内容
クチコミの定義と特徴
消費者行動とクチコミ
受信
発信
企業のマーケティングとクチコミ
消費者の相互依存性を活用したマーケティング
様々な課題
環境変化とマーケティングの変化
まとめ
消費者の課題
企業の課題
行政(と社会全体)の課題
参考文献
クチコミの定義と特徴
「クチコミ」の定義
佐藤(1971)
『(くちコミとは)俗語、口頭によるコミュニケーションをい
う。パーソナルコミュニケーションの一種。』
Arndt(1967)「Word-of-Mouth Communication」
"Oral, person-to-person communication between a
receiver and a communicator whom the reciever percieves
as non-commercial,regarding a brand,a product,or a
service.
次の3条件を満たすコミュニケーション
(i)話し手と受け手の間のコミュニケーションであること。 (ii)ブランド、製品、サービス、店に関する話題であること。 (iii)受け手が非商業的な目的であると知覚していること。
図表 マス広告とクチコミの違い
マス広告 クチコミ(eクチコミ)
情報の伝達方向 一方向
企業→消費者
双方向
送り手<->受け手 情報の発信、受信の
きっかけ
企業が発する 送り手から話す場合
受け手から聞く場合
情報のValence(価) 企業にとって有利な情報がほ
とんど
客観的な情報のみでなく正負の 判断を含む
情報の量、内容 CMなどで伝達できる情報の
量には限界がある
受け手の必要な情報を選択でき る
情報の送り手の動機 経済的動機
自社製品などの認知度や売上 などの向上のため
非経済的動機が中心 (ポイント などが動機になることも多い)。
送り手と受け手の関 係
企業と消費者 社会的関係によって結びついて
いる(関係のない場合も多い)。
0%# 20%# 40%# 60%# 80%#
テレビ広 告 テレビ番
組 新聞広告 折り込み
チラシ
新聞記事雑誌雑誌広告の記 事
ラジオ広
告/ラジ
オ番組 通販カタ
ログ ダイレク
トメール 企業から
の電子メ ール
企業のホ
ームペー ジ
消費者・
個人のブ
ログやホ
ームペー ジ クチコミ
サイト ショッピ
ングサイ ト バナー広
告
友人、家
族からの
クチコミ
店頭で実
際にみた
りさわっ
たりする 店員その 他
消費者行動とクチコミ
図表 情報源の利用状況(全カテゴリ平均)
出所)濱岡、 里村(2009)
メディアは多様化したがクチコミは依然として重要。 ブログ、クチコミサイトなども利用されている。
0. 0%$ 10. 0%$ 20. 0%$ 30. 0%$ 40. 0%$ 50. 0%$ 60. 0%$ D 5 >= )100B 1; 3 = . B 0C0A < / 1C0A < / %#1/ != . 8 7 1< / 19 @ A < / >,1/ (15 2 B >+1-5 2 B &1*4 / = '>/ / 4 0< / $>/ >4 / 1< 0A >= ?"1< / 0A >D . : = 4 : < / ?< / 6 >
クチ
コミの重要化(
情報化の逆説?
)
出所)濱岡、田中(2004)
図表 企業からの情報への不満(複数回答)
企業からの情報は信頼され
ていない。
クチコミのもう一つの側面(発信)
図表 経験別(満足、不満、中立)クチコミの発信、対象者(全製品カテゴリ)
0%# 20%# 40%# 60%# 80%# 100%#
購入/利
用した店
の店員に
話した
その企業
に電話や
手紙で連
絡した
その企業
にメール
で伝えた
その企業
のホーム
ページに
投稿
友人・家
族に口頭
・電話で
話した
友人・家
族にメー
ルで伝え
た
掲示板や
NG、自
分のブロ
グ等に投
稿
メーリン
グリスト
に投稿し
た
国や自治
体の消費
者相談窓
口に連絡
雑誌や新
聞に投稿
した
その他
出所)濱岡、里村(2009)
満足経験あり 72%
不満経験あり 34%
不満の方が積極的に企業に伝達する。 満足、不満とも身近な者への伝達が中心。 ただし、ブログなどに投稿する者も存在。
図表 製品カテゴリ毎の不満経験と企業、他社への伝達割合
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15%! 20%! 25%! 30%! 35%! 40%! 45%! 50%!
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(
' 携帯電話や関連サービス
出所)濱岡、里村(2009)
製品カテゴリによって不満経験率、その差異の企業、他社への伝達割 合は異なる。
図表 (映画につい
て
の)消費者意識の日米中比較
1"" 2"" 3"" 4"" 5"" 6""
***知 識 ***関
与 ***早
期採 用 ***オ
ピニ オン
・リ ーダ
ー ***e
オピ ニオ
ン・リ ーダ
ー ***映
画に つい
ての クチ
コミ の楽
しさ ***自
己効 力感 ***一
般的 交換 ***映
画に つい
ての クチ
コミ 発信
行動 ***映
画に つい
ての
e
クチ コミ
発信 行動 ***(
不満 時の
)
企業 への
苦情
(7)
日本の消費者は米中と比べて(e)クチ
コミの発信につい
ては消極的。
出所)濱岡、里村(2009)のデータに基づい
て作成。
図表(オンライン行動などに関する)消費者意識の日米中比較
1"" 2"" 3"" 4"" 5"" 6""**見知ら
ぬ者への 不信
***メッ
セージの
正しさを
見抜く能 力
***経済
的報酬
***コミ
ュニケー
ションス
トレス ***感情
の発露
***情報
共有の便
益/他者
への配慮
***アイ
デンティ ティ
***ネッ
トにおけ
る資源の
量と多様 性
***一般
的信頼
***知識
に基づく 信頼
***企業
への信頼 ***企業
への苦情
***スノ ッブ
/バン
ドワゴン 効果
***社会
関係資本
***e社会
関係資本
(7 )
出所)濱岡、里村(2009)のデータに基づいて作成。
日本の消費者は米中と比べて(e)クチコミの発信については消極的。
図表 (e)クチコミ発信の規定要因
出所)濱岡、里村(2009,ch.11)
クチコミの発信 クチコミの発信
クチコミの発信 eクチコミの発信eクチコミの発信eクチコミの発信 企業への苦情企業への苦情企業への苦情
知識
ポジティブ感情の開放 ネガティブ感情の開放
コミュニケーションの楽しさ eコミュニケーションの楽しさ e経済的報酬
一般的交換
eアイデンティティ 自己効力感
社会関係資本 e社会関係資本
日本 米国 中国 日本 米国 中国 日本 米国 中国
+++ +++ +++ ns ns +++ +++ +++ +++
+++ + +++ ns ns ns -- --
---ns ns ns ns +++ ns +++ +++ +++
+++ +++ +++
+++ +++ +++
+++ +++ +++
ns ++ ns ns ns ns
-- -- -- +++ + +++
ns ns ns + +++ + ns ns +++
+++ ns ns
+++ +++ +++
+++(----) 正(負)で1%水準 ++(---) 正(負)で5%水準 +(--) 正(負)で10%水準で有意。ns 分析に用いたが、 10%水準で有意でない。
企業のマーケティングとクチコミ
消費者間の相互作用を活用したマーケティング
消費者間の相互作用
言語によるもの→クチコミ+ 視覚によるもの
古典的な例
タクシー運転手に自社のクルマのことを誉めさせる。
サクラを行列させる。
自社のファッションアイテムを身につけさせた者を歩かせ
る。
図表 1990年代以降の(e)クチコミ・マーケティングへの注目の高まり
米国
1994年7月 Cadabra.com開設(後の Amazon.com)
レコメンデーションシステム 1995年 eBay設立
その後、評判システムなどを導入
1999年 epinions.com 1999年 BuzzMetrics
2002年 BzzAgent
Vocalpoint (TREMOR.com=P&Gの division)
2006 WOMMA設立
2009 FTC ガイドライン
日本
1997年頃 インターネットの商用サービス の低料金化(月4万円程度)
1997年12 月 CORE PRICE開設(後の カカ クコム)
2000年 @コスメ
2006年 buzzlife
2009年WOMマーケティング協議会設立 2011年10月 消費者庁 景品表示法上の問 題点及び留意事項
2012年5月 同ガイドライン改訂
図表 (最近の)クチコミを活用したマーケティング
自社の製品やキャンペーンによってWOMを刺激
他者を活用してWOMを広 めてもらう(自社との関係 は比較的わかりやすい)
同(分かりにくくなることが 多い)
製品によってクチコミを 刺激
バイラルマーケティング 話題性のある映像、CMな どの提供
種まきプログラム
試供品、新製品などの優先 提供
草の根マーケティング マス広告に頼らず、各地を 巡回して丹念に普及活動
エバンジェリスト(伝
道師)活用
発掘、コンテスト
インサイダー・プログ
ラム
優先的に情報や製品 を提供。開発などに協 力
紹介プログラム
友人を紹介アフィリエイト
クチコミ・エージェン
ト
プロモーションに参加 してもらう。
オピニオン・リーダー、
インフルエンサーの活
用
消費者からみると、より企業の存在を識別しにくい。→
いくつかのトラブル
2005年11月 「メカ音痴の女の子の体験日記」
携帯音楽プレイヤーの写真、素人っぽく撮ってあるが、影がふたつあることか ら、タングステンハロゲンランプとスタンドを使っていると見破られた。た だし、企業はブログ内の体験レポート記事はあくまで"各モニター個人の体 験"に基づくものという。
2006年 女子大生ブログの炎上
1日に1万人が見るブログを運営する女子大生(雑誌の読者モデル)らの活動 をテレビで紹介。映画の試写会にでかけたり、レストランでタダで食事をす る様子や、企業から提供された化粧品や飲料を手渡され、「上手なブログの 書き方」を指導されている様子も放映された。
2011年末ごろ 「やらせ書き込み」
業者が飲食店から報酬をもらい書き込み。
2012年12月ごろ
芸能人ブログによるペニーオークションやらせ。
不正防止のための企業の対応方法
制度面
規約による禁止
施設内設置端末からの場投稿の禁止(例 Google place)
活動方法の指定、支援
自分で気に入ったもののみを推奨するように(Bzzmetrics, elife)
WOMマーケティングに参加していることを伝えやすいカードの配布(同)
(情報)システム
事前のチェック
投稿をすぐに公開するのではなく、ある程度目視してチェック(例 tripadvisor) 評判システム (例 ebay, amazon.com)
投稿者や投稿の信頼性などを評価
自動レビュースクリーニングシステム(例 yelp.com) やらせ/広告的な投稿を自動で検出
業界の倫理ガイドライン
WOMMA(Word-of-mouth Marketing Association)
(米国)クチコミマーケティング協会
2004年初頭
Balter(BuzzAgent)、Blackcap(Intelliseek)
クチコミマーケティングの将来について語り始める。
(倫理的に?)問題のあるクチコミマーケティングなども行われる。
Carson(BuzzMetrics)も加わり、クチコミマーケティングをプロモートし、 その効果を測定し、倫理的な基礎を構築するための業界団体が必要である ことに合意。
Ethics First
Ethical Leadership 倫理の確立 Measurable ROI 効果測定
Best Practice よい事例の共有。
環境変化とマーケティングの変化
インターネット、ケータイの普及による変化
消費者間の相互作用が大規模に。情報がより速く伝達されるよ
うになった。
ユーザー層の拡大
ほとんど誰もが携帯含めてインターネットを利用
リテラシーの低い者の増大
ホームページ、ブログからツイッターへ
より容易に投稿
写真、動画など多様な情報の共有
図表 マーケティングやコミュニケーションの変化
F コンテンツ メディア
C
C
C
C
C コンテンツ
メディア
C コンテンツ
マスコミュニケーション
CMC
古典的なクチコミ
C コンテンツ
C コンテンツ
出所) Hoffman and Novak (1996)
19
発信者、受信者の区別が明確であり、責任も明確。
出所) Hoffman and Novak (1996) より作成
C コンテンツ
メディア
C コンテンツ
C
C
F
F
コンテンツ F
F コンテンツ
20
メディアと企業、メディアと消費者、消費者と消費者、企業と消費者がダイレ クトにコミュニケーション。これによって責任などが曖昧になった。
まとめ
消費者の課題
情報の受信者として
経済的報酬によってeクチコミが発信されることもあり、必ずしも真実では ない情報がeクチコミとして発信されていることに注意すべきである。
「見知らぬ者からのメッセージを見抜く能力」が比較的低い。
情報を利用する消費者としても、多くの情報源からより信頼できる情報を見 分ける能力を高めることが必要。
発信者として
クチコミ、eクチコミとも利用(受信)と比べて発信をしている割合が低い。 「クチコミ発信」「eクチコミ発信」の動機としても「ポジティブ感情の開放」 「コミュニケーションの楽しさ」「経済的利益」といった個人的な利益に基づ く。
情報を共有することによって消費者にとって、よりよい製品やサービスを得 る可能性を高めるといったことを意識して情報を発信(共有)することが必要。
企業の課題
クチコミの理解
クチコミの効果の源泉は中立、自発的な情報であること。これを冒すようなマーケティング は無意味。
負のクチコミがあることの理解
不正が露見した時のコストは大きい。また、多様な消費者が存在するので、彼(女)らによって不 正を発見される可能性も極めて高い。
クチコミ・マーケティングの課題
eクチコミについては「経済的報酬」も正で有意。ポイントなどの経済的なインセンティブを 与えて書き込みを促進できることを意味するが、本来のクチコミの影響力が低下する可能 性が高いことに注意。
倫理 自社との関係を明示するように注意。
実行 刺激、促進するような状況をつくることは可能かもしれないが、 管理することは逆 効果。
効果測定 WOMマーケティングは安上がりではない可能性が大きい。 マーケティング=顧客志向の原点へ
売りたいものではなく、顧客が欲しがるようなモノ・サービスを提供する。
政策立案者(+社会全体)の課題
指針について
現在の制度である程度対応可能。不正行為者についての情報公開促進。
相談先としての告知の必要性
不満などの伝達先としての「国や自治体の消費者相談窓口に連絡した」の 利用率は1.2%。なにかあったときの相談先としての活動の告知などが必 要。
リテラシー教育の必要性
若年層、高齢者など比較的リテラシーの低い者への効果的な教育が必要。 不正を見抜く能力。
社会関係資本の再構築
日本は米国、中国と比べると一般的信頼が低い、社会関係資本が少ないと いった状況が明らかとなった。これらにいかに対応するか、個人レベルだ けでなく、政策レベルでも取り組む必要がある。
参考文献
濱岡豊(2002)「アクティブ・コンシューマーを理解する」『一橋ビジネスレビュー』冬 号, Vol. 50, No. 3, pp.40-55
濱岡豊(2004)「共進化マーケティング 消費者が開発する時代におけるマーケティング」 『三田商学』Vol. 47, No. 3
濱岡豊(2006)「消費者間の相互作用 クチコミを中心に」清水、田中編著『現代のマー ケティング戦略シリーズ4 消費者行動』有斐閣
濱岡豊、田中秀樹(2006)「コミュニケーションインテグリティの確立にむけて あなた は消費者の声に応えているか?」『マーケティング・ジャーナル』,Vol.25, No.3,p.54-70 濱岡豊(2007)「共進化マーケティング2.0 コミュニティ、社会ネットワークと創造性のダ イナミックな分析に向けて」『三田商学』, Vol.50,No.2
濱岡豊、里村卓也(2009)『消費者間の相互作用についての研究 クチコミ、eクチコミを 中心に』慶應義塾大学出版会(2008年度科学研究費研究成果公開費・学術図書)
濱岡豊 (2012), "Twitterにおけるリツイート(RT)回数の規定要因," 慶應義塾大学/京都大学 GCOEディスカッション・ペーパー
濱岡豊(2012)「クチコミ・プロモーションの効果の規定要因」『マーケティング・ジャー ナル』夏号