14Seika2-2 生化学Ⅱ 第2回小テスト
2014.6.17 問題 1.
i) 酵素が触媒する化学反応はミカエリスとメンテンによると以下の化学反応式に従って進 む。ただし E は酵素,S は反応の基質,ES は酵素基質複合体,P は反応の生成物である。
E + S ⇄ ES → E + P
(k1, k-1, k2は速度定数)以下に,この反応式からミカエリス・メンテンの式を導出する過程を記しました。空欄に 適当な式,値,言葉を入れて文章を完成させて下さい。ただし,各々の分子の濃度を表す ときは[ ](ブラケット)を用いること。
a. 生成物 P が生じる速度を v とおくと, v= ![!]
!" = ① …式1
と表される。また,酵素基質複合体 ES の濃度が時間に依存して変化する様子は
![!"]
!" = ② …式2
で表される。
b. ここで,酵素反応が ③ 状態にある場合に利用できる近似を用いると式2の値 は ④ に近似される。
c. 反応に添加した酵素の総量を定数 [Eo]で表すと,[Eo]は「基質を結合していない酵素」 濃度と「基質を結合した酵素」濃度の合計と等しく,
[Eo]= ⑤ …式3 と表せる。
d. 式3を変形し,式2= ④ の方程式にこれを代入して[E]の項を消去すると [ES]= ⑥ …式4
となり, ⑦ =KMとおけばこの式は
[ES]= ⑧ …式5 と記載される。
e. 最後に,式5を式1に代入し, ⑨ =Vmaxとおけば,ミカエリス・メンテンの 式が導出される。
v= ⑩ …ミカエリス・メンテンの式
ii)ミカエリス・メンテンの式を変形した「ラインウィーバー・バーク;Lineweaver-Burk」 式を答えなさい。この式が示すグラフを解答用紙に記載し,「傾き」「y切片」「x切片」 の値を KMと Vmaxを用いて答えなさい。なお,グラフはx軸とy軸を正しくラベルすること。 iii) 小問 ii) のグラフに「競合阻害剤」を添加した反応の Lineweaver-Burk グラフを点線で 書き込みなさい。
<裏に続く> k-1
k1 k2
14Seika2-2 問題 2.代謝に関する以下の質問に答えなさい。
i) 代謝経路とは「基質 A から生成物 P に至る,ある決まった化学反応のステップ」と定義 される。生物の代謝経路がおおむね共通して持つ特徴を以下の3つのキーワードを正しく 使いながら説明しなさい。
キーワード: 定常状態 非平衡状態 調節
ii) 基質A,生成物P,中間化合物B,C,Dと 4 種類の酵素(I~IV)をもつ代謝経路 A⇄B→C⇄D⇄P
において,化合物Dが酵素 II に結合してこの酵素の働きを抑えてしまうことが実験で確認 された。このような現象を利用した,代謝経路調節のある仕組みの名前を答えなさい。 iii) ii) と同じ代謝経路において,CをBに変換する不可逆反応を触媒する新しい酵素 II'が 見つかり,酵素 II と酵素 II'が同時に働いている様子が確認された。酵素 II と酵素 II'が構築 する代謝経路調節の仕組みの名前を答え,このような,一見「無駄」とも思える仕組みで 代謝経路を調節するメリットを簡単に説明しなさい。
iv)異化代謝では体内エネルギー通貨である ATP を合成することが大きな目的である。なぜ ATPがあらゆる生物の「体内エネルギー通貨」となったのか,ATP の構造の特徴に注目し ながら説明しなさい。なお,説明には下の3つのキーワードを正しく利用すること。
キーワード: リン酸無水結合 共鳴 ΔG 問題 3.
<問題文1>下に解糖系の最初の4反応でグルコースが別の化合物に変換される様子を示 しました。A~D はそれぞれ反応を触媒する酵素を表します。
グルコース → グルコース 6リン酸 ⇄ ① → ② ⇄ ③ + グリセルアルデヒド3リン酸
i) 空欄①∼③に適当な物質名を答えなさい。
ii)「アルドール開裂反応」を触媒する酵素の記号とその酵素の名前を答えなさい。 iii) A~Dの中には解糖系全体の調節を担う重要な酵素が存在します。この酵素を表す記号 とその名前を答えなさい。また,この酵素を調節する「アロステリック調節因子」の例を 2つ答えなさい。
<問題文2>次に,下に解糖系の6番目の反応を化学反応式で示しました。 グリセルアルデヒド3リン酸 +❶NAD++リン酸 ⇄
1,3ビスホスホグリセリン酸+❷NADH+H+ iv)この反応を触媒する酵素の名前を答えなさい。
v) 嫌気条件下で下線部❷の NADH を下線部❶の NAD+に戻すために酵母で利用される「ア ルコール発酵」という代謝経路について,酵素の名前と関係する物質の名前を含めて簡単 に説明しなさい。
I II III IV
A B C D
解答用紙 所属 学籍番号 氏名
14Seika2-2 問題1.合計38点; i は2点x10
i) ①
k2[ES]
②
k1[E][S]-k-1[ES]-k2[ES]
③
定常
④
0(零)
⑤
[E]+[ES]
⑥
�� [�]
�!!+ �!
�!
+[�]
⑦
�!!+ �!
�!
⑧
�� [�]
�!+[�]
⑨
k2[Eo]
⑩
�!"#[�]
�!+[�]
ii)4点 1
� =
�!
�!"#× 1 [�]+
1
�!"#
ii) iii) グラフ(軸各1,グラフ各3点)
ii) 傾き2点
�!
�!"#
y切片2点 1
�!"#
x切片2点
− 1
�!
問題2.11点 i)6点
代謝経路を形成する反応のほとんどは通常定常状態に有り,中間生成物の濃度がほとんど 変化しない。また,代謝経路の調節点となるような反応が少なくとも1反応含まれている のも通常で,この反応の特徴は非平衡反応,つまり大きい自由エネルギー変化を伴う不可 逆反応である。
ii)5点 アロステリック調節 (フィードバック阻害)
<裏に続く> 1
�
1 [�]
14Seika2-2 問題2.(続)16点
iii) 名前5点
基質サイクル メリット5点
一つの不可逆反応によって代謝経路を調節するよりもより繊細な代謝流量の調節が可能に なる。
iv)6点
ATPは分子内に3つのリン酸基を持ち,このリン酸基をつなぐ2カ所のリン酸無水結合が それぞれ切断されるとΔG=-30.5kJ/mol の大きな負の自由エネルギー変化を伴う。ATP のリ ン酸無水結合がこのような大きなΔG を持つ[高エネルギー結合]である理由は2つ有り, 一つはリン酸基同士の負の電荷が反発し合うため(静電反発),もう一つは隣同士のリン 酸基の P=O が,リン酸無水結合中の酸素の非共有電子対と共鳴により安定化することを互 いに邪魔し合っているため,この結合が不安定になるからと考えられている。
問題3.35点 i) ①3点
フルクトース6リン酸 ②3点フルクトース1,6ビスリン酸
③3点ジヒドロキシアセトンリン酸
ii) 記号3点 D
名前3点 アルドラーゼ
iii) 記号3点 C
名前3点ホスホフルクトキナーゼ(6ホスフォフルクト1キナーゼ)
調節因子13点
ATP,ADP,AMP など 調節因子23点クエン酸,長鎖脂肪酸など iv) 3点
グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ v)5点
ピルビン酸がピルビン酸デヒドロゲナーゼによってアセトアルデヒドに変換された後,こ のアセトアルデヒドがアルコールデヒドロゲナーゼによってエタノールに変換される。こ の2番目の反応の時に NADH が NAD+に酸化され,解糖系に NAD+が供給され続ける。ピ ルビン酸デヒドロゲナーゼの活性に重要な補酵素(酵素の触媒活性に必要な低分子化合物) として「チアミンピロリン酸(チアミン二リン酸)」が活躍する(下線部特別配点)。