指導の具体を参考に

,指

導を検討す る視点を導き出す。 詩創作における認識の指導の中に

,考

えを深める指導

,感

動 を体験する指導

,想

像を豊 かにす る指導

,の

三つがある。指導の具体を踏まえて指導内容を細分化すると

,A認

識方 法 を知る

,B認

識対象を捉える力を養 う

,C驚

きや発見を体験 させ る

,Dこ

とばで描写す る

,E何

力ヽこな りきる

,の

五つが考えられる。 これに

,詩

創作の楽 しさを構成する要素 と して抽出 した①達成できる見通 しのある課題

,②

活動に明瞭な 目標

,③

直接的なフィー ド バ ック

,を

組み合わせて

,指

導を検討する視点 とする。 図

7は

,稿

者が考えを深める指導

,感

動を体験する指導

,想

像を豊かにする指導に

Aか

Eの

指導内容を添えて

,構

造化 したものである。児童詩の定義に,「生活の中で捉 えた 感動を表現 した詩」 とあるように

,感

動を持つことから

,詩

創作が始まる。そこで

,上

に 感動を体験す る指導を配置 し

,下

に考えを深める指導 と

,想

像を豊かにす る指導を配置 し た。また

,Aか

Eの

指導内容には

,考

えを深める指導

,感

動 を体験する指導

,想

像を豊 かにす る指導の二つに関連するものがある。構造化するにあた り

,指

導の重な りを円で表 し

,Aか

Eを

示 した。 本研究では

,考

えを深める指導

,感

動を体験する指導

,想

像を豊かにする指導

,の

二つ が重なる部分 (赤色部分

)の

指導について検討 していくこととする。

(25)

哉の指導

想像を豊かに

する指導

E

D

考 えを深 める

指導

A驚

きや発見を体験する

B

ことばで描写する

C

対象 を捉 える力を養 う

D

認識方法を知 る

E

何かにな りきる 図

7

フロー理論を用いた詩創作指導 を検討するための視点となる, 三つの指導と指導内容の構造的配置

(坂

本,2016)

感動 を体験す る

指導

A

(26)

5章

実践の分析 と考察 本章では

,実

地研究及びインターンシップでの授業実践を分析 し

,フ

ロー理論を用いた 詩創作指導のあ り方を考察 していく。 第1節 実践の方法 と概要 第1項 実践の方法 本研究の 目的は,「楽 しんで詩を書 く子を育てる指導」のあり方 を検討することである。 第

1章

,第

2章

では

,詩

創作指導における認識の指導の意義やスケッチ法の有効性につい て

,第

3章

では

,フ

ロー理論の詩教育での可能性を見出す ことができた。そこで

,以

下の 仮説を立て

,実

践を行 うこととした。 仮 説 詩創作指導にフロー理論を用いることで,創作能力の自己成長を 促 し

,楽

しさを求めて書 こうとする態度を育むことができる。 第

2項

実践の概要 本研究では

,実

地研究 Ⅱとイ ンター ンシ ップの

2回

,実

践 を行 った。実地研究 Ⅱでの実 践 を実践

1,イ

ンター ンシップでの実践を実践 2と 呼ぶ こととす る。実践1では

,認

識 の 指導 としてのスケ ッチ法が低学年に有効な方法であるか どうか

,実

2で

,フ

ロー理論 を用いた詩創作の方法について検証を行つた。各実践の検証対象の時間をで色付 け して示 し

,以

下にま とめた。 実践1 対 象 :兵庫県

M市

s小

学校 第

2学

1組

児童 33名 期 間 :平成

27年

2月 10日 ∼2月 19日 全

6時

間 教 材 :「見た こと

,か

ん じた こと」(光村図書 二年・下 たんぽぽ) 単元名 :よ うす をあ らわす ことばをくふ うして詩 を書 き, しょうかい しよ う。 次 時 学習活動 詩 を読む。 2 詩 に使 われている言葉に注 目して

,詩

の表現 している様子を想像す る。 3 「そつとうた」の一連を作 る。 4 詩の題材を決め

,ス

ケッチ法を用いて言葉を集める。 5 集 めた言葉 を もとに

,詩

を書 く。 6 創作 した詩 を発表す る。

(27)

実践

2

対 象 :兵庫県

M市

S小

学校 第

3学

2組

児童33名 期 間 :平成

27年

10月 20日 ∼10月 28日 全

6時

間 教 材 :「わた しと小鳥 とすず と」,「山のてっぺん」(光村図書 三年・上 わかば) 単元洛 :楽 しく詩を読 もう。楽 しんで詩を書 こう。 学習活動 「わた しと小鳥 とすず と」を読む。 「山のてつぺん」を読む。 創作 した詩を発表す る。 第

2節

実践1の実際と分析,考察 第

1項

実践

1第

二次第

4時

の実際 実践

1の

第二次第

4時

,日

標を「詩の題材 を決めて様子を思い うかべ

,言

葉を集める ことができるJに設定 し,子 どもの書きたい題材について,ス ケ ッチ法 を用いてじつくり, 多角的に捉えさせ

,言

葉で描写 させていつた。言葉で表現するにあたつて

,前

単元で学習 した擬音語や比喩表現を使 うことを提示 した。スケ ッチ法で使用 したワークシー トは

,図

8に

示す。 子 どもの書 く詩 (児童詩

)は ,生

活の申で捉えた感動 を表現 した詩である。 よつて

,五

官で題材 を提 えるだけでなく

,題

材 に対す る思いや考え

,感

想 を書きとめられるように, 六つのカテゴリーを設けた。作品

3は

I児が

,作

4は

Y児

,実

際に書いたワークシー トである。使用例 として示す。 スケ ッチ法に続いて第

5時

では

,ワ

ークシー ト①をもとに

,下

書き

,清

書 と詩を書く活 動 を行つた。

8

スケッチ法ワークシー ト①

(坂

表 1  詩の分類  (坂 本,2016) 現代詩 少年詩 児童詩 作 者 お とな (詩 人 ) お とな (詩 人 ) 子 ども (児 童 ) 対象読者 お とな ,自 分 自身 を 中心に 子 ども 小学校で行 われ る詩創作の指導は,児童詩創作指導 と言えよ う。では,子 どもの作 る詩 , 児童詩 は どういった詩 なの力、 石 田は児童詩 について ,「 児童詩 は ,子 どもの 目や耳で とらえた感動 を直裁なことばで表 現 した もので あ り ,詩 人のよ うに芸術性 をね らつて推敲 し
表 2  児童詩教育の教育的意義の比較  (坂 本,2016) 江 ロ 日本作文の会 ①   日本語の表現性について ,徹 底 した指 導ができるから ②   認識能力を伸ばすために ③   現実から学ぶために ④   学級経営の方法として ⑤   すこやかな子 どもを育てるために ⑥   児童文化の創造として 日本語の表現性についての指導認識力を伸ばす ものの見方・感 じ方についての指導 子 どもがどんなことに感動 している②③④かを知る⑤ 学級経営の方法 として活用⑥ 生活指導に役立てる⑦ 子 ども文イ

参照

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