• 検索結果がありません。

大学バトミントン選手における心理的変容およびパフォーマンス向上への「モチベーションビデオ」の効果 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大学バトミントン選手における心理的変容およびパフォーマンス向上への「モチベーションビデオ」の効果 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)大学バドミントン選手における心理的変容および パフォーマンス向上への「モチベーションビデオ」の効果 キーワード:sel f-m odel i ng, セルフエフィカシー, 動機づけ,パフォーマンス,量的・質的アプローチ 行動システム専攻 山. 1.はじめに. 将幸. 理的コンディション診断検査 (PCI) に準拠した PCI for. 近年,ビデオを用いたスポーツ心理学研究は「動機. モチベーションビデオを作成し,信頼性・妥当性を検. づけ(モチベーション)ビデオ」として行われている.. 証することを目的とした.分析の結果,「一般的活気(4. しかし,それらの研究では,理論的背景が明確にされ. 項目)」 ,「技術効力感(4 項目)」 ,「闘志(4 項目)」 , 「競技. ずに研究が行われている.その理論的背景として. 失敗不安(4 項目)」の 4 因子 16 項目からなる PCI for モ. self-modeling があげられる (Dowrick, 1999).本来,. チベーションビデオを作成し(表 1),信頼性・妥当性. self-modeling 研究は臨床心理学や障害児教育の領域で. も確認された(図 2) .この尺度は,競技場面でより簡. 主に用いられている.スポーツ心理学領域においても,. 便にモチベーションビデオの心理的効果を測定する尺. self-modeling に準拠したビデオ研究では,セルフエフィ. 度として有効性が高いと考えられる.また, 「一般的活. カシーの向上や動機づけの向上,パフォーマンス向上. 気」および「闘志」は動機づけの側面, 「技術効力感」. の効果が示されている (Halliwell, 1990; 永尾, 2003).こ. および「競技失敗不安」はセルフエフィカシーの側面. れらの競技場面における研究の対象は,トップ選手あ. を測定する内容として妥当であると考えられる.. るいは体育授業における大学生であり,大学生競技選. 表1 各項目内容と因子負荷量. 手を対象にした研究は行われていない.本研究では,. 因子名 一般的 活気. 大学バドミントン選手を対象に,self-modeling に準拠し たモチベーションビデオを視聴させることで,セルフ エフィカシーや動機づけの向上が得られ,パフォーマ. 技術 効力感. 闘志. ンスも向上するという仮説をたて(図 1),検証するこ 競技 失敗不安. とを目的とした.. 一般的 活気. 項目  活気に満ちている. .91.  エネルギッシュだ. .90.  やる気がわいてくる. .67.  気力が充実している. .65. 技術 効力感.  技術については自信がある. .83.  他の選手より優れていると思う. .73.  技術面では全てうまくいっている. .64.  技術的な調子はよい. .60. 闘志.  相手を負かしてやろうという気になっている. .71.  自分が活躍できるチャンスだと思っている. .70.  勝利に対する執念がある. .68.  やればできるという気分だ. .55. 競技 失敗不安.  失敗したらどうしようと思う. .87.  試合中にミスをするのではないかといった不安を持っている. .73.  なんとなく失敗しそうだ. .65 .64.  競技の成功よりも、失敗することのほうが気にかかってならない. 一般的活気. セルフエフィカシーの向上 self-modelingに準拠した モチベーションビデオ. .63 .64 .86 .89. パフォーマンス向上 .31. 動機づけの向上. .57 .75. 媒 介 変 数. 図1 self-modelingに準拠したモチベーションビデオによるパフォーマンス向上のメカニズム. .-11. 技術効力感. .48. .-26. 第 1 章では,モチベーションビデオ視聴の効果を競 技場面で測定するために,猪俣ら (1996) の作成した心. GFI =.91 AGFI =.87 CFI =.92 RMSEA =.07. e2. Q54. e3. Q55. e4. Q3. e5. Q29. e6. Q36. e7. Q41. e8 e9 e10. Q53. e11. Q56. e12. .82. Q24. e13. .67. Q33. e14. Q46. e15. Q49. e16. .73. .64 .99. 図2 検証的因子分析の結果 Note. e=誤差変数. Q45. Q32. .70 .67. .-12. 競技失敗不安. e1. Q16. .65. 闘志. 2.尺度作成. .56 .71 .80. Q44.

(2) 3.モチベーションビデオの量的アプローチか. 視聴のタイミングについて検討をする必要性があげら. らの検討. れた.. 第 2 章では,第 1 章で作成した PCI for モチベーショ ンビデオを用いて,self-modeling に準拠して作成したモ チベーションビデオを試合前に視聴させる心理的効果 およびパフォーマンス向上について検証した.パフォ. 実験群. 統制群. 20 18 16 14 12 10 8 6. ーマンス測度として,試合中のパフォーマンスを評価. 4 ビデオ視聴前. F(1,16)=3.151, p <.10. するために,客観的な個人のショットパフォーマンス. 図3 試合直前のモチベーションビデオ視聴に対する闘志の経時的変化. を考慮することとした.個人のショットパフォーマン スは,ミスショットを「バックバウンダリーラインま たはサイドラインのアウトショット」 「ネットにかける フォルトショット」と定義して, (全ショット数−全ミ スショット数)/全ショット数×100=成功ショット率 (%)として算出した.ビデオ作製手順として,山. ビデオ視聴後. 実験群. 統制群. 20 18 16 14 12 10 8 6. *. 4 ビデオ視聴前. ビデオ視聴後 t値=2.847, *; p <.05. (2005) は,研究者と選手のよいプレイの認知には相違. 図4 試合直前のモチベーションビデオ視聴に対する競技失敗不安の経時的変化. があることから,個別に対応する必要性があると述べ. 全ショット成功率. *. ている.また,Dowrick & Jesdale (1990) や Haliwell (1990) は,自己選択的な映像や音楽が気分・情動の肯 定的な変容をもたらすと報告している.このことから, 選手自身に良いプレイを選択させ,その映像を編集す. 88.0% 85.8%. 86.0% 84.0% 82.1% 82.0% 80.0%. ることにした.. ビデオ視聴なし. ビデオ視聴あり t値=-3.121, *; p <.05. 1) 試合直前視聴の効果. 図5 試合直前のモチベーションビデオ視聴前後に対する実験群におけるパフォーマンス変化. 研究Ⅰでは,試合直前にモチベーションビデオを視聴 させることによる心理的変容とパフォーマンス変容を. 2) 試合前日視聴の効果. 検討した.対象者は,K 大学バドミントン部レギュラ. 研究Ⅱでは,研究Ⅰでの問題点を考慮し,試合前日. ー選手 10 名(平均年齢 20.2±1.13 歳,平均競技年数. にモチベーションビデオを視聴させることの心理的効. 7.0±2.75 年)を実験群,K 大学バドミントン部非レギュ. 果を検討した.対象者は,K 大学バドミントン部で 6. ラー選手 8 名(平均年齢 19.5 歳±0.76,平均競技年数. 月の個人戦に出場する選手 14 名を実験群 7 名(平均年. 6.3±3.58 年)を統制群とした.試合直前にモチベーショ. 齢 19.9±0.69 歳,平均競技年数 4.6±2.17 年)と統制群 7. ンビデオを視聴させた結果,PCI for モチベーションビ. 名(平均年齢 20.3±0.76 歳,平均競技年数 3.7±1.98 年). デオの 4 因子すべてにおいて,有意な心理面の向上が. に無作為に割りつけた.試合前日にモチベーションビ. みられた(図 3-5).また,ビデオ視聴有無でパフォー. デオを視聴させた結果,モチベーションビデオ視聴に. マンス向上もみられた.しかし,研究Ⅰの問題点とし. 対する心理面の向上の効果は,約 8 時間程度は持続す. て, 「気持ちが高揚しすぎてから回りした気がする」と. るが,それ以上時間があいてしまうと心理面への効果. いった選手の内省報告があり,モチベーションビデオ. が失われることが考えられる(図 6)..

(3) 実験群. 統制群. **. 20 18 16 14 12 10 8 6 4. *. 統制群. 18. *. *. 実験群. 20. 16 14 12 10 8 6. 試合前日. ビデオ視聴後. 会場入り. 試合直前. 4 開会式. F(3,36)=11.217, p <.001 **; p <.01, *;. 初戦前. ビデオ視聴後. 試合直前 F(1,17)=16.285, p<.01. 図6 試合前日夜のモチベーションビデオ視聴による競技失敗不安の経時的変化. 図8 試合1時間前のモチベーションビデオ視聴に対する競技失敗不安の経時的変化. 「モチベーションビデオ」の効果は睡眠をとっても持. 全ショット成功率. **. 続すると考えられるが,起床後は効果があまり得られ ず,試合直前にまで効果が持続しないことが示唆され. 92.0%. 90.2%. 90.0% 88.0% 86.0%. た.. 84.0% 82.0%. 81.3%. 80.0%. 3) 試合 1時間前視聴の効果. 78.0%. 研究Ⅲでは,研究Ⅰおよび研究Ⅱの知見を参考に, 試合 1 時間前にモチベーションビデオを視聴させるこ. ビデオ視聴なし. ビデオ視聴あり t値=-4.497, p<.01. 図9 試合1時間前のモチベーションビデオ視聴前後による実験群におけるパフォーマンスの変化. とによる心理的変容とパフォーマンス変容を検討した.. という点は共通しているが,心理面の向上およびパフ. 対象者は,K 大学バドミントン部レギュラー選手 10 名. ォーマンス向上がモチベーションビデオ視聴タイミン. (平均年齢 20.2±1.48 才,平均競技年数 8.8±2.94 年)を. グ条件の差異によってどのような相違があったのかは. 実験群,N 大学,T 大学のバドミントン部レギュラー選. 明らかにされなかった.. 手 9 名(平均年齢 20.4±1.33 才,平均競技年数 6.4±3.24 年)を統制群とした.試合 1 時間前にモチベーション. 4) 視聴タイミング条件の差異の検討. ビデオを視聴させた結果,研究Ⅰと同様の結果が得ら. 研究Ⅳでは,研究Ⅰ―研究Ⅲまでの知見を鑑み,試. れた(図 7-9).同様の効果が認められた研究Ⅰと比較. 合直前の心理状態およびパフォーマンスへのモチベー. して,研究Ⅲでは,モチベーションビデオ視聴により,. ションビデオ視聴タイミング条件の差異による効果の. 試合まで選手自身の良いプレイのイメージを持ったま. 共通点,相違点を検討し,最大限に効果を発揮する方. ま試合に臨むことができたことが示唆された.研究Ⅰ. 法を検討した.対象は,試合前日視聴における試合直. と研究Ⅲでは,心理面の向上やパフォーマンスが向上. 前の心理面データ,試合 1 時間前視聴における試合直. 実験群. 前の心理面データおよびパフォーマンスデータ,試合. 統制群. 20 18 16 14 12 10. 直前視聴における心理面データおよびパフォーマンス データを用いた.この結果,モチベーションビデオ視 聴の心理面の向上への効果は試合直前および試合 1 時. 8 6 4. 間前に視聴させることが効果的であり,試合直前視聴 開会式. 初戦前. ビデオ視聴後. 試合直前 F(1,17)=6.917, p<.05. 図7 試合1時間前のモチベーションビデオ視聴に対する闘志の経時的変化. および試合 1 時間前視聴の心理状態には差がないこと が明らかになった(図 10,11).パフォーマンス面への.

(4) 効果としては,試合直前よりも試合 1 時間前のほうが. を用いて分析を行った.この結果,研究仮説とのメカ. 効果的であることが明らかになった(図 12).つまり,. ニズムの関係では,PCI for モチベーションビデオの結. パフォーマンス向上の効果を得るには,モチベーショ. 果を補完する形でモチベーションビデオ視聴による選. ンビデオで選手自身の良いプレイを視聴して, 「試合で. セル フエ フ ィカ シー の向 上. 技術効力感. どのように活かすか」といった再考の時間がパフォー. フットワークへの効果,自信の獲得,自己の能 力への気づき 自信の知覚, 自信の強化 ,イメージの身体化,イメージの定着. 競技失敗不安 試合に対する不安減少,イメージによる不安減少. マンスの違いにみられたと考えられる.. ミスした時の切替のスムーズさ,不安減少. self-modelingに準拠 した 「モ チベー ション ビデオ 」. パフ ォーマンス向上 動機づけ の向上. 統制群. 実験群. *** 20. ***; p <.001. 一般的活気 活気の向上,攻め気,モチベーションの向上,イメージの定着. ***. ***. 活気過多による冷静さの欠如 闘志. 18. 勝利意欲,闘志の向上. 16 14. 媒  介  変  数. 12. 図13 質的 アプローチからのself-modelingに準拠した「モチ ベーションビデオ」よ るパフォーマンス向 上のメカニズム. 10 8. 手の心理的変容が明確になった(図 13).しかしながら,. 6 4 試合前日. 試合1時間前. 全体的にはモチベーションビデオを視聴することによ. 試合直前. F(2,45)=9.835, p <.001. 図10 モチベーションビデオ視聴タイミング条件の差異による闘志得点の違い. 実験群 20. ***; p <.001 **; p <.01. 統制群. *** **. 14. 側面の発話もみられた.このことは,データを平均化 して結果を判断する量的アプローチからはみられない. 18 16. るポジティブな側面の効果を導いたが,ネガティブな. ものであり,「モチベーションビデオ」視聴において,. **. 12. 仮説のメカニズムをより明確化することに質的アプロ. 10 8. ーチの意義があったといえよう.. 6 4 試合前日. 試合1時間前. 試合直前 F(2,45)=21.855, p <.001. 図11 モチベーションビデオ視聴タイミング条件の差異による競技失敗不安得点の違い. **; p<.01 *; p<.05. パフォーマンス 92.0%. *. *. 90.0%. **.   *. 88.0%. 5.まとめ 本研究の結果から,self-modeling に準拠したモチベー ションビデオを試合前に視聴させることは,心理面の 向上,パフォーマンスの向上において試合 1 時間前が. 86.0%. 有効であることが明らかになった.加えて,モチベー. 84.0% 82.0%. ションビデオ視聴による心理的変容からパフォーマン. 80.0%. スが向上する可能性が示唆され,競技場面で指導する. 78.0% 直前ビデオ視聴なし. 直前ビデオ視聴あり. 1時間前ビデオ視聴なし 1時間前ビデオ視聴あり. 図13 モチベーションビデオ視聴タイミング条件の差異による実験群の成功ショット率変化. 際に非常に有用な知見が得られた.また,この手法は, 学校教育における体育授業に応用できると考えられる.. 4.モチベーションビデオの質的アプローチか. 視覚的な情報を体育授業で用いることによって,児. らの検討. 童・生徒の運動へのセルフエフィカシーを高めること. 第 3 章では,第 2 章で得られた量的アプローチによ. で,身体活動量の増加やライフスキル獲得の可能性が. る結果に対する補完的役割として質的アプローチを行. 考えられる.今後は,視覚的な情報を用いて,健康の. い,大学バドミントン選手のモチベーションの変容過. 維持,増進を目的とした研究も行う必要があると考え. 程を探ることを目的とし,検討を行った.半構造化イ. られる.. ンタビューにより,データ収集を行い,質的内容分析.

(5)

参照

関連したドキュメント

Approach to the fabric handle of silk Dechine zone in regard to the primary hands KOSHI and FUKURAMI... Approach to the fabric handle of silk Dechine zone in the case of

⑥'⑦,⑩,⑪の測定方法は,出村らいや岡島

内的効果 生産性の向上 欠勤率の低下、プレゼンティーイズムの解消 休業率 内的効果 モチベーションUP 家族も含め忠誠心と士気があがる

デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック

加速局面における走速度(上図) ,ピッチ(中図) ,ストライド(下図)の変化 ●は Fast 群を,△は Slow 群を示す. *:Fast 群と Slow

見解 をみない。 cadrenergicシ.. dhistamine

BAFF およびその受容体の遺伝子改変マウスを用 いた実験により BAFF と自己免疫性疾患との関連.. 図 3 末梢トレランス破綻における BAFF の役割 A)

Although primary hand values and total hand value also changed remarkably by the singeing stage, they became moderate and high rank respectively by the next crabbing-scouring