単元終了後感想文の内容分析結 果のグラフ
ネガテ ィブ
図 21
実際の創作場面では,「何 を書いた らいいのか分か らない」,「書 くことが思いつかない」
と
,悪
戦苦闘す る姿が見 られた。だか らこそ,書
き終 えた ときの 「書 けて うれ しい」 とい う内容の感想 が一番多かったのだ と推測 され る。「技法を使 うことが難 しい」については,指導不足が言 えよ う。「行分けがわか りづ らい」とい う児童のつぶや きを拾い
,全
体に 「行 分 け」 についての指導 を行 つた。児童の書いている詩な どを実際に提示 して指導 を行 うの ではな く,日
頭で説明す るだけに留まつて しまつた。児童の技法に対す るもや もや した状 態 を改善 しよ うとい うよ りは,創
作時間を多 くとりたい とい う思いで,技
法の時間を縮小 し,児
童 をないが しろにす るよ うな指導になつていたよ うに思われ る。実践2で
の詩創 作 指導の 目的が,フロー理論 を用いた詩創 作指導の検討であるとしても,それは,「楽 しんで 詩 を書 く子を育てる」ためであることを忘れてはいけない。詩の要素 として理解 しておい た方が良い 「行分け」な どについて,児
童 に理解 させ,詩
創 作で活かせ る力 を養 つてい く こ とも大切である。実践
2の
実践後,日 にちを置いて行つた事後 アンケー トで,改
めて,「今後 も詩創 作 を続 けたい と思つているか」について,児
童 に質問 した。アンケー ト③ 「また詩を書 きたい と 思いますか」の問いに, 4「
そ う思 う」, 3「
どち らか といえば,そ
う思 う」, 2「
どち ら か といえば,そ
う思わない」, 1「そ ぅ思わない」の4段
階評価 で回答 を求めた。アンケー ト結果か ら, 4の
「そ う思 う」を選んだ児童79%(33人
中 26人)と , 3の
「どちらか と いえば,そ
う思 う」 を選んだ児童21%(33人
中7人)を
合 わせ ると,33人
全員が,詩
を書 くことに肯定的であることが分かつた。図23は ,アンケー ト③の結果 を集計 し
,グ
ラフ 化 した ものである。③ また詩を書 きたいと思い ますか。
│
﹁
︱
︱
︱
︱
︱
︱
︱
︱
■そう思う
.どちらかとぃえば、
どちらかといえは、
●そう思わない
そう思う そうおもわない
■はい ■いいえ
図 24 アンケー ト
C卜1の 回答結果グ 図 23 アンケー ト③の回答結果グラフ
ラ フ
実践
2第 6時
での感想の中で,「また書きたい」と述べていた児童数6人
を大きく上回る 結果であつた。肯定的な回答が集まつた理由として,ア
ンケー ト⑤‑1,⑦
‑1の結果に表れ ているよ うに,詩
を書き終えたときの充実感や,詩
を書 くことの楽 しさを感 じているか ら だ と考えられ る。アンケー ト⑤‑1,詩創作後に充実感を感 じたか どうかについての問いに,児童全員が「は い」 と答え
,充
実感 を得ていることが分かった。また,ア
ンケー ト⑦‑1「
詩を書 くことは 楽 しいか」に対 しても,100%「
はい」の回答であつたことは,上
で述べた とお りである。アンケー ト⑤‑1の回答はグラフ化 し
,図
24に示す。以上
,実
践2の
分析・考察か ら,児
童の感動を引き出す課題 を設定することや,友
だちか らのフィー ドバ ックによつて
,楽
しさを感 じなが ら,詩
創作に取 り組む ことができたこ と,創
作課題の水準を上げなが ら段階的な課題 を設定 し,取
り組ませ ることだけでは,認
識力の成長がみ られ るとは言い難いこと
,何
かにな りきつて詩 を創作する課題を通 して,ものごとのいろいろな見方ができて, 自由に表現できることに気づき
,ま
た詩を書きたい と思 う気持ちが生まれていることが分かつた。実践2で
の考察を次のようにまとめる。・継続的なフロー状態を生起 させ るために
,詩
創 作活動の水準 を上げなが ら段階的に課題 設定 して取 り組 ませ るだ けでは,認
識力が 自己成長 してい くとは言い難 い。・創作活動で感 じた 「楽 しさ」は
,次
の詩創 作へ向かお うとす る思いを促す。第
4節
実践の成果 と課題実践
1, 2を
振 り返 り,実
践の成果 として,次
の二つが挙げられる。一つ 日は,ス
ケ ッ チ法の有効性を確認できたことである。詩創作において,対
象を捉えようとするとき,ス
ケ ッチ法の五つの視点
,五
官を働かせて 日で見る,触
つてみる,味
わってみる,嗅
いでみ る,聞
いてみることで,物
事を多角的に捉えようとす る意識付けにつながっている。 もの の見方0考え方,認
識方法の基本 としての,対
象を捉える力を養 うことになるのである。二つ 日は
,フ
ロー経験の積み重ねが,次
のフローヘの前向きな態度を促進する,言
い換 えれば,学
習活動での 「楽 しさ」が,児
童を意欲的に次の活動へ向かわせ る,と
い うこと を実感できたことである。その様子が顕著に表れていたのがF児
である。実践2に
おいてF児
は,詩
を書 くことを伝 えると,人
一倍抵抗感を示 していた。創作活動(1)では,「書か なければならない」,「書かされている」思いで取 り組み始めたF児
であるが,書
き終える と,「もう一つ書きたい」といつて,他
の児童 よりも長 く創作活動に入つていた。結果,詩
創作活動全てを終えると
,学
級で一番多 くの詩を書き上げていた。事後アンケー トでもF
児は,詩創作に対 して肯定的な回答ばか りであつた。「楽 しさ」が,他律感のあった活動を,
自律的
,
自己目的的に取 り組みたい活動に変容 させていった。F児
だけでなく,他
の児童も同 じよ うにいえるだろう。事後アンケー トの結果
,児
童全員が詩創作を楽 しいと思い,また詩 を書きたい と思 う傾 向にあることが分かったか らである。
実践
2に
おいて,「指導にフロー理論 を用い ることで,創
作能力の 自己成長 を促す」とい うことを,実
証す るに至 らなかった。 その理 由として,創
作活動の計画 に課題があるこ と がわかった。創作活動(1),(2),(3)は
,た
だ活動水準だけを意識 した創作活動計画だつた と言 える。図25は
,チ
クセ ン トミハイ による 「フロー経験による能力成長モデル (図 5)」 に実践 2 での創作活動 を照 らして,モ
デル化 した ものである。 このモデルによって,実
践2の
創作 活動の偏 りを説明す る。挑 戦
∞
(高)
(イ
握 氏
)0
B6'
η
7 4ジ
不 安B4' B5 B6
創 作 活 動 ③
I〕2
創作活動 B3
("B4
1 B2
退 屈創 作活動(1)
0(低
) 能 力 (高)∞
図
25
フロー経験 による能力成長モデルに照 らしてモデル化 した,実
践2で
の創作活動モデル
(坂
本,2010
稿者 は
,創
作活動 ごとに,創
作能力・認識力の向上が図 られ,向
上 した能力に適 した挑 戦水準 を上げた創作活動 を設定す ることで,再
び能力の向上が見 られ るとい う,Bl→
B2→B3→ B4→B5→ B6→ B7の ルー トでの能力成長を想定 し
,詩
創 作 あ りきの計画 を立ててい た。実際の児童の変化は,Bl→
B2だけでな く,Bl→
Bメも存在す る。能力水準 よ りも挑戦 水準が高 く,活
動 をこなすには,まず能力の向上を図 らなければな らないパ ター ンもある。Bl→B2'→B3→Bど→B5→B♂→B7の 自己成長ルー トである。Bl→B2'→B3→ B4→ B5→B6'→
B7と い うルー トも考え られ る。活動水準ばか り上げて
,取
り組ませていても,能
力成長は図 られないこ とも理解 しておかなければな らない。Jヒ戦す る課題 の水準を上げるべきなの か
,能
力水準 を上げるための指導を設定すべ きなのか,児
童 の状態を見極 め,活
動 を計画してい くことが
,大
切であろ う。終章
本研究の成果 と今後の課題
第1節
研究の成果
楽 しんで詩 を書 く子 を育てるための指導のあ り方について研究 を進 めてい く中で
,チ
クセ ン トミハイによるフロー理論 に出会 えた ことは
,大
きな成果 である。チクセ ン トミハイ に よつて示 された,楽
しさを感 じる要素や,楽
しさ (フロー)が
生 じる活動の条件に,詩
創 作 を対応 させ
,指
導のあ り方 を検討す る時の道筋 を見出す ことがで きた。 また,内
発的 動機づ け としての「楽 しさ」によつて,活
動 を 自己 目的的 な ものに し,さ らなる楽 しさ (フロー
)へ
と向かわせ ることや,フ
ロー経験の積み重ねが,能
力 の 自己成長 を促す とい う,自己成長モデル を用 いて
,詩
創 作の指導計画 を立て る参考 にす ることができた。そ して,実践 を通 して
,詩
創 作 を楽 しんでい る児童の声 を聞 くことがで きた。詩創作に楽 しさを感 じ,さ
らに楽 しさを求めて詩 を創作 していこ うとす る姿によつて,フ
ロー理論が詩創作 に おいて も成立す ることを示す結果 を得 られた。第
2節
今後の課題本研究では
,石
田が整理 した詩創 作指導の内容 を参考 に,認
識 の指導 (考えを深 める指 導,感
動 を体験す る指導,想
像 を豊か にす る指導)に
焦′点を絞 り,創
作指導のあ り方 について研究 を進 め,実践を行 つてきた。実践では,ス ケ ッチ法を取 り入れて創作活動 を行い,
スケ ッチ法の認識指導の有効性 を確認す るに至ったが, どの よ うに活用すれば一層の指導 効果 を上げ られ るのか
,ま
た,ほ
かの指導法 を用いて詩創 作指導を行 うことはできないの か,な
どの検討を行 うには至っていない。また,詩
創 作 においての表現の指導,さ
らに,詩創作 0児童詩教育 の教育的意義である
,日
本語 の美 しさや表現 性についての指導につい て も,考
察す るに至 ってお らず,更
な る研究が必要である。楽 しんで詩 を書 くための要素は,もの ごとを多角的に捉 える力や
,認
識力だけではない。他 の要素 について も考察 を重ね
,楽
しい と感 じなが ら取 り組む活動の中で,児
童 の能力成 長 を促す ことのできる,よ
り充実 した 「楽 しんで詩 を書 く子を育てる指導」について研究を続 けてい くことを