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話題 人生の花

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Academic year: 2021

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話題 人生の花

著者

岩崎 葉子

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

現代の中東

46

発行年

2009-01

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00005716

(2)

話 題

人生の花

葉 子

「ことによると,来年の今頃はテヘランにいないかも知れないわね。」 メヘリーはため息をついた。夫の留学が実現すれば,半年後には荷物をまとめてイランを出ること になる。 遅咲きの夫の夢をかなえるためには迷いようのない選択。小学生の娘も現地の学校に通い始めれば, じきにネイティブ顔負けのおしゃべりになるはずだ。欧米で資格を取ったエンジニアの夫に,外国育 ちのわが子。ひとむかし前のイラン人女性なら鼻たかだかだったことだろう。 ところがメヘリーの気は重い。彼女は,10代の多感な時期に革命とイラン・イラク戦争とを経験し, 現在はシンクタンクで働くいわゆるキャリアウーマン。高学歴の女性がめだって社会進出をはたし始 めた世代の一員でもある。 両親が兄弟の教育にお金を注ぎ込みながら,自分には良妻賢母以外の期待をかけなかったことが, メヘリーにはずっと不満だった。親の勧める相手と結婚して子どもが生まれても,彼女は仕事を辞め なかった。娘が幼かった時期は,育児と家事と仕事とでふらふらになりながらも週末の地方出張をこ なし,年老いた両親の家にもせっせと通って手助けした。「もう体力の限界」とぼやきつつ,しかし生来 目から鼻へ抜けるような彼女は次第にその名を知られるようになり,いまや売れっ子のビジネスマネ ージメント専門家となった。 「ようやくわたしの人生,花の時代がきたのよ。」 そこへ,ふってわいた夫の留学話。 テヘランでの地位もキャリアも捨てて外国へ行き,そこで自分は何をするのだろう?あり余る時間。 語学学校?専業主婦?そして?数年後に帰国しても復職できる保障はない。 仕事をとるか,家族をとるか。多くのイラン人女性の間ではいまだ現実味のないこんな二者択一も, メヘリーにとっては憂鬱な現実だ。ご飯を炊きながら台所に仕事の書類を広げて頑張っているメヘリー に,今までは文句も言わずにいた夫も, 「わたし,あなたについて行かないかも知れない。」 というつぶやきを聞いてはさすがに苦悩の表情。 もちろん彼女の両親がこれを聞けば大叱責,大騒動となること必至である。女性にとっての人生の 花は家庭にこそ咲くと信じる両親の世代は,メヘリーの悩みを理解し得ない。 (いわさき ようこ/地域研究センター)

参照

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