岡山大学許放 ・放学教育学会誌
『パ ピルス』第1号 (1994年 )21貰〜26頁
自ら学ぶ意欲 を育てる指導のあ り方
‑ 6年 「立体」の指導 を通 して ‑
深 井 文 雄
岡山大学教育学部附属小学校
研究の要的
学習指導要領 にお いて 「自ら学ぶ意欲の育成」が示 され ている。これ は ,今 までの算数の授業が 「今 日か ら,○○の勉強 ですよ」 と教師の方 か ら誹題を与 え,それ を子 どもたちが追死 してい くとい うス タイルが多 かったという反省があるか らであろ う。しか し,教師が何 も しないでも 子 どもたちだけで 自ら学んでいくわ けではない。子 どもが 自ら学ぶため には ,教師はいったい何 をすればよいのかが大切になって くる。
そこで ,この研究 では子 ども自ら算数 を学ぶ意欲 を育てるには教師が どのよ うにかかわ っていけばよいかを,6年 「立体」の実演授業 をもと に究明する。
1 研究のね らい
今までの算数の学習では
,
「いかに問題を 解 くか」といった問題解決能力の育成が重視 されてきた。問題解決能力の育成そのものは 大切なことであるが,
「問題」を教師か ら与 えている限 り,
「自ら学ぶ意欲」は育 ちに く い。
「いかに問題をみつけるか」 とい うこと か らスター トしな くてはな らないであろうO つまり,単元でいえば媒入時が 「自ら学ぶ意 欲」 と大き くかかわ っていると考 えられる。では ,尊入時にゲーム的な要素などを取 り 入れて,子 どもが興味をもって学習に取 り組 むようにすれば
,
「自ら学ぶ意欲」が育て ら れ るのだろうかOゲームをす る意欲でな く算 数を自ら学ぶ意欲につながっているか ,また, その時間だけの単発的な意欲 ではな く単元を 通 しての意欲になっているか ,の2点か ら考 えてみるとゲーム的な要素だけに報るのは十 分 とはいえないであ ろう。そこで,木研究では ,算数 を自ら学ぶ意欲
を育てるために ,また ,その意欲が単元を通 して持続できるようにす るためには ,教師は i#入時でどのよ うにかかわ っていけばよいの かを
,6
年 「立体」の精薄 を通 して明 らかにしたいと考 えた。
2 単元の課題づ くりを重視す る
子 どもたちは ,新 しい単元の入 り口では , 何 を学習すればよいのか分か らず不安 でいっ ぱいである。このよ うな状態 では ,自ら学ぶ 意欲は生まれてこないであろ う。
そこで ,操作や斌無をした り,既習事項を 活用 した りする中で ,未習の内容にふれさせ ることによ り
「
〜を学習 したい」 と単元の課 題 をつかむ ことができるようにす ることを重 視 したい。それは ,単元の課題づ くりを重視 す ることによって次のような効果が期待でき ると考 えるか らであ る。○自ら単元の課題 をつかむ ことができる 教師が 「今 日か ら〜の勉強をします よ」
と一方的 に単元の課題 を与 えることもでき るが ,その裸居 は子 どもに とって 「押 しつ け られた課題」にす ぎない。操作や観察 を した り,既習事項 を活用 した りす る中で , 未習の学 習内容 にふれたとき知的好奇心が かき立て られ ,子 ども自ら
「
〜 を学習 した い」 と自分が追究 したい課題 をつかむ こと ができる 。○学習意 欲 をかき立てることができる 子 ども 自ら単元 の排塵 をつかむ ことがで きるので ,その道 死は子 どもの内発的な学 習意欲に支 えられ ,意欲的 な過死が ぐきる 。
○学習者欲 を持続 す ることができる 1つの課題 を解 決 した ら,それ で終わ り とい う単発的な学習になることはない。そ れは ,操作や観無 を した り,既習事項 を活 用 した りしてい く中でふれ る未智の学習 内 容 が ,その単元の学習内容 を見通 したもの になっているか らであ る。1つの課題が解 決 しても単元の練感 をもとに ,次に追究す べ き新 しい妹題 を兄いだ して ,単元の練磨
を追究 し続 けることができるQ
3 子 ども 自ら 「立体」の魂塵 をつかむため の教師のかかわ り
次のよ うな指漣の工夫をす ることによ り, 子 どもは立体の性質 の一端や概略をと らえや す くな り
,
「もっと詳 しく調べ ていきたい」 とか 「自分 でもこん な立体 を作 ってみ たい」とい う思いか ら 「立体」の課題 をつかんでい くと考 えて いる。
(T,J取 り上 げる立体 を吟味す る
取 り上 げる立体 は ,日常 日にふれ る機会 の多い看板や建物 などに使 われ てい るもの を取 り上 げるよ うにする Oこれによ り,立 体模型を身近 に感 じることができるよ うに
な り,適 死に必然性が生 まれ る。
また ,立体の性質 を追究 していきやす い よ うに複雑 な立体 は避け ,底面が正三角形
・正方形 ・円の柱体 と錘体 ,それ に球の基
本的な7種類の立体 を取 り上げるよ うにす る。
②仲間分 けを通 して観察 させ る
7種煤 の立体 の写真 を概観 させ ,それ ら を理想化 した立体模型 と対応 できた ところ で ,似 たような立体があ ったことか ら,
「これ らの立体 を仲間分 け しよ う」 とい う 木崎の課題 を決め るよ うにす る 。これ によ
り
,
「先 が とが っている形 とそ うでない形」 とか 「平面 ばか りでできた形 と曲面 が混 ざ っている形」 とい うよ うに ,仲 間分 けを し なが らそれぞれの立体 の構成要素 に着 日で きるよ うになるO③手に とって観察 できるよ うにす る 観察す る立体 は ,一人一人 に配布 し,辛 にとって観察 できるよ うにす る Oこれによ り,目でみただけでははっき り分か らなか った面の様子 (平面 ,曲面)や全体 の形
(とが っている) も感触 を通 して分か るよ うになる 。
4 指尊の実際
(1)単元 第6学年 「立体」
(2)目標 (第1時)
身近 なところにいろいろな立体 があ る ことに気付 き ,それ らを仲間分け してい く中で ,立体の形に着 目 した り,囲まれ ている面 に着 目した りして立体 の性質 の 一端や概略 をと らえて
,
「柱のよ うな形 や先が とが っている形を調べ てい こう」とい う単元の課題 をつかむ ことが できる。
(3)授業 の展開 (第1時)
建物や 看板 な どの写真 を概観す る 。
よ く見か ける建物 や看板 な どの写真 を提示 し,概観させ る。
‑ 22 1
C この看板は ,家の近 くにあるよ。
C シンフォニー ビルだ。丸いか らす ぐ分 かるよ。
写真の建物や看板 が一通 り概観できたとこ ろで ,これ らをまとめて 「立体」と呼ぶこと を知 らせるようにす る。
‑‑‑I‑‑‑‑‑1一‑I II‑ ●一一 一一一 1‑I‑‑‑‑A ( l
写すの立体 を理想化す るo ■ 立体模型 を取 り出 しなが ら
,
「この模型と 似た立体が写真に写 っていたよね」と問いか ける。すると,子どもたちは 「もっと写真を よ く見せて !」 と言いなが ら,次のように写 真の立体を理想化 して立体模型 と対応 させて い っ丁二。+ . 二 : 一 編
ド.Jl・・,千
‑ 0
Fは仙川劃止肝p j A叩 踊 叩 「く
写真と立体模型が対応できたところで
塊と 銀
のように似ているものがあ ったことか ら,
「立体を仲間分け しよう」 と い う本時の課題 を決めていった。' 7種煤の立体 を仲間分けするo
l l
1
手にとって観療できるように,7種籾の立 体模型を一人ずつに与えると,子 どもたちは 自由に仲間分けを始め ,次のように仲間分け を していった。
( 仲
間分 けA )
射
. L t
.t F・ Å
子ど
も
間だ
そ と し 考 て, え 残 た 。 った
が似ているなと思った も先がとがっているので仲
は箱のような形なので仲間に し,どち らの仲 間 にも入らない
0
を別の仲間と考 えたo (仲間分 けB)
どれ とどれが仲間になるかなと,しばらく 立体をさわ っていた子 どもは ,
く範がることに気付 いたD
他の立体 はどうかなと転が してみた ら
粧
とに気付いた。そして ,残 ったÅ は 横 に し た ら よ く 転 が る
あと 珠
こ
用叩
を 別 の 仲 間 と 考 え た
(仲間分 けC)
立体模型で家の形 を作ろうとしていた子 ど を重ね るうちに底 面の形が同 じであることに気付いた。同 じよ
:・.'
肘
叩 も 仲 間
と考 え た 。 そ し て , ま た
別の仲
間 として
, ? +
・iを考えた。仲間分 けの理 由を話 し合 う。
それぞれが考 えた仲間分けを発表させ ,そ の理由を話 し合わせ なが ら,立体の構成要素 に 目を向けるようにす る。
C ぼ くは ,ぱっと見て
と
Å は 先 がとが っ て い る の で , 仲
間に しました。そして
,
と
0
銅
はとがっていない仲間で は丸い仲間に しました
C 同じ仲間分けですが ,理由が適 います
蝕と 鹿t r i
転 らこ ・: みた ら三角だけど
J 劃劃劃齢 rj‖一
… 朋 膿 と は横からみて四角です
は円に見 えるので3つのグループに分け ました 。
‑ 24‑
T 全体の形をみた り,横 か らみた りした ら,この3つの仲間になるんだね 。 C ぼ くは ,上か らみて決めました。
三角形に見える仲間と正方形に見 える仲 間と円に見える仲間です 。
C 似ているんだけど, の仲間に しました。
0
は ,どこか らみても円だ
けど, 他の形は ,下 (底)だけ同じだか らです 。 T 見方 によって ,仲間がちがって くるんですね 。
C わた しは ,別の分け方 をしましたo
は
1番 よ く転が る形でA
は横 にした ら転がる形で 残 りの形は屯が りに くい形です 。 C ぼ くも同じよ うに仲間分けをしましたo
Aは全部が丸 く
は横だけ丸 くて ,残 りは丸いと ころがあ りません。
このように ,子どもたちは丸 くなっていて よ く拡がるという面の特徴を発哀 しだ したの で , 「平面」 「曲面」の言葉 を指港 した。
単元の課題 をつかむ.
子 どもたちが ,全体の形や構成要素 に着 目 して ,立体の性質の一端や概略をとらえてい ったところで , 「立体は ,見方によっていろ いろな仲間分けができることが分かってきた
のだけれ ど ,立体の ことはも うよ く分かった かな。」 と問いかけるo
C もっと他の立体のことも調べてみたい です o
C 自分でもこんな立体を作 ってみたいで す 。
C まだ他にも特徴があるかも知れ ないの で ,もっと詳 しく調べてか ら,作ればい いと思 います 。
T これか ら勉強 してい くことが ,もう決 まりそ うだね 。
C 「立体のことをもっと調べて ,自分で 作れるようになろう」がいいと思 います 。 このようにして ,単元の練題 を子 ども自ら 決めてい くことができた。
(4)その後の展開 (第2時以降)
子どもたちは単元の許題 をもとに, rまず , 柱のような形か ら詳 しく調べ よう」 と前学年 までに学習 した箱の形 ,直方体と似ている柱 のような形か ら追究 を始めた 。その中では , 分解 L,て構成要素を確かめた り,展開図をか いた りしなが ら柱体の性質の追究を者欲的に 進めることができた 。
錘体の性質の追究 では ,柱体の学習 を生か して自らその時間ごとの課題 を決め ,意欲的 に追究 してい くことができた 0
5 まとめ
本研究では ,自ら学ぶ意欲 を育てる指尊の あ り方 として単元の排球づ くりを重視 した指 導 を試みた。
単元の課題づ くりを重視す ることによって ,
「自ら単元の課題をつかむことができ ,学習 恵欲がかき立て られ ,その意欲も持続できる」
と考え ,第6学年 「立体」において指導方法 を工夫 してきたo指溝 を終 えて ,考 えていた とお りの効果があったかを ,その指導方法も 含めて考 えてみたい o
○ 自ら単元の課題をつかむことができたか 身近な建物などの写某を概観 し,理想化 し た立体模型 を仲間分けすることによ り,立体 の性質の一端や概略がとらえられると考えたo
lつの教師用立体模型を見ただけでは 「先の とがった形 ,箱のよ うな形 ,ポールのような 形」のような全体の形にしか 目を向けないが , 一人一人が立体模型 を自分の手でさわ りなが
らの観察ができたので
,
「よ く範がる面がある」 といった面の特徴も気付 くことができた。
このように して ,子どもたちは立体の性質 の一端や概略をとらえて くるが ,はっき り分 か ったとはまだ言 えないので 「もっと詳 しく 謝べたい」 とか ,自分でも作 りたいという欲 求か ら 「作れるようになりたい」 とい う単元 の派題を自ら決めることができたと考 えるD O学習昔欲 をかき立 て ,持続することができ
たか
「もっと詳 しく調べて ,自分で作れ るよう になりたい」という単元の練成を自分で決め ているので,追究に必然性があ り,学習も意 欲的であったと感 じているDまた ,その後の 展開にも書 いているように ,柱体の性質の追 究 では単元の課題に振 り返 りなが ら1時間1 時間の課題 を決め ,意欲的に取 り組む ことが できた。さ らに ,錘体の性質 を追死では ,柱 体の学習 を生かして 自らその時間ごとの課題 を決め ,よ り意欲的な取 り組みができたとい う感触を得 ている。
以上のことか ら,単元の課題づ くりを重視 す る指港を工夫することによって ,自ら学ぶ 意欲は育て られると考える。
(平成6年3月30日受理 )
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