私法統一による国際商取引の発展

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私法統一による国際商取引の発展

大学院法学研究科 教授

曽野

そ の

裕夫

ひろお

(法学部法学課程)

専門分野 : 民法,国際取引法

研究のキーワード : 私法の国際的統一,ウィーン売買条約,民法,貿易

HP アドレス : http://www.juris.hokudai.ac.jp/~sono/

何を研究しているのですか?

いま最も力を注いでいる研究は、私法の国際的統一に関する研究です。私法とは、私人 間の利害関係の調整をするための法律分野です。例えば、商取引において売主が商品を引

き渡さない場合に、買主はどのような救済を求めることができるのか、というような問題

を扱います。ところが、この問題の解決の仕方は、国によって違うのです。日本では民法

が、売主が商品を引き渡さない場合には、買主は商品を引き渡すように売主に求めること

も、損害賠償を請求することもできると規定しています。これに対して、例えばアメリカ

では、買主は売主に対して、原則として損害賠償しか請求することができません。

このような違いがあるということは(なぜ違うのか、というのも法律学にとって興味深

い課題なのですが、この点は今は横におきます)、裁判所がどの国の法を適用するのかに

よって、紛争の解決が変わってくるということですから、国際取引においては特に深刻な

問題を引き起こします(裁判でどの国の法を適用するのかを決めるルールのことを国際私

法のルールといい、実は、日本の裁判所であっても、国際私法のルールに従って外国法を

適用することもあるのです)。このようなことでは、取引をする当事者は自分にどのような

権利があるのかが不明確ですから不安ですし、

外国法が適用されることになればその内容を

調べるためのコストもかかります。国ごとに

法が異なるということは、国際取引にとって

は障害なのです。そこで、国際取引をよりス

ムーズに行えるようにするための工夫の1つ

が、私法を国際的に統一する作業です。

私法の国際的統一の成功例としては、ウィーン売買条約(CISG)という私法統一条約 を挙げることができます。これは、国連の国際商取引法委員会(UNCITRAL)という機

関が作成した条約で、国際売買(つまり貿易)に関する私法ルールを定めています。米国・ 中国・EU諸国など、現在78か国が締約国となっていて、日本も2008年にその締約国にな

りました。締約国間の貿易にはCISGが適用されますので、世界貿易の7割はCISGによっ

て規律されるといわれており、世界的に大きな影響力のある条約です。

何をめざしているのですか?

異なる内容の法や異なる法的思考様式を有する国が、法統一を実現すること自体、困難

出身高校:北海道札幌西高校 最終学歴:北海道大学大学院法学研究科

法と倫理

(2)

な作業なのですが、CISGの

ように統一条約の作成に成功

したとしても、その先にも困

難 が 待 ち 受 け て い ま す 。

CISGを具体的な紛争に適用

するのは各国の裁判所です。

ところが、法の適用というの

は、実は機械的な作業ではあ

りません。法を具体的な紛争

に適用するためには、法を解

釈する必要がありますが、複

数の解釈が成り立つことがあ

ります(「法解釈には正解はな

い」といわれます)。そのため、各国の裁判所が独自の解釈・適用をすると、せっかく統一

条約があっても、その実際の適用のされかたが不統一であるということになりかねません。

これでは法統一は画に描いた餅です。そこで、各国が、統一私法をできるだけ統一的に解

釈することが求められます。

そのためには、各国の法律家がお互いにコミュニケーションをとりながら、協働して解

釈論を練り上げていく必要があります。私がめざしていることの1つは、そのようなコミュ

ニケーションが成立するための環境を整えるとともに、各国の法律家と協働して、具体的

にCISGの統一的な解釈のあり方を示すことです。2001年に世界の代表的研究者たちと協

力してCISG Advisory Council(CISG-AC)というグループを起ち上げ、CISGの統一的

解釈に関する意見書を公表してきているのですが、その意見を取り入れる判例や学説も増

えていて、成果を出しつつあります。

若い世代に対する期待は?

統一私法の統一的解釈というグローバルな作

業を支えていくための人材養成も欠かせません。

私のゼミでは、学生のうちから世界の法律家に伍

して法的な議論をする能力とセンスを養うために、

海外で行われる模擬国際商事仲裁大会――CISG

を用いた紛争解決をシミュレートする大会です―

―に参加し、経験を積んでいます。卒業生の多く

は、法曹や企業法務の世界などに進んでいます。

法律学は伝統的には(国によって法が異なるのですから)ドメスティックな学問でした。

しかし、現在では法律学もグローバル化し、日本の内向きの議論だけでは法律学も完結し

ない時代になってきています。この法律学のフロンティアに果敢に踏み出していく志を

もった皆さんに、是非お会いしたいと思っています。

模擬国際商事仲裁大会で弁論する北大生 CISG の統一的解釈のためのウェブ上のツール

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参照

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