2013 年度(平成 25 年度)
博 士 論 文
中小企業の医工連携に関する研究
立命館大学大学院
テクノロジー・マネジメント研究科
テクノロジー・マネジメント専攻
西平守秀
中小企業の医工連携に関する研究
A Study on Collaboration between Medical Professionals and
Japanese Small and Medium –Sized Industrial Enterprises
立命館大学大学院
テクノロジー・マネジメント研究科
テクノロジー・マネジメント専攻
学籍番号:
7431110003-7
西平 守秀
経営学的研究は未開拓の分野である。そこで,本研究では中小企業の医工連携の全体像を捉え るべく「中小企業の医工連携においてどのような本質的問題があり,またその関係がどのよう に形成され,展開・実行されるのか。」というリサーチ・クエスチョンを設定した。このリサ ーチ・クエスチョンを検討するために,3 つの命題を設定し検証した。 命題1 として「中小企業と医療専門家との間に認知上のギャップがある。」と設定し,まず は認知上のギャップという観点から本質的問題を探索した。検証の結果,両者の間の認知上ギ ャップは認められないことが分かったが,中小企業の能力不足が強く示唆された。 命題2 として「医工連携に参加する中小企業は他社とは異なる資源を有している。」と設定 し,資源ベースの戦略論で規定される経営資源に基づき不参加企業とは異なった,参加企業の 経営資源を探索した。検証の結果,参加・不参加企業間で相違する経営資源は認められないこ とが分かったが,参加企業にはEO(Entrepreneurial Orientation)を有することが示唆された。 命題3 として「医工連携に成功する中小企業は所定の資源を有している。」と設定し,医工 連携成功モデルを探索した。検証の結果,医工連携を成功に導くためには「対境担当者(boundary personnel)」としての担当者の存在やその役割,連携中での担当者を媒介とした組織的な能力 開発及び企業の技術提案能力の高さが重要なポイントになることが示唆された。また命題1 3 のディスカッションでは医療専門家の医療ニーズに関連するニーズ情報の粘着性の高さが共通 に議論された。 これら命題検証を通し上記リサーチ・クエスチョンに対する示唆として次の(1) (3)が 得られた。(1)中小企業の医工連携における本質的な問題はそのニーズ情報の粘着性の高さか ら起因する中小企業の能力不足である。(2)その医工連携の関係は中小企業の EO を起点とし て形成される。(3)中小企業の担当者を介した資源又は情報交換を中心としながらも,企業の 技術提案能力向上や,連携中での担当者を媒介とした組織的な能力開発を図る。このような背 景の中で中小企業の医工連携は展開される。 さらにこのような検証を通じて,中小企業は大胆な行動をとりながらも医療専門家との緻密 な関係を構築する必要があることを提案した。
【ABSTRACT】
This research concerns collaboration between medical professionals and small and medium-Sized industrial enterprises (SMEs). A sociological and management study of this topic has yet to be explored. Against this backdrop, to capture the overall picture of such collaboration, this paper sought to answer the following questions: “What kinds of major problems exist in collaboration between medical professionals and SMEs?” and “How are such relationships created, developed, and executed?” To answer these questions, three propositions were established and examined.
The first proposition was established as follows: “There is a gap in thinking between medical professionals and SMEs.” Based on this proposition, the study tried to identify major problems in terms of gaps in the way these actors think. The results did not in fact substantiate such gaps, but rather strongly indicated a lack of capabilities on the part of the SMEs.
The second proposition was established as follows: “SMEs participating in collaborative efforts have resources that are different from their competitors.” Accordingly, the study searched for management resources of the participating SMEs that are different from those of non-participating SMEs, assuming a set of management resources that are likely to be in place from a resource-based view. The results did not substantiate a difference in management resources between participating and non-participating SMEs, but instead revealed that participating SMEs possessed an entrepreneurial orientation (EO).
Finally, the third proposition was established as follows: “SMEs that succeed in collaborative efforts possess a certain amount of resources.” Based on this, the study searched for a successful model for collaborative efforts. The results suggested the importance of the existence and role of the person in charge as the “boundary personnel”, the development of organizational capabilities leveraged through the person in charge during the collaboration, and a strong ability in the firm to make technical proposals. All these are necessary in successful collaboration. Moreover, the discussions of the three propositions all shared the concern regarding the high stickiness of information on medical professional’s needs.
Through investigating the above propositions, the following results were obtained, which addressed the initial research questions. (1) The essential problem faced by SMEs in collaboration with medical professionals is the lack of abilities on the part of the enterprises. This is triggered by the high stickiness of information on medical professional’s needs. (2) Such relationship (collaboration) is created
starting with an EO at SMEs. (3) Such relationship is developed by responding to the needs of medical professionals. This is done chiefly by exchanging resources and information via the person in charge at SMEs, and also by reinforcing the firm's ability to make technical proposals and developing their organizational ability through the person in charge of the collaboration.
Moreover, through these investigations, the paper also proposes that, alongside taking bold measures, SMEs must develop a close relationship with medical professionals.
1. 研究背景(問題意識)... 1
1.1. 中小企業とヘルスケア分野...1 1.2. 医工連携の定義...2 1.3. 中小企業と医工連携...62. 先行研究のレビュー... 9
2.1. 中小企業と技術連携...9 2.2. 中小企業と企業家的志向性(Entrepreneurial Orientation) ...113. 研究フレームワーク(命題設定) ... 14
3.1. 知識情報移転とコミュニケーション(命題1 の設定) ...14 3.2. 組織間関係と経営資源(命題 2,3 の設定) ...17 3.3. 命題間の関係 ...194. 検証方法... 21
4.1. 命題 1 の検証方法 ...22 4.2. 命題 2 の検証方法 ...23 4.3. 命題 3 の検証方法 ...245. 検証結果... 26
5.1. 命題 1 の検証結果 ...26 5.1.1. 定量的アプローチ...26 アンケートの概要... 26 アンケートの結果... 28 5.1.2. 定性的アプローチ...30 インタビューの概要... 30 インタビューの結果... 32 事例分析... 33 5.2. 命題 2 の検証結果 ...35 5.2.1. 定量的アプローチ...35 アンケートの概要... 35仮説設定と分析モデル... 37 アンケートの分析結果... 43 5.2.2. 定性的アプローチ...45 インタビューの概要... 45 インタビューの結果... 47 事例分析(発見事項)... 51 5.3. 命題 3 の検証結果 ...53 5.3.1. 定量的アプローチ...53 仮説設定と分析モデル... 53 アンケートの分析結果... 58 5.3.2. 定性的アプローチ...62 インタビューの概要... 62 インタビューの結果... 63 事例分析(医工連携成功モデルの妥当性検証)... 74
6. ディスカッション... 80
6.1. 命題 1 に関するディスカッション ...80 6.2. 命題 2 に関するディスカッション ...84 6.3. 命題 3 に関するディスカッション ...88 6.4. 統合的ディスカッション...937. 結 論... 96
7.1. 総括...96 7.2. インプリケーション...98 (理論的インプリケーション)...98 (実践的インプリケーション)...98 7.3. 研究上の課題と限界...99謝 辞
... 101
参考文献
... 102
日本語文献...102 英語文献...106付属資料
1 滋賀県アンケート調査 ... 112
付属資料
2 全国中小企業アンケート調査 ... 119
1. 研究背景(問題意識)
1.1. 中小企業とヘルスケア分野
製造業の中小企業(以下,単に「中小企業」とも言う。)はニッチ市場でのイノベーシ ョンの担い手であると位置付けられている(中小企業庁,2009)。学術研究においても, 研究開発を行う中小企業の活躍が日本のイノベーション・システムにおいて重要であるこ とが指摘されている(元橋,2006)。また,研究開発を行う中小企業は大企業と比較して革新的であることも指摘されている(Cohen and Klepper, 1992)。その一方で,中小企業は 恒常的に経営資源に乏しく,内部資源に限界があり解決すべき課題は多い。また,製品ラ イフサイクルの短縮化,グローバル経済の進展など外部環境も厳しさを増しつつある。こ のため,中小企業は近年,このような劇的な環境変化に対応するため,産学連携,産産(企 業間)連携などの技術連携1に積極的に取り組み経営資源の補完を図っている2(中小企業 庁,2003;中小企業庁,2008;中小企業庁,2009)。すなわち,中小企業にとって大学や 他社などの外部組織との連携は有効な経営戦略の一つとなりつつある。 ところで,医療機器3,医薬品及び福祉機器などのヘルスケア製品について,その市場規 模は他の製品分野に比べても大きく,また国民の健康の維持増進に直接的に貢献する。厚 生労働省(2013a)によれば,国内の医療機器の市場規模は約 2 兆 4 千億円(2011 年)で ある。過去10 年の平均伸び率は 2%程度と堅調な伸びをしている。また医薬品については, 厚生労働省(2013b)によれば,国内の医薬品の市場規模は約 9 兆 3 千億円(2011 年)で あり,その市場は全世界の12%程度を占めており,国別での世界市場のシェアは米国に次 いで世界第2 位である。また,高齢社会のさらなる進展により医療費が引き続き増加する ことが予測されており,これに伴ってヘルスケア製品に関連する産業についても市場規模 の継続的な拡大が見込まれている。 しかしながら,当該産業の実態はその多くを海外に依存している。医療機器の国内生産 額は1 兆 8 千億円(2011 年)であり,そのうち約 3 割弱の 5 千億円弱が輸出されている。 1本研究において,技術連携とは,産産(企業間)連携,産学連携及び医工連携を含む上位概念として定義される。 2元橋(2006)は統計的に中小企業における産学連携の広がりを明らかにした上で,経営資源が乏しい企業がリスクの高 い産学連携に取り組み結果的に成功したものが,高いリターンを得ていることを指摘している。 3 「医療機器」とは薬事法の「医療用具」に相当するものであり医療に利用される機械器具を指す。但し,使い捨て・ 医療用材料をも含む概念とする。
医療機器の輸入額は約1 兆 584 億円であり,国内売上額の 44.4%を占める。輸出入額の差 については,輸入金額が輸出金額を約5,775 億円上回る。特に,国内で比較的市場規模の 大きい治療系医療機器については輸入割合が顕著に高い。具体的には輸出額が1,510 億円 であるのに対し輸入額はその4 倍の 6,460 億円であり顕著な輸入超過となっている。すな わち,国内の手術室ではその多くを海外の輸入製品で占められており,日本のヘルスケア 産業は海外製品に依存している状況である。 同様に,医薬品についても,財務省の貿易統計によればその貿易収支は,2000 年をピー クに悪化し,2012 年で輸入金額が輸出金額を約 1 兆 6,203 億円上回る。また,日本市場に 占める日本企業のシェアは約6 割である。それに対し,米国,欧州の企業のシェアはそれ ぞれ約2 割程度であるが,国内出荷金額のうち外資系企業の占める割合は年々増加傾向に あり,近年では約その3 分の 1 を占めるようになっている。また,2008 年 4 月以降の国内 企業の新薬開発の内訳では,外資系企業の導入品が半数以上を占めているなど国内企業の 技術開発力の低下が指摘されている。このような状況に対し,首相官邸(2013)は「日本 再興戦略-JAPAN is BACK-」を発表し,そのロードマップにおいて医療機器と医薬品の貿 易収支の改善を 2030 年目標として掲げており,国内企業によるヘルスケア産業の市場活 性化が急務な課題であると述べている。 ここで,その活性化において,多くの中小企業がヘルスケア分野に新規参入することが 重要視されている(内閣官房医療イノベーション推進室,2012)。ヘルスケア製品ではそ のニーズは多種多様であり,その製品や技術は細分化しておりその裾野は広い。また,大 企業は比較的大きな市場規模が期待できる分野を中心にその経営資源を集中投資する傾 向があり,ヘルスケア産業では大企業が進出しにくいニッチの分野が多数存在する。すな わち,大企業は市場参入にあたり投資回収の観点から,超高齢化に伴って多様化する医療 ニーズに十分に対応できない傾向があると推測される。ヘルスケア産業においてその分野 は少なくなく,むしろ多いものと考えられる。ヘルスケア産業は中小企業に適した分野で あると言えよう。
1.2. 医工連携の定義
本研究のテーマは中小企業の医工連携である。ここで,中小企業の医工連携について具 体的に論ずる前に,本節で医工連携の定義について検討してみる。まず日本の医工連携の歴史から概説する。 日本の医工連携の歴史は 1925 年にまで遡る。近年まで医工連携は,医学部と工学部が 連携する形で主に大学において行われていた。その始まりは,東北大学の佐藤・抜山式電 気聴診器とされる。この開発当時,臨床医学よりも基礎研究を重視する医学部と,技術を 用いて課題解決をしようとする工学部との間では認知上のギャップは著しく,連携を進め るには大変な苦労があったという。1980 年代までは大学の工学部が医学部を引っ張る形で 医工連携が推進されていた。医学部は必ずしも積極的ではなくその成果も限定的であった という。例えば,日本生体医工学会が 1962 年に設立されるが,その構成会員は工学部教 員やその学生で多く占めていた。そのような状況を打開すべく,医学部との連携を前面に 打ち出した日本医工学治療学会が設立されたのが1989 年である。 このように,医工連携は歴史的に視て大学内における医学部と工学部との技術連携を始 まりとし,近年では産業界にまで広がりを見せるようになっている。また,医工連携の連 携相手である医療専門家は大学の付属病院やその研究機関に属しているケースが多い。こ の点で医工連携は産学連携と同様な性質を有していると言えよう。そこで,産学連携に関 する先行研究をレビューしながら産学連携との共通点や相違点を検討する中で,医工連携 の定義を社会科学的又は経営学的な視点で検討してみる。 産学連携とは端的に言えば産業界と学術界との連携であり,その言葉が意味するものは 「産」と「学」との主体的関係(組織間関係)を捉える共同研究開発を指す。産学連携の 定義が活発に議論されるようになったのは,2000 年代に入ってからである。産学連携の重 要性が社会的にも認識される中で,産学連携に対する定義が学術的にも見られるようにな った。例えば,宮田(2002)は,「大学(アカデミック)と企業(産業界)との連携を総 称して産学連携と呼ぶ」(p.4)と定義した。一方で,原山(2003)は「大学と産業という 二つの異なるドメインに所属するアクターの相互作用によって,大学と産業の持つポテン シャルがそれぞれ高められていくプロセス」であると定義した。 しかしながら,その後も産学連携に関する定義が幾つか提案されたが,その定義は決し て一つには定まっていない。馬場・後藤(2007)は大学教員の研究活動と産学連携の実態 には多様性が認められ,産学間の知識移転は複雑で単純なモデルでは説明できないと述べ ている。すなわち,産学連携の定義を一義的に規定するのが困難なのは,産学連携の多様 性からくるのであろう。ただし,前述の宮田(2002)や原田(2003)の他,様々な定義か ら共通に視られるのは組織間の知識移転を説明している点である。事実,産学連携に対す
る社会学的・経営学的な関心事項として,産学間における知識や情報が流れる双方向の関 係,とりわけ,その知識,情報,又は技術などの移転に関する効果やそのプロセスが多く
取り上げられるようになっている4。
Bessant and Rush(1995)はその移転プロセスに関し,技術移転の成功に必要となる新規
技術を理解し吸収するために必要なマネジメント能力を複数事例から特定化する試みを
行っている。Levin, et al.(1987)は産学間の知識移転に関し,特許のライセンシングを通
じたフォーマルな経路の果たす役割が限定的であることを明らかにした。Cohen, et al.
(2002)は産学共同での論文発表が大きな役割を果たす他,産学間でインフォーマルなコ
ンサルティングなども重要な役割を果たすことを実証した。さらに,Breschi and Lissoni
(2001)は産学間の知識移転とは主体間に知識や情報が流れ,イノベーションに対する機
会が提供されるということより,主体間にイノベーションから利益を得られる能力が移転 されることであると説明している。また,これら先行研究も含め産学連携の技術移転に関 する多くの研究では,Cohen and Levinthal(1990)が定義する吸収能力(absorbtive capability) の概念(又はそれと関連するもの)を用いて,組織間での知識移転を検討する際には所定
の組織的能力の果たす役割に注目すべきだと主張している。なお,Cohen and Levinthal
(1990)は吸収能力を「新しい外部の知識の価値を認識し,消化し,商業目的に利用する 企業能力」と定義する。
Kano(1999)は,産学連携における RAP(Reciever Active Paradigm)という概念を提示
して産学連携における技術移転をモデル化する試みを行っている。Kano(1999)は,大学 と企業の間のギャップを認知ギャップと捉え,受け手である「企業の機会評価能力」と, 出し手である「大学の技術の習熟度(完成度)」と,を主軸として,大学からの技術移転 を定式化した。具体的に説明すると「企業の機会評価能力」とは2 つの要素の合成とされ る。第1 要素は自社のコア事業との関連性とされる。第 2 要素は技術的な内容を理解でき る能力とされる。その一方で「大学の技術の習熟度(完成度)」は基礎から応用,開発に 至るどの段階に当該技術開発が置かれているのかを意味する。この両者を軸として Kano (1999)は産学連携ギャップの調整モデルを提案している。 医工連携も,企業側から視れば産学連携と同様に,医療専門家の連携相手から知識や情 報などを企業側に取り込むための主体間の知識移転過程と言えよう。その意味で医工連携
と産学連携は共通しており,産学連携で議論される知識移転やそのための組織的能力とい う枠組みを用いて共通に議論できよう。 また,産学連携は,前述した知識移転を通じて企業側のニーズを大学の研究成果や基礎 研究(シーズ)に結合させることにより解決する過程としても捉えることができる。企業 側のニーズとは特定の技術を商業目的で事業展開する際に直面する技術的課題を意味す ることが多いだろう。この点に関し,阿部・小野寺(2012)は大学などと企業との連携を 分類する中で産学連携と医工連携との相違点を説明する。阿部・小野寺(2012)によれば, 産学連携を大学側の研究シーズと技術シーズ,あるいは大学側の研究シーズ及び基礎研究 力と企業ニーズとを結合する形態として分類している。その一方で医工連携を,知的財産 や解決手段を伴わない医療ニーズに基づく連携,又は医療専門家が考えた解決法や具体的 なアイディアが付随した医療ニーズに基づく連携として分類し,企業側の保有技術を医療 専門家が有する医療ニーズに結合する形態であることを強調する。また,谷下・重茂(2012) も同様な文脈で医工連携での医療ニーズや医療知識獲得の重要性を説いている。 産学連携などの連携とは異なり,医工連携では医療専門家のニーズ情報(医療ニーズ) の獲得やそのニーズ情報と自社のシーズ情報の結合を主な目的として行われることが多 いと言えよう。つまり,企業側から視れば,産学連携は企業ニーズ(技術的課題)を解決 することに力点が置かれ,医工連携では医療専門家が有する医療的課題を解決すべく企業 シーズ(技術開発力)を活用することに力点が置かれるということである。すなわち,産 学連携と医工連携間とでは,連携相手に対する,自己が有する知識や情報の性質やその目 的が異なっていると言えよう。 このように,医工連携は産学連携とは取り扱う客体の性質が異なっている。すなわち, 企業側は技術的課題などの自己のニーズを解決するということではなく,連携相手,すな わち医療専門家が有する医療ニーズを解決すべく,自己のシーズを持ち出すという,産学 連携とは逆の立場にあると言えよう。このため,医工連携では医療専門家が有する医療ニ ーズが当然に注目されるのである。 また,新藤(2008)は産学連携を「研究面の産学連携」と「事業化面の産学連携」とに 分類し,企業側から産学連携を視る場合には「研究面の産学連携」が重視されるだけでは なく,新製品・製法の開発,新たな特許開発,技術的問題の解決,品質改善などの「事業 化面の産学連携」も重視されるようになったことを示唆している。近年の産学連携の議論 の中心は研究面での新しい価値の創造から,事業化面での価値の収益化へとシフトしてい
るのであろう。この点に関連して,Baba et al.(2009)は産学間での光触媒技術の知識移転 のメカニズムを解明する中で,事業成果での社会還元を重視する科学者との技術連携が研 究開発の生産性を向上させることを明らかにしている。前述したように,医工連携は医療 専門家の医療ニーズを解決するために行われる。このため,医工連携では(少なくとも企 業側にとっては)事業面の色彩の濃い連携であると言えよう。 以上の先行研究のレビューから,産学連携と医工連携との共通点と相違点を考慮した上 で医工連携を定義してみると,本研究では医工連携を「医療専門家と企業とが協同し,企 業側の技術を活用しながら医療専門家の医療ニーズを解決し,その解決結果を事業化する 行為」と定義するのが良いだろう5。
1.3. 中小企業と医工連携
近年では,地方自治体,商工会議所までも医療専門家と中小企業とのマッチングを企画 しており,中小企業の医工連携が我が国のヘルスケア産業の発達を促す重要な枠組みとし て認識されるようになった。ヘルスケア製品の研究開発では医療専門家や彼らが所属する 医療機関との関係が製品化の実現に多大な影響を与えるからであろう。 しかしながら,そのヘルスケア製品において一般的な製品と異なり,企業にとって医療 専門家を通じて医療ニーズを把握することは難しい。企業は一般的な企業活動の中では医 療機関の内部まで入り込み医療専門家と日常的に交流して知識や情報を手に入れる機会 は滅多にない。どちらかと言えば医療専門家の世界は閉鎖的であり,医療専門家でなけれ ば医療ニーズを把握することは困難である。医療専門家以外にはそのヘルスケア製品開発 に必要な医療ニーズを提示・供給できるものは非常に限定的であり,医療専門家における 医療ニーズに関するニーズ情報の集中度が非常に高い。 近年の医療現場では医師ばかりでなく,看護師や臨床検査技師などのコメディカルを含 むチーム医療が主流となっている。多くのコメディカルは研究会などの様々な場で積極的 に外部発信していることが聞かれる。しかしながら,そのような場が活用されて医療ニー ズが中小企業に伝わる事例はまだまだ限定的である。さらに,医療専門家の職務内容は一 5 本研究ではアンケートを実施した(付属資料 1,2 参照)。アンケート中(例えば,付属資料 2)では,医療専門家が 所属する医療機関などを対象として医工連携を「貴社と,大学医学部,付属病院・研究機関などを含む医療機関・医療 研究機関との間での,技術知識の創造又は移転を目的とした共同研究開発プロジェクト」として説明すると共に,事業般企業とは全く異なることが良く知られ,医療界と産業界との間とで全く異なった用語, 技能及び規範などがあり,このような文化の違いが双方向のコミュニケーションを難しく していることが頻繁に指摘されている。 また,今日のように産業界も含め医工連携に熱心に取り組むようになったのはこの 10 年である。特に,中小企業の医工連携も含め社会的関心が急速に高まったのは,2001 年に 政府が出した第2 期科学技術基本計画によるところが大きいと指摘されている。この基本 計画では,ライフサイエンス分野が重視され,さらに多くの大学や研究機関が参入するこ とを起点にして,多くの企業が医工連携に興味を持つようになった。国の施策「医療イノ ベーション5 か年戦略」(内閣官房医療イノベーション推進室,2012)ではヘルスケアを 国家的な産業として捉えており,独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)も積極的に参画して再生医療技術及び癌対策技術などの市場化にまで乗り出し, 特に癌超早期診断方法や治療機器の研究開発,認知症の発症と進展にかかわるマーカーや 新薬の開発,早期診断及び治療への応用などを取り組むまでに至っている。その研究開発 には多くの中小企業の技術が直接又は間接的に投入されるようになっている。 以上説明したように,ここ 10 年の間にヘルスケア製品の研究開発において,医工連携 は大学のみならず産業界しいては中小企業においても活発に行われるようになり,それに 伴って中小企業の医工連携に対する社会的な関心が急速に高まっている。さらに,前述し たように,ヘルスケア製品の研究開発を行う場合には,その初期の研究開発段階から医療 専門家との意思疎通(コミュニケーション)を図って医療ニーズを獲得することが非常に 重要であり,そのため,初期の研究開発段階では当然に医工連携の円滑化が重要なテーマ として浮かび上がる。 しかしながら,中小企業がヘルスケア分野に新規参入する際の課題として,薬事法,PL 法などについては活発な議論・提案がなされているものの,その一方で研究開発段階での 医工連携について社会科学的視点,特に経営学的の視点から十分なディスカッションがな されていないのが現状である。実証的研究も含め社会科学的,経営学的研究が待たれてい る分野であろう。事実,医工連携を促進するためのクラスターが国内各地で形成され,中 小企業も含めこの十数年様々な取組みがなされている。しかしながら,他の技術分野に比 べヘルスケア製品では主な成果が挙がっていない状況であり,日本国内において医工連携 が効率よく進んでいない実態があると言われている6。 6全国的にも知られる,神戸市,大阪市での取組みに関しても製品化・事業化に繋がった事例は少ないと言われている。
中小企業の技術連携に関する国内研究では産学連携を中心とした技術連携が注目され てきたが,その一方で医工連携に関する国内研究は未開拓の分野である。中小企業のヘル スケア分野への新規参入の重要性が社会共通の認識になりつつある中,中小企業の医工連 携に関する研究は社会的に高い意義があると言えよう。 ここで,本論文の構成を簡単に説明する。第2 章では本研究に関連する先行研究を整理 し,この整理から本研究の位置付けを明らかにする。第3 章では本研究のリサーチ・クエ スチョンを提示し,そのリサーチ・クエスチョンに沿って本研究で検証する命題を複数設 定する。第4 章ではこの設定された複数の命題に対する検証方法についてそれぞれ説明す る。第5 章では,各命題における検証結果をそれぞれ説明する。第 6 章では,第 5 章で得 られた各命題の検証結果に基づきそれぞれディスカッションすると共に,統合的なディス カッションも試行する。第7 章では,本研究のインプリケーション及び研究課題を示して 本論文を結ぶ。なお,主に第5 及び 6 章は筆者の既出論文(西平,2012a; 西平・名取,2013) に分析の追加や重複部分の削除などを加筆及び修正を行っている。 このような危機意識のせいか,現代経営学研究所主催第83 回ワークショップのテーマは,「神戸医療産業都市を持続的
2. 先行研究のレビュー
2.1. 中小企業と技術連携
元橋(2006)は日本のイノベーション・システムが大企業の自前主義から外部連携によ るネットワーク主義に変容する中で,イノベーションの起爆剤となるのは中小企業である ことを示唆する。また,中小企業庁(2009)は,中小企業を日本での「ニッチ市場でのイ ノベーションの担い手」と位置付けている。しかしながら,これまでの経営学的研究の多 くが大企業の技術連携に研究関心が集中していた。そのため,中小企業の技術連携の研究 実績は少なく,特に日本においては非常に限定的である。ここでは,中小企業の技術連携 に関する先行研究を海外の事例も含め概観してみる。技術連携として企業間連携,産学連 携がその代表的なものであろう。まず中小企業の企業間連携についてレビューし,次に産 学連携,医工連携に関連する研究をそれぞれ順にレビューする。 企業間の共同研究開発の実証的研究での初期の代表的なものとして,Vonortas(1997) が挙げられる。Vonortas(1997)は米国の上場企業を対象にして産業レベルと企業レベルの分析を行い,企業レベルでは規模と過去の連携経験のみがRJV(Research Joint Venture)
の形成に有意な影響を与えることを検証した。また,Vonortas(1997)と同様に米国の製 造業を対象にして,Angel(2002)は大規模で製造業集積地に立地する企業が共同研究開発 に参加する傾向があることを発見した。欧州では,Bayona et al.(2001)が,スペインの研 究開発実施企業のデータを用いて,共同研究開発の参加要因を企業の参加目的から検証し た。Colombo et al.(2006)は,イタリアのハイテク・スタートアップ企業の連携参加要因 を技術的連携と商業的連携に分けて分析し,創業者の事業経験が長いほど技術連携が行わ れる傾向があることを検証した。 日本では,中小企業庁(2003)が中小企業を対象とする簡易な分析によって,規模,営 業利益率,研究開発活動及び異業種交流と,共同研究開発と,の間に正の有意な相関が見 られることを明らかにしており,岡室(2009)はこの中小企業庁(2003)の研究が日本国 内の企業間共同研究の企業要因に関するほぼ唯一の成果であると評価している。 次に,中小企業の産学連携に関する研究についてレビューする。産学連携については日
(2004)が大学を情報源として利用する企業の特性を分析し,規模と研究開発集約度の他 に,オープンな情報探索戦略が重要であることを立証した。また,Fontana et al.(2006)は, 欧州連合7 カ国の先進的な中小企業を対象として,外部情報を探索・選別し,相手に自社 の能力をシグナルする能力が産学連携への取り組みを促進することを明らかにした。Freel (2000)は,英国の小規模な製造業企業において,革新的な企業は過去に仕入先や顧客, 大学との連携を行った経験を有する傾向があることを明らかにしている。また,相手側と の近接性が産学連携に影響を与えているという研究(Santoro, 2000)や,企業規模と産学 連携の関係では産学連携は規模には影響されないという研究(Santoro, 2000)も知られる。 また,産学連携を成功させるためには連携相手との親密度の高さや連携相手側の専門家と の頻繁なコミュニケーションなど一定の条件が必要となることも明らかにされている (Sherwood and Covin, 2008)。
日本においては,産学連携の中小企業への効果に関する研究が多い。すなわち,産学連 携は中小企業の成長に寄与し(中小企業庁,2002),新しい知識の吸収,新技術の確立, 新しい人的つながりなどの効果をもたらし(中小企業庁,2003),そして自社技術レベル の向上や社員の質の向上などにつながる(中小企業庁,2008)というものである。また, 連携相手側の大学などについては,日本では地元の大学などの近接した相手先が多いと報 告されている(中小企業庁,2008)。企業規模と産学連携との比例的関係は,企業年齢の 若い企業では成立しないとする研究(元橋,2003)も報告されている。元橋(2003)によ れば,規模が小さく年齢の若い企業に産学連携が広がっており,そのことは大企業中心の 日本のイノベーション・システム変革の起爆剤となり得ると述べる。この研究は,中小企 業の産学連携の可能性の高さを期待させるものである。 しかしながら,日本の中小企業は産学連携においても課題が多い。中小企業診断協会富 山県支部(2007)は,連携実績のある中小企業でさえ人材面の不安,マーケティング情報 不足,時間の不足などの様々な問題点を抱えていると報告する。それらの問題を打開し, 連携を効果的に進めるためには,経営者の強固な意志とリーダー・シップの発揮が必要で あることが指摘されている(中小企業診断協会富山県支部,2007)。岡室(2009)は,独 自のアンケートを用いて国内の中小企業のサンプルを収集し,企業間連携や産学官連携に おいて,その参加要因や成功要因などをそれぞれ中小企業と大企業に分けて網羅的に分析 している。 以上,中小企業の産学連携に関する先行研究を整理したが中小企業に焦点を当てたもの
は未だに限定的である。また,産学連携を含め技術連携に関する先行研究の多くが,大企 業と中小企業を区別して分析したものは少なく,国内の中小企業の技術連携(企業間連携, 産学連携)を対象とする学術的研究は岡室(2009)研究がほぼ唯一の存在であると言えよ う。 次に国内における医工連携に関連する先行研究に目を向けると,医療機器の研究開発の 問題点を医工連携の視点も含め報告しているものがある(笠井,2003;笠井,2009)。ま た,医薬品については,共同研究開発の形態をとるプロジェクトがどのような属性を有す るのかを統計的に分析したものがある(中村,2009)。また,医薬品メーカのアライアン スの実態を統計的に明らかにしたものもある(小田切,2007)。しかし,笠井(2003;2009) の報告は総論での指摘であり,またその参加動機についてはアンケートを実施して報告し ているものの,その企業の属性に関する参加要因や成功要因までは定量的に分析していな い。また,中村(2009),小田切(2007)の研究は,大企業と中小企業を区別したもので はなく,またどちらかというと大企業を中心とした分析となっている。さらに,この分析 はプロジェクト単位で行われている上,医工連携に注目した分析とはなっていない。 また,前述した技術連携の先行研究も含めその企業属性を変数とした定量的な実証研究 は数多く報告されている。しかしながら,これら研究は物理的又は財務的などの外的な指 標に留まるものがほとんどであり,人的・組織的などの内的な指標まで踏み込んだ日本の 研究は数少ない。さらに,技術連携の先行研究では,定量的アプローチで分析しても同じ 事象に対し定性的アプローチも含めて検討するものは少ない。その理由は,その先行研究 の多くが大企業などの大組織をも研究対象とし,定性的アプローチ,より具体的には事例 分析を行う対象としては複雑な事象を扱ってしまうことになるからであろう。
2.2. 中小企業と企業家的志向性(Entrepreneurial Orientation)
中小企業の近年の研究では,その成長要因として企業家的志向性(Entrepreneurial Orientation:以下 EO とも言う。)の概念が海外で注目されているようになった。この EO の概念は,事業機会などの探索や発見を重要な起点として経営資源の再構築などの活動プ ロセスとして捉えられる企業家活動における戦略的な原動力を指す。EO の概念はアント レプレナーシップ(entrepreneurship)の概念を個人から組織へ拡張したものである。 Schumpeter(1949)はアントレプレナーシップを「資源の新結合を実行する者」と定義し,経営資源の新たな結合を強調する。この定義に関し,原(2002)は「アントレプレナ ーの機能とは発明を利用すること,より一般的に言えば,新商品の製造や新たな方法によ る旧商品の製造のために,まだ試みられていない技術的可能性を利用すること,現在の新 たな供給源や製品の新たな販路を開拓すること,産業を再組織化することによって製造パ ターンを革新ないしは革命化することとして捉え」(p.45)られると説明する。また, Timmons(1989; 1994)は「アントレプレナーシップとは,無から何かを想像し,構築する ことである」と定義し,その能力に焦点を当てている。この能力に関し,Timmons(1989; 1994)は成長志向のアントレプレナーは創造的・革新的能力と,強靱な経営技術を有する と説明する。さらに,Kao(1989)はアントレプレナーの行動に焦点を当て,「アントレ プレナーシップとは,事業機会の正確な見極め,事業機会に対する適切なリスク管理を通 じて価値を創造することを試み,コミュニケーション技術,管理技術を通じて,人的,財 政的,物質的資源を事業が機能するように動かすことである。」と定義し,事業機会を遂
行する動的な姿勢を強調する。Hart et al.(1995)も Kao(1989)と同様に,新たな事業の
機会に焦点を当てアントレプレナーシップを再定義している。 以上のアントレプレナーシップに関する先行研究から,アントレプレナーシップを端的 に説明すると,事業機会を遂行する意思を強く有して,経営資源を結合したりリスクを管 理したりする能力を活用する動的行為として捉えることができるだろう。また,この行為 の原動力には強烈な当事者意識があることが推測される。 そしてEO とは,企業の戦略的姿勢のうちアントレプレナーシップに関するするものを 指す。ただし,EO はその企業が行う戦略の具体的行動ではなく,市場への参加を導く一 連のプロセス,意思決定を意味しており,このEO から企業が実行する戦略の志向性を問
いている(Lumpkin and Dess, 1996)。換言すると,EO は「何を実行するのか」というよ りも「どのように実行するのか」という行動的且つ動的な側面に焦点を当てている。この 点において,前述したアントレプレナーシップの議論と符号しているだろう。 このEO の概念については,Miller(1983)が提示した概念を軸に議論され,EO は革新 性(innovativeness),先行性(proactiveness),危険追求性(risk-taking)の 3 つの次元に 集約して議論されていることが多い。革新性とは,既存の慣行や技術にとらわれることな く,新しいアイディア,次元,創造的なプロセスに取り組む傾向を意味する(Lumpkin and Dess, 1996)。先行性とは,市場における将来のニーズを予期して他社よりも先んじて行動
が高くつくようなプロジェクトに多くの資源配分を行うことを意味する(Miller and Friesen, 1978)。 このようにEO について前述の3 つの次元で統一的に議論されるようになったのはCovin and Slevin(1989)の研究によるところが大きいだろう。彼らはこの 3 つの次元の関係性を 追求して組織的なアントレプレナーシップの一側面を観測するのに適していることを明 らかにした。 この研究以降はこの3 つの次元を EO の概念として取り扱い,例えば Wiklund(1999)
はEO 及び競争優位性の関係性を検証し,さらに Wiklund and Shepherd(2003)は EO,知
的資源及び企業パフォーマンスの関係性を検討し,そして日本では江島(2011)が国内の
中小企業を対象にしてEO に関する実証研究を行っているなど,近年 EO に関する様々な
議論が展開されるようになっている。また,近年,中小企業のEO に関する研究では EO
の概念だけではなく,外的又は内的環境の他因子も含めてその適合性も議論されるように
なった。特に江島(2011)の研究のように,資源ベースの戦略論(Resource Based View)
が中小企業のEO の研究でも注目されるようになった。経営資源が慢性的に乏しい中小企 業にとっては資源ベースの戦略論とEO との関係は常に直面する経営的課題であろう。 前述の研究も含めEO に関する先行研究は,中小企業が EO を有することにより組織行 動が市場に対して能動的に変化し,新たな事業機会の探索と発見を繰り返して事業展開を 行うことにより企業パフォーマンスが向上することを想定している。ここで,技術連携も その事業機会探索の活動プロセスの1 つとして捉えるならば,中小企業の技術連携につい てもEO やアントレプレナーシップの概念を検討しても良いだろう。
3. 研究フレームワーク(命題設定)
第2 章では先行研究のレビューを行った。このレビューから医工連携の社会科学的,又 は経営学的視点からの研究は未開拓の分野であることが改めて確認された。本研究は中小 企業の医工連携における先駆的研究と言えよう。 そこで,本研究ではまずは中小企業の医工連携の全体像やその実態を捉えるべく実証的 検証を志向する。この観点から「中小企業の医工連携においてどのような本質的問題があ り,またその関係がどのように形成され,展開・実行されるのか。」というリサーチ・ク エスチョンを設定する。 そして,このリサーチ・クエスチョンに沿った複数の命題を設定し,この複数の命題を 実証的に検証する中で中小企業の医工連携をディスカッションする。これにより,中小企 業の医工連携の全体像を明らかにする試みを行う。また,論理的なディスカッションを目 指すため,命題設定の際,先行理論に可能な限り依拠した命題を複数設定する。3.1. 知識情報移転とコミュニケーション(命題 1 の設定)
組織間関係では,コミュニケーションは重要なテーマである。コミュニケーション論は 古くて新しいテーマである。古くから組織における人間間の協同を規定するのはコミュニ ケーションであると指摘されている(Simon, 1947)。コミュニケーション論については, 社会科学,心理学,経営学や,近年では工学においても様々に取り上げられているように なった。初期の技術経営学の研究においても技術移転とコミュニケーションとの関係が注 目されている。医工連携では,医療専門家から医療ニーズなどの知識情報を,コミュニケ ーションを通じて自組織内に移転するプロセスである。すなわち,知識,情報や技術の移 転とコミュニケーションとの関係を論ずる,コミュニケーション論の枠組みで医工連携を 捉えることができよう。以下に,技術移転とコミュニケーションに関する先行研究につい てレビューする。 技術移転に関する研究群では,その初期の段階から研究開発のパフォーマンスと外部組 織に対するコミュニケーション構造とは密接に関係することが示されている(Allen, 1966; Allen and Cohen, 1969; Tushman, 1977; Barley, 1990)。Weick(1990)はヒューマン・コミニュケーションが組織の本質であると述べ,組織における人間間の相互作用の重要性を示唆
する。バイオテクノロジーの分野において,Pisano(2006)は,バイオテクノロジーは知
識体系が複雑且つ未熟であることから,様々な連携の下,異なる専門分野間のすり合わせ
をしながら問題解決を図ることが必要であると指摘している。また Almeida(1996)は,
問題解決にあたり直接担当者同士が合ってコミュニケーションをとることが有効である
と述べている。そして,Audretsch and Feldman(1996)は,大学などの知識を基に産業化
するとき,初期の段階では直接的なコミュニケーションを介して受け渡される暗黙知が重 要な役割を果たすため,地域的にクラスター化が進む傾向にあることを指摘している。 Almeida and Bruce(1999)は技術や知識は人に根付くものであるであることを強く主張し
ている。またこの点に関し,伊丹(2003),及び野中・竹内(1996)は人的資源の知的活
動に注目し,暗黙知から形式知への変換の重要性を述べている。
また,Cohen and Levinthal(1989; 1990)は「吸収能力(Absorptive Capability)」という 概念を提示し,外部の知識を認識してその知識を消化する能力の重要性を説いている。こ れ以降はこの吸収能力を組織学習や企業パフォーマンスの向上などに関連付けている。そ して,吸収能力の概念が提示されたことを起点として,イノベーションについての企業の 潜在能力と実現能力の間のギャップを明らかにしようとする研究も出現している(例えば, Zahra and Gerard, 2002)。さらに,Jeroen and Mark(2010)はオランダの小規模な企業を事 例にして,「吸収能力」と連携相手との地理的距離とが関係することを示している。同様 な文脈で,児玉・鈴木(2006)は,産学連携に関する研究において産学連携を基礎にイノ ベーションを発生させる点で連携問題の本質は認知上のギャップの処理にあることを指 摘している。Atkinson(1994)は大学発の先進的な技術が企業から情報公開後 3-5 年経過 し て も 相 手 に さ れ な か っ た こ と を 問 題 視 し , こ の よ う な 技 術 を Development-Gap Technology と呼び,その両者のギャップを顕在化する必要性を示唆している。加納(2002) は産学連携で発生するギャップメカニズムについて認知ギャップと資源補完性ギャップ との2 つの次元で説明する。特に加納(2002)は認知ギャップについて大学側は産学連携 を成立させるためには研究成果の応用への展開を考慮した研究開発テーマの設定能力と 説明能力とが要求され,企業側は成果の潜在的な価値の評価能力が要求され,そのどちら 一方を欠いても共同研究の必要性についての認知ギャップが発生すると説明する。 組織におけるコミュニケーションは,どのような情報が各主体間にどのように伝達され るかが問われる。すなわち,各主体がどのような情報を獲得し,どのように処理し,他社
に伝達するのかが重要とされる。情報獲得・処理・伝達における利害や信頼関係に十分な
配慮が必要である(O’Reilly, 1983)。技術移転のコミュニケーション構造を論ずる中で,
Allen and Cohen(1969)は外部から情報を収集し内部に伝達する研究者として,technical gatekeeper の概念を提示し,その研究者の重要性を説明した。また原田(1999)は technical gatekeeper を発展させて,組織特有の知識へと転換する研究者の存在を明らかにし, transformer として定義している。さらに末永(2006)は前述した technical gatekeeper, transformer を踏まえ知識体系が互いに異なる組織間において知識通訳が行われることによ りその組織間での知識転換が円滑化に行われるモデルを説明している。特に,末永(2006) は「知識通訳」を行う者について「知識通訳者には、複数の利害関係者が属する知識体系 やその背景にあるコンテキストを理解していることが求められる」(p.76)と言及して翻 訳(translation)と区別する。また,末永(2006)はその知識通訳の定義に関し,形式知だ けではなく暗黙知を形式知に変換することで内容を補足し通訳することを意味すると説 明する。 これら研究群から示唆されることは,認知上のギャップなどの存在を前提として,連携 の中で研究開発を効率よく推進するためには,企業は直接的なコミュニケーションを図っ て,その認知上のギャップをまず埋めることが重要であるということである。 また医工連携では,医療専門家からシーズ(技術)を移転するという技術移転というよ りも,企業が医療現場のニーズを紡ぎそれを自社の技術に結合させることが議論の中心で ある。この意味で,医工連携で開発されるヘルスケア製品はユーザ開発関与型の製品(大 沼,2010)と言え,ユーザ・イノベーションの概念(von Hippel, 1986; 1988; 1994; 2001; 2005) で示されているように,企業はユーザたり得る医療専門家を自社の研究開発のプロセスに 取り込み直接的に関与する必要があろう。つまり,研究開発の段階において医療専門家と のコミュニケーションの重要性は非常に高く,両者間の認知上のギャップがあれば,それ がそのまま研究開発パフォーマンスに影響しまうことが示唆される。また,国内で医工連 携に関するクラスターが各地で形成されるも,製品化に繋がった事例,特に中小企業の事 例については非常に限定的である。この点から導き出される第1の命題は次の通りである。 命題1:中小企業と医療専門家との間に認知上のギャップがある。
3.2. 組織間関係と経営資源(命題 2,3 の設定)
「1.2 医工連携の定義」(p.2)で医工連携を「医療専門家と企業とが協同し,企業側の 技術を活用しながら医療専門家の医療ニーズを解決し,その解決結果を事業化する行為」 と定義した。医工連携とは医療専門家と中小企業との組織間関係を前提とした共同研究開 発活動とも言える。この意味で,医工連携を組織間関係論の視点からも捉えることができ よう。組織間関係論はそれ1 つで学問領域が確立されており複数の理論(パースペクティ ブ)が体系化されて様々な議論が展開されている。 組織関係論のパースペクティブとして様々なものが存在する(山倉,2001)。良く知ら れるものに,取引コストパースペクティブ(Coase, 1937; Williamson, 1975),資源依存パ ースペクティブ(Pfeffer and Salancik, 1978),組織セット・パースペクティブ(Evan, 1976) などがあり,近年は,制度化パースペクティブ(Powell and Dimaggio, 1991; Oliver, 1991) や,学習パースペクティブ(野中,1991; Doz, 1996)も注目を浴びるようになっている。 そのうち有力な(支配的な)パースペクティブは資源依存パースペクティブである。なお, 山倉(1993; 2007)によれば,組織間関係のパースペクティブは,組織間関係を捉える際 の基本的視点を与えるものであり,何を問題とし,いかなるコンセプトを中核としている のか,どこまでの射程範囲をもつのかを明らかにするものだとして説明する。 資源依存パースペクティブでは組織を維持継続するために資源が必要であることを前 提とする。資源とは,一般的にヒト,モノ,カネ,情報,知識など含むが,それを獲得す るためにはこのような資源を保有している組織との関係を形成することが必要である。そ して,資源依存パースペクティブによれば,組織が他組織との関係に入るのは,組織が存 続成長のために必要とし希少な資源を他組織が持っているからだとされ,資源補完性を基 づいた組織間関係の形成を説明する際に頻繁に用いられる分析枠組みである(組織間関係 の形成動機論)。また,このパースペクティブでは,1 つに組織が存続・成長するために は他組織から資源を獲得し,他組織に成果をもたらすことが求められる,2 つに組織は自 らのオートノミーを保ち,他組織への依存を回避しようとし,可能であれば他組織に対し パワーを拡大しようとする存在である,という2 つの前提に基づいて組織間パワーの形成 と展開及びマネジメントが考察されている(山倉,1993)。 また,山倉(1993)は,資源依存パースペクティブにおける依存条件を,(1)他組織 が保有しコントロールしている資源の重要性と,(2)他組織以外からの資源利用可能性 (資源の集中度)の関数であると説明する。この条件に基づき双方依存,双方独立,一方的依存の3 つ依存類型を提示している。 医工連携において,医療専門家は(1)医療知識や医療ニーズという特別な情報資源を 保有しコントロールし,(2)その情報資源は医療専門家個人に集中している,と言えよ う。それに加え中小企業は圧倒的に多く存在する。医療専門家にとって中小企業が保有す る資源が比較的重要であったとしても医療専門家の選択肢の幅は広く,医療専門家が欲す る資源は特定の企業に集中しているとは言えないだろう。医療専門家は中小企業との組織 間関係において強いパワーを有する。すなわち,医工連携における組織間関係では中小企 業の一方的依存である傾向が高いことが推測される。 このため,医療専門家との組織間関係を形成するためには,中小企業は他社と比較して 自組織の資源そのものの価値を高め,それによって医療専門家の自らへの依存(パワー) を高める必要があろう。すなわち,中小企業は他社とは異なった資源を有していることが 求められるだろう。この点から導かれる第2 の命題は次の通りである。 命題2:医工連携に参加する中小企業は他社とは異なる資源を有している。 また,資源依存パースペクティブと関連するパースペクティブとして資源ベースパース
ペクティブ(徳田,2000; Das and Teng, 2000)も良く知られる。資源ベースパースペクテ
ィブは組織が蓄積してきた資源をベースとし他組織の有効に活用する基本的枠組みとし て説明される。企業にとって価値があり独自性をもたらし他からは模倣することが難しい 資源・能力の形成,展開が企業の競争優位,すなわち成果をもたらすとされる。このパー スペクティブでは,不確実性の高い状況下で外部資源・能力の活用を図るために,自社の コア・コンピタンスの実行・展開が重要視される(所謂,組織間関係の実行展開論)。す なわち,戦略的視点から自組織のコア・コンピタンスを構成する資源を改めて認識する必 要があると論ずる。医工連携の関係が適切に実行され,中小企業が連携成果に到達するた めには,中小企業が医療専門家から必要な資源を獲得すると共に,それを自組織や市場に 環境適応させるべく,価値のある,他社が有していない独自性がある資源や能力を発揮す る必要があろう。この点から導き出される第3 の命題は次の通りである。 命題3:医工連携に成功する中小企業は所定の資源を有している。
ここで,本研究では命題2 及び命題 3 の「資源」として,資源ベースの戦略論(Barney and Clark, 1986)で規定される経営資源を用いて検証を行う。命題 3 は資源ベースパースペク ティブを基礎理論として設定された。前述したように資源ベースパースペクティブは,(ど ちらかと言うと)自社のコア・コンピタンスを活用した,その組織間関係の実行・展開に 軸足を置く理論である。この点で,資源ベースパースペクティブはそもそも戦略的色彩の 濃い概念と言えよう。 命題2 についてはその設定の際,医療専門家との組織間関係形成にあたり他社とは異な る資源を有していることの必要性を述べた。すなわち,医工連携に参加する中小企業は, 予め医工連携に適応する資源配分を行い,他社に対し優位的立場を構築することが求めら れよう。この点を捉えれば,資源ベースの戦略論の視点からも検討できよう。 このように本研究では命題3 のみならず命題 2 についても資源ベースの戦略論の視点で 検討する。また,命題検証の際には,組織間関係の形成後は担当者のコミュニケーション を介して組織間の資源交換や情報交換が行われる。このため,本研究では人的資本や組織 的資本の資源にも十分に配慮した検証を行う。
3.3. 命題間の関係
加納(2002)は,産学連携で発生するギャップメカニズムを認知ギャップと資源補完性 ギャップとの2 つの次元で説明する(図 1 参照)。認知ギャップについて,大学側は産学 連携を成立させるためには研究成果の応用への展開を考慮した研究開発テーマの設定能 力と説明能力とが要求され,企業側は成果の潜在的な価値の評価能力が要求され,そのど ちら一方を欠いても共同研究の必要性についての認知ギャップが発生すると説明する。そ して,資源補完性ギャップについて,共同研究の必要性について共通認識を持つだけでは 有効な産学連携は成立しないとして,企業側は資金・人材・資材などの研究開発資源を提 供し,補完的に社内でも受け皿としての社内プロジェクトを編成する必要があると説明し ている。 本研究では,命題1 を「中小企業と医療専門家との間に認知上のギャップがある。」と 設定し,まず認知上のギャップを検証していく。そして,命題2 を「医工連携に参加する 中小企業に参加する中小企業は他社とは異なる資源を有している。」と設定した。命題 3 を「医工連携に成功する中小企業は所定の資源を有している。」と設定した。すなわち, 命題2,3 では医工連携参加企業や医工連携参加企業の経営資源を検証していく。つまり,前述の加納(2002)の説明に従えば,命題 1 3 間の相互関係は医療専門家と中小企業と の間に発生する事項を俯瞰的に観察する点で,互いに整合的且つ補完的であると言えよう。 本研究の目的は先駆的研究として中小企業の医工連携の全体像やその実態を捉えるこ とである。このためこの点においても,認知上のギャップ(命題 1)及び経営資源(命題 2,命題 3)を同時に検証することは適当であると言えよう。 図 1 既存企業ブリッジモデルの機能不全とギャップの発生
4. 検証方法
本研究では前述したように命題1 3 の 3 つの命題を設定している。また,各命題の位 置付けは図 2 のようにそれぞれ整理される。 命題1 は「中小企業と医療専門家との間に認知上のギャップがある。」である。このた め,図 2 に示すように,医工連携参加企業と医療専門家との間において,その回答を対比 することで両者の認知上のギャップの有無を探索する。 命題2 は「医工連携に参加する中小企業は他社とは異なる資源を有している。」である。 このため,図 2 に示すように,医工連携参加企業と不参加企業との間で保有資源を対比す ることにより,その医工連携参加企業が保有する特異的な資源を探索する。 命題3 は「医工連携に成功する中小企業は所定の資源を有している。」である。このた め,図 2 に示すように,医工連携参加企業のうち医工連携成功企業が保有する,コア・コ ンピタンスを構成する戦略的な資源を明らかにする試みを行う。この試みを通じて,中小 企業の医工連携における成功モデルを探索する。 本研究はこの命題 1 3 を検証することにより,中小企業の医工連携の全体像を捉える ことが可能であると考える。 図 2 各命題の位置付けなお,定量的アプローチのみではその方法的制約から観測可能な企業変数の調査に留ま る。そこで,より深い議論を行うため,定量的アプローチに加え定性的アプローチ(事例 分析)をも実施する。定量的アプローチから得られる結果の妥当性や,その背景及び原動 力まで詳細に検証する試みを行う。なお,Yin(2008)は,事例分析は「なぜ」(why)又 は「いかにして」(how)といった問題を扱うのに有効な研究方法であると述べている。 以下,各命題の検証方法について図を参照しながら詳細に説明する。
4.1. 命題 1 の検証方法
命題1 は「中小企業と医療専門家との間に認知上のギャップが存在するのか。」である。 この命題1 の検証をパイロット・スタディとして取り扱う。すなわち,本命題の検証では 厳密な「検証」を行うというよりは,むしろ命題1 の検証を通して本研究の立ち位置の確 立や研究の方向性の明確化を行うことを目的とする。具体的には,命題1 の検証内容を「中 小企業が異分野から医療機器に新規参入し医工連携の枠組みで研究開発を進める際,医療 専門家との間で生じる認知上のギャップは何か。」とし,特定の地域での医療機器研究開 発に関する医工連携の取組みに焦点を当て,ミクロレベルでの認知上のギャップ調査を行 う。この調査を通じて中小企業が医工連携に取り組む際の本質的問題点を明らかにする試 みを行う。 命題1 に対し定量的及び定性的の 2 つアプローチを用いた検証を行う(図 3)。定量的 アプローチでは,ミクロレベルでのアンケート(付属資料 1 参照)を用いた調査を行う。 アンケート調査では,医療機器の研究開発を行っている又は行う予定である,中小企業と 医療専門家両者に対し「研究開発において重視する項目」,及び「研究開発における医工 連携の課題」についてアンケートを実施し回答を比較し認知上のギャップ項目を抽出する 7。 定性的アプローチでは,インタビュー調査を行う。インタビュー調査では,製品化に成 功8した中小企業の経営者,技術者,そして医療専門家と中小企業との連携推進を行うコー ディネータ9に対しインタビューを行い,医工連携における重要項目を抽出して,ギャップ 7本研究に関するアンケートの調査内容については,独立行政法人経済産業研究所(2004)が平成 15 年に行った産学連 携実態調査の調査票を参考にして作成した。 8 ここで言う「成功」とは異分野から医療機器産業に参入し,薬事承認を得て医療機器を製品として出荷できる状態に 至っていることと定義する。 9 「コーディネータ」とは,文部科学省産学連携支援事業に基づく役職であり,研究シーズとニーズ発掘・結合,優秀 な人材確保,適切な研究チームの組織,資金の調達がその役割とされる。主要な大学に設置されている役職であり,メ項目を検討する。そして,定量的及び定性的アプローチの両方から得られる結果を整理す ると共に先行研究を参照しながら命題1 のディスカッションを進める。 図 3 命題 1 の検証方法