業績の下振れリスクを極力抑える体制を築く
中期経営計画で示した通り、コンテナ貨物の伸び率は 年率 7 〜 8 %程度を見込んでいます。また、成長の中心 はアジアで、伸び率は 10 %弱となると予想しています。
欧米はやや落ちるものの、それでも 6 〜 8 %程度の伸 びは期待できます。これに対して船腹供給は、ひと桁後 半で拡大していく見通しで、需給は当面ほぼ一致する と見ています。
しかし、リーマン・ショック後のように、市場が考え られないスピードで縮小することが今後もないとは言 い切れません。定期船事業には常に市況が大きく変動 するリスクが伴います。扱う貨物にライフサイクルの 短い消費財が多いため、短期での輸送契約が基本にな らざるを得ません。こうした事業構造においては、大き な利益を得ることよりも、むしろ下振れリスクを抑え、
大きな損失を出さない体制をつくることが重要だと考 えています。
「宜候プロジェクト」におけるコンテナ船隊のライト アセット化は、まさにこうした認識に基づいたもので した。しかし、これには多少誤解があったようです。ラ イトアセット化とは、運航規模の縮小を意味するわけ ではありません。世界でコンテナ貨物は拡大していま すから、輸送量を増やす方針はこれまでと同じです。市 況を見ながら、船腹の調達方法を多様化させることが ポイントなのです。
今後、自社船および長期用船による船腹量を徐々に 減らし、短期用船での手当てを増やすことで、荷動き低 迷や運賃下落の局面でも、定期船事業の収支が悪化し 東日本大震災による当部門への影響
震災が年度末の
3
月であったこと、また国内依存度が比 較的低い事業構造であることから、当年度業績への影響 は軽微でした。しかしながら船積みの取り止め、スケ ジュールの混乱などにより、ある程度の損失は計上せざ るを得ませんでした。今後については、被災した顧客企業 の復興動向や、原発事故に伴う風評被害の程度が不透明 なため、予想がたてづらい状況です。特に自動車関連部 品の輸送は、部品メーカーの出荷遅れにより、上期業績に相当な影響が出ると予想しています。その結果ターミ ナルでの取扱量にも影響が出ています。通常レベルに戻 るのは下期になる見通しです。
一部の外国船社で、日本への寄港を一時中止する動き も見られましたが、当社グループとしては、国際ルールお よび政府のガイドラインなどを遵守しながら粛々と運航を 続け、荷物の出荷再開を待っています。
フォワーディング事業のさらなる拡大
アジア発着の荷物を取り込む
もうひとつ重要な施策として取り組むのが、ノンア セットビジネスであるフォワーディング事業の拡大で す。海運だけではカバーできない、多種多様な顧客ニー ズに応える体制を構築し、より幅広く荷動きを取り 込んでいく狙いがあります。
グループ会社である郵船ロジスティクスでは、重点 事業に海上フォワーディングを掲げ、 2013 年度までに 世界トップクラス入りを果たすことを目標としていま す。現在の取扱量 42 万 TEU を 2013 年度までに 100 万
TEU まで拡大する計画です。もちろん、同社にとって 輸送スペースの購入先が日本郵船である必要はありま せん。キャリアニュートラルであることが重要だと考 えています。逆に、日本郵船としても、同社以外のフォ ワーダーがお客さまとなることが増えていくと見てい ます。すでに欧州航路では、コンテナ輸送量のうち、お よそ半分がフォワーダーの貨物となっています。この ようにトータルでコンテナ輸送量を増やしていくこと が大切だと考えています。
定期船事業では、アジア発着の荷物を大きく拡大しま す。アジア域内航路だけでなく、欧州・北米航路でも、
アジアの荷物拡大を目指します。しかし、アジア域内航 路は競争が当然激しく、大きな需要が見込めるといっ ても、定期船事業だけで安定的に利益を得ることが難 しい地域です。海運会社として挑むか、フォワーダーと して挑むか、状況をよく見極めながら最適な選択をし
ていきます。また、郵船ロジスティクスのもうひとつの 中核事業であるコントラクトロジスティクスについて も、収益面でアジアが牽引役になっていることを踏ま え、欧米中心の事業戦略からアジアを中心にした戦略 に切り替えていきます。 (コントラクトロジスティクス については P36 をご参照ください)
にくい仕組みを構築します。その決意は、コンテナ船へ の投資額をゼロとした「 More Than Shipping 2013 」 の投資計画にも表れています。これは過去にないこと
ですが、当社グループの喫緊の課題として取り組んで いきます。
世界のコンテナ荷動き ライトアセット化+フォワーディング拡大
08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年度)
700 600
400
200 300
100 500
0
(隻数) (積高・万TEU)
250
200
100 50
運航船全体 隻数 長期固定船隊 隻数 150
0
フォワーディング 積高
短期用船 積高
長期固定船隊(長期用船・自社保有) 積高
計画前提①:世界のコンテナ荷動き
01 03 05 07 09 11 13 15
出典:Drewryおよび日本郵船予測
(百万TEU)
年率11.5%成長 250
200
100 50
年率7%成長
150
0
2010年はリーマン ショック前の105%
定期船事業
業績のポイント
荷動き、運賃の回復により大幅増益
2010 年度は、リーマン・ショック後に直面した厳しい 不況への対応として、コンテナ船各社が個別に減速運 航をはじめとする船腹供給削減に取り組んだ結果、需 給バランスは大きく改善しました。こうした中、コンテ ナ荷動きがアジアを中心に第 1 四半期より回復傾向を 見せ始め、各航路で大幅に落ち込んでいた運賃が修復 され全航路で前年度を上回る運賃水準となりました。
積高も、荷動き回復を受け、サービス増強および臨時船 の配船などを実施し、北米航路や欧州航路を中心に多 くの航路で前年度を上回りました。
これらの結果、急激な円高による減収分を補い、当年 度の売上高は前年度比 840 億円( 22.2 %)増の 4,621 億円、経常利益は赤字から回復し、 856 億円増の 302 億円となりました。
2011 年度は、コンテナ荷動きがアジアに限らず全体 的に堅調に推移する一方で、燃料油価格の高騰や、船腹 供給量増加に伴う運賃の軟化が懸念されることから、
当年度に比べ収支は悪化する見通しです。
当年度の取り組み ライトアセット化の推進
市況変動に柔軟に対応できる船隊ポートフォリオを目 指し、ライトアセット化を推進しています。その一環と して、当年度は長期固定船隊(長期用船・自社保有)を 前年度 89 隻から 6 隻減少して 83 隻体制としました。一 方、短期用船比率を増やし、需要の伸びに合わせた運航 船腹量を維持していきます。将来的には、長期固定船隊 を 63 隻まで縮小しながら、定期船全体の運航船腹量を、
現在の 38 万 TEU から 52 万 TEU まで拡大していく考え です。
定期船事業売上高推移
07 08 09 10
(億円)
4,621 8,000
6,000
4,000
2,000
0
(年度)
コンテナ荷動き量
08 09 10 11
(千TEU)
14,523 30,000
20,000
10,000 13,396
5,956
6,920 6,920 0
(見込み)
アジア 米国
出典:Trade HORIZON 2011/1Q、
Drewry Shipping Consultants Ltd. 2011/1Q 欧州
アジア 欧州
アジア アジア
米国