Multi Layer BEARPHITE
3. 開発軸受 1 構造と特長
「複層焼結含油軸受」の外観を図3に，内層と外層 境界部の拡大を図4に，化学成分を表1に示す．内径 面を構成する内層部材には，強度のほか，耐摩耗性や 耐久性を満足するため，Cu，Mo，Niを配合した従来 材を使用した．また外層部材には，高強度でサイジン グ性に優れる機械構造部品用JIS-SMF4030相当材 を使用した．
製造工程を図2右列に示す．外層に高強度構造材を 採用したため，浸炭焼入れが不要で，サイジング加工 による寸法矯正を採用した．
特長は以下のとおりである．
［特長］
・外層部に低硬度の材料を使用し，サイジングによる 寸法矯正を可能とした
・内層部は従来軸受と同材料を使用し，高い摺動性能 を確保した
図4 開発軸受の複層状態外観 View of multi-layer area
外層部 側面拡大
高強度な構造材
耐摩耗性に優れる 材料
内層部
成 分 配合比率 wt%
Cu 15〜20
Fe C
残 0.3〜0.8
Ni 1.5〜3.5
Mo 0.5〜1.5
Cu 2〜5
Fe 残
C 0.2〜0.8
内層部
（内径面）
外層部
（外径側）
表1 化学成分 Chemical composition NTN TECHNICAL REVIEW No.80（2012）
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複層焼結含油軸受
3. 2 内，外層界面の接合状態
二色成形法で製作した軸受の内外層界面における，
FeおよびNiの濃度分布を図5および図6に示す．
Feは内層部，外層部共に均一に分布し，偏析はな い．内層部のみに配合したNiは，図6赤枠内のように 界面から外層内部に向けて緩やかに濃度変化してお り，Niが外層部にも拡散し，界面接合していることが わかる．
3. 3 寸法精度
開発軸受のサイジング加工による寸法矯正効果を確 認するため，サイジング前後の焼結品の寸法を測定し た．結果を表2，3に示す．
サイジング後の径不同は，内・外径共にサイジング 前より小さく，寸法精度が向上したことがわかる．一 方，従来軸受は寸法矯正ができなかった．
［測定条件］
軸受寸法 内径35×外径45×長さ35
測定値 内・外径径不同（径の最大値－最小値）
3. 4 強度・硬度
開発軸受の圧環強さと硬度を表4に示す．硬度は軸 受の内径面と，外径面を測定した．
圧環強さは従来軸受と同等であり，内径面の硬度は
図6 界面のNi濃度分布 Ni concentration distribution of surfactant
Ni
外層部 内層部
従来軸受と同等であった．一方，外径面は低く，サイ ジング加工による寸法矯正に適する硬度である．
［測定条件］
軸受寸法 内径35×外径45×長さ35 圧環強さ測定 リング圧縮速度10mm/min 硬度測定 軸受内径・外径面 HRA
試 料
径不同 mm
サイジング前 サイジング後 0.025
0.200
0.015 サイジング不可 開発軸受
従来軸受
表2 内径の径差
Diameter difference of inner diameter
試 料
径不同 mm
サイジング前 サイジング後 0.060
0.200
0.030 サイジング不可 開発軸受
従来軸受
表3 外径の径差
Diameter difference of outer diameter
試料 測定項目 圧環強さ MPa 硬度 HRA 内層部 54 外層部 46 540
550 54
開発軸受 従来軸受
表4 強度・硬度測定結果 Strength and hardness measurements
図5 界面のFe濃度分布 Fe concentration distribution of surfactant
Fe
外層部 内層部
NTN TECHNICAL REVIEW No.80（2012）
3. 5 摩擦特性
開発軸受の摩擦係数は従来軸受と同等であった（図 7）．
［測定条件］
摩擦面圧 100MPa 雰囲気温度 70℃
すべり速度 0.014m/s
軸受寸法 内径6×外径12×長さ4 相手軸材質 S45C高周波焼入れ品
図7 摩擦係数測定結果 Friction coefficient measurements
4. まとめ
異なる材料を一体に成形する「二色成形法」を用い た「複層焼結含油軸受」を紹介した．
一つの軸受内で異なる特性を有することから，本成 形技術は油圧ショベル関節部だけでなく，産業機械・
自動車関連の様々な分野の軸受や機械部品の高機能 化，低コスト化に貢献するものと考える．
0.000 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30
0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
時 間 h
開発軸受 従来軸受 摩擦
係数
毛利 敏彦
NTN特殊合金㈱
技術部
執筆者近影
須貝 洋介
NTN特殊合金㈱
技術部
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NTN TECHNICAL REVIEW No.80（2012）
[ 製品紹介 ]
磁性材料商品の紹介
Introduction of Magnetic Material Products
1. はじめに
近年，電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に 搭載するリアクトルには大電流，高周波数など，厳し い環境で高い信頼性が求められ，従来のフェライトコ アでは対応が厳しくなっている．
NTNのグループ会社である日本科学冶金株式会社 は，これまで各種磁性材商品を開発しており，本稿で は，高飽和磁束密度かつ，低鉄損で良好な周波数特性 を有する磁性材料商品と，その応用例を紹介する．