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線形代数続論2016夏学期 Akira Masuoka

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2016. 8. 1.

線形代数続論 2016

担当 増岡 彰

教科書 木村達雄ほか著「明解線形代数」(日本評論社)第6章第9章に沿う.

授業の目標 V を複素数体C 上の有限次元ベクトル空間とし, V の基底 v1, v2, . . . , vn

1組選ぶ. すると, V は数ベクトル空間 Cn , 同型写像

Cn −→ V,

 c1

... cn

 7→(v1, . . . , vn

)

 c1

... cn

 = c1v1+· · · + cnvn

を通して同一視される. f : V → V を線形変換とすると, これは

(f (v1), f (v2), . . . , f (vn))=(v1, v2, . . . , vn)





a11 a12 . . . a1n a21 a22 . . . a2n ... ... . .. ... an1 an2 . . . ann





によって一意的に決まる n 次正方行列 A =

(aij) による左乗法 LA : Cn → Cn と同一

視される. この Af(基底 v1, v2, . . . , vn に関する) 表現行列と呼ぶ.

問題1 f に対し, 基底 v1, v2, . . . , vn をうまく選んで, その表現行列 A をなるべく簡単 な形にする方法を与えよ.

  対 角 行 列 は 確 か に 簡 単 な 形 だ が, A を 対 角 行 列 に で き る と は 限 ら な い. 一 般 に A

Jordan 標準形と呼ばれる簡単な形にする方法を, 第9章で与える.

V が幾何学的構造, すなわち内積をもつとする. v1, v2, . . . , vn が正規直交基底であれ

, V は上の方法で (標準内積をもつ) Cn と内積まで込めて同一視される.

問題2 線形変換 f : V → V に対し, 正規直交基底に関する f の表現行列が対角行列と

なるようにできるのは, f がどんな条件を満たすときか?

 これに対する答えを第7章で与える. ここまでスカラー域を C としたが, 実数体 R 上 のベクトル空間においても内積の概念ができ, 問題2の「実版」を考えることができる. この実版への答えを応用して, 2次超曲面の分類ができる. それを第8章で示す.

(2)

成績評価 小テストとレポート 評点 4割, テスト(3回の予定) 評点 6割 オフィスアワー 金曜日 昼休み自然学系棟 D 602

第6章 ベクトル空間と線形写像

6.1 ベクトル空間と部分空間 (復習)

K は実数体 R または複素数体 C を表す.

定義 (K 上の) ベクトル空間とは, 下に挙げるすべての条件を満たすような2つの演算 V × V → V, (x, y) 7→ x + y; K × V → V, (λ, x) 7→ λx

(それぞれ和, スカラー倍と呼ぶ) を伴う集合 V ̸= ∅のことをいう. (1) 和に関してV が加法群をなす. すなわち次の (i)–(iii) を満たす.

(i) 和が結合律と可換律を満たす.

(ii) 0 + x = x (∀x ∈ V ) を成り立たせる元 0∈ V (必然的にただ1) 存在す(これを零元と呼ぶ).

(iii) 各元 x∈ V に対し x + (−x) = 0 を満たす元 −x ∈ V (必然的にただ1) 存在する(これをx の逆元と呼ぶ).

(2) スカラー倍が次の(iv)–(vi) を満たす.

(iv) スカラー倍が次の2種類の分配律を満たす.

λ(x + y) = λx + λy, (λ + µ)x = λx + µx, λ, µ∈ K, x, y ∈ V. (v) スカラー倍が次の結合律を満たす.

λ(µx) = (λµ)x, λ, µ∈ K, x ∈ V.

(vi) 1 (∈ K) によるスカラー倍は恒等的, すなわち 1x = x, x∈ V. 注意 (1) ベクトル空間 V において次が成り立つ.

0x = 0, −x = (−1)x (x ∈ V ); λ0 = 0 (λ ∈ K). x + (−y) x− y とも書く.

(2) V , K .

(3)

例1 K に成分をもつ n× m 行列全体 M (n, m; K) , 通常の和とスカラー倍により K 上のベクトル空間をなす. 特に m = 1 の場合, n 次タテベクトル全体 Kn = M (n, 1; K) はK 上のベクトル空間である.

例2 K に係数をもつ変数 X の多項式全体 K[X] は通常の和とスカラー倍により K 上 のベクトル空間をなす. このうち n次以下の多項式全体 K[X]n も同じ和とスカラー倍に より K 上のベクトル空間をなす. 換言すれば K[X]nK[X] の部分空間である (次の 定義を見よ).

例3 ベクトル空間 V1, V2, . . . Vn が与えられたとき, 直積集合

n i=1

Vi = V1× V2× · · · × Vn

は成分ごとの和とスカラー倍によりベクトル空間をなす. これをベクトル空間としての直 積と呼ぶ.

定義 ベクトル空間 V の部分空間とは, 次の (1)–(3) を満たす V の部分集合 W のこと をいう.

(1) W ̸= ∅.

(2) W は和に関して閉じている. すなわち, x, y∈ W ならばx + y ∈ W .

(3) W はスカラー倍に関して閉じている. すなわち, λ∈ K, x ∈ W ならば λx∈ W .

注意 (2), (3) により V の上の和とスカラー倍を W に制限できる. こうして得られる演

算により W はベクトル空間になる. W の零元は V の零元 0 と一致. 従って上の条件 (1)

(1) 0 ∈ W

に替えてよい. また,x∈ WW における逆元は V における逆元 −x と一致する. 例4 どんなベクトル空間 V{0}V 自身を (それぞれ最小, 最大の) 部分空間とし て含む. また, W1, W2, . . . , Wr V の部分空間とすると,

共通部分

r i=1

Wi = W1∩ W2∩ · · · ∩ Wr,

(4)

はすべての Wi に含まれる最大の部分空間. また 和

r i=1

Wi = W1+· · · + Wr:={w1+· · · + wr | wi∈ Wi}

はすべての Wi を含む最小の部分空間になる.

V をベクトル空間とし, x1, x2, . . . , xr V の元とする. これらの元の線形結合全体

⟨x1, x2, . . . , xr⟩ := {c1x1+ c2x2+· · · + crxr | ci ∈ K}

, すべての xi を含む V の最小の部分空間をなす. これを x1, x2, . . . , xr が生成する部

分空間と呼ぶ. とくに V = ⟨x1, x2, . . . , xr となる場合, V x1, x2, . . . , xr によって生

成される, x1, x2, . . . , xr V の生成系であるという (「集合」でなく「系」と呼ぶのは 元のうちに重複を許すため). ⟨∅⟩ = {0}と約束する.

 有限 (個の元からなる) 生成系をもつベクトル空間を, 有限生成ベクトル空間という. 例 13に挙げたベクトル空間の例のうち, 有限生成でないものはK[X] のみ.

6.2–6.3 線形独立性と基底, ベクトル空間の次元 (復習)

V をベクトル空間とする. V の元 x1, . . . , xr が線形独立であるとは, c1x1+· · · + crxr = 0 を満たすスカラーが c1 =· · · = cr = 0に限る

とき, または同値に

すべての 1≤ i ≤ n に対し, xi∈ ⟨x/ 1, . . . , bxi, . . . , xr

が成り立つときにいう. ここで, bxixi を省くことを意味する. 従って最後の条件は, xi がそれ自身を除いた x1, . . . , xi−1, xi+1, . . . , xr の線形結合として表せないことを意味す る. 線形独立でないことを, 線形従属であるという.

定理A V の元 x1, . . . , xr に対し次が同値になる. (1) 線形独立な生成系

(2) 極小生成系. すなわち x1, . . . , xr V の生成系であり, これより1つでも省くと 生成系でなくなる.

(3) 極大線形独立系. すなわち x1, . . . , xr は線形独立であり, これに1つでも加えると 線形従属になる.

(4) V 1 .

(5)

定義 これらの同値条件が満たされるとき, x1, . . . , xr V の基底と呼ぶ. 零元だけから なるベクトル空間{0} は空集合 を基底に持つとみなす.

定理B 有限生成ベクトル空間 V は必ず基底をもつ. 基底の選び方はさまざまあるが, そ れを構成する元の個数は一定である.

定義 その一定値を V の次元と呼び, dim V で表す.

注意 有限生成ベクトル空間と有限次元ベクトル空間は同義語になる. 定理C (基底の構成法) Vn次元ベクトル空間とする.

(1) V の生成系 x1, . . . , xm が与えられたとき, これに含まれる極小生成系, 極大線形 独立系はどちらもV の基底になる.

(2) v1, . . . , vr V の 線 形 独 立 系 と す る と, r ≤ n で あ り, こ れ を 拡 張 す る V の 基 底 v1, . . . , vr, vr+1, . . . , vn が 存 在 す る. 実 際, vr+1 ∈ ⟨v/ 1, . . . , vr⟩, vr+2/

⟨v1, . . . , vr+1⟩, . . . , vn ∈ ⟨v/ 1, . . . , vn−1を 満 た す V の 元 vr+1, vr+2, . . . , vn

存在. これらを付け加えればよい.

 定理Bの後半と定理C(2)の証明に次を用いる.

定理D Vn 次元ベクトル空間, v1, . . . , vn をその基底とする. V n w1, . . . , wn

が与えられたとき,









w1 = a11v1+ a21v2+· · · + an1vn

w2 = a12v1+ a22v2+· · · + an2vn

. . . .

wn = a1nv1+ a2nv2+· · · + annvn

(∗)

を満たすスカラーaij (1≤ i, j ≤ n) が1通りに決まり, 正方行列 A =(aij

)∈ M(n, K)

を得る. このとき次が同値になる. (1) w1, . . . , wn V の基底. (2) w1, . . . , wn が線形独立. (3) A が正則行列.

 これらの同値条件が満たされるとき,正則行列Aを基底v1, . . . , vnから基底w1, . . . , wn

への変換行列と呼ぶ.

(6)

注意 上の定理の式 (∗) を行列の積の記法を借用して, (w1, . . . , wn

)=(v1, . . . , vn

)A

と表す. もともとベクトルのスカラー倍を表すのにスカラー a の左乗法 av で表す代わ りに, 右乗法 va で表しても問題なく, とくに上の記法を用いる場合は後者の方が適して いる.

演習題 上と同様の記法を用いると, ベクトル空間 V において元 x1, . . . , xr が線形独立

であるための条件は次のように表せることをたしかめよ. (x1, . . . , xr

)

 c1

... cr

 = 0 を満たす

 c1

... cr

 ∈ Kr が零ベクトルに限る.

演 習 題 次 を 示 せ. 有 限 次 元 ベ ク ト ル 空 間 V の 部 分 空 間 W は ま た 有 限 次 元 で あ っ て, dim W ≤ dim V . さらに, dim W = dim V ⇔ W = V .

6.4 部分空間の和と直和 (復習)

V を ベ ク ト ル 空 間, W1, . . . Wr をそ の 部 分 空 間 と す る. 6.1 節 で 定 義 し た よ う に,

r

i=1Wi = W1+· · · + Wr

r

i=1wi = w1+· · · + wr (wi ∈ Wi) の形の元全体からな

V の部分空間であった.

定義 この和が直和であるとは, 次の互いに同値な条件が満たされるときにいう. (1) 和の各元の表し方が一意的. すなわち

r

i=1wi =

r

i=1wi (wi, wi ∈ Wi) ならば wi = wi (1≤ i ≤ r).

(2) ri=1wi = 0 (wi ∈ Wi) ならば wi = 0 (1≤ i ≤ r).

(3) 和が与える全射ri=1Wiri=1Wi, (w1, . . . , wr)7→ w1+· · ·+wr が単射(従っ て全単射, 実は同型写像).

この場合, 和を

r i=1

Wr = W1⊕ · · · ⊕ Wr

で表す.

(7)

定理 記号を上の通りとする.

(1) r = 2 の場合, 次が同値になる. (i) W1+ W2 が直和. (ii) W1∩ W2 ={0}.

(2) r ≥ 2 が一般の場合, 次が同値になる. (i) ri=1Wi が直和.

(ii) すべての 1 < k ≤ r に対し, k−1i=1 Wi Wk の和が直和. (iii) すべての 1 < k ≤ r に対し, ( ∑ki=1−1Wi

)∩ Wk ={0}.

系 和

r

i=1Wi が 直 和 で あ る と す る. u1, . . . , up W1 の 基 底, v1, . . . , vq W2 の 基 底, . . . , w1, . . . , wt Wr の 基 底 で あ れ ば, こ れ ら す べ て を 並 べ て 得 ら れ る u1, . . . , up, v1, . . . vq, . . . , w1, . . . , wt はこの和の基底になり, 従って

dim

r i=1

Wi =

r i=1

dim Wi

が成り立つ.

定理 r = 2 の場合, 一般には

dim(W1+ W2) = dim W1+ dim W2− dim(W1∩ W2)

が成り立つ.

定義 ベクトル空間 V の部分空間 W に対し, V = W ⊕ U を満たす部分空間 U ⊂ V を W (V における)補空間と呼ぶ.

演習題 V を有限次元ベクトル空間とするとき, 次を示せ.

(1) 部分空間W ⊂ V に対し, W の補空間が存在する. {0} ̸= W ̸= V であれば, その 補空間は無数に存在する.

(2) W1, W2 V の部分空間とし, i = 1, 2 に対し Ui W1 ∩ W2 Wi における補

空間とするとき,

W1+ W2 = U1⊕ U2⊕ (W1∩ W2)

が成り立つ.

(8)

6.5 線形写像 (復習)

U , V , W をベクトル空間とする.

定 義 和 と ス カ ラ ー 倍 を 保 つ ベ ク ト ル 空 間 の 間 の 写 像 を 線 形 写 像と 呼 ぶ. す な わ ち, f : U → V が線形写像であるとは,

(1) f (x + y) = f (x) + f (y), x, y∈ U, (2) f (λx) = λf (x), λ ∈ K, x ∈ U

が満たされるときにいう. 線形写像 U → V 全体からなる集合を Hom(U, V ) で表す. と くにU = V の場合, 線形写像 V → VV 上の線形変換と呼び, その全体からなる集合 をEnd(V )で表す.

 線形写像の簡単な性質として,

(i) 線形写像 f : U → V は零元, 逆元を保つ. すなわち f (0) = 0, f (−x) = −f(x). (ii) 線形写像 f : U → V , g : V → W の合成 g◦ f : U → W はまた線形写像.

(iii) U のすべての元を V の零元に写す写像 U → V は線形写像. これを零写像と呼ぶ. (iv) V の上の恒等変換 IV : V → V, IV(x) = x は線形変換.

定理 f : U → V を線形写像とする. (1) f の核 ( Kernel)

Ker f ={x ∈ U | f(x) = 0}

U の部分空間である. (2) f の像 ( image)

Im f ={f(x) ∈ V | x ∈ U}

V の部分空間である. (3) f が単射 ⇔ Ker f = {0}.

(4) U が有限次元であれば次の等式が成り立つ.

dim U = dim(Ker f ) + dim(Im f )

注意 dim(Ker f ) f の退化次数と呼び null f で表す. dim(Im f ) f の階数と呼び rank f で表す.

(9)

U = Kn, V = Km の場合を考えよう. 行列 A ∈ M(m, n; K) に対し, その左乗法 LA : Kn → Km, LA(x) = Ax は線形写像であり, 対応 A 7→ LA は全単射

L : M (m, n; K) −→ Hom(K n, Km)

を与える.

(1) LA の 核 Ker LA , 斉 次 連 立1 次 方 程 式 Ax = 0 の 解 空 間 に 一 致 し, 退 化 次 数 null LA はその連立1次方程式の解の自由度に一致する.

(2) A の列ベクトルを a1, . . . , an とする, すなわち A = (a1. . . an

)

とするとき, LA の像 Im LA はそれらの列ベクトルが生成する Km の部分空間⟨a1, . . . , an に一 致し, 階数 rank LA は行列 A の階数に一致する.

(3) f = LA の場合に前定理 (4) の次元公式は, 第2章で学んだ等式 (Ax = 0 の解の自由度) = n− rank A

に一致する.

定義 線形写像のうち特に全単射であるものを同型写像と呼ぶ. 2つのベクトル空間の間 に同型写像 U → V が存在する場合, これらは同型であるといい, U ≃ V で表す.

 同型写像の簡単な性質として,

(i) 同型写像 f : U → V の逆写像 f−1 : V → U 線形写像, 従って同型写像. これによ, U ≃ VV ≃ U は同値.

(ii) 同型写像 f : U → V , g : V → W の合成 g◦ f : U → W はまた同型写像. (iii) 恒等変換 IV : V → V, IV(x) = x は同型写像.

演習題 次を示せ.

(1) f, g ∈ Hom(U, V ) とする. f + g とスカラー λ λf

(f + g)(x) := f (x) + g(x), (λf )(x) := λf (x) (x ∈ U)

により定めると f + g ∈ Hom(U, V ), λf ∈ Hom(U, V ) であり, こうして定まる演 算により Hom(U, V ) はベクトル空間になる.

(2) 前の例に与えられた全単射 L : M (m, n; K) −→ Hom(K n, Km) はベクトル空間 の間の同型写像である.

(10)

 ベクトル空間の構造に関して論じる限り, 互いに同型なベクトル空間は (同型写像を通 して) 同一視できる. 例えば, 生成系, 線形独立系, 基底は同型写像で互いに写り合う. さ らに

定理 2つの有限次元ベクトル空間U, V に対し,

U ≃ V ⇔ dim U = dim V.

 ベクトル空間 V の元の列 v= (v1, . . . , vm) が与えられたとき, 写像ϕv : Km → V

ϕv

 c1

... cm

 =(v1, . . . , vm)

 c1

... cm

 (= c1v1+· · · + cmvm)

により定める.

命題 この写像に関して次が成り立つ. (1) ϕv は線形写像である.

(2) ϕv が単射⇔ v1, . . . , vm が線形独立. (3) ϕv が全射⇔ v1, . . . , vm V の生成系. (4) ϕv が同型写像 ⇔ v1, . . . , vm V の基底.

注意 以後専ら, ϕv が同型写像の場合, 同値に v1, . . . , vm V の基底の場合にこの写像 を用いる. また以後, 基底という場合, それを構成する元の順序を考慮したもの (順序つき 基底) を指すことが多い. その場合, 基底を表すのに v = (v1, . . . , vm) のように記す.   Un 次 元 ベ ク ト ル 空 間, Vm 次 元 ベ ク ト ル 空 間, た だ し n, m > 0 と す る. U の 基 底 u = (u1, . . . , un) V の 基 底 v = (v1, . . . , vm) を 選 び 固 定 す る. 線 形 写 像 f ∈ Hom(U, V ) に対し,

(f (u1), . . . , f (un)) =(v1, . . . , vm)



a11 . . . a1n ... . .. ... am1 . . . amn



により決まるスカラー aij を成分にもつ行列A = (aij

)∈ M(m, n; K) が得られる.

定義 この Af(基底 u, v に関する) 表現行列と呼ぶ.

(11)

 この A による左乗法 LA: Kn → Km,

Kn −−−−→ Uφu

LA



y yf Km −−−−→ Vφv を可換図式にする, すなわち

f ◦ ϕu= ϕv◦ LA, 等しく ϕ−1v ◦ f ◦ ϕu = LA

を成り立たせる線形写像 Kn → Km として特徴づけられる. これは ϕu を通し KnU, ϕv を通しKmV を同一視するとき, LAf が同一視されることを意味する. 演習題 上の状況において次を示せ.

(1) 対応線形写像7→その表現行列が同型写像

Hom(U, V )−→ M(m, n; K)

を与える.

(2) 上の同型写像に同型写像 L : M (m, n; K) −→ Hom(K n, Km) を合成させたもの, f 7→ ϕ−1

v ◦ f ◦ ϕu が与える同型写像

Hom(U, V )−→ Hom(K n, Km)

である.

U = Kn, V = Km の場合を考えよう. Kn の基底u = (u1, . . . , un) Km の基v = (v1, . . . , vm) が与えられたとする. これらを構成するベクトルを並べて得られる P =(u1 . . . un

), Q =(v1 . . . vm

)

はそれぞれ n, m 次正則行列で, ϕu= LP, ϕv = LQ.

線形写像 f ∈ Hom(Kn, Km), ある行列 B ∈ M(m, n; K) を以てf = LB で与えら

れる.

ϕ−1v ◦ f ◦ ϕu = L−1Q ◦ LB ◦ LP = LQ−1BP

だから, 基底 u, v に関する f = LB の表現行列は Q−1BP に等しい.  さて, 次の問題を考えよう.

(12)

問題 有限次元ベクトル空間の間の線形写像 f : U → V が与えられたとき, UV の基 底をうまく選んで, それらの基底に関する f の表現行列がなるべく簡単な形になるように せよ.

 これへの答えは極めて単純で, 次の定理により与えられる. 定理 どんな線形写像 f : U → V に対しても, その表現行列が

(Er O

O O

)

, r = rank f

となるように UV の基底を選ぶことができる.

U = V の場合, 線形写像 f : V → V (すなわち V 上の線形変換) に対し, V の基底v と同じ基底 v に関してその表現行列 A (すなわち f ◦ ϕv = ϕv ◦ LA を満たす A) を簡単 な形にしようとすると問題は難しくなる. 以後この場合このような A, 線形変換 f の 基底 v に関する表現行列と呼ぶ. 次章以降, 次の問題について考える.

問題 有限次元ベクトル空間 V 上の線形変換 f : V → V が与えられたとき, V の基底v をうまく選んで, その基底に関するf の表現行列がなるべく簡単な形になるようにせよ.V = Kn の場合, この問題は次のように言い換えられる. 正方行列 B ∈ M(n; K) が 与えられたとき, 正則行列 P をうまく選んで P−1BP がなるべく簡単な形になるように せよ.

6.6 商空間と同型定理

V を ベ ク ト ル 空 間, W を そ の 部 分 空 間 と す る.x ∈ V に 対 し て, V の 部 分 集 合 x + W

x + W ={x + w | w ∈ W }

により定める. V の2元x, y に対し,

x + W = y + W x− y ∈ W

が成り立つことから,

(i) x + W = y + W, (ii) (x + W )∩ (y + W ) = ∅

(13)

のいずれか1つが成り立ち, 従ってVx + W の形の部分集合たちに分割できる. すな わち, V の部分集合{xi}i∈I を選んで

V =

i∈I

(xi+ W ) (互いに交わらない部分集合たちの和)

と表せる. x + W 全体 (x∈ V ) からなる集合 (x + W = y + W のとき, またその時に限 りこれらを等しい元とみなす)V /W で表す. x + WV /W においては元である. こ れを [x] または [x]W で表す. 従って

[x] = [y] (V /W の元として) ⇔ x + W = y + W (V の部分集合として).

(ただし, V /W の元を表す記号[x] V の部分集合を表す記号 x + W を混用することも 多い. どちらの意味か意識すべき.) 全射

[ ] : V → V/W, x 7→ [x]

が得られる. これを上の {xi}i∈I に制限すれば全単射になる.V /W の上に和とスカラー倍が

[x] + [y] := [x + y], λ[x] := [λx] (λ∈ K)

により, 元の表示の仕方によらずに定義できる. すなわち,

[x] = [x], [y] = [y] ⇒ [x + y] = [x+ y], [λx] = [λx].

さらに, これらの演算により V /W はベクトル空間になる. [ ] : V → V/W は線形写像 になり, W を核にもつ.

定義 V /WVW による商空間, [ ]V から W への自然な線形写像と呼ぶ.V /{0}V と等しい. V /V は零元のみからなるベクトル空間.

K[X] において n 次以下の係数がすべて零である多項式, すなわち p(X) = cn+1Xn+1+ cn+2Xn+2+ cn+3Xn+3+ . . . (ci ∈ K)

の形の多項式全体を Un とかく. これはK[X] の部分空間であり, K[X] =

p(X)∈Un

(p(X) + K[X]n).

(14)

これより, 写像 Un → K[X]/K[X]n, p(X) 7→ [p(X)] は全単射. さらに線形写像, 従って 同型写像であることが見てとれる.

演習題 V をベクトル空間, W をその部分空間とする. V の部分空間 U に対して, 次が 互いに同値であることを示せ.

(1) U W の補空間.

(2) 自然な線形写像 [ ] : V → V/W U への制限 U → V/W が同型写像.

(3) V =u∈U(u + W ). すなわち (i) V =u∈U(u + W ), かつ(ii) u̸= u in U なら(u + W )∩ (u+ W ) =∅.

定理A (準同型定理) ベクトル空間の間の線形写像f : U → V は同型写像 U/ Ker f −→ Im f, [u] 7→ f(u)

を引き起こす.

V をベクトル空間, W をその部分空間とする. W の補空間U を選ぶと, V = W⊕ U. 大雑把に言って, V /WV において W の元をことごとく零元と見なして得られるベク トル空間だから, V /WU と本質的に等しい. 定理Aを用いてより厳密に示すと, 射影

f : V = W ⊕ U → U, f(w + u) = u (w ∈ W, u ∈ U) は全射な線形写像で W を核にもつ. 従って同型写像 V /W

−→ U, [w + u] 7→ u が得ら

れる. これは前演習題の (2) にある U → V/W , u 7→ [u]を逆写像にもつ. 例えば前の例 において, K[X] = K[X]n⊕ Un. 射影が引き起こす

K[X]/K[X]n → Un, [ ∑

i≥0

ciXi]7→

i>n

ciXi

は同型写像で, Un→ K[X]/K[X]n, p(X) 7→ [p(X)] を逆写像にもつ.

定理B 有限次元ベクトル空間 V とその部分空間 W に対して dim V /W = dim V − dim W.

 定理Aの帰結としていくつかの同型定理が得られる (教科書 定理 6.17–18, 問題 6.17

). .

(15)

定理C f : U → V をベクトル空間の間の線形写像, WV の部分空間とすると, f に よる W の逆像 f−1(W ) = {u ∈ U | f(u) ∈ W } U の部分空間であって, 単射な線形 写像

U/f−1(W )→ V/W, [u]f−1(W ) 7→ [f(u)]W

が引き起こされる.

 第9章で用いる概念を導入しておく (相対基底, 相対線形独立系).

V をベクトル空間, W をその部分空間とする. v1, . . . , vr V の元とするとき, (i) [v1], . . . , [vr] V /W の基底となる場合, 同値に

(ii) v1, . . . , vr W のある補空間の基底となる場合

, v1, . . . , vr V mod W 基底であるという. もっと弱く, (i) [v1], . . . , [vr] V /W の線形独立系である場合, 同値に

(ii) v1, . . . , vr W のある補空間における線形独立系である場合, v1, . . . , vr mod W 線形独立()であるという.

例 定理Cの状況で, u1, . . . usUmod f−1(W ) 基底であれば, f (u1), . . . , f (us) V において mod W 線形独立になる.

6.7 計量ベクトル空間

定義 K = R または C の上の有限次元ベクトル空間 V に対し, その上の内積とは, 次の

条件を満たす (2 変数) 関数 ( , ) : V × V → K のことをいう. (1) 第1変数に関して線形. すなわち

(x1+ x2, y) = (x1, y) + (x2, y), (λx, y) = λ(x, y). (2) エルミート対称性. すなわち (x, y) = (y, x).

(3) 正値かつ非退化. すなわち, すべての x ∈ V に対し (x, x) ≥ 0. かつ(x, x) = 0 満たすのは零元 x = 0 に限る.

内積が1つ与えられた有限次元ベクトル空間を計量ベクトル空間と呼ぶ. 注意 複素数 z = x + y

√−1 (x, y ∈ R) に対し, z z の複素共役z = x− y−1 を表

(16)

. 従ってK = R の場合, 条件 (2) は対称性 (x, y) = (y, x) を表す. 条件 (1), (2) から, K = C の場合

(4) 第2変数に関して半線形: (x, y1+ y2) = (x, y1) + (x, y2), (x, λy) = λ(x, y). が, K = R の場合

(4) 第2変数に関しても線形: (x, y1+ y2) = (x, y1) + (x, y2), (x, λy) = λ(x, y).

が従う.

Kn 上の内積が

(x, y) :=

n i=1

xiyi

により与えられる. ここに x = t(x1, . . . , xn), y =n(y1, . . . , yn) ∈ Kn. この内積をKn 上の標準内積と呼ぶ. とくに断らない限り, この内積により Kn を計量ベクトル空間と 見る.

演 習 題 W を 計 量 ベ ク ト ル 空 間 V の 部 分 空 間 と す る と き 次 を 示 せ. V 上 の 内 積 ( , ) : V × V → K W × W に制限すると W 上の内積が得られ, 従って W はこの内 積により計量ベクトル空間になる.

 計量ベクトル空間 V において, 各元 x∈ V のノルム ||x||

||x|| =(x, x)

により定める. これは非負実数値をとり, ||x|| = 0 となるのは x = 0 の場合に限る. また

||λx|| = |λ| ||x|| (λ ∈ K, x ∈ V ).

定理 計量ベクトル空間 V において

Cauchy-Schwarz の不等式 |(x, y)| ≤ ||x|| ||y|| 三角不等式 ||x + y|| ≤ ||x|| + ||y||

が成り立つ. Cauchy-Schwarz の不等式において等号が成り立つのは xy が線形従属 の場合, またその場合に限る.

(17)

演習題 三角不等式から次の不等式を導け.

||x|| − ||y|| ≤ ||x + y|| (x, y ∈ V ).

 計量ベクトル空間 V において, 2元 x, y(x, y) = 0 または同値に (y, x) = 0 を満た すとき, この2元は直交するといい, x⊥ y または y ⊥ x とかく. 零元はすべての元と直 交する. u1, . . . , ur ,互いに直交する V の非零元からなるとき, これをV の直交系と呼. これは必然的に線形独立系である. ノルム1の元からなる直交系を正規直交系と呼ぶ. u1, . . . , ur が直交系であれば, ||u11||u1, . . . ,||u1r||ur は正規直交系になる.

n = dim V の場合, n 元からなる (正規) 直交系は V の基底をなす. この場合これを V (正規) 直交基底と呼ぶ.

補題 計量ベクトル空間 V において, 直交系 u1, . . . , ur と1元 v が与えられたとする. u := v

r i=1

(v, ui) (ui, ui)ui

と お く と, こ の u は す べ て の ui (1 ≤ i ≤ r) と 直 交 す る. v /∈ ⟨u1, . . . , ur で あ れ ば, u̸= 0 であり, u1, . . . , ur, u ⟨u1, . . . , ur, v の直交基底になる.

 これを順次用いることにより, 次が得られる. 計量ベクトル空間の基底から (正規) 直交 基底を構成するこの方法を, Gram-Schmidt の直交化法と呼ぶ.

定理 計量ベクトル空間 V において, 基底 v1, . . . , vn が与えられたとき, u1 := v1, u2 := v2(v2, u1)

(u1, u1)u1, u3 := v3

2 i=1

(v3, ui)

(ui, ui)ui, . . . , un := vn n−1

i=1

(vn, ui) (ui, ui)ui

V の直交基底をなす. 従って 1

||u1||u1, . . . ,||u1n||un V の正規直交基底をなす.

演習題 次の3つの複素ベクトルは C3 の基底をなす. Gram-Schmidt の直交化法を用い てこれらから正規直交基底を構成せよ. ただし, i は虚数単位

√−1 を表す.

v1 =

−i0 1

 , v2 =

0i

−i

 , v3 =

1i 0

(18)

 計量ベクトル空間の間の線形写像 f : U → V が内積を保つとは, これが (x, y) = (f (x), f (y)) (x, y∈ U)

を満たすときにいう.

演習題 次を示せ.

(1) 計量ベクトル空間の間の内積を保つ線形写像は必ず単射である. (2) V を計量ベクトル空間, v = (v1, . . . , vn) をその基底とするとき,

ϕv : Kn −→ V が内積を保つ ⇔ v1, . . . , vn V の正規直交基底.

演習題 W を計量ベクトル空間 V の部分空間とするとき, W のすべての元と直交するよ うなV の元全体からなる集合

W ={v ∈ V |すべての w∈ W に対し (v, w) = 0}

W の補空間であることを示せ.  この WW の直交補空間と呼ぶ.

第7章 固有値と固有ベクトル

 本章では, 断らない限りスカラー域を複素数体 C とする. それは C がもつ次の性質を 用いるためである.

代数学の基本定理 複素数を係数にもつ定数でない多項式 f (x) は必ず f (x) = c

s i=1

(x− αi)ei, α1, . . . αs は相異なる複素数, ei > 0, c∈ C

の形に (積の順序を無視すれば) 一意的に分解する.

 これより方程式f (x) = 0α1, . . . , αs を解にもつ. ei を解 αi の重複度と呼ぶ. 7.1 正方行列の固有値と固有空間

(19)

A = (aij

)

n 次(複素)正方行列とする. 1年次で学んだように, 文字 x の多項式 を成分とする n 次正方行列 xE− A =

ijx− aij) の行列式 ΦA(x) = det(xE − A)

A の固有多項式と呼び, 方程式 ΦA(x) = 0 (A の固有方程式)(重複度を込めて n 個の) 解を A の固有値と呼ぶ. 固有方程式の解としての重複度を,固有値の重複度と呼ぶ. 複素数 αA の固有値であるのは, Cn の部分空間

Vα := Ker(L(αE−A) : Cn → Cn)

{0}を真に含むことと同値. その場合Vα, Aの固有値αに関する固有空間, Vα\{0} の元を Aα に関する固有ベクトルと呼ぶ. 換言すれば, Aα に関する固有ベクトル とは, Av = αv かつ v̸= 0 を満たすベクトルv ∈ Cn のことをいう.

命題 A の固有値 α に対し, dim Vα ≤ α の重複度.

注意 第9章における考察を考えると, xE− A, αE − A に替えてA− xE, A − αE を用 いる方が間違いが少ない. det(xE − A) = (−1)ndet(A− xE) であり, 従って n が奇数 だとdet(xE − A)det(A− xE) は符号だけ異なるが, その場合でも det(A− xE) を 固有多項式と呼んで差支えない. Ker L(αE−A)Ker L(A−αE) は一致するので後者の表 示を用いる. また簡単のため, 行列とその左乗法が与える線形写像を同一視して, L(A−αE)A− αE, Ker L(A−αE) Ker(A− αE) でしばしば表す.

7.2 正方行列の対角化可能性

定理A 正方行列 A の相異なる固有値 β1, . . . , βr に対し, 固有空間の和Vβ1 +· · · + Vβr

は直和である.

n次正方行列A が対角化可能であるとは, n 次正則行列P をうまく選んでP−1AP が 対角行列であるようにできるとき, 換言すれば, V = Cn の基底 v = (v1, . . . , vn) をうま く選んで, それによる V 上の線形変換 LA の表現行列が対角行列であるようにできると きにいう.

定理B n 次正方行列 A に対し, 次は互いに同値になる. (i) A が対角化可能.

(20)

(ii) A のすべての固有空間の和(必ず直和)が Cn に一致する. (iii) A の各固有値 α に対し, dim Vα = α の重複度.

(iv) 重複度> 1 であるような A の各固有値 α に対し, dim Vα = α の重複度.

n 次正方行列 An 個の相異なる固有値をもてば, A は対角化可能である.

A =



1 2 1

−1 4 1

2 4 0



 が 対 角 化 可 能 か ど う か 見 よ う. ΦA(x) = (x − 1)(x − 2)2.

従 っ て, A の 固 有 値 は 1, 2, 2. さ て, 1 に 関 す る 固 有 空 間 V1 を 求 め る の は, 斉 次 連

立 1 次 方 程 式 (A − E)x = 0 を 解 く の と 同 じ. A− E =



0 2 1

−1 3 1

2 −4 −1



の 簡 約

階 段 化 が



1 0 1/2 0 1 1/2

0 0 0



 と な る こ と か ら, V1 は 次 元 1 (1 の 重 複 度 = 1 ゆ え こ れ

は 必 然), u := t(1, 1,−2) を 基 底 に も つ. 同 様 に, A− 2E =



−1 2 1

−1 2 1

2 −4 −2



の 簡 約 階 段 化 が



1 −2 −1

0 0 0

0 0 0



 と な る こ と か ら, V2 は 次 元 2 (= 2 の 重 複 度), v := t(2, 1, 0), w := t(1, 0, 1) を 基 底 に も つ. 定 理 B の 条 件 (iv) が 満 た さ れ る か ら, 同 定 理 に よ り A は 対 角 化 可 能. 実 際, す べ て の 固 有 空 間 の 基 底 を 並 べ て 得 ら れ る P :=(u v w)=



1 2 1

1 1 0

−2 0 1



は定理Aにより正則で, P−1AP = diag(1, 2, 2).

演習題 次の正方行列 A は対角化可能か? 可能であれば対角化せよ. (1)

0 10 0 01 1 0 0

 (2)

01 10 11 1 1 0

 (3)

00 10 01 0 0 0

(21)

演習題 実正方行列A に対して次が互いに同値になることを示せ.

(i) A が実対角化可能. すなわち複素正則行列 P をうまく選んで P−1AP が実対角行 列であるようにできる.

(ii) 実正則行列P をうまく選んで P−1AP が対角行列であるようにできる. (iii) A が複素行列として対角化可能, かつ A の固有値がすべて実数である

 複素正方行列 A =

(aij) に対し, 各成分をその複素共役に置き換えた行列をA = (aij) とかく. これの転置行列を

A =tA

とかき, A の随伴行列と呼ぶ. n次正方行列 A, B に対し, 次が成り立つ. (AB) = BA

命題 標準内積に関して

(Av, w) = (v, Aw)

がすべての v, w∈ Cn に対して成り立つ.

演習題 上の性質がA を特徴づけること, すなわちすべてのv, w ∈ Cn に対し(Av, w) = (v, Bw) をみたす n 次正方行列 B A に限ることを示せ.

定義 AA = AA を満たす複素正方行列 A を正規行列と呼ぶ. 命題 A を正規行列とする. 勝手な複素数 α に対して

Ker(A− αE) = Ker(A− αE).

従って, αA の固有値 ⇔ αA の固有値 であり, この場合

A α に関する固有空間= A α に関する固有空間.

系 正規行列A の相異なる固有値 α, β に対して Vα ⊥ Vβ. すなわち, α に関する固有ベ クトルと β に関する固有ベクトルは必ず直交する.

(22)

定義 次の4種類の行列を, それぞれの条件を満たすものとして定める (すべて正規行列). ユニタリ行列 A = A−1 (⇔ A の列ベクトルたちが Cn の正規直交基底)

直交行列 実行列かつ tA = A−1 (⇔ A の列ベクトルたちが Rn の正規直交基底) エルミート行列 A = A

実対称行列  実行列かつ tA = A

 正方行列A に対し, ユニタリ/直交行列 P をうまく選んで P−1AP()対角行列で あるようにできるとき, A はユニタリ/直交行列により ()対角化可能であるという.

定理C 複素正方行列 A がユニタリ行列により対角化可能 ⇔ A が正規行列.

定理D (1) エルミート行列はユニタリ行列により実対角化可能.

(2) 実対称行列は直交行列により実対角化可能.

A =



2 −i 1 i 2 −i

1 i 2



 (た だ し i = −1) は エ ル ミ ー ト 行 列, 従 っ て 正 規 行 列 だ か

ら ユ ニ タ リ 行 列 に よ り が 対 角 化 可 能. 実 際, ΦA(x) = x(x− 3)2 よ り, A の 固 有 値 は 0, 3, 3. 前の例にあるのと同じ方法により, V0u :=t(−1, i, 1), V3v :=t(1, 0, 1), w :=t(i, 1, 0) を基底に持つ. それぞれの基底に Gram-Schmidt の直交化法を施し, V0

正規直交基底 u := 1

3u, V3 の正規直交基底v :=

1

2v, w :=

1 6

t(i, 2,−i)

を得る.

れらのベクトルを並べて得られるP :=

(u v w) =



−1/3 1/2 i/6 i/3 0 2/6 1/3 1/2 −i/6



は前

系によりユニタリで, PAP = diag(0, 3, 3).

演習題 次の行列 A はどれも正規行列である. ユニタリ行列により(実対称行列であれば 直交行列により) 対角化せよ. ただし, i =

√−1, ω = −1 +

√−3

2 (1 の原始3乗根).

(1)

−12 −1 −12 −1

−1 −1 2

 (2)

1 ω

2 ω

ω 1 ω2 ω2 ω 1

 (3)

2− i0 1 + i0 0i

i 0 2− i

参照

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