2.2 カナダ国際開発庁(CIDA)
2.2.5 NGO への資金供与事例
CPB によるVSPおよびVSFは、資金供与を行うための条件として現在3:1の割合で コストシェアリングをしている。つまりプロジェクトの25%はボランタリー組織自身が、
ファンドレイジング(カナダ国民)から得た資金の供与が求められている。この条件は、
ボランタリー組織のアカウンタビリティーの向上に役立っている。ただし、コストシェア リングである以上、ボランタリー組織の主張も CIDA は受け入れなければならない立場で あり、実施中にプロポーザルに提示しているプログラム目標の変更を容認する場合もある。
さらに、アカウンタビリティーや透明性の確保のため、CIDAには確立したシステムが存
を意味する。提案されていることが全てなされたとしても、現実的に算出が達成されない 場合には、その効果およびその連鎖は不完全とみなされる。
在している78。ボランタリー組織が受ける外部会計監査は当然ながら、CIDA自身も独自の 監査システムを持っている。
(2) カナダNGOのケーススタディ
ここでは、カナダの大手ボランタリー組織であるCAREのカナダにおけるメンバー組織で ある「ケアカナダ」および中規模のボランタリー組織である「CHF79 partners in rural
development」を例に、VSPプログラムを中心に比較的大きな資金供与を受けているボラン
タリー組織とCIDAの資金供与および関係構築に関する対応について述べる。
① ケアカナダ
・ ケアカナダの概要
ケアカナダは、米国に拠点を持つケアインターナショナルのカナダにおけるメンバーと して、オタワ市に事務所を有するボランタリー組織である。活動内容は、途上国における 貧困削減のため、保健医療、水衛生、緊急援助、教育など、多岐にわたっており、46 カ国 において221のプロジェクトを実施している。2006年度の収入は1億9,200万カナダドル で、そのうちの約 12%が、政府(CIDA)からの資金供与となっており、42.8%がケアインタ ーナショナルのメンバーからの寄付金によって運営されている。
・ ケアカナダがCIDAから受ける資金供与について
ケアカナダがCIDAから受ける資金供与は、CIDAのCPB が実施しているVSPを中心とし た使途を限定しない資金供与、二国間プログラム局(Bilateral Programmes Branch)が実施 している道路整備、水供給や衛生等のインフラ中心のプログラム、及び多国間プログラム 部(Multilateral Programmes Branch)が行っている「人道支援」や「平和と安全」などの プロジェクトを、災害被害への人道支援を実施している。CIDAから受ける資金供与のみを 見ると、VSPは3:1のコストシェアリングを条件にしているが、最も多くの資金供与を受 けている二国間プロジェクトや緊急援助に関する資金援助は自己資金を寄与していない80。
・ ケアカナダのVSPプログラムの詳細について
ケアカナダが実施しているVSPプログラム(題名:CARE’s Program for 2003‐2006)は、
2003年に開始され、29のプロジェクトが20カ国で実施されている。本プログラムでの活 動分野は、HIV、民間セクター開発、資源管理、公式および非公式な教育と分野横断的であ
78 CPB内に『成果、危機管理、アカウンタビリティーフレームワーク』(RESULTS AND RISK MANAGEMENT AND ACCOUNTABILITY FRAMEWORK (RRMAF))が存在し、
評価やモニタリングのあり方を細かく指定している。
79 前身はCanadian Hunger Foundation
80 CARE Canada(2006)
る。本プログラムは当初2006年12月で終了の予定であったが、半年の延長が認められ2007 年6月までとなった。合計3年半のプログラムで、総費用は1,602万カナダドルである。
そのうち、CIDAからの資金供与は、1,201万5,000カナダドルでありこれはプログラム総 費用の 75%にあたる。なお、ケアカナダはVSPプログラムの終了に伴い、現在新しいプロ グラムの企画書(題名:”Building Capacity for Innovative, Locally-led Development”)を
CIDAに提出したところであり、30 のプロジェクトを 22 カ国で実施する予定としている。
本案件は、これまで3年であったプログラムを5年間にし、合計2,666万2,000カナダド ル(そのうち1,999万カナダドルがCIDAからの資金供与)の予算を見込んでいる81。 ケアカナダのVSP担当者によると、VSPが資金供与の条件としているボランタリー組織 のプログラム費 25%の負担は、ケアカナダ自身の財政面における自立と、カナダ国民及び 途上国の住民との連結を促進しているという。これは、カナダのボランタリー組織が受け る寄付金額は、多くの場合企業等からの巨額の寄付とは無縁で、カナダ国民一人一人から の小額の寄付金で成っているからである。
ケアカナダはCIDAの担当者と週に2‐3回のペースで意見交換を行っており、全てシェ アリングストラテジーを基本としている。つまり、費用を共同出資するだけではなく、CIDA 担当者と密に連絡をとることによって、お互いが目指すもの、目標とするものを共有して おり、理解できない点については、納得するまで議論する体制をとっている。
ケアカナダには、監査を行う専門の職員がいるほか、CIDAも監査を行っており、何重に も不正回避の仕組みが構築されている。
なお、被援助国においては一つの事務所が、ケアカナダを含むケアのメンバー組織のそ れぞれの事業に対応している。事業費は各メンバー組織が受ける資金供与先が異なること から、事業別にコードで管理している。一方で、プロジェクトの成果は、それぞれのケア メンバー組織が行うプロジェクトから受ける相乗効果が期待でき、ケアカナダが資金供与 をCIDAから受けるための強みになっている。
② CHF Partners in rural development(CHF)
・ CHFの概要
CHFは1961年に設立され、世界40カ国を拠点に、アジア、アフリカ、アメリカにおけ る人々の日常生活の改善と、貧困の悪循環を断ち切るために活動を行っているカナダのボ ランタリー組織である。2005年度の財源は8,548,411カナダドルで、その約48%をCIDA からの資金供与が占めており、CHFにとっても、CIDAは非常に重要な事業実施のパートナ ーとなっている82。
・ CHFがCIDAから受ける資金供与について
81 CARE CanadaへのEメールでのフォローアップ調査による。
82 CHF (2005)
CHFがCIDAから受ける資金供与の内訳は、二国間寄与契約(Bilateral contribution agreements)と対応型プログラム(Responsive programs)を主としており、二国間寄与契約 は、プロジェクトベースで公示に応えるもの 83で、対応型プログラムは、先に述べたVSP を含むプログラムベースの資金で、プロポーザルを提出しそのプロポーザルに対して資金 供与を得ている。また、他にも会議等への小額の資金供与を受けている。
2005年度に受けた二国間寄与契約に基づく資金供与は、CIDAから受ける資金供与全体 の約70%(2,842,154カナダドル)、対応型プログラムは約22%(893,084カナダドル)となっ ている。
・ CHFのVSPの詳細について
CHFがCIDAから受けているVSPで現在実施中のプロジェクトは、“Building Capacity for Sustainable Livelihoods in Vulnerable Communities”と題され2006‐2009年を実施 期間とし、プログラム全体で3,417,176 カナダドルをCIDA から受ける予定である。本案 件の活動は、ガーナ、ジンバブエ、ケニア及びベトナムの途上国 4 か国とカナダで実施さ れ、プログラムの達成目標は、貧困削減及びHIV/AIDS の蔓延防止となっている。各プロ ジェクト実施によって期待されている成果は、1)HIV/AIDSに冒されている農家や地域の暮 らしが向上し、持続可能になる、2)HIV/AID に冒されているまたは冒されやすい地域にお ける住民の暮らしが向上するように南のパートナー(被援助国)の能力(Capacity)が強化され、
ジェンダー配慮ができるようになる、3)HIV/AID に冒されているまたは冒されやすい地域 における住民の暮らしに対する「ジェンダー配慮と持続可能性アプローチ」へのサポート がプロジェクト実施国及びカナダにおいて強化される、の3点である。
提出を求められる資料は、四半期ごとの活動報告、年に一度の成果報告及び財務報告書 等である。成果報告には、プロポーザルに記したプログラムの活動から得られると予測さ れる成果と、成果を測るための指標また、それに基づく結果を記さなければならない。CIDA は、活動内容や、活動、財務の透明性、説明責任も重要であるが、資金供与を行っている 以上ボランタリー組織に成果を出すことを求めている。
CHF職員は、プロジェクトに何時間費やしたかを毎日記しており 84、毎月、データベー
スに落とし込み、それぞれのプロジェクトに費やした時間を報告している。ただし、現地 で一つのプロジェクトにのみ関わっている職員は、その必要はない。
特にCHFのVSPは、途上国におけるNGOの組織強化も目的としており、現地NGOの プロジェクトへの参加を条件としている。これから、現地NGOの職員給与をプロジェクト 費で支払い、プロジェクトを通して現地NGOが組織強化され、プロジェクト終了時には、
現地NGOが独自で職員に給料を払えるようになった事例が複数あり、成果を上げている。
精算時の報告は、報告書はボランタリー組織の外部による会計監査及び CIDA 内の会計
83 二国間プログラム局(Bilateral Programmes Brunch)が実施している。
84 例えばAプロジェクトに3時間、Bプロジェクトに4時間といった、簡単なもの。
監査を通して行われるが、CIDAから証憑の提出を求められることはない。ただし、一部提 出を求められる場合があり、7年間の保存が義務付けられている。現地での費用は、領収書 を現地で保管しており、監査で求められたときは、FAXなどで取り寄せて提出している。
CHFの担当者によると、CIDAからVSPを受けるため、プロポーザルは1年半をかけて 執筆される。VSPは、実施期間を原則3年以上としているが、最近CIDAはそれぞれのVSP の更新に係る労力を削減するため、実施期間を 5 年以上にするように働きかけているとい う。