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NTN TECHNICAL REVIEW No.80(2012)

[ 解 説 ]

工作機械主軸用空冷間座付き軸受

工作機械主軸用空冷間座付き軸受

3. 空冷間座付き軸受の評価

3. 1 温度比較

3. 1. 1 空冷間座の設定評価

今回の評価に用いた試験機の概略を図2に,試験条 件を表1に示す.評価軸受は背面合せ(DB)配列と しモータで駆動している.試験中は軸受の外輪および モータの外筒部を,循環させている油で冷却している.

空冷間座の効果は,内外輪温度で確認した.

まず,空冷ノズルの噴射位置と冷却エア量が軸受 温度に及ぼす影響について確認した.図3にノズルの 噴射位置を示し,軸芯からのオフセット量(以下,

オフセット量)を①~④の4通りを設定した.評価試 験は17,000min-1まで冷却エア無しで増速した後,

17,000min-1を保持した状態で冷却エアの圧力を順

表1 試験条件 Test conditions 試験軸受

潤  滑 予圧方式

方  式 エアオイル 給 油 量 0.03mL/5min 潤 滑 油 ISO VG32 エア流量 40NL/min

               

外筒冷却

φ70×φ110×20 5S-2LA-HSE014 相当品 定位置予圧(組み込み後0N)

有り,室温同調(21±1℃) 図1 空冷間座付き軸受構造

Structure of the bearing with air cooling spacer 空冷間座

(外輪間座)

空冷間座

(外輪間座)

エアオイル潤滑用 環境対応型ノズル 空冷ノズル

空冷ノズル 試験軸受

内輪間座

内輪間座 冷却エア

モータ側

A

オフセット

内輪回転方向

矢視 A

試験軸受および

空冷間座 駆動モータ

支持軸受

図2 試験機構造 Structure of testing equipment

次上げ,軸受温度との関係を調べた.この結果を図4 に示す.冷却用のエア圧力が高いほど軸受温度は下が り,温度低下の傾きはオフセット量によって異なる.

温度低下が最も小さい条件は,内輪間座に対して直角 に噴射するオフセット量0であり,オフセット量が大 きいほど温度が低下する.

また,オフセット量と温度低下の関係を確認するた め,エア圧力を400kPaの一定条件で確認した.図4 に示すように最適オフセット量は,25~34.5mmの 間にあると推定され,オフセット量33mmも併せて 確認した.この結果を図5に示す.温度低下が最大と なり,空冷効果が大きくなるのは,オフセット量を 30mm程度とした時であり,内輪間座外径部の半径 に対し,80%程度に相当する.

なお,空冷ノズルからのエア噴射方向を軸回転に対 し逆方向にした場合,400kPaで冷却しても内輪の 温度低下は3℃程度であり,冷却効果を高めるために は,回転方向と冷却エアの噴射方向を一致させ,エア を間座の回転表面に接するように噴射させることが重 要である.

NTN TECHNICAL REVIEW No.80(2012)

3. 1. 2 エアオイル潤滑ノズルとの組み合せ評価 次に,図6に示すエアオイル潤滑で一般的な標準ノ ズルにおいて,空冷効果を環境対応型ノズルの結果と 比較した.この結果,図7に示すように標準ノズルに おいても環境対応型ノズルと同様に空冷効果を確認す ることができた.また,内輪温度が60℃に達する回 転速度は,冷却エア無しの16,000min-1に対し,冷 却エアを噴射させた場合は20,500min-1であり,

28%の高速化が達成できた.

空冷ノズル エアオイル潤滑用 標準ノズル

図6 標準ノズルとの組み合せ Assembly with standard nozzles

00 10 20 30 40 50 60 70

5000 10000 15000 25000

(400kPa)

20000 環境対応型ノズル(図 1)

標準ノズル(図 6)

環境対応型ノズル 標準ノズル

空冷無し

空冷有り

˚C

回転速度 min-1

図7 内輪温度測定結果 Test result of inner ring temperature

34.5

25 13

図4 各オフセット量での圧力(冷却エア量)と温度の関係 Air pressure (amount of cooling air) vs. temperature

by each offset amount

00 2 4 6 8 10 12 14 16

10 20 30 40

内輪

外輪

空冷ノズルオフセット量 mm

˚C

図5 空冷ノズルオフセット量と低下温度の関係 Temperature decrease by cooling nozzle offset amount

0 0

30 35 40 45 50 55 60 65 70

100 200 300 400 500

97 157 217 278 338

34.5mm 13mm25mm 0 冷却エア量 NL/min

冷却エア圧力 kPa

内輪

外輪

˚C

図3 軸芯からの空冷ノズルオフセット量 Off set amount of cooling nozzles from the center

*08_*09 12/10/16 17:51 ページ 4

3. 2 騒音比較

エアオイル潤滑の標準ノズルおよび環境対応型ノズ ル双方に対し,空冷ノズルからの冷却エア有無による 騒音値を比較した.騒音値は,芯高さにおいて45°×

1m位置に広帯域精密騒音計を固定して測定した.回 転速度とA特性騒音値の測定結果を図8に示す.

空冷無しの場合,標準ノズルが82~86dBAに対 し環境対応型ノズルが76~79dBAと環境対応型ノ ズルの方が低騒音であった.標準ノズルは高速で噴射 されたエアが直接転動体と衝突するのに対し,環境対 応型ノズルは内輪に噴射するため,騒音を低減するこ とは過去の実験で確認している3)

一方,空冷有りの場合,標準ノズルが81~86 dBAに対し,環境対応型ノズルは87~97dBAであ った.大量の冷却エアを流したことで環境対応型ノズ ルは騒音値が大きくなったが,標準ノズルは空冷有り と無しで差が認められず,環境対応型ノズルの騒音値 よりも小さくなった.

標準ノズルでの騒音値が大きくならなかった要因 は,環境対応型ノズルよりもエアオイルノズル内径面 と内輪間座外径のすきまが小さいこと,およびノズル 先端位置の違いにより冷却エアが転動体から離れた位 置で拡散されることが影響していると考えられる.

今後も,騒音低減に向けてさらに考察,評価を続ける.

図8 各内輪間座による騒音値

Noise level with inner ring spacers with different type

500 55 60 65 70 75 80 100 95 90 85

5000 10000 15000 25000

(400kPa)

20000 環境対応型ノズル(図 1)

標準ノズル(図 6)

環境対応型ノズル 標準ノズル 空冷無し

空冷有り

暗騒音 dBA

回転速度 min-1

4. まとめ

工作機械主軸用軸受において,高速・高剛性の両立 を可能とした空冷間座付き軸受を紹介した.空冷間座 は,今回評価したアンギュラ玉軸受に限らず,円筒こ ろ軸受や,さらに改良を重ねればグリース潤滑の軸受 にも適用可能であり,主軸全体の温度上昇の低減に貢 献できる技術であると考える.

NTNは本空冷間座の評価を継続し,工作機械主軸の 高速性と高剛性の両立に貢献する所存である.

参考文献

1)NTNカタログ

精密転がり軸受.CAT.No.2260-Ⅳ/J 11.06.03

2)藤井健次・森正継:予圧切換ユニット,NTN TECHNICAL REVIEW No.60(1992)

3)藤井健次・森正継・大田好美:工作機械主軸用エア オイル潤滑軸受の低騒音化,精密工学会2000年秋 季大会講演論文集(2000)449.

工作機械主軸用空冷間座付き軸受

恩田裕士 産業機械事業本部 工作機・航空宇宙技術部

森 正継 先端技術研究所 執筆者近影

水谷 守 産業機械事業本部 工作機・航空宇宙技術部

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