詩作品にかんする読み方教育試論 : 比喩(直喩・隠喩)の指導をとおして
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第48巻. 平成 9年8月. 第1号. fHokka i do Un i i i lo Se i I J t t t ourna ver s on( c on1C)VO yofEduca -48 .1 ,No. Au郡1 t s ,1997. 詩作品にかんする読み方教育試論 -- 比蹴 (直嚇・隠唆) の指導をとおして -- 三. 1. 上. 勝. 夫・ 田. 代. 和. 恵. はじめに. 詩作品の読み方指導においては, これまでその教育内容についてはあまり議論されなかった。 したがって その授業では, 個人的な印象やイメージを発表しあったり, 教師の解釈を披涯するようなものが多かったの である。 しか し, そ もそ も な ぜ そのよう な 印象やイメ ー ジをも てる の か, なぜ そ のよう に読 める のか, そ の. 根拠こそあきらかにしなければならないはずである。 つまり, なぜそのように読めるのかを教える必要があ る の だ。. 最近の読み方指導論においては, 表現の 「手段」 を教育内容の中心とする論が多く見られ, さまざまな文 学の手法について検討された結果が読みの 「分析コー ド」 として集積されている。 しかし, 作品に表現され た .内容こそ読みの内容であっ て, その読みを成立させるのが表現方法なのである。 したがって本研究では, 表現内容と表現方法を詩作品の読み方指導における教育内容と考えたい。 この立 場から, 詩作品の読み方指導におけるひとつの試論を提出したいと思う。. 2 研究方法 本研究をすすめるにあたって, 詩の表現方法のひとつである比職をとりあげた。 佐藤信夫氏によれば比職 ) た と える こ と によ て ふ だん は忘 れて い は 「発 見 的認 識 の 造 形」 とい う 役 わり をもつ, と 説明 さ れる1 っ , 。. たか思いつきもしなかっ た斬新な認識を, 読み手に提示する表現方法なのである。 また, 詩人吉野弘氏は, ) と いう 詩 作 にお い て 「結局 は無 意 識 のう ち に, 最 初 の 困惑 の 中の, 本質 的な も の を探 している の です2 。」 。. 詩作品中の具体的なことがらに託して,間接的に人間の真実,ことがらの本質を語っているのである。つまり, )のひとつとして比嫁があり 詩作品そのものも「異化 の所産といえるのである 文学特有の「異化」の手法3 」 。 , そこで本研究では, 比院を詩のひとつの有力な表現方法と考え, 比嫁解釈をとおして, 表現された内容を 読みとるという方法を模索する。 つまり比除解釈の指導をとおした詩作品の読み方教育の試論である。 その ためには, まず比院理論をあきらかにする必要がある。. 3 比嚇理論 比=卿ま一般に, 類似性にもとずく直職・隠蹴と, 関連性にもとずく換職・提嚇にわけられる。 本研究では, 直 職 ・ 隠瞭 につ い て 考察 して いる。 本稿 で は, た とえる も の を職 辞, た とえ ら れる もの を主 辞 と しておく。 「 「 「 ま た, 当 分 のあ い だ 「×」「Y」 を 語句 と考 え, 主 辞 は 「X」 , 職 辞 は Y」 であ らわす こ と に し, よう だ」 似 I.
(3) . 三. 上 勝. 夫・田 代 和. 恵. ている」 と い っ た一 般 に直除 をあ ら わす とさ れる 語を, 指標 と 呼ぶ こ と にする。. 3ー1. 比職の意義. ) ところ がこ 佐藤信夫氏は伝統的レトリ ック観として, 「技術体系」 「説得効果」 「修辞効果」 をあげる4 。 れらの レトリ ッ ク 観 は, 反 レ トリ ッ ク 観 である いう。 つ ま り, よ けいな飾 り にす ぎない, ず ばり と真 実 を語 っ た ほう がよ い, という 考 え方 である。 しか し実 際は, ず ばり と 語る こ と が でき ない か ら, 「~ の よう だ」 と. か「~にも似て一などと比職を使うのである。説得効果も修辞効果もふくめて,ようは真実をわかりやすく(効 果的に) 伝えるための手段と考えたい。 では, なぜ比職をつかったほうがわかりやすいのか。 ま だ名 ま え のつ い て な い も の に 「そ れはY に似 て いる」 と いう 場 合, 当 然 「Y」 の ほう がよく 知 っ ている こ と が らで な け れ ば 説 明 にな らない。 つま り, 比 除 はわか りや す いも の を ひきあ い に だ して 説 明 して いる の である。 未 知 な も の がよく 知 っ ている 「Y に似 ている」 から わ かる の であ る。 つ ま り 「X はY に似 て いる」 という 場 合, 「X」 と 「Y」 には類 似 性 があ る の である。. さらに佐藤氏は, 比= 爺の役わりに新しい視点を導入する。 先に述べた 「発見的認識の造形」 である。 主辞 と職辞とのあいだのあらたな類似性の発見をレトリ ックのおもしろさのひとつと考えた佐藤氏の理論は同意 でき.る。 この こ と につ い て い え ば, 既存 の こ と ばで 説 明で きる は ず な の にあ え てた とえる こ とこ そ 「発見 的. 認識の造形」 であると考える。 類似点をもつことをわかること自体が発見なのである。 したがっ て, ものごとをよりわかりやすく効果的に伝えることが比職の使われる意義であり, 同時に読み 手に発見的認識を提示する のだと考える。 3-2 直蹴理論の諸相 先に述べたように, 比除はわかりやすく効果的に伝えるという役わりをもつ。 したがって, 直P 読も, もっ ともわかりやすいタイ プ, すなわちたとえる根拠が明示されているものを基本と考えるのが妥当であろう。 利沢行夫氏も, 「ように一 型のよう に動詞や形容詞・形容動詞 といっ た述語を修飾するものを基本としてい ) このタイ プを直職の基本とした点は評価できる なぜなら 主辞.職辞だけでなく除辞が修飾する述 る5 。 。 , 語部分について考えるきっかけを与えてくれるからだ。 この述語部分がとくに形容詞であった場合, それは い わゆる 「根 拠」 となる。 した がっ て, 根 拠を 明示 して いる 「よう に一 型 こそ が直除 の基 本 と考 える の である。. では, 実例をあげて直歌解釈の過程について考察していく。 なお, 例文の下線は引用者によるものである。 1 ( ) 大空 にむ か っ て. ま っ す ぐにの びた 太 い幹,. けや き は, 見 る か ら にたく ま しい姿 を して いま す。. それに, あの樹皮, 見た目にはなめらかそうですが, なかなかどう して, あれは, 鋼鉄のように交&潟のです。 (青木幹 「けやき」 第三連) 「 「よう に 型 の直 除 で 述 語 が形 容詞 のタイ プである 主 辞 は 「樹皮 一 」 。 , , 嫁 辞 は 鋼 鉄」 である。 しか し,. 実際にこの例文を読んだときに,もうひとつのむすびつきに気がつくだろう。つまり, 主語「樹皮」と述語「か たいJ のむす びつきである。 じつは読み手は, 主辞と嫁辞とをぬきだしてむすびつけることだけでなく, 文 章の理解としては主語と述語をむすびつけているはずなのである。 したがって, 主語と述語の結びつき<樹 皮がかたい>ことと, 主辞と欧辞の結 びつき<樹皮を鋼鉄でたとえる>ことという二重の把握をしているこ と になる。 も っ とも こ の場 合 は, 根 拠 が 「か たい」 と 明確 なの で, 二 重 の把 握 とい っ ても 困難 さ はな い。 <鋼 鉄 がか 2.
(4) . 詩作品にかんする読み方教育試論. たいよう に樹 皮も か たい>, と自 然 に解 釈 で きる。. ( 2 ) そ んな にたく さ んのゆ め に包ま れて, 地 球 は, シ ャ ボ ン玉 のよう に 光 っ て いる だ ろう。. (羽曽部忠 「希望」 第二連) この場合も, 主辞と除辞, 主語と述語のふたつのむすびつきがある。 しかし,( 1 )とはちがっ てたとえる根 拠 は明示 さ れて いな い。 どのよう に光る こ とな の か, と いう 疑 問 がの こる。 した が っ て, わ かり やす い職 辞 の解 釈 を主 辞 にあ て はめ て根 拠 をお ぎな い, < シ ャ ボ ン玉 のよう に虹色 に光 っ て いる >, < シ ャ ボン玉 のよ. うにあやうく光っている>, などと解釈するのである。 次 に 「X のよう な Y一 型 につ い て 考 察する。. ( 3 ) もみくちゃ に されながら ありがとう. ありがとうといいながら. 教だんに おしあげられて み んな を. みおろ して. 先生は もう一ど - - あり がとう …. と いっ た. におうような おかあさんの声だった 天から日がさしてきたような声だっ た (ま ど.みちお 「先生」 第三, 四連) 主辞と廠辞は明確であるが, たとえる根拠が明示されていない。 したがって, どのような声なのかがわか らないので, 根拠をおぎなう必要がある。 蹴辞 「天から日がさしてきた」 を解釈して, 主辞にあてはめて根 拠をおぎなうのである。 <日がさすとあたたかいよう にあたたかい先生の声>, <日がさすとあかるいよう にあかるい先生の声>, などとなるであろう。 解釈の貧しさは否めないが。 「ような一 型の場合 塚辞による被修飾語がかならず主辞なので 主辞 職辞のむすびつきは明瞭である , 。 , , した が っ て, こ の型 の 直 噛の 理解 にお い て, 主 語, 述 語の む す びつ き を 考慮 する こ と はな い。 しか し 根 拠 ,. が明示されていない場合, 読み手がおぎなう必要がある。 次 に 「X はY の よう だ」 型 につ い て 考 察する。. ( 4 ) 女ひとり 働いて四十に近い声をきけば 私を横に寝かせて起こさない 重い病気が恋人のようだ (石垣りん 「その夜」 第一連) 「XはYの′ ようだ」 型は主辞と職辞が主語と述語の関係でもあり明瞭である。 しかし, 根拠が明示されて いないので読み手がおぎなう必要がある。 ここでも, 職辞を解釈し主辞にあてはめるのである。 <恋人がい つ も い っ しょ にいる よう に, 重 い病 気 が いつ も い っ しょ にいる >, < 恋 人 がはな れ がたい よう に 重 い 病気 ,. がなかなかなおらない>といった解釈になる。 「XはYのようだ」 型は 主辞と職辞がそのまま主語と述語なので 直除解釈と文章の解釈が一致する , 。 , 3.
(5) . 三 上 .勝 夫・田 代 和. 恵. ただし, 根拠が明示されないので, 読み手は根拠をおぎなう必要がある ということである。 こ れま で, さま ざま な タイ プの直 職 の解 釈過 程 につ いて 検討 して き た。 こ こ でい える こ と は, 直欧 文 を理. 解するには, たとえる根拠をあきらかにする必要がある, ということだ。 なるほど, 比除は既存のこと ば以 上にわかりやすく伝える手段である。なぜ,そのようにたとえることができるのか,という根拠をあげてこそ, は じめ て 比 除 と して わ かり や す く 理解 で きる の である。 した が っ て, 根 拠 が明 示 さ れて いる 「「よう に」 +. 形容詞・形容動詞」 型がもっとも基本のタイプだが, 根拠が明示されていないものも多いし, 根拠が明示さ れないタイ プの直職もある。 その場合は, 職辞のほうがわかりやすく, かつ主辞と除辞は類似しているのだ から, 欧辞を解釈して, 主辞にあてはめるのである。 以上のことから, 直除は主辞と除辞が明示されていて, 根拠をあきらかにする解釈過程を経るといえる。 1 )の例 文 しか し, 根 拠 が 明示 さ れて い れ ば, 比 嫁の 解 釈 は必 要 な いの か, と いう 問題 がの こる。 た とえ ば( をもう いち どみなお そう。 主 辞 は 「樹皮」 で職 辞 は 「鋼 鉄」 である。 根 拠も 「かた い」 と 明示 している か ら, も っ と も わ かり や す い タイ プであ る。 直 除 と して は, 「鋼 鉄 のよう だ」 で じ ゅ う ぶ んな とこ ろ を, な ぜ わ ざ わ ざ 「鋼 鉄のよう にか たい」 と いう の か。. 愈は類似性を設定する ひとつには, 読み手にわかりやすいように, といえよう。 佐藤信夫氏によれば, 直P ) 主 辞 と職 辞の あ い だ に類 似 性 を見 い だ した詩 人 は その ふ た つ を 「似 ている と いう こ と が でき という6 」 。 , る の だ。そ れ が異 質なふ たつ であ れ ば, 読 み手 に受 け入 れがた い。だか ら根 拠つ き に した ともい える。 しか し,. それならなおさら根拠つきで比轍表現をつかう意味を問いたくなる。 はっきりいえるならいえばいいのだ。 「え だ先 は かたい とな ぜい わな い の か 」 。 三 上 は, 「ある こ と につ い て 語る と いう こ と は, 別 の こ と につ い て は 語 ら な い と いう こ と でも ある の だ。 ) 語 る こ と の可 能 な A と B のう ち か ら, A を 採 る と いう こ と は B を 捨 て たこ と だ か ら だ7 。」 と 述 べ た こ と が ある。 こ れ は, 物 語の 構 造 につ い て 述べ て いる の で ある が, 比 除表 現 にもあ て はまる。「鋼 鉄のよう に か たい」 という こ と は, そ の ほか 「か た い」 と いう 属 性 をもつ も の のな かか ら, 「鋼 鉄」 を選 ん だこ と になる。 そ れは, た ん に 「かたき」 を 表 現 したか っ た か らで はな い。 鋼 鉄の ほ かの属 性 「は がね色, 弾力 的, しなや か, が ん じょ. う, 重い」 が連想されるからに相違ない。 けやきの樹皮が, はがね色であること, 弾力的であること, しな や か で ある こと, がん じょ う である こ と, ず っ しり重 い こ と を, 読 み手 にイメ ー ジさ せる こ と が除 辞の役割. なのである。 とすれば, 根拠が明示されていても直職の解釈は必要なのである。 そして, このような読みは 直瞭の解釈だけにとどまらず, 詩全体の読みを深めることになる。 「けやき」 の第7, 8運をみてみよう。 ( 5 ) きみは, けやきの板を見たことがありますか。 けや き の 板もま た, ひ どく か たいの です。 いや, か たい だけで はあ りま せ ん。 よく かわ か して使 わな い と, 反 っ たり, 割 れたり, ね じれたり して, しま つ がわる いの です。 けや き は, け っ して使 いや す い材 木で はあ り ま せ ん。 この が んこ さ, こ れも, けや きの 持 っ ている個 性 の 一 つ な の です。 しか し, う で きき の 大工 が, この けや き を てい ねい に けずる と,. けやきは, そこに美しい木目を現してきます。 けやきの柱・ゆか板・家具, それらはみながんじょうですし, みがけ ばみがく ほど, 底光りする光沢 を放 っ て きます。 4. -.
(6) . 詩作品にかんする読み方教育試論 けや き が, どんな に充 実 した - 日 一 日 を, 自 分の 中 にき ざみ こ んでき た か, 神 秘 的で さ えある, あ の 木目, あ の年輪 が, そ れ を じゅ う ぶ ん に物 語 っ ている とい える で しょ う。 7連 で は, かた い だ けで は なく, が んこさ を けや き の個 性 の ひとつ である という。 先 に述 べ たよう に, け や き の樹 皮 が か たい だ けで は ない こ と を, 表わ して いる の であ る。 さ ら に, 8連 で は, けや きの 木目 の美 し さ につ いて 語 ら れる。 けや きの 樹 皮 が, は がね色 であ る, と いう イ メ ー ジが成 立 して いる からこ そ, 美 しさ がよ り 理解 で きる。 ま た, けや き の 樹 皮 す ら鋼 鉄 の よう に が ん じょ う だと いう 「読 み」 が, 「けや き の柱 ・ ・ 家 具, そ れ ら は み な が ん じょ う」 で あ る こ とを よ り わ か り や す く さ せる の で あ る。 「充 実 した一 日 ゆ か板{ 一 日一 も, 樹 皮 でイ メ ー ジさ れ た鋼 鉄のよう な ず っ しり と した 重 さ とな っ て, ず っ しり 充 実 して いる, とわ かる の で はな かろう か。. 以上のように, 直職の解釈は根拠が明示されていても, 必要なのである。 むしろ明示された根拠以外のイ メ ー ジを読 み手 に与 え, 詩 全体 の 「読 み」 をよ り豊 かにす る の である。. 3-3. 隠臨理論の諸相. ここ で は, 隠轍 の 理論 につ い て 考 察する。 一 般 に隠欧 は 「よう に」 とい っ た 指標 の ない も の と さ れている。. ) 実際は 「×はYだ 型はどのように解釈されるのか 登臨の基本と考える8 橋元良明氏は 「XはYだ一 型を= 一 。 。 実例をあげて考察しよう。 ( 6 ) わたしを束ねないで あ ら せ い とう の 花 のよう に 白い 葱 のよう に 束ね な い でく ださ い. わ た しは稲 穂. 秋 大地が胸を焦がす 見渡すかぎりの金色の稲穂 (新川和江 「わたしを束ねないで」 第一連) 「× はY だ 型 であ る 「わ た し が主 辞 「稲穂 が 除 辞であ り 主 語 であ り 述 語 でもある しか し実 際 」 」 一 。 。 , , 「 「 に わ た し」 は 稲穂」 で はな い と知る。 で は, どう いう こ と か。 そ の よう にいう 根 拠 を 問い たい。 そ こ で,. あとの文脈から, ここでの 「稲穂」 は, <束ねられていなくて自由だ>。 <豊かに実りのある存在だ>, と 解釈する。 したがっ て, <稲穂が自由なようにわたしも自由>, <稲穂が豊かに実りのある存在のようにわ たしも豊かに実りのある存在>, と解釈するのである。 これは, 前節の直職の解釈のしくみと同じ解釈過程 を経 て いる。. 先に, 直職は, 根拠をあきらかにする解釈過程をもち, 主辞と職辞が明示されているもの, と述べた。 こ の 場 合, 「わ た しは稲 穂」 は主 辞 と 疏 辞 で ある。 ま た, 実 際 は 「わ た しは稲 穂」 と いう 根 拠 と して, あ と の 文 脈 の 「読 み」 をあ て はめ て いる。 した が っ て, 「X はY だ一 型 は, 指 標 が なく ても 直 嚇 であ る と 考 える べ き である。 反対 に, 指標 がな い だけで 隠職 だと疑 わ ず にい た こ と がま ち がいな の である。. では, 隠職とは本来どのようなタイ プであり, どのような解釈のしくみをもつのかを検討しなければなら ない。 実際の詩作品のなかから検討しよう。 ( ) 冬の夜道は 月が出て 7 5.
(7) . 三. 上. 勝. 夫・田 代. 和. 恵. ずいぶ ん とあ かる か っ た. それにもまして ゆきずりのわたしの心には あ かる い 一 本のろう そく が燃え て い た. (津村信夫 「冬の夜みち」 第四連) こ れ は 「Y だ一 型 の 隠職 とさ れて き た が, 厳 密 にい え ば, 除 辞 「あ かる い 一 本のろう そく」 は主 語 である か ら 「Y一 型 とでも い っ た ほう がいい。 心 の なか に 「あ かる い一 本 のろう そく」 がある わ け がな い。 そ こ で こ れ が何 を た と え て いる か が 問 題 とな る。 (じつ は 「私 の 心 に は… も え て い た」 と いう 比 欧 も 指 摘 でき る。 こ と ばはな んと比 輪 的 なこ とか。 ) さ て, 主 辞 は何 か。 こ れ は 験 辞 「あ かる い一 本のろう そく」 か ら判 断 して,. 私のあかるい気持ち,あかるい希望,あたたかな気持ちなどであろう。その根拠が「あかるい一本のろうそく」 が示 している 「ろう そく は あ かる い, ろう そく はあ たた かい」 という 類 似点 な の である。. ) と述べる つまり 隠除 佐藤信夫氏は 「膜峨は相手に対してあらかじめ共通化した直観を期待する9 」 。 。 , は共有する根拠によっ て, 主辞を特定することを要求する比除なのである。 したがって, 隠味は主辞が明示 さ れて いな い の である。 主 辞 が わ かる こ と が, 隠脈 の解 釈な の であ る。. 隠除にかぎらず, すぐれた比除は読み手におどろきと納得をあたえる。 それは斬新な類似性を見いだした からにちがいないのだが, 読み手はどのように解釈するのか, 検討する必要がある。 次の詩をみてみよう。 僕 はま る でち が っ て. 8 ( ). 黒 田三郎. 僕 はまる でち が っ て しま っ た の だ. なるほど僕は昨日と同じネクタイをして 昨日と同じように貧乏で. 昨日と同じように何も毅病がない そ れで も僕 はま る でち が っ て しま っ た の だ. なるほど僕は昨日と同じ服を着て 昨日と同じように飲んだくれで 昨日と同じように不器用にこの世に生きている そ れ でも僕 はまる でち が っ て しま っ たの だ. ああ 薄笑いやニヤニヤ笑い 口をゆがめた笑いや馬鹿笑いのなかで 僕 は じっ と 眼をつ ぶる. すると 僕のなかを明日の方へとぶ. 白い美し 虜膜 がいるのだ 人 間のな か に蝶 がいる わ け はな い。 こ れ はな にかを た とえ て いる, と い え よう。 しか し, 何 をた と え て い. るのかは, 瞬時にはわからない。 読み手は 「ずれ」 の感覚を解き明かそうと, 考える。 そこで, 前の文脈に たち も どっ て みる こ と になる。 6.
(8) . 詩作品にかんする読み方教育試論. ああ 薄笑いやニヤニヤ笑い □をゆがめた笑いや馬鹿笑いのなかで 僕 は じっ と 眼をつ ぶ る 眼をつ ぶ っ て ニ ヤ ニ ヤ思 い 出す も の はな にか。 おお よ そ, 恋 人の こ と であろう。 「白い 美 しい蝶」 である。 しかも, こ の詩 は詩 集 『ひとり の女 に』 の な かの 一 篇 である。 蝶 は恋 人の こ と を たと え ている の だ, と わか. るのである。 つまり, 比嘘部分以外の文脈が, この比職の解釈を助けることになるのである。 隠轍は, 主辞 の発見が解釈となる。 しかし, 主辞を明示していないのだから, 斬新であればこそ読み手には困難な比壕な の だ。 した が っ て, 主 辞 を, 共有 の 根 拠や 文 脈上 か ら読 み と る こ と が必 要 な の である。. 4 比臨指導をとおした詩作品の読み方の指導過程 先に述べた比除理論をもとに, 比壕の指導過程を構想し, 詩作品の読み方の授業を試みる。 対象は澄川南 小学校の六年生二クラスで, 合計三時間五編の詩について授業をおこなっ た。 授業の目的は, 比輪理論の理 解と, 比除の解釈をとおした, 詩作品のより深い理解, である。 最初の二時間は直味と隠院について学習す る時間とし, それぞれ, -編は基本的な比職理論を学習し, 二編目で比除の解釈をとおして詩を読み深める という 授 業 を 試み ている。 したが っ て, 詩 作 品 の 選択 も, その 点 を 考慮 してある。 三 時 間目 は, こ れま で の ま とめ と して比 除 の解 釈 と詩 の 「読 み」 を深める の に じ ゅ う ぶ んな 時 間を保 障する ため に, -編 だ けに した。 なお, 授 業 を お こなう にあ た っ て, 授 業 書 『国 語 「詩 と 表 現」』 を 作 成 した。 こ れ につ い て は, 別 の 機 械 に. 発表したい。. <授業記録と分析> 三時間の授業のうち, 最後の一時間の比職に関する読みとりの部分を記録しておく。 (授業者は田代). 三好達治 祖母は蜜をかきあっめて 桃の実のやぅ に合わせた掌の中から 沢山な蜜をくれるのだ. 祖母は月光をかきあっめて 桃の実のやうに合わせた掌の中から 沢山な月光をくれるのだ. 【授業記録】 T. : じゃ あ ね, 問 いの 1 ばん を聞 い て み よう。 そ こ に 「よう な の た とえ」 がある よ ね。 な にを な にで , , たと え てる ん だ ?. C. : 手 を桃。 手 を桃 の実。 7.
(9) . 三 上 勝. 夫・田 代 和. 恵. T. :そうだよね。 合わせた掌のかたちは, どんなかたちをしているんだ?. C. : 桃 の 実 の よう な。 桃の 実。. T. :う ん。 ち ょ っ とや っ て みて。. C. ・ ) : (そ れ ぞれ, 手 を 合 わせ て み せ る。. T :宮越くん, どんなかたち? C. : (や っ てみ せる). T. :う ん。 み んなや っ てく れて いる。 こう いう ふう に, 合 わせ て いる んだよ ね。 ほたる を かきあ っ めて, こう いう ふう に して いる ん だよ ね。 (以 後, 省 略). 【分析} 直 職 の解 釈 につ い て は, ほ ぼ理解さ れて いる よう に思う。 「よう なの た と え」 と して 「桃 の 実 のやう な掌」 を 即 答 して いる し, 主 辞 と 瞭 辞 につ い ても, 的 を 射た解 答を して いる。. 【授業記録】 T. : そ した らね, 次の ペー ジを 開い てく れる ? 問い 2 っ てある しょ。 問 い の2 を読 んで みる け ど。 こ の詩 の な か に, 「祖 母一 の 詩 の な か に だよ, 「よう な の た と え」 があ っ た んで しょ。 で ね, 「よう な な しの た とえ」 もある っ て いう ひと とな い っ て いう ひと がいま す。 わた しが大 学で 大学 生 とい っ しょ に勉 強 した ときも,ある っ て いう ひと と,な い っ ていう ひと がい たの。み んな は どう 思う ?考 え て書い て み て。. C. : 「よう な な しの た とえ」 っ て?. T. : あ っ, そう か。「よう な な しの た と え」 はさ,「あ かち ゃ ん一 っ ていう 詩 をや っ た で しょ。 あ かち ゃ んを, か みさま で たと え て た ん だね。 よう な がつ い てなく て も た とえ っ てあ っ た で しょ。 そ の こ と だよ ね。 思 い 出 した? ごめ ん ごめ ん。. C. :あ あ 一 そ っ か。. T. : い い 質 問 だよ。. C. :《プリントに書き込み》. T. : わ た しが学 校 で勉 強 した とき は ね, わ た しも そう な ん です け ど, 「な い」 か な, と思 っ て, が ん ばっ て 発 言 した んです け ども。 み んな は どう で しょ う ね。. C. :《プリント書き込み》. T. : じゃ あ, 聞い て みよう かな。 こ れには 「な い」 と思 っ た ひと。. ) C : (だれも手をあげない。 な に, ひとり も い な いの ? み んな 「ある」 と 思っ たの? 「ある」 と 思っ た ひと。. C : (ほとんどの手があがる。 ) T. : あ っ, ち ょっ とま よ っ て いる な。 じつ はま よ っ て いる な。 じゃ あ, じつ はま よ っ て いる 杉 本さ ん。 も しか して, な い かなと 思っ たの ?. 杉本:あるような気がする… T. : ほか に, じゃ あ, み んな 「あるJ っていうひと?大槌くんは?. 大槌:あると思う。「沢山な蜜をくれるのだ」 というところと 「沢山な月光をくれるのだ」 という ところで, ホ タ ルは ひかる し, 月 光も ひかる しょ。 だか ら, ホ タ ル を月 光 で たと えた ん だと思う。 C. :お な じで す。. T. : そう かい ?月 光 をあっ め て もお か しく な い しょ。. 中谷 :月 光 っ て あっ め れる の かな? 8.
(10) . 詩作品にかんする読み方教育試論. T. : 中谷く んは, どう 思 っ た の?. 中谷:だから, 実際に月光なんてあっめれるわけもないし, くれるわ けもないとオレは思うから, たとえて いる と 思う。 ホタ ルの ひか り を月 光 に た とえ てる。 T. :う ~ ん。 工 藤く んは?. 工藤 : ホタ ルが, こ の ひと にと っ て す ごい き れい だか ら, そ れを, 月 光 の ひかり も き れい だ し, だか らた と え て, こう 入 れ て (手 で 桃 の 実の か た ち をつく る), は なす と ひか り が ぽわ っ と 出 てく る か ら, そう いう の がき れい だ っ ていう こ と で, お な じよう だ っ ていう こ と で…。 T. : す ご い ね。 じゃ あ, ホタ ル の ひか り がき れい なの を た とえ てる っ ていう こ とか い? ほ かに ない? 重 泉 く ん。. 重泉:手もかたちを桃の実。 C. : い ま, 「よう な な しの た と」 え だ ぞ。. T. : そう だよ ね。 「よう な の た と え」 はそ れ だよ ね。 そ の とお り だよ。 ほ か, た と え じ ゃ な い っ て いう ひ と いな か っ た?月 光 をあ っ め て い てもお か しく な い しょ。 お 話 しの 世 界な らあ っ め て いる よ。 どう す る ?あるっていうひとはどう思う? こう いう 意見 にたい して。. C. :…. T. : じゃ あ さ, み ん な に聞く け どさ, どう して月 光 が た とえ だと思 っ たの き? べ つ に 「蜜」 っ て書 け ばい い しょ。 どう して 「月 光」 っ て たと えた の?. 中 谷:月 の夜 っ て こ と を 証 明 したか っ たと か。 T. :う ん?. 中 谷:月 の, 月 が出 てる 夜 だよ っ て こ とを 証 明 した か っ た と か。 C, T :お お 一 ! T. : な んかいま の 説得力 あ っ た。 じ ゃ あ, こ のホタ ル を と っ て いる 夜 が月 夜 な ん だね? ほおー。. C. :う んと, あ の…. T. : 三 上く ん。. 三上: いま の 中 谷く んの 意見 と似 たよう な こ とな んだ け ど, ホ タ ルを と っ てい て, そ してホ タ ルも月 光をあ びて, さ ら にき れい に見 え た か ら… T. : へ え 一。 よ けい にき れいさ が増 す っ て こ とか い?. C. :ホ タ ルの き れい さ を 強調 している と思う。. T. :月 光 と いう こ と で? なる ほ どね。 宮 越く ん。. 宮 越 : ぼくは, ホ タ ル の ひか り が月 光 の ひかり の よう に見 え た, と いう こ と だと思 う。 :あ, 月 光 の ひ かり の よう にね。 工藤 く んは? 工藤 : み んな 言う こ と に似 てる ん だ け ど,ホ タ ルの ひかり がき れい で,そ の 日 が月 が出てる 日 で,そ れで祖 母,. T. お ばあ ち ゃ ん が月 も き れい だね み たい な感 じ してて, そ れで ホタ ルも き れい だ し月 光 がき れい だ っ た か ら, 月 光 で 象徴 してる。 T:. 月 光 と 書く こ と で, き れい さ を。. 工藤 :増 して いる。 T. : ふ ー ん。 ほか に, こう いう 意見 だ いう ひといる ?琴野くんはどうなの?. 琴野:みんなとおなじ。 T. : じぶ んで 書い たこ と を 発 表 して。. 琴 野: みん な とお な じで, ホ タ ルの ひかり を月 光 で たと え ている。.
(11) . 三 上. T. 勝. 夫・田 代 和. 恵. :た とえ ている の? じゃ, どう してたとえることができるんだ?. 琴 野: ホ タ ルの ひかり が月 光 に似 ている か ら。 T. : き れいさ を たと える っ て こ と か い?. C. :う ん。. T :岡村くんはどう思うの? 岡村:ぼくもホタルのひかりを月光でたとえている。 T. : どう してそう 思 っ た の?. 岡村:ホタルのひかりも月光のあかりもきれいだから… T. : そう だね, き れい だ か ら っ て こ と をあ らわす っ て こ とか い? う ん。 いま 言 っ てく れたこ と は, ホ タ ル をあ っ め て い たの は月 の夜 だか ら月 光 と書 い た ん だ っ ていう の と, き れいさ を 表わす ん だ, っ ていう の を 言 っ てく れ たよ ね。 ほか にな い ? 内田さ んは どう 思う の ?. 内 田: そう いう こ と は書 い てな い ん だけ ど, ち がう かも しれな い け ど, 月 光 は いろ んな とこ ろ で見 れる け ど , ホタ ル はあ んま り いろ ん なと ころ で は見 れな い か ら, 月 光く ら いの き れいさ に しよう …。 T. : じゃ あ, 月 光く らいの き れい さ だっ た ん だ, ホタ ルの ひかり が。 そう いう こ と? い いよ ね。 ほか に ,. ちがう意見のひといない?堀くんはどう思ったの? 堀. :ぼくもおなじなんだけど, ホタルのひかりが月光のようにひかっ ていたから, そう書いたんだと思う. T. :ふう ー ん。 ほか にい な か っ た?宮 越 く ん。. 宮 越 : え っ と, こ こ に書 い てなく て, いま 思 っ たこ とな ん だ け ど, ふ つう の ホタ ル は作 者 に はあま り ふつ , う に しか見 えな か っ た け ど, 祖母 がい っ しょ う けんめ い かきあ っ め てく れた から, ホタ ル の ひかり が 増 して, 月 光のよう に見 え た。 T. :あ あ, なる ほ どね。 あ ばあ さ ん があっ め てく れたか ら, ま すま す月 光 に見 える っ てこ と かい ?ふ ー ん ほか にち がう 意見 の ひといる ?み んな だいた い そ んな感 じだ っ た? じゃ あ, 10ペ ー ジ にい っ て。 そう だね, いま み んな がい っ てく れた の は だい たい ホタ ルの ひかり を月 光 にたと え ている っ ていう こ と , だよ ね。 ち ょっ と, もう 一 回聞く け どね, ホ タ ルを月 光 で たと えて いる と思 う ひと。. C : (ほとんどの手があがる) T. : じゃ あ, そう じゃ な い っ て いう ひと。. C. : (小林くんの手があがる). T. :お っ, 聞い て みよう。. 小 林: いや, 意見 はな い け ど… な んと なく たと え てな い と思 っ た。 T. : どう してそう 思 っ た の? た とえ て な い っ て いう 理 由 を, ち ょっ と が ん ばっ て き かせ て?. 小林:… T. : じゃ, 浅野 く ん は?. 浅野:理由は… T. :小 林く ん, どう ? 考えつ い た?. 小 林:う ~ ん… T. : でも, 小 林く んはこ れは た とえ じゃ な い っ て思 っ た んで しょ。 月 光 をあっ め ている んだ っ て思 っ て こ. となんだよね? 小 林 :う ん。. T :浅野くんも?浅野くんも, これはホタルじゃなくて本当に月光をあつめたんだと思ったっ てこと? 10.
(12) . 詩作品にかんする読み方教育試論. 浅野 :う ん。 T. : そう だね。 わ た しも そう 思 っ た ん だよ。 こ れ は 本当 に月 光 をお ばあ さ ん があつ め た ん じゃ な い かな っ て, 思 っ たの。 浅 野く んも そ れで い い と思 っ た ん だよ ね。 小 林く んも月 光 でも お か しく な い と思 っ た ん で し ょ。. 小 林:う ん。 T. : こ れね, 本当 に月 光 でも お か しく ない と思う の。 お 話 しの世 界 だ っ た らこう いう こ とあ っ ても い いで しょ。 お 話 しの 世 界な ら, 本当 に月 光 を あっ め て, お ばあ さ ん がく れた ら, す て き じゃ な い, お話 し と して。 す て き で しょ。 そう いう 世界 で も, い い と思う ん だよ ね。 だか ら, 小 林く んや 浅野 く んが思 っ たよう に, お 話 しの世 界 で, お ばあ さ んが月 光 をあっ め てく れた っ て いう の もす てき だよ ね。 いい と 思う よ。 で, ほ かの 大 勢 の ひと が言 っ てく れ たよう に, この月 光 という の はた とえ な んだ。 どう して か という と, ホ タ ル の ひかり は月 光み たい じや な い か とか, ホタ ル をと っ ていた とき は月 光 が ひか っ てい た ん じゃ ない か, と理 由 をつ けて考 え てく れた で しょ。 そ れも ね, す ごいい い と思う ん です。 両 方 の 考 え と も, こ の詩 を読 むの にす てき に読 める と思う んです。 み んな の 考 えてく れたふ た つ の意 見, と っ ても いい と思 いま す よ。 この 詩 がよ けい にき れい に読め る と思 いま す よ。. 【分析】 隠職と解釈するか, たとえではないと解釈するかで, 討論させよう と思った。 そこで事前に大学院生と教 材 分析 している とき は, た とえ で はな い, と いう 意見 が多 か っ たの で, その こと を 持ち 出 して みて も した が,. 隠欧とする意見が圧倒的に多かっ たため, 結局, 指導者の口頭説明になっ てしまっ た。 (三組では意見がわ ) 隠職 の解 釈 の しく み につ い て は, ほ ぼ理解 さ れて いる よう に 思わ れる。 た だ し, 「よ か れ, 議 論 とな っ た。 う なな しの た と え」 っ て ? という よう に, ま っ たく 忘 れら れて い た こ ともあ っ た。 指 標 がな い, という こ と. は比廠として印象がうすいのだろう。 隠除 の 根 拠 と して, 「実 際 に月 光 な ん てあ っ め ら れる わ けも な い」 「ホタ ル は ひかる し, 月 光も ひかる」 と. いう現実にはないということや類似性を引き合いに出している点は, 今までの比嚇指導のプロセスをふんで いる。 ま た, 隠暁 で表 現する こ と によ っ て, 「ホ タ ルの き れい さ を強調 した か っ た」 「月 の夜 っ て こ とを証 明. したかっ た」 とは, 的確であり納得ができる。 たとえることによって主辞をよりくわしく説明したり, イメー ジを豊 か にする, という 比 職 の効 果 を 理解 して いる こ と を表 してい る と思 わ れる。 「 , 少 数派 の な か で が ん ばっ てく れた小 林く ん は, プリ ン トには 祖 母 が ほたる をみせ てく れ たと き に, ほた る に は,こ んな い い 光 をも っ て いる。祖母 が月 光を みせてく れた と き に,ほたる と 同 じく ら い光 を だ してい て, 両 方 と もき れい だと いう こ と。」 と書 い て いる。 ほたる と月 光の 両方 ともく れたの だと解 釈 して い たよう だ。 この よう に, フ ァ ンタ ジ ッ ク な は な しと して 解 釈 す る の も, あ り え て い い。 三 組 で は, 「た とえ で はな い 理 由 と して, ホタ ルを も ら っ た ころ は子 ども だ っ たの で, 本当 に月 光 かと思 っ た。 大 人 にな っ て か ら, ホタ ル と知 っ た」 , と して いる。 こ れも あり え てよ い。 ふ たつ の 意見 がも っ と議 論 にな れ ば, よ り豊 か な 「読 み」 に な っ た と思 わ れる。. 5 成果と課題 5ー1. 児童の感想と成果. ま ず, 比 除 理 論の 理解 につ い て は,「最初 の詩 で 「た とえ」 と いう 表現 のや り 方 が 良く わかりま した。」 や 「私 は, ”よう な の た とえ” と か ”ようななしのたとえ” とか意味がよくわからなかっ たけど今は, もうわかり ま す。」 という 感想 か らわ かる よう に, お お むね 理解 さ れてい る と思 わ れる。 「祖母」 の授 業 にお い ても, 「よ 11.
(13) . 三 上. 勝 夫・田 代. 和. 恵. う な の た と え」 と して 「桃 の 実 のやう な」 を 指摘 でき てお り 「よう な な しの た と え」 につ い て も 実 際 に , ,. 月光はあっめられないことや, ホタルも月光もひかるという類似性をもつことを根拠に, 比除であることを 主張できている。 これは, 先に述べた比職解釈のプロセスをふんでおり 比輪解釈について理解されている , こと が, わ か る の である。. 次に, 詩作品の 「読み」 についてであるが, 「手紙」 の授業では 「雲のかげ…/みんな. 手紙なのです」. と いう 比 職 を 解 釈す る こ と によ っ て じつ はふ だん見 慣 れて いる 物 も何 かを伝 える の だ と読 みとる そ れ は , 。 , ,. 詩「手紙」が語る「雲のかげ」等が手紙だ, という 直接的な意味の読みとりから より本質的な意味を読みとっ , ているといえる。 つまり, 比職を解釈することが, 詩の語る本質的なものを読みとることになりえているの であ る。 ま た, 「とく に楽 しか っ た の が ”た と え じゃ な い と思 う” と “た と え だと思 う” の 2 つ の 意 見 の 所 で私 は. 最初, たとえだと思っ てたけど, だんだん堀内君や吉沢さんの意見と三上先生の話を聞いて 『あっ!たと , え じゃ な い と も, と れる ん だ』 と か思 っ て き て と て も 楽 しく 授 業 で き ま した 」 と いう 感 想 で も わ かる よ 。- ,. うに, 比= 愈として読むことも, 比轍ではないファンタジーの世界として読むこともできることもゞ 両方授業 で とり あ げる こ と が でき たの は, 正 解 であ っ た。 た だ し, 一 般 論と して は 「読 み」 の 根 拠 を両方 とも に問う , 。. その結果として両方に読めるならそれでよし。 逆にいえば, 根拠のない読みはあきらめなければならないの だ, と いう こと であろう。. 5ー2. 今後の課題. 本研究では比瞭のうち, 直職・隠欧について検討してきたが, 関連性による比瞭, 換職・提職についての 検討が残されている。 今後, 換除・提職のタイプや解釈のしくみについて 実例をみながら検討していく必 , 要がある。 これにかかわって, 詩作品の読み方指導についても, 考察する必要がある。 本研究では 「異化」 の手法と しての比峨表現のうち, 直瞭・隠欧に着目した。 直 ・職や隠廠が, 意外な類似性を発見させるからであった。 同様に, 換欧・提除を解釈することによって, 意外な関連性を読み手に提示する, と考えるのである。 この ことは, 詩の語る本質を読むことにほかならないと考えるのである。 当然のことながら 比験という表現方 , 法 によらない作品も多い。 しかし, そもそも詩自体がなにかをたとえているのであり 「異化」 しているの , である。 比疏の解釈が詩作品の 「読み」 に関わる部分は大きいのである。 た とえる も の によ っ て, た と えら れる も の をイメ ー ジ する こ とは 詩 の 「読 み」 にも あ て はまる 読 み 手 。 ,. は作品を読む際に想像力を働かせるからだ。 大江健三郎氏は想像力 の行為を, たんに 「視覚的なイメージに ) 大 江 氏 は ガス トン. バ シ ラー ルの 『空 と 夢 を引 用 して 「想 0 置 き かえ る」 と する こ とを 批判 する1 』 ュ 。 , ,. 像力とはむしろ知覚によっ て提供されたイメージを歪形する能力であり, それはわけても基本的イメージか ) 1 ら わ れわ れを解 放 し, イ メ ー ジを 変 える 能力 な の だ1 。」 と いう。 つま り, 想 像力 を働 かせる こ と が, ふ だ. んは忘れていたものごとの本質を読みとるちからとなる, というの である。 詩を読むにあたっての想像力の 問題は, 類似性や関連性をとお して比除を解釈することと関わりがあるのではないだろうか。 詩作品の理解 にあたって, 類似性, 関連性と想像力のあり方という問題についても, 今後検討する必要があるだろう。. 【引用作品出典】 青木幹 「けやきJ 『こどもといっ しょ に読みたい詩』 あゆみ出版, 19 92 . 羽曽部忠 「希望」 『続 こ どもといっ しょに読みたい詩』 あゆみ出版, 1 99 4 ‐ 12.
(14) . 詩作品にかんする読み方教育試論 まど‐みちお 「先生」 『ま ど・みちお全詩集』 理論社, 1993 ‐ 第四版 石垣りん 「その夜」 『詩のこころを読む』 岩波ジュニア新書, 1979 ‐ 4 新川和江 「わたしを束ねないで」 『子 どもといっ しょ に読みたい詩』 あゆみ出版, 199 ‐ 990 津村信夫 「冬の夜道」 『いつも詩のある教室を』 1 ‐ 黒田三郎 「僕はまるでちがって」 『詩のこころを読む』 岩波ジュニア新書, 1979 ‐ 三好達治 「土」 『現代詩読本 三好達治』 思潮社, 1985 ‐. 「 一般に, 「土」 の 「蝶の羽をひいてゆく」 は 「行く」 となっているが, 同書に掲載された三好達治自筆の原稿が ゆく」 となって いたので, それにしたがった。 村野四郎 「鹿」 『現代詩文庫 村野四郎詩集』 思潮社, 1987 . 3 ま ど‐みちお 「あかちゃん一 『ま ど・みちお全詩集』 理論社, 199 ‐ 第四版 鈴木敏史 「手紙」 『子 どもといっ しょ に読みたい詩』 あゆみ出版, 1992 ‐ 三好達治 「祖母」 『日本の詩 三好達治』 ほるぶ出版, 1975 .. 【注】 92 1) 佐藤信夫a 『レトリ ック感覚』 講談社, 19 ‐ 21頁 46頁 2) 吉野弘 『現代詩入門』 青土社, 1980 .2. 「 3) 大江健三郎 『新しい文学のために』 岩波新書, 1988 . 14頁によれば, シクロフスキーの定義を引用 して, 芸術の手法は, ものを 自動化の状態から引き出す異化の手法であり, 知覚をむずかしくし, 長びかせる難渋な形式の手法である。 」 と説明される。 ここで 「 いう 「自動化」 とは, 慣れてしまう, 意識されなくなる, ということである。 つまり 文章に眼を走らせていた読み手が, つい立ち どまるように, 文章の一節に釘づけになる。 そしてあらためて, 今度はゆっくりとした注意深い仕方で活字をたどりはじめる。 そう した効果を期待しつつ, 作家は文章を書くのである。」 4頁 87 4) 佐藤信夫b 『レトリックの消息』 白水社, 19 ‐1 9 5 2 中教出版 1 8 』 5) 利沢行夫 『戦略としての隠嚇 ‐ 27頁 , 6) 佐藤信夫a. 4~84項 前掲書 7. 86 7) 鈴木秀一・三上勝夫 『文学作品の読み方教育論』 明治図書, 19 ‐ 145~146頁 4 ~ 1 55頁 勤草出版 1 9 8 9 1 5 8) 橋元良明 『背離のコミュニケーション』 ‐ , 9) 佐藤信夫a 前掲書 118頁 8頁 前掲書 7. ) 大江健三郎 10 ) 11. 同上 81頁. (三上勝夫 本学教授札幌校) (田代和恵. 深川市立-己小学校教諭). 13.
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