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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 菅 原 多 恵 子      学 位 論 文 題 名

    Coronary capillary network remodeling and hypofibrinolysis in aged obese diabetic rats :工 mplications     for increased myocardial vulnerability to ischemia    (加齢肥満糖尿病ラットにおける冠毛細血管ネットワークの再構築と 低線維素溶解状態は虚血に対する心筋の脆弱性を強める可能性がある)

学位論文内容の要旨

    I.  背  景

  糖 尿病 は冠 動脈 疾患 、脳 卒中 、心 不全 など の 心血 管病 に対 する 重要な危険因子であ る。

米国 のフ ラミ ンガ ム研 究で は糖 尿病 患者 の冠 動 脈疾 患の 発症 リス クは男性で非糖尿病 患者 の 約2倍 、 女 性 で 約3倍 に 達 し た 。糖 尿病 性心 筋障 害 は大 血管 障害 のな い糖 尿病 患者 にも 起 こ り 、 ま た 明 ら か な 虚 血 が な く て も 代 謝 異 常 の 程 度 に 関 係 し て 起 こ り 得 る 。   動 物モ デル が糖 尿病 と心 血管 病変 の研 究に 有 用で ある 。内 臓脂 肪型肥満、II型糖尿 病、

高 脂 血 症 を 併 せ 持 つOtsuka Long‑Evans Tokushima Fattyラ ット (OLETFラ ット )はII型 糖 尿 病 モ デ ル ラ ッ ト と し て 用 い られ る。 視床 下部CCK‑A receptor遺伝 子欠 損が 満腹 感欠 如 を お こ し て 過 食 と 肥 満 を 引 き 起こ す。 経口 血糖 負 荷試 験で は10週齢 です でに 糖負 荷後 の 高 血 糖 、 高 イ ン ス リ ン 血 症 が 認 め ら れ た 。OLETFの 網 膜 や 膵臓 毛細 血管 につ いて の報 告はあるが心臓における毛細血管の変化の報告はま れである。

  Plasminogen activator inhibitortype‑I (PAI‑I)は、線維素溶解を抑制し易血栓性を惹起す るほ かに 、細 胞周 囲の 蛋白 分解 を阻 害し 細胞 の 遊走 を調 節す るこ とで、血管の再構築 に関 連 す る。 糖尿 病患 者で は 血中PAI‑1レ ベル が高 く血 栓 性心 血管 疾患 に罹 患し やす い一 因と 考えられている。.

    II.  目  的

OLETFラッ トを 用い て2型 糖尿 病と 加齢 に伴 う冠 毛細 血管 再構 築の 変化 を 検討する。

    III.  方  法

  20、40、60週 齢 のOLETFラ ッ ト と そ の 対 照 と な るLong‑Evans Tokushima Otsuka (LETO)ラ ッ ト に つ い て 検 討 し た 。 血 圧は 大腿 動脈 にカ ニュ レー ショ ンし 観血 的 に測 定し た 。1日 絶食 後の 血糖 は グル コー スオ キシ ダー ゼ法 にて 測定 し、 イン スリ ンは ラ ット イン ス リン に特 異的 なELISA法 で測 定し た。 ラッ トの左室毛細血管の細動脈性部位にはalkaline phosphataseくAP)、細静脈性部位にはdipeptidylpeptidase IV (DPPIV)と2つの酵素があるの でKoyamaら の 方 法 に よ り 二 重 染 色 し て動 脈性 毛細 血管 を青 、中 間性 を紫 、静 脈 性を 赤に 染 める こと が可 能 であ る。 この 方法 で細 動脈 性部 位、 中間 性部 位、 細静脈性部位を染め分 け 、 デ ジ タ イ ザ ー で ピ ク セ ル を カ ウ ン ト し て3者 を 区 別 し 、 左 室毛 細血 管密 度 及び その 組 成を 比較 した 。 二重 染色 の結 果か ら、 毛細 血管 密度 、毛 細血 管数 対心筋細胞数比(以下 C:M ratio)、capillary domain area(1本の 毛細血管が灌流する面積)について解析した。

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(2)

P AIーI活性はt‑PA添加後の残存するt‑PA活性を吸光度を測定することにより間接的に求 めた。

    IV  結  果

  体 重 は 、LETOに 比 べOLETFで 有 意 に 増加し た。OLETFの 心重 量もLETOに 比べ 有意 に 増加 した 。体 重増 加に 伴い 心重量も増加したためLETOとOLETFの心重量/体重比は OLETFの方 が低 い傾向 にあ った 。平 均血 圧は 、LETOに 比べOLETFで有意に上昇した。

血 糖 は 、 ゛20、40週 でLETOに 比 べOLETFで 高 い 傾 向 に あ り 、60週 では有 意差 なか っ た 。 イ ン ス リ ン 濃 度 は 、20、60週でLETOとOLETFで 有意 差は なく 、40週でOLETF で 有 意 に高 かっ た。20週 ではOLETFラッ トで はLETOに 比べ 総毛 細血 管密度 の増 加が 認められた。40、60週では差がなく、両者とも加齢に伴い総毛細血管密度は減少した。

糖尿病による代謝障害、微小循環障害に対する毛細血管密度増加による代償性酸素運搬の 改善が、糖尿病進行と加齢により、破綻したことが示唆された。毛細血管密度を組成別に 見 ると 、LETOに 比べOLETFでの 毛細血管密度の減少は、中間性船よび静脈性毛細血管 成分の減少によるものと思われた。毛細血管数対心筋細胞数比(C:M ratio)は加齢により、

各群とも上昇する傾向にあった。これは、毛細血管密度の減少により、心筋細胞もより減 少していったことが考えられた。1本の毛細血管の支配する面積すなわちcapillary domain areaはLETOに比 べ、OLETFでは20週 で低 く、 酸素 供給 に有 利で あっ た適応 が、 糖尿 病 進行 と加 齢と とも に面 積が 増大 し、40、60週で はLETOと 近似しており、代償機能 の 破 綻 が 考 え ら れ た 。PAI−I活 性 はOLETFでLETOに 比 べ 、 加 齢 と 共に増 加し た。

    v.  考  察

  20週 ではLETOに比 べOLETFラッ トでは 毛細 血管 密度 の増 加が 認め られ た。 これ は 肥大した心筋細胞に十分な酸素と栄養を供給するために毛細血管が増加して、心筋細胞1 個あたりの毛細血管の数が増えた適応と考えられる。毛細血管密度の増加は、糖尿病によ り微小循環の障害から来る虚血に対する適応反応とも考えられる。毛細血管のうち特に動 脈性毛細血管が増加し、酸素を豊富に含んだ動脈性血液の流れている毛細血管が増えてい ると考えられる。40、60週では毛細血管密度に差がなかった。糖尿病による代謝障害、

微小循環障害に対する毛細血管密度増加による代償性酸素運搬の改善が、糖尿病進行と加 齢により、破綻したことが示唆された。PAl‑1の増加は、線維素溶解を抑制し易血栓性を 惹起するほかに、問質における細胞周囲の蛋白分解を抑制し、細胞の遊走を減少させる。

その結果、代償適応した毛細血管再構築が抑制される可能性が考えられた。2型糖尿病に おける心筋微小循環の適応が失われると、虚血や心機能障害に陥りやすくなることが示唆 された。OLETFの加齢による冠毛細血管ネットワークの再構築の特徴をヒトヘ外挿して いくことが2型糖尿病にみられる心筋障害のメカニズム解明に寄与することが示唆され た。

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(3)

学位論文審査の要旨

       Coronary capillary network remodeling and hypofibrinolysis in aged obese diabetic rats : Implications      forincreased myocardial vulnerability to ischemia    (加齢肥満糖尿病ラットにおける冠毛細血管ネットワークの再構築と 低線維素溶解状態は虚血に対する心筋の脆弱性を強める可能性がある)

  糖尿 病 は 冠 動脈 疾 患 、 脳卒 中 、 心 不全 な ど の 心血 管 病 に 対す る 重 要 な危 険 因 子であ る。

糖 尿 病性 心 筋 障 害は 大 血 管 障害 の な ぃ 糖尿 病 患 者 にも 起 こ り 、ま た 明 ら かな 虚 血がな くて も 代 謝 異 常 の 程 度 に関 係 し て 起こ り 得 る 。内 臓 脂 肪 型肥 満 、H型 糖 尿病 、 高 脂 血症 を 併 せ 持 つOtsuka Long‑Evans Tokushima Fattyラ ッ ト(OLETFラ ッ ト )はII型糖 尿 病 モ デル ラ ッ ト と し て 用 い ら れ る。OLETFの網 膜 や 膵 臟毛 細 血 管 につ い て の 報告 は あ る が心 臓 に お ける 毛細血管の変化の報告はまれである。

  'Plasminogen activator inhibitor  type‑I (PAI‑I)は、糖尿病患者では血中レベルが高く血栓性 心血管疾患に罹患しやすい一因と考えられている。

  OLETFラ ッ ト を 用 い てn型 糖 尿 病 と 加 齢 に 伴 う 冠 毛 細 血 管 再 構 築 の 変 化 を 検 討 す る 。   204060週 齢 のOLETFラ ット と そ の 対照 と な るLong‑Evans Tokushima Otsuka (LETO) ラ ッ トに つ い て 検討 し た 。 血圧 、 血 糖 、イ ン ス リ ン濃 度 、PAl‑I活性 を測定 した。 ラット の 左 室 毛 細 血 管 の 細 動 脈 性 部 位 に はalkaline phosphatase (AP)、 細 静 脈 性 部 位 に は dipeptidylpeptidase IV (DPPIV)2つの酵 素があ るので 、二重 染色し て細動 脈性部 位、中 聞 性 部 位 、 細 静 脈 性 部位 を 染 め 分け 、 毛 細 血管 密 度 、 毛細 血 管 数 対心 筋 細 胞 数比 ( 以 下C:M ratio)capillary domain area1本 の 毛細 血 管 が 灌流 す る 面 積) に っ い て解 析 し た 。   体 重 、 心 重 量 は 、LETOに 比 べOLETFで 有 意 に 増 加 し た 。 心 重 量 / 体 重 比 はOLETFの 方 が 低 い 傾 向 に あ っ た。 平 均 血 圧は 、LEToに 比 べOLETFで 有意 に 上 昇 した 。 血 糖 は、2040週 でLETOに 比 べOLETFで 高 い 傾 向 に あ り 、60週 で は 有 意 差 な か っ た 。 イ ン ス リ ン 濃 度 は 、2060週 でLEIoOLETFで 有 意 差 は な く 、40週 でOLETFで 有 意 に 高 か っ た 。20     ―335−

明 弘

秀 充

口 岡

川 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

週 ではOLETFラ ッ トで はLETOに比べ総 毛細血 管密度の 増加が 認められ た。40、60週で は差がなく、両者とも加齢に伴い総毛細血管密度は減少した。糖尿病による代謝障害、微 小循環障害に対する毛細血管密度増加による代償性酸素運搬の改善が、糖尿病進行と加齢 によ り破綻したことが示唆された。毛細血管密度を組成別に見ると、LEI・oに比べOLETF での毛細血管密度の減少は、中間性および静脈性毛細血管成分の減少によるものと思われ た。C:M ratioは加齢により、各群とも上昇する傾向にあった。これは、毛細血管密度の減 少により、心筋細胞もより減少していったことが考えられた。capillary domain areaはLEI丶o に比 べ、OLETFでは20週 で低く、 酸素供 給に有利 であった 適応が、糖尿病進行と加齢と ともに面積が増大し、40、60週ではLEI、oと近似しており、代償機能の破綻が考えられた。

PAI‑I活性はOLETFでLETOに比べ、加齢と共に増加した。

  PAIー1の増加は、線維素溶解を抑制し易血栓性を惹起するほかに、問質における細胞周

囲の蛋白分解を抑制し、細胞の遊走を減少させる。その結果、代償適応した毛細血管再構 築が 抑制される可能性が考えられた。n型糖尿病における心筋微小循環の適応が失われる と、虚血や心機能障害に陥りやすくなることが示唆された。

  口頭 発表に際 し、吉 岡教授か らOLETFラットの 糖尿病発 現時期 について 、OLETF20週 以前 の毛細血 管密度や 酸素運 搬の代償 機構に 関する報 告について、OLETFで40週で静脈 性が減る理由について、動脈性毛細血管と静脈性毛細血管の区別の根拠についての質問が なさ れた。北 畠教授か らOLETFの20週に おける代 償機能は 何によって起こっているかに つい て、OLETFの拡張機能障害とコラーゲン含有量について、コラーゲン定量の方法につ いて、糖尿病による心筋毛細血管ネットワークの再構築と治療法に関する報告についての 質問がなされた。また、ゴ‖口教授からPAI‑Iが血管新生に及ばす影響について、PAI‑IとVEGF との関係について、20週ラット心筋においてのみ毛細血管密度が上昇する機序について質 問がなされた。いずれの質問に対しても、申請者は過去の実験データや関連論文を引用し、

概ね妥当な回答を行った。

  この論文は、II型糖尿病と加齢に伴う冠毛細血管再構築の経時的変化の解明と治療への 新しいアプローチとして意義のあるものとして高く評価され、今後この分野における更な る研究の発展が期待される。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程にお ける研鑚や取得単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有 するものと判定した。

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参照

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