2.6 国連世界食糧計画(WFP)
2.6.4 WFP の NGO への資金供与スキーム
WFPはNGOに対する資金援助のスキームはCooperating PartnerとFLAを結ぶ場合と Complementary Partnerと修正FLAを結ぶ場合の2種類ある。両者はNGOが自己資金
146 WFP(2005b)
により事業へ貢献するかどうかという点で異なるが大きな相違はない。現地WFPはNGO や政府機関等から提出された事業計画に基づき、パートナーを選択する。しかし実際には WFP側からNGOに対して働きかけることも多い。
① 対象となるNGO
上記にあげた全てのNGOがパートナーになることができるが、パートナーはNGOのほ かに、他の国連機関、国際組織、政府機関などがパートナーとなる。2005年においては307 のプロジェクトのうち 209 のプロジェクトが NGO とパートナー関係を結んでいた。なか でもCooperating Partner、2,055団体の内国際NGOは234団体(11%)でほぼ9割が現地 NGOであった。
② 支払われる資金
細かい規定があるが、ほぼ全ての直接費用が支払われ、パートナーの本部が現地以外の国 にある場合は間接費用の一部が支払われる。ただし以下の資金は支払われない。
・ 活動のためのNGOによる初期の費用の見積もりに関わる費用。
・ 食糧援助分配に平行して行われるが、NGOが独自で行うことに関わる費用。
・ 活動と平行して別個に行われるNGO の活動の間接費用または、WFP とNGO の間で 締結した契約の中で、NGOが支払うとされている活動費用。
・ 軽車両。
指定のフォーマットにて提出された請求書または会計報告に基づいて、WFPはあらかじ め合意された予算を毎月パートナーに支払う。通常は毎月提出する月例報告(後述)が提 出された後に支払われるが、要請に応じて前払いを行う。ただし、パートナーから証憑書 類が提出した会計報告証明書をWFPの代表が容認し、サインしない限り、支払いは行われ ない。
会計報告書類が提出されてから21 日以内にWFPはパートナーに支払いを行うが、書類 に疑問や疑いがある場合、WFPは75%の前払いを行う。十分な説明が後に提出され、承認 された場合にはその承認後21日以内に残額が支払われる。
③ 申請のための手続き
パートナーになるためには固定費用と可変費用、初期費用と最終費用、通常5%の間接費 用が分けられた予算を、指定されたフォーマット147によって提出し、WFPから許可を受け なければいけない。
147 WFP(2005a):pp.62-64
④ 選定基準
Cooperating Partnerとなるためには以下の基準を満たす必要がある。
・ ある特定の地域を支配する政府から認識され、人道的活動を行う許可を得、そのための 事務所と接触可能な住所をもつこと。
・ 卓越した人道活動の経験を有すること。
・ 優れた食糧分配計画及び食糧援助と関連する問題に関する計画をもつこと。
・ 人材、現地事務所、自動車、コミュニケーション手段といった適切な人材及び組織構 造を持っていること。
・ 透明な制度形態、草の根レベルの参加、情報システム、書類作成能力、専門知識、現 地へのアクセスなどをもっていること。
・ 地域コミュニティーやコミュニティーに根ざした組織と活動する意思と能力があるこ と。
また、以下の基準も満たしていることが望ましい。
・ プロジェクトに関わる費用の一部または全てを負担できること。
・ 計画と財政管理に関する基本的な能力を持つ人材を有し、当該地域における物資の移送、
食物の分配、受益者参加の分析的な技術と能力を持っていること。
・ WFP の監視、報告の要求に従うことが出来、適切で信頼しうる財政、会計制度を持っ ていること。
こうした一応の基準はあるもののWFPと連携するNGOとの契約に関する権限は全て現 地事務所に移譲されており、統一的な選定基準は設定されていない。これは各国の状況・
優先事項によって選定基準が異なることが背景にあるが、一般的にこれまでの活動、国連 機関との連携の実績、他団体による評価等の情報等によって選定され、NGOのアカウンタ ビリティー・透明性についてはNGOが公表する財政報告等が参考とされている148。
⑤ NGOによる義務
Cooperating Partner は FLA に 記 載 さ れ て い る 事 項 を 履 行 す る 義 務 を も つ が 、
Cooperating Partnerは主にWFPによって届けられた食糧を分配する役割を期待されてい
る。そのためFLAに記載されている事項も、食糧の貯蔵、移送、分配に関わるものが多い。
その他には会計報告、事業報告および会計書類の保存が義務付けられている。
・ 月例報告:会計上の報告
パートナーは WFP から配布された食糧の在庫、損失、受益者に分配した数量、活動毎、
148 2007年2月に行われたWFPへの聞き取り調査による。この他、国連が持つタリバーン
と協力する団体のリストに該当しないこと、という条件が設定されている。
性別別の受益者の数を明記した報告書を指定のフォーマットで毎月提出する。その際、前 述した情報を証明する書類の提出が義務付けられているが、詳細については明示されてい ない。
・ 四半期報告 149:月例報告に加えてパートナーは量的情報と質的情報を含んだレポート を四半期に一度提出する。
配送、分配の手配、実際に直面した障害とその克服方法、損失を軽減するために取った手 段、供給した食糧の受け入れ状況、パートナーによるものも含めたWFP以外の財源からの 補完的投入、対象とする受益者に対して達成された結果、全体の状況の改善可能性、さら には追加的に可能な計画に関するコメント、さらには可能な場合は以下の情報を添付する。
性別のデータ、現地の食糧管理、流通委員会のジェンダーバランス、特に女性によって占 められている地位、活動によって占められている利益配分など。
最終報告はあらかじめ合意された最終期日より90日以内に提出する。資金供与を受ける NGOは全てWFPに対して会計報告を行う義務を負うが、提出書類はNGOの代表によっ て承認された報告書のみである。
⑥ NGOのモニタリングと罰則
全 て の WFP の プ ロ ジ ェ ク ト は パ ー ト ナ ー と WFP の 双 方 に よ り モ ニ タ リ ン グ (monitoring)、評価(evaluation)されることになっている。会計監査に関する義務はないが、
WFPは資金供与したNGOの活動に対して監査を行う権限を持つ。モニタリング、評価の 方法はプロジェクトの計画段階で、契約文書において双方の合意を受けて決定されること となっている。また、モニタリングの中には以下の項目が含まれなければならない。
・ モニタリングのためのデータはいつ、どのようにして、誰からそして誰によって得られ、
分析されそして報告されたか。
・ モニタリング、評価のためのデータと分析方法の正確さの担保方法。
・ プロジェクトの影響を測るために、プロジェクト以前の指標を示すベースラインの記述。
・ 中間評価を含む他の評価(ただし、そうした評価が行われた場合のみ)。
WFPとパートナーの間で期待されるモニタリングにおける役割は異なる。パートナーは 日々の出来事を月例報告、四半期報告および最終報告に反映することが求められ、一方WFP には以下の役割が求められる。
・ パートナーが任務の目的を満たしているか確かめること。
・ 現地の情報をパートナーから独立して収集し、パートナーの結果と付き合わせること。
また、WFPにもパートナーにも事後モニタリングが求められる。
先述の通り、モニタリングの結果によって資金が支払われ、疑問があった場合には 75%
149 フォーマットの記載なし
の支払いに留められる。この点は罰則と考えることが出来るが、それ以外の罰則に関して は明示されていない。
その他、現地WFP、外部の有識者、実際に活動にあたったNGO、第三者のNGO、WFP 本部などによって事業の評価が行われる。ただし、そうした評価の扱いは明示されていな い。