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(アブラナ科植物ファイトアレキシンの構造と生合成)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 門 出 健 次

学 位 論 文 題 名

Structures and Biosynthesis of Cruciferous Phytoalexins

(アブラナ科植物ファイトアレキシンの構造と生合成)

学位論文内容の要旨

     植 物が 微 生物 に 接触 し た際 、 植物 自身 に より 新た に産生される 抗菌性化合物フ ァイトアレキ シンは、病 害 抵抗 機構 を 説明する物質と して植物病理 学の立場から 重要視されて いる。当研究室 では、罹病ハ クサイより アブラナ 科植物として最初のファイ卜アレキシンbr assini n (1 )|metho xybras sinin( 2) .cyc lobras sinin( 5) を単離 し 、そ の構 造 を報 告 して い る。 これらは 2 個の硫黄原子 を含むインド ール化合物であ り、全く新し いタイブの フ ァイ トア レ キシ ン であ る (図 1 )。―方 、アブラナ科 植物には、正 常成分としてグ ルコシ丿レ― トと称され る ―連 の含 硫 配糖 体 が多 数 含ま れており 、酵素加水分解 によりisothiocyanates を主 成分とするカ ラシ油を与 え るこ とが 知 られている。こ れらグルコシ 丿レ―トのう ち、インドー ル環をもつglucabrassicin(15) は、その 構 造的 特徴 か らインド―ルフ ァイトアレキ シンとの関連 が注目されて いる。申請者は アブラナ科植 物ファイト ア レキ シン の 全体像を理解す るために新規 ファイトアレ キシンを探索 し、さらにファ イトアレキシ ンの相互関 係 お よ び イ ン ド ー ル グ ル コ シ ノ レ ― ト と の 関 連 を 明 ら か に す る た め に 、 以 下 の 実 験 を 行 っ た 。

H Ri=H, R2=S: brasslnln (1)    cyclobrasslnln (5) R1=OCH3, R2=S: methoxybrasslnln (2) Ri=H, R2=0: brassltln (3)

Ri=OCH:, R2=0: methoxybraultln (4)     .

     H

dloxlbrasslnln (6)

         HON     6CH3

brasslcanal A (8)

     CH3 R=pOCH::methoxysplrobrasslnol brasslcanal B {9)    methyt ether (10)

     H   . splrobrasslnln (7)

R=o‑OH:methoxysplrobrasslnol (iia) R,p‑OH:methoxysplrobrarslnol (11b)

図1 ア ブラ ナ科 植 物フ ァ イト ア レキ シ ンと グル コ シノ レ ート の 構造

ハクサイ、ダイ コンのファイ 宀アレ羊シン の草廟rt ・欄 睦艶を定

     レタ ス 腐敗 病 菌Pseudomonas cichorii を接 種 した ハ クサ イの ア セト ン 抽出 物 から 、前 述の3 種のイン ド― ルフ ァ イト アレキシン(1 ,2 ,5 )と共 に3 種の新規イ ンドールファ イトアレキシン を単離した。 NMR を中 心と した 各 種ス ペ クト ル から 各々 、その構 造を418 ,9 と決 定した(図1 )。この内、methoxybrassitin(4) は 先に 単離 さ れた 主ファイトアレ キシンmethoxybrassinin(2) の側鎖の構造 がdithiocarbamate からthiocarbam‑

ate に代わった ものであり、 brassicanal A(8) 及びB く9 ) は共に硫黄原 子を1 個有する ファイトアレ キシンであ

e

S

帯 ―

   

い  

  p

m

(2)

    同 様 な 方 法 に よ り 属 の 異 な る ダ イ コ ン か ら 、 既 に 単 離 さ れ た4種 の イ ン ド ー ル フ ァ イ ト ア レ キ シ ン(1, 2,4,8)と 共 に4種 の 新 規 イ ン ド ー ル 系フ ァ イ ト ア レ キシ ンく3,7|10|11a,b) を得た (図1) 。Spirobrassinin(7) は オ キ シ イ ン ド ― ル 型 の 最 初 のフ ァ イ ト ア レ キ シ ン で あ り、 そ の 構 造 上 の 特 微 か らbrassinin(l) よ り 生 合成 さ れ る こ と が 推 定 さ れ た 。Methoxyspirobrassinol(lla,b) は 単 離 不 可 能 な 平 衡 混合 物 で あ り 、 そ のmethyl ether 体10と 共 に 、 後 に 述 べ るジ オ ー ル 生 合 成 中 間 体 を 支持 す る 構 造 を 有 し て い た 。

フ ァ イ 宀 ア レ 羊 シ ン お よび グ ゅ コ シ ノ レ‑宀 の 起僻 変 化 .

    ア ブ ラ ナ 科 植 物 の フ ァ イ ト ア レ キ シ ン の 生 成 と 代 謝 の 過 程 を 経 時 的 に 追 跡 す る た め 、 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ る 分 析 条 件 を 詳 細 に 検 討 し た 。 そ の 結 果 、C18カ ラ ム と ア セ ト ニ ト リ ル . メ タ ノ ー ル・ 水 の 複 雑 な 濃 度 勾 配 法 を 組 み 合 わ せ 、 温 度 を 厳 密 に 制 御 す る こ と に よ り ,13種の イ ン ド ー ル 系 フ ァ イ ト ア レキ シ ン と 3種 の 関 連 イ ン ド ー ル 化 合 物 の 再 現 性 よ い 分 析 が 可 能 に な っ た 。 こ の 分 析 法 を 用 い 、 紫 外 線 を 照 射 し た カ ブの ス ラ イ ス に つ い て フ ァ イ ト ア レ キ シ ン の 経 時 変 化 を 追 跡し た 結 果 、brassinin(l) が 最 初 に 生 成 し た 後、cyclo‑

brassinin (5),spirobrassinin(7)が 次 第 に 増 加 す る こ と が 判明 し た 。 ま た 、 同 一 の サ ン プル に つ い てグ ルコ シノ レ ― ト の 分 析 を 行 っ た と こ ろ 、 紫 外 線 非 照 射 お よ び 紫 外 線 照 射 カ ブ ス ラ イ ス のど ち ら に お い て も | 脂 肪 族 系の グ ル コ シ ノ レ ― ト の 滅 少 に 伴 い イ ン ド ー ル 系 グ ル コ シ ノレ ー ト 、 特 にglucobrassicin(15) が 急 増 す る る こ と が 明 か と な っ た 。

7ブ ラ ナ 科 艫 勧フ ァ イFア レ 手 シ ン の 生合 成

    次 に 、 先 の 経 時 変 化 及 び 構 造 上 の 特 微 か ら 推 定 さ れ る 主 フ ア イ ト ア レ キ シ ン の 生 合成 的 関 連 を 明 か に す る た め 、 童 水 素 で標 識 し たbrassinin(l) ,cyclobrassinin(5)及 びdioxibrassinin(6)の 取り 込 み 実 験を 試みた 。そ の 結 果 、cyclobrassinin(5)及 びspirobrassinin(7)は そ れ ぞ れ 独 立 にbrassinin(l) よ り 生 合 成 さ れる こ と が 判 明 し た ( 図2) 。 ま た 、 そ の イ ン ド ― ル 環 はL‑tryptophan由 来 で あ る こ と が 、 重 水 素 標 識 し たL‑tryptophanの取 り 込 み 実 験 か ら 明 か と な っ た 。 次 い で 、2位 を13Cで 標 識 し たDL‑tryptophanの 取 り 込 み 実 験 を 行 っ た と ころ 、 こ の 炭 素 原 子 は 転 位 反 応 に よ りspirobrassinin(7)の イ ミ ノ 炭 素 に 取 り 込 ま れ るこ と が 判 明 し た 。 こ の こ とは 、 こ れ ら イ ン ド ー ル 系 フ ァ イ 卜 ア レ キ シ ン が グ ル コ シ 丿 レ ー ト と 同 様 な 生 合 成 経 路 に よ り 合 成 さ れ る こ とを 強 く 示 唆 し て い る ( 図2)。

    中 間 体 と し て 想 定 さ れ るindoト3‑ylmethyl isothiocyanate(16) は 不 安 定 な た め 未 だ 天 然か ら 単 離 さ れ た 報 告 は な い 。 そ こ で 、2つ の 方 法 に よ り 、 中 間 体 と し て の 存 在 を 検 討 し た 。 ま ず , メ タ ン チ オ ー ル の 存在 下 に カ プ を 粉 砕 し た とこ ろ 、 生 成 す る indol‑3‑ylmethyl isothiocyanate(16) がbrassinin(l)と して 捕捉さ れた 。次 に、

isothiocyanate中 聞 体 の モ デ ル 化 合 物 と し て 、 比 較 的 安 定 なbenzylisothiocyanateを 選 び 、 メ タ ン チオ ー ル 非 存 在 下 に 取 り 込 み 実 験 を 行 っ た と こ ろ 、 対 応 す る フ ァ イ ト ア レ キ シ ン PhCH2NH‑CS‑SCH3を 単 離 す る こ と が で き た 。

    想 定 中 間 体16に メ チ ル チ オ 基 が 付 加 す れ ば 、 形 式 的 にbrassinin(l) が 生 成 す る 。 こ の メ チ ル チ オ 基 が methionineよ り 直 接 導 入 さ れ る こ と が 以 下 の 実 験 よ り 明 か と な っ た 。 即 ち 、L‑P5S]methianineとL‑[methyl‑

3H3]methioneの 混 合 溶 液 を 取 り 込 ま せ た 結 果 、 単 離 さ れ たbrassinin(l) とspirobrassinin(7)中 の3SS/3Hの 割 合 は 、 取 り 込 み 前 と 比 較 し て 顕 著 な 差 は み ら れ な か っ た ( 図2) 。 ま た 、 も う ー つ の 硫 黄 原 子 はL‑cysteine由 来 で あ る こ と が 、L‑e5S]cysteineの 取 り 込 み 実 験 か ら判 明 し た 。

40

(3)

岬S −キ C02H

図 2 ア ブラ ナ 科 植 物 フ ァ イト ア レ キ シン の生 合成経 路

     H

cyclobrauln:n (5) 鬮3

07)

     最後 に、こ れら インド ール 系ファ イ卜 アレキ シン の多様 性を 説明す るた めに、 brassinin(l )からその他 のイン ドー ル系フ ァイ 卜アレ キシ ンへの 生合 成共通 中間 体を想 定し、モデル化合物の取り込み実験により中間 体の構 造の 情報を 得る ことと した 。2 位を メチ ル基でブ口ックした2‑methylbrassinin(12 )を合成し、紫外線を 照射し たカ ブに投 与し たとこ ろ、 側鎖の 転位 した化 合物 14 を得 た。化 合物 14 はピナ コー ル転位 より 生成した もの と 考 え ら れ、 これ よルジ オ― ル中間 体13 ( 或い はその 等価 体)の 存在 が推定 され た(図 3 )。 天然 体の 場合、 相当 するジ オ― ル中間 体17 ( 或い はその等価体)によりbrassinin (1 )からcyclobrassinin(5) 、spiro‑

brassinin(7) 等の生 合成 を合理 的に 説明で きる (図2 ) 。ま た、ダ イコ ンより 単離 された 10111 の 構造からも その存 在が 支持さ れる 。以上 、L‑tryptophan か らアブ ラナ 科植物 のフ ァイト アレ キシンへの経路は図2 の様に まとめ られ る。

13

図3    2‑Methylbrassinin(12 )の取り込み実験

  H 14

  H N)C SCHa   O

r

L

  

S   

  

   2

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Structures and Biosynthesis of Cruciferous Phytoalexins

( ア ブ ラ ナ 科 植 物 フ ァ イ ト ア レ キ シ ン の 構 造 と 生 合 成 )

   植物が微生物に接触した際に、植物自身がファイトアレキシンと総称される抗菌性物質を産生・蓄積 する現象は植物の動的病害抵抗性の視点から重要視されている。アブラナ科には多くの重要作物が含ま れるが、 1986 年に当研究室よ ルブラシニンが報 告されるまで、こ の科のファイトアレ キシンは全く 知られていなかった。本研究は、アプラナ科植物ファイトアレキシンの全体像を理解する目的で新規フ ァイトアレキシンを単離、構造決定するとともに、生合成経路を明らかにしたものである。その主要な 内容および新知見を以下に要約する。

   新規 アプ ラ ナ科 植物 フ ァイ トア レキシンの単1 と構造決定   Pseudonon8s ガcborii を接種 したハ クサイの 抽出物にっいて抗菌性物質を注意深く探索し、新たに3 種の新規インドール系含硫ファイトア レキシンを単離し構造を決定した。また、戸ピんルロ」イメを接種したダイコンから4 種の新規含硫ファイ トアレキ シンを単離し構造を 明らかにした。これらファイトアレキシンのうちspirobrassinin はオキ シ イン ド― ル 構造 を有 す る点 で、 brassicanalA およ びbrassicanalB は硫黄原子 を 1 個含む 点で、

methoxyspirobrassinol は生合成経路を示唆する構造を有する点で特に注目される。申請者は、これま でに共同 研究者とともにキャベツおよびカブから7 種の新規ファイトアレキシンを単離しており(参考 論文)、 これらの結果を総合 して、アブラナ科植物のファイトアレキシンがいずれも1 ないし2 個の硫 黄原子を含むインドール系化合物であり、アプラナ科植物が他の科とは構造的に全く異なるタイプのフ ァイトアレキシンを産生することを明らかにした。

42

雄 夫 久 一 光 章 晴 健 杉 井 濱 尾 高 村

. 白

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

   アプ ラナ 科植物 ファイ トアレキシンおよびカラシ油配糖体の経時変化   アブラナ科植物ファイトア レキシンの生成と代謝の過程を経時・的に追跡するため、種々の条件下で高速液体クロマトグラフィーに よる分析を検討し、複雑な溶媒系の採用と厳密な温度制御によって再現性の良い分析法を確立した。次 に、紫外線照射したカブスライスの成分を経時的に分析し、産生する各ファイトアレキシンの経時的増 減をもとに生合成経路を推定した。さらに、同一試料にっいてカラシ油配糖体(glucosinolates )の経 時変化を追跡し、インドール系カラシ油配糖体がインド―ル系ファイトアレキシンと並行して増加する ことを確認した。このことは両者の生合成経路の関連性を強く示唆するとともに、病害抵抗性における 両者の関連性をも示唆する重要な知見である。

   アプ ラナ 科植物 ファイ トアレキシンの生合成   紫外線照射により活性化したカブ貯蔵根組織を利用 する生合成実験法を考案し、本法を用いて重水素標識した基本ファイトアレキシンの取り込み実験を行 い、 brassinin からcyclobrassinin お よびspirobrassinin が それぞ れ独立 に生合 成さ れることを証 明し た。次 いで、 同位 体標識 したト リプト ファンの取り込み実験を行いbrassinin のインドール環が L ―トル プトフ ァン由 来であ るこ と、ト リプト ファンの2 位の炭素原子がbrassinin のチオカルボニル 炭素に転位反応を伴って取り込まれることを証明した。カラシ油配糖体が酵素加水分解されると転位反 応を伴ってイソチオシアナ―トを与えることは良く知られている。申請者はインド―ル系カラシ油配糖 体に対応するイソチオシアナートが不安定ながら存在可能であることを見出だし、さらにモデル化合物 の投 与によ ってbrassinin タイプ の生成 物が得 られたことから、インドール系イソチオシアナ―トが ファイトアレキシンの生合成において重要な中間体であることを示した。二重標識メチオニンの投与実 験に おいて 、メチ オニ ンのメ チルチ オ基が ユニ ットと してbrassinin へ導入されたことは、1 個の硫 黄原子の起源を明らかにするとともにイソチオシアナートが生合成の鍵中間体であることを強く支持す る。また、申請者はモデル化合物の取り込み実験の結果から、アプラナ科植物における一連のファイト アレキシンの相互関係が共通中間体を想定することにより合理的に説明されることを示し、これらの結 果を もとにL −トリプトファンから多様なアブラナ科植物ファイトアレキシンヘ至る生合成経路を提唱 している。

   以上、本論文はアブラナ科植物ファイトアレキシンに関する先駆的な重要知見を多数含むものであり、

高く評価される。よって、審査員一同は、別に行った最終試験の結果と併せ、申請者が博士(理学)の

学位を受けるに充分な資格を有するものと認めた。゛

参照

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