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第 12 章 経済成長理論 : ソローモデル (2)
12.1 外生的技術進歩の導入
• 技術水準の導入: 労働増大的な技術, A,を導入した生産関数を仮定。
Y = F (K, AL) (12.1)
• 技術進歩: αで進歩
A = αA˙ (12.2)
• 効率労働単位の導入: Y やKをALで割って一効率労働単位で測った場合の生産関数 y = Y
AL = f (k), k = K
AL (12.3)
• 前回同様、kの変化を考えると
˙k =d(K/(AL))
dt =
K˙ AL−
L˙ L
K AL−
A˙ A
K AL =
sY
AL− (n + α) K
AL= sf (k) − (n + α)k (12.4)
• 定常状態: ˙k = 0となる点に収束する – k∗とf (k∗)は一定
– 一人当たりの資本, KL, (これを仮にxとする)は技術進歩と同率で変化 k = K
ALよりk = 1
Ax (12.5)
˙k = ˙x A−
A˙ A x A=
˙x A− α
x
A= 0より
˙x
x= α (12.6)
– 一人当たりの生産量, YL,も技術進歩と同率で変化(収束後も一人当たりのGDPが成長) – KとY の成長率はn + α
12.2 成長率の計算
生産関数: Y = AKβL1−βとした際の各要素の変化率の関係を考える。
• 時間で微分して整理すると、YY˙ = A˙ A+ β
K˙
K + (1 − β)LL˙。
• Y の成長率はA, K, Lの変化率に依存する。
上級マクロ経済学:影山純二
例題: ある国の経済がY = AK0.3L0.7とコブダグラス型生産関数で近似されるとする。この国の 経済の1965年から90年にかけての年平均の伸び率は、Y が5.3%、Kが10%、Lが0.6%で あった。このとき、この間の平均の技術進歩率(Aの成長率、全要素生産性(Total Factor Productivity)成長率)は年率約何%であったか。
•
12.3 内生的成長理論 (AK モデル ) への拡張
モデルの特徴: ソローモデルとの違い。
• Y = AK。一人当たりではy = Ak。
• ソローモデルのf (k)がAkとなっている。
• kがどれだけ増えても、その限界生産性は逓減しない。
• コブダグラス型生産関数で言えば、y = Akβのβが1になっている。 – ソローモデル: β < 1 →収穫逓減。
– AKモデル: β = 1 →収穫一定。 モデルの含意: 経済成長経路の特徴。
• ソローモデルと同様にkの変化率を考えると、˙k = sy − (n + d)k = sAk − (n + d)k。 したがって、kk˙ = sA − (n + d)。
– ただしdは資本減耗率。
• すなわち、もしsA > n + dなら、kk˙ > 0。
k (n+d)k sAk
k n+d
sA
図12.1: AKモデル(sA > n + d)
• Aが十分に大きければ、経済成長は止まらない。 – Aを高めれば、経済成長率は永遠に高い。 – 所得の増加とともに成長率が低下しない。 – 所得水準は収束しない。
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上級マクロ経済学:影山純二
限界生産性が逓減しないと考える理由: 資本を増やしてもなぜ生産性が逓減しないのか。
• Kを、物的資本、人的資本、国全体の研究開発体制、インフラストラクチャー、経済全 体で付加価値を生産していくために必要なモノすべてと捉える。すると、資本が増えた からといってその生産性が逓減するわけではない。
• 例1: 資本蓄積過程を下記のように捉える。
– ノコギリ→ノコギリ電動→工場における資材の一括裁断(分業)。 – ノコギリ1本→ 2本→ ...ではない。
• 例2: 個々の企業では資本の限界生産性が逓減するが、社会全体では資本の限界生産性 が逓減しないと捉える。
– 個々の企業が資本を増加させ、社会全体の資本が増加・経済規模が拡大すると、分 業が発達。分業が進むと、社会全体でより効率的に生産できる。結果、社会全体で は、個々の企業の資本の限界生産性が逓減することを打ち消し、資本の限界生産性 が一定もしくは逓増する。
• 例3: 様々な正の外部性が存在する。 – 教育、余命など。
12.4 課題
1. ある国の経済がY = AKαL1−αとコブダグラス型生産関数で近似されるとする。資本分配 率、労働分配率をそれぞれ0.25、0.75とし、資本ストックが2%、労働投入量が1%、技術進 歩が1.25%毎年伸びるとすると、産出量(GDP)は毎年何%上昇するか。
2. ソローモデルとAKモデルを比較したとき、どちらの方が政府(経済政策)が重要となると 考えられるか。またその理由を説明せよ。
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