六面体要素のための自動メッシュ生成手法
前田 利博* 野口 聡 山下 英生(広島大学・工) [email protected] -u.ac.jp1. まえがき
有限要素解析を行う場合、解析空間を有限要素に分割する必要がある。一般的に、3 次元有限要素解 析では四面体要素、三角柱要素、六面体要素が用いられている。電磁場解析の分野では、計算時間が 短縮できる、解析精度が良いという理由から六面体要素に注目が集まっている。 しかし、六面体要素 を自動的に生成するためのアルゴリズムは確立されていない。そのため、六面体要素分割に多大な労 力を要する、もしくは、四面体要素による解析が行われるなど、必ずしもその利点が生かされてはい ない。また、高速かつ高精度な解析を行うためには、要素分割図に粗密分布をつける、要素形状を良 好にするなどの点を考慮しなければならず、六面体要素分割をさらに困難なものにしている。 近年、電磁場解析の分野では、モータや発電機といった回転機の高効率化が求められており、有限 要素法による解析が頻繁に行われている。回転機の要素分割を行う場合、高精度にトルクの算出を行 うために空隙部分を微小な領域に分割する必要があり、これらを考慮しなければならない。このよう に、粗密分布のある要素分割を円筒形物体に適した形で行われることが望まれている。さらに、この ような物体形状に対しても、解析精度向上のために扁平要素の少ない要素分割が不可欠である。 本報告では、解析モデルを形状認識により直交座標系に割り当て、要素分割する手法を提案する。 さらに、本手法では、木構造を用いた要素分割を行い、要素分割に粗密分布を与えることができる。 また、円筒形物体に対しては、円筒座標系に割り当て要素分割を行うことで、扁平要素の生成を抑え ることを可能としている。2. 直交座標系における要素分割手法
本節では、まず本手法の概略処理手順の説明を行う。次に、複雑な形状を含む領域、および複合領 域を分割可能にするための形状認識の説明を行う。そして、粗密のある要素分割を実行可能にする木 構造を用いた要素分割手法の説明を行う。2.1. 概要
提案する六面体要素自動分割手法の概要を図 1 に示す。以下、図 1 に沿って本手法を概説する。 Step1 データ入力の準備 : 本手法における入力データは、解析対象となる形状モデルと、要素の粗密 分布を制御する密度データのみである。形状モデルは市販の CAD ソフトで作成でき、密度データは GUI を備えたシステムで与えられる。 Step2 写像変換 : 形状認識 [1]の技術を用いて、物理空間に存在する形状モデルを、それと位相的に等 しく、かつ形状モデルの表面・稜線をそれぞれ直交する平面・直線に置き換えた、計算空間に存在する モデルに写像変換する。この写像変換後のモデルを直交モデルと呼ぶ。この処理により、歪みの少な い六面体要素を作成することが可能となる。 Step3 バウンディングボリュームの生成: 直交モデルを覆うバウンディングボリュームを作成する。 Step4 木構造を用いた分割: 生成したバウンディングボリュームに、木構造を用いた要素分割[2]を再帰的に行い、粗密のある要素分割を行う。有限要素法では、隣り合う要素間では節点が共有されてい る必要がある。そこで、本手法では、木として 27 分木を採用し、要素間の不連続が生じる部分にはテ ンプレートを適用し、要素間の整合を取っている。 Step5 直交モデルと 27 分木モデルの対応付け : 直交モデルと 27 分木モデルの対応付けを行う。対応 付けの際、物質間で要素の不連続が生じないように、不連続な部分が無くなるまで 27 分木モデルの要 素再分割を行う。 Step6 逆写像変換: 分割された直交モデルを形状モデルに逆写像変換する。 本手法では、形状認識の技術により、良好な形状の要素分割を可能としている。また、木構造を用 いた分割により、容易に要素分割粗密を与えている。
形状モデル
直交モデル
バウンディングボリューム
27分木モデル
分割された直交モデル
要素分割図
物理空間 計算空間ζζηηξξ z y x z y x 図 1:概要2.2. 形状認識[1]
提案する手法では、 複雑な形状を含む領域、および複合領域においても良好な形状の六面体要素を 生成するために、形状認識技術を用いている。その形状認識により、形状モデルを位相的に等しく、 かつ形状モデルの各稜線および各面をそれぞれ直交する平面や直線に置き換えたモデルに写像変換す る。これを直交モデルと呼ぶ。この直交モデルの構成には、まず形状モデルの各面の法線方向をξ,η, ζ軸のいずれかの方向に割り当てる。この面の割り当て処理には、各軸に対する適応度を Fuzzy 理論 のメンバシップ関数より算出する。次に、形状モデルの面を構成する各辺を、その法線方向を除く 2 つの方向にいずれかに割り当てる。ここで、各面を独立に変換を行っているので、隣接する面同士が 隣接している保証が無く、整合が取れているとはいえない。そこで、各面相互間の整合処理をとる。 この全ての処理をたどることにより、直交モデルが生成される。 (a) 形状モデル z y x ζ η ξ (b) 面の方向割り当て (c) 辺の方向割り当て、 及び長さ決定 (d) 面間の整合 (直交モデル) 物理空間 計算空間 図 2:形状認識2.3. 木構造を用いた要素分割[2]
提案する手法では、要素分割に疎密分布を容易に与えるために、木構造を用いた手法を用いている。 バウンディングボリュームが木構造を用いた要素分割を行う際の根に相当し、これを再帰的に要素分 割することで疎密分布を与えることができる。また、要素分割に適宜疎密分布を与えることができる といった点から、2 次元では 9 分木、3 次元では 27 分木を採用している。 有限要素法において、隣り合う要素間では節点は共有されなければならない。しかし、木構造を用 いた要素分割では、図 3(a)に示すように要素の大きさが異なる部分において、要素の辺上に四辺形要 素を構成する以外の節点が配置されてしまう。そのような部分においては、隣接する要素間の整合が 取れている形に変換する必要がある。そこで、提案する手法では図 4 に示す 6 つのテンプレートを用 いて、隣接する要素間で整合をとっている。3 次元においても、同様に、6 つのテンプレートを用いる ことで要素分割を行うことができる。 (b) (a) (b) (a) 図 3:木構造を用いた要素分割 (a) (b) (c) (d) (e) (f) 図 4:テンプレート(2 次元)3. 円筒座標系への適用
直交座標系のモデルを円筒座標系に座標変換を行うことで、回転機のようなモデルに対しても比較 的形状の良好な六面体要素を生成することが可能である。以下に、円筒座標系への適用方法を概説す る。 Step1 回転軸近傍の切り取り: 形状モデルから回転軸近傍の切り取り処理を行う。以後は、 2 つの物 体に分けて別々の処理で要素分割を行う。回転軸近傍の形状モデルは整合処理により要素分割を行う。 Step2 座標変換 : 形状モデルから回転軸近傍を切り取ったモデルに対して座標変換を行う。直交座標 系(x,y,z)を円筒座標系(r,?,z)に座標変換を行う。 Step3 六面体要素分割: 2 節で述べた手順により六面体要素分割を行う。 Step4 座標逆変換: 円筒座標系(r,?,z)を直交座標系(x,y,z)に座標逆変換を行う。 Step5 整合処理 : 回転軸近傍の形状モデルの整合をとり結合処理を行う。円弧辺上の節点を奇数に制 限することで、回転軸上の点と弧上の点より六面体要素を生成することができる。まず、図 5 に示すように形状モデルから回転軸近傍の切り取る処理を行う。回転軸近傍を切り取る ことで、座標変換を行った際に回転軸上の辺が面になってしまうという問題を回避している。以後、2 つの物体は別々の処理で要素分割を行っている。次に、回転軸近傍を切り取った周囲部分を直交座標 系から円筒座標系に座標変換する。これを図 6 に示す。この円筒座標系で各軸を直交させることによ り、直交座標系での処理をそのまま適用することができ、要素分割を行うことが可能となる。円筒座 標系における?の単位は[rad]である。そこで、他の軸との大きさの整合をとるために?が最大の時に径 の最大値をとり、?が 0 のとき 0 となるように修正している。 上述の手順で生成したモデルを直交座標系の処理により要素分割を行う。 要素分割後、座標逆変換し、元の物体形状と幾何学的に等しい要素分割図を作成できる。ただし、 回転軸近傍部分を切り取っているため、結合処理を行う必要がある。そこで最後に、図 7 に示すよう に切り取った扇形状の物体と整合をとり結合処理を行う。ここでは、円弧辺上の節点を奇数に制限す ることで整合をとり、結合処理が行えるようになっている。その結果、円弧辺上の点と回転軸上の点 により六面体要素を生成することができる。以上により、最終的な要素分割を得ることができる。 回転軸回転軸 図 5:回転軸近傍の切り取り y x z z r ' ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? x y tan p r ' ? y x r 1 max 2 2 成分の最大値 r : rmax 図 6:座標変換 図 7:回転軸近傍の結合処理
4. 要素分割結果
本手法を用いて要素分割を行い、その有用性について検討する。電気学会モデル[3]に直交座標系での要素分割と円筒座標系での要素分割の両手法を適用した。その要素分割図を図 8 に示す。また、要 素分割結果を表1に示す。解析領域は 1/4 領域である。使用計算機は DellPrecision330(CPU:Pentium4 2.0GHz MEMORY: 2GB)である。 図 8(a):要素分割図(直交座標系) 図 8(b):要素分割図(円筒座標系) 表 1:要素分割結果 要素数 節点数 計算時間[s] 直交座標系 6392 4786 58 円筒座標系 11462 9066 35 円筒座標系に適用することで、破線で囲まれた付近において歪みが少ない六面体要素を生成できて いることが分かる。そして、その六面体要素分割に要する計算時間も少なくなっていることが分かる。 また、要素再分割により新たに発生した節点は円弧上に発生させることが可能となり、回転機解析の ために効果的な要素分割を生成することが可能となっている。
5. まとめ
形状認識と木構造を用いた六面体要素自動分割の一手法を提案した。また、本手法を円筒座標系に 適用する方法について提案した。本手法の有用性を検討するために、実際のモデルに適用した。その 要素分割結果より、要素の粗密を与えることができ、また歪みの少ない六面体要素が得られた。 今後の課題としては、回転機の解析においてメッシュの対称性が解析結果に大きな影響を及ぼすこ とが報告されている。そこで、モデルの対象性を考慮した要素分割を行う必要がある。また、空隙部 分などは局所的に要素を細かくする必要がある。そ こで、そのような部分に対して、ユーザが分割数 を指定することができるような手法の開発が挙げられる。参考文献
[1] N.Chiba et al., "An Automatic Hexahedral Mesh Generation System Based on the Shape-Recognition and Boundary-Fit Methods," 5th International Meshing Roundtable, Sandia National Laboratories, pp.281-290, (1996)
International Meshing Roundtable, Sandia National Laboratories, pp.205-216, (1996)
[3] 回転機の高精度数値解析技術調査専門委員会 , ”回転機の電磁界高精度数値シミュレーション技 術,” 電気学会技術報告, No.565, p.23, (1995)