デジタル回路の応用技術修得(II)
著者 田畑 功, 小川 勇治, 酒井 孝則, 本堂 義記, 岡井 善四郎
雑誌名 技術報告集
巻 6 (2000年度)
ページ 13‑18
発行年 2001‑04
URL http://hdl.handle.net/10098/7529
1 .はじめに
デジタル回路の応用技術修得 (II )
専門研修受講者 田畑功(第二技術室) ,小川勇治(第一技術室) 酒井孝則,本堂義記,岡井善四郎(第三技術室)
昨年の専門研修では、デジタル回路の応用技術としてパルスモータの駆動回路を設計・製作し、
励磁方式などのパルスモータ動作原理やフォトカブラによる絶縁インターフェース技術の修得を行 った 1)。今回の研修では、パルスモータによる位置制御に必要なモータ回転速度や回転数などの制 御を行うための回路を製作し、先の駆動回路に増設することで、より高度なパルス信号処理技術や 回路設計技術の修得、並びに位置制御システムの構築を目的に研修を行った。製作した回路は、回 転速度を表示させるためのモータ駆動パルスの周波数測定回路、並びに駆動パルスを計数しつつ決 められたパルス数の回転と最初のホームポジシヨンまでの復帰の連続運転や一方向回転後自動停止 するような動作を実現するための駆動パルス計数・制御回路である。
2. 駆動パルス周波数測定回路
パルスモータの回転速度は駆動パルスの周波数並びに駆動方式によって決まる。本研修では、駆 動パルスの周波数をボリュームまたはデジタル sw で可変できる発振回路を製作し、モータの回転 速度を変更できるようにした。このため、初めにその周波数を測定しデジタル表示するための回路
を製作した。
測定する周波数の桁数は、使用するパルスモータの最大白起動周波数がハーフステップ駆動で 2.5kHz であるため、小数点以下 1 桁まで測定した場合、測定値は最大 5 桁となる。このため、本 研修では 6 桁のユニバーサルカウンタ IC、 TC5070P を用いて一定時間間隔でパルス数を計測する ことで周波数を測定することにした。この TC5070P は、表 1 に示すように計数のみならずレジス タ値との比較など、後述する駆動パルス計数・制御に適した機能を有するカウンタである。
表 1 TC5070P の主な機能
機能 カウンタ :6 桁カウンタで 7 セグメントのカソードコモンタイプの LED を直接 駆動
プリセット: 6 桁のプリセット用カウンタを装備 レジスタ: 6 桁レジスタ(カウンタ内容との比較用)
入力 カウント信号(立ち上がりでカウント)、レジスタ設定信号、カウント禁止信号、
カウンタ内容のラッチ信号など
出力 6 桁 7 セグメント出力:カソードコモン型 LED を直接駆動 ZERO 出力:カウンタ内容が"000000"の時 H レベル
EQUAL 出力 :6 桁レジスタの内容と 6 桁カウンタの内容が一致した時 H レベ lレ
SCAN信号(計数制御回路へ) 駆動パルス(計数制御回路へ}
図 1 周波数測定回路
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小数点以下 1 桁 (O.lHz) までパルス周波数を測定するには、 10 秒間パルス数を測定した結果を 10 分の 1 して表示すればよいが、それでは応答が遅く実用にならない。このため、パルス発生器か ら送られるパルスを分周する段階で周波数カウンタには駆動パルスの 100 倍の周波数のパルスが送 られるようにして、 0.1 秒間のパルス数をそのまま小数点以下一桁まで測定した周波数として表示 させることにした。具体的には、 0.1 秒間カウントした後、次の 0.1 秒間カウントを禁止させ、そ の間計数値のラッチと表示を行うという動作を繰り返すことにした。
製作した周波数測定回路を図 l に示す。プログラマブル水晶発振器 SPG8640BN の原振周波数 1MHz のクロックを直列に配置したデ、ユアル 10 進カウンタ HC390 に通すことで 10kHz と 5kHz のクロックを作り、それぞれ Scan 信号( 6 桁の LED を表示するタイミングを取るための信号)と
C.INH(Count Inhibit)信号に使用した。 C .INH ヘ送るパルスのデ、ユーティは 112 であるため、この パルスが L になる 0.1 秒の聞に計数が行われる。また、 HC390 から出力される 10Hz と 5Hz の信 号とワンショットマルチパイプレータ HC123 を用いて、 C.INH が H になっている 0.1 秒の聞に
Store (計数値のラッチ)と Reset (カウンタのクリア)を行った。 TC5070P の Count 入力には、
計数の対象となるパルスを入力するが、ここには、 SPG8640BN または 7555 発振器からのパルス 信号を、前者はデジタル SW で周波数を設定し、後者はポテンショメータとコンデ、ンサを使って周 波数を可変 (290Hz""' 225kHz) して入力した。また、このパルス信号は、 HC390 で 11100 分周し た後、計数・制御回路の駆動パルス入力部へも入力した。周波数の表示部には、カソードコモンタ イプのドットポイント付き 2 桁数字 LED(GL6P201) を 3 個 (6 桁)使用した。
3. 計数-制御回路
計数・制御回路は、パルスモータを使った位置制御に主眼を置き、モータの原点位置から指定し たパルス数(または回転数)だけ回転し停止するモード(一方向モード)と、指定パルス数(また は回転数)だけ回転した後、最初の原点位置まで逆転して戻る動作を繰り返すモード(連続モード) の二つの運転モードを設ける仕様とした。このコントロール部には、連続/一方向切換・回転方向切
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停止
図 2 計数・制御回路
換スイッチ、スタート・停止・原点復帰ボタン、並びに、パルス数(または回転数)上限値設定用 デジタルスイッチを設けることにした。これらの仕様を基に製作した計数・制御回路の一例を図 2 に示す。
この回路では、 3 つの RS フリップフロップ(FF1"‑' FF3) により信号ゲートを開閉することで、
TC5070P への UplDown 指令や TC5070P から出力される Equal 信号と Zero 信号を使った回転方 向の切換や駆動パルスゲートの開閉等を行っている。動作内容を具体的に示すと、電源を ON する ことによりカウンターおよび RS フリップフロップなどのリセットが行われ、その後 SET 信号及び
Load R 信号がカウンタに送られ、デジタルスイッチで設定された上限値が内部レジスタにセット
される。スタートボタンを押すと、 FF1 が H となることでカウント Up 方向とし、それと同時に FF2 を H にしてその先の AND ゲートを聞き、パルス発生回路から 11100 分周されて送られてきた 駆動パルスをモーターおよびカウンタの Count 入力に加える。カウント Up によりカウンタ値が内 部レジスタの値に達すると Equal 信号が H になり、 FFl が L となりカウンタが Down 方向に、ま
たモータ回転方向を指定する XOR 出力の極性が逆転する。
一方向運転モードでは、この時点で FF2 が L となり、その先の AND ゲートが OFF となること で駆動パルスの送信が止まる。連続運転の場合は、 FF2 が H のままであるため、駆動パルスが送ら
れ続け、カウント Down およびモータの逆転 が始まる。カウンタ値がゼロになると、 Zero 信号が H となり、カウント方向及びモータ回 転方向が逆方向にセットされる。停止ボタン が押されると、 FF2 が L となり、駆動パルス ゲートが閉じられる。また、ホームポジショ ン (HP)I逆転ボタンは、運転モードにより名称 が異なるが、動作の内容は同じで、ボタンが 押された時点で FFl が L、 FF2 が H、 FF3 が H になるため、モータが逆転を開始しカウ
ントがゼロになった時点で停止する。
表示用 LED には、カソードコモン 2 桁数 字 LED(TLR32ω を 3 個使用した。なお、回 路図には示さなかったが、光センサーで 1 回 転ごとにパルスを発生させ、これを計数・制 御回路のカウンタの計数パルスとすることで、
・一一一一一一--. .---一一一、.一一一一一一「 E3.3.JJikλZJKタ駆動制御回路
1 信号周波数表示 ii 電動パルス表示 11 駆動方式表示 i1 回転方向表示 i
h
……ーー・ j 回転数表示
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回転方向設定
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連続・一方向設図 4 製作したパルスモータ駆動制御システムのブロック図
‑16‑
回転数の制御も行えるようにした。
4. システム全体の構成
製作したパルスモータ駆動制御回路の写真を図 3 に、システムのブロック図を図 4 に示す。この システムは昨年の専門研修で作製したモータ駆動回路(写真右上)、および今回作製した周波数測定 回路(写真左下)、計数・制御回路(写真右下)、並びに電源とモータ本体(写真左上)からなる。
モータには、回転数を検出するためのスリット付き円板が取り付けてある。モータ駆動回路とモー タは 12V で動作し、それ以外の回路は 5V で動作する。このパルスモータ制御システムは、励磁方 式( 1 相、 II 相、 1 ‑II 相)による駆動ピッチの変更やモータの回転速度・回転幅(回転数)・回転 方向などを自由に設定できるなど、パルスモータを用いた位置制御に必要な基本的機能を有してい
るため、種々の用途に適用可能なシステムと言える。
5. 研修実施日程
今回の専門研修は、参考文献と各研修受講者の回路設計経験などを基に目的の基本回路設計(延 べ約 3 0 数時間)を行い、その後各自が基本回路にそれぞれのアイデアを組込み製作(延べ 30"-'
40 時間)を行った。表 2. に実施日程および実施内容を示す。
表 2 .専門研修実施日程
実施日 実施時間 主な研修実施内容
8 月 2 9 日(火) i 13: 30... 15 : 00 研修用の実習同路検討、駅動用ハ。!日発牛同路の検討 9 月 4 日(月) 13:30""""15:00 モータ制御方式の検討(回転方向、位置・原点決めなど) 9 月 1 1 日(月) 9 :30...11 :30 制御回路の各表示部とセンサーの検討
9 月 1 8 日(月) 9: 30... 11: 20 制御回路の各表市部および駆動ハ。 )vÀ発生回路の設計
1 0 月 2 日(月) 9 :30...11 :30 駆動周波数測定回路の検討および使用部品の選定
1 0 月 1 6 日(月) 9 :30""""11: 10 周波数カウンタ回路の設計
1 0 月 3 0 日(月) 9 :30""""11: 00 )¥0 )vÀ の計数手法および計数回路の検討
1 1 月 1 3 日(月) 9 :30...11 :30 ハ。}以計数回路の設計
1 1 月 2 0 日(月) 9:30""""11 :30 各設計回路の再検討と確認
1 1 月 2 7 日(月) 9:30""""11 :45 各設計回路の接続方法(全体構成田路)検討
1 2 月 4 日(月) 9:30""""11:35 全体構成田路の設計
1 2 月 1 1 日(月) ! 9:30""""11 :20 全体構成田路の設計図確認および検討
1 2 月 1 8 日(月)
i
9:30""""11 :30 全体構成田路の検討1 2 月 2 5 日(月)
i
9 : 30... 11 : 40 全体構成田路の検討1 月 2 9 日(月) ! 9: 30... 11 : 50 全体構成田路の確認(実習用基本回路構成決定) 2 月 5 日(月) i 9:35...11:15 実習回路の製作状況確認と不足部品確認
2 月 2 6 日(月) 9 :30...11 :00 実習回路の製作状況確認と問題点の検討 3 月 5 日(月) 9:30""""10:00 実習回路の製作状況確認と問題点の検討
3 月 1 3 日(火) 9:30""""11 :30 実習回路の問題点検討および技術報告集原稿分担 3 月 2 9 日(木) 9 :30...11 :00 実習製作回路の動作確認および不具合検討
1 月 2 9 日~ 3 月 3 0 日 基本設計四路へ各自がアイデアを組込み製作 (延べ 30...40 時間) (実装配線についても各自でレイアウト)
6. まとめ
今回の研修では、昨年度実施した専門研修「ディジタル回路の応用技術修得」で製作したパルス モータ駆動回路を利用して、これに送る駆動パルスや回転方向の信号を制御することで位置制御を 可能にする制御回路の設計から製作までの一連の作業を行うことで、研修受講者のデジタル回路の 設計・製作に関する技術が更に向上したと考えられる。また、今年度は受講者各自がアイデアを回 路に盛り込みオリジナル駆動回路を設計・製作した結果より、デジタル回路設計について熟練して
きたことが確認できた。
今回までの研修でゲート IC を用いたデジタル信号の制御技術を一応修得できたと考えられ、こ れを土台にして、今後はプログラマブル IC など高度な制御を可能にする IC を用いたデジタル制御 技術へのステップアップが必要と考えられる。
参考文献・参考資料
1) 酒井,本堂,岡井,小川,田畑, (専門研修)ディジタル回路の応用技術修得 J ,福井大学技 術部技術報告集 Vo1. 5 , 1999 年度, pp.87‑92.
2幼)東芝デ一夕ブブ、ツク:“ C-MOS ス夕ンダ一ドシリ一ズズ、"ヘ, pp .4 15圃4必27, 1印99侃5 年版.
3ω) 東芝半導体技術資料:“光センサ
4心) シヤ一フプ。 LED 総総、合カ夕ロググか:“OPTOELECTRONIC DEVICES" ,♂pp.138-1臼51, 1997 年版.
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