2.3 英国国際開発省(DFID)
2.3.5 NGO への資金供与事例
DFIDのCSOへの資金供与スキームは前述したとおりであるが、この中でPPAはCSO に対して複数年に渡って使途を限定しない資金を供与するユニークなスキームとなってい る。以下、DFIDとPPAを締結している英国CSOのSave the Children UK(以下、セー ブ)を事例として、その契約及びPPAの枠組みにおける活動について見ていくことにする。
(1) 団体概要
セーブは子どもの権利の実現を目的として1919年に設立されたNGOであり、その活動は 43 の国・地域に及び、主要な活動領域は1)緊急援助、2)HIV/AIDS、3)保健医療、
4)教育、5)貧困と経済状態、6)搾取と虐待からの保護、7)平等と子どもの権利の 実現となっている 108。なお、セーブは 27 カ国のセーブ・ザ・チルドレンで構成される世 界連盟(International Save the Children Alliance)の一員として、世界のこどもたちとそ れを取り巻く状況を改善するために活動を行っている。また、セーブは英国の開発援助・
人道援助団体のネットワークであるBOAG、BOND(British Overseas NGOs Aid Group)、
DEC(Disasters Emergency Committee)のメンバーとして、NGO間のネットワーク強化、
英国政府・国際機関へのアドボカシー活動等にも積極的に参加している英国を代表する NGOの一つである。
セーブの活動の基本的アプローチは、国家やコミュニティーが子どもたちとその家族の権 利の実現及びその保護という義務を果たせるようになることで、良質な基本的サービスを 提供するために政府とともに活動すること、研究活動と経験に基づく政策変化と実践、英 国の若者との経験の共有等を重要な要素としている。
セーブの 2005年度の収入は約 1億6,320 万ポンドで、総収入の43.2%となる約7,050 万ポンドが寄付・贈与である。次いで総収入の35.6%となる約5,800 万ポンドが英国及び 諸外国政府、国際機関等からの資金供与となっているが、英国政府(DFID、外務省、大使 館、教育雇用訓練省)からの資金額は約1,380万ポンドである109。
(2) DFIDから受ける資金供与
セーブとDFIDはその活動において、教育、HIV/AIDS、児童労働、緊急援助等を含む多 分野の政策提言と実践、プログラム及び研究活動を通じて得られた成果の共有、開発プロ グラムにおける子どもたちの参加、人道危機における効果的対応等の分野で英国内及び海 外で長い協力関係の歴史を持つ。また、一定期間お互いのスタッフの交換を行うなど110、
108 Save the Childrenウェブサイト
(http://www.savethechildren.org.uk/scuk/jsp/newhome.jsp?flash=true)より。なお、セ ーブが活動の目的としている子どもの権利の実現は、国連子どもの権利条約
(http://www.unhchr.ch/html/menu3/b/k2crc.htm)を理念としている。
109 Save the Children UK (2006)
110 DFID-SAVE THE CHILDREN PARTNERSHIP PROGRAMME AGREEMENT
政策・調査研究・人的交流と様々な面での連携強化を図ってきた。
これらのDFIDとの連携の歴史及び団体としての活動実績を背景に、セーブは様々な資金 供与を受け、活動を実施してきた。前述したブロック・グラントに代わってPPAの導入が 決定した際には、最初の締結交渉に参加し、2001年から2004年までの4会計年度で合計
2,070万ポンドの資金供与を受ける PPA(以下、前PPA)を締結した。なお、この資金供
与額はブロック・グラント及びその他の資金供与スキームを通じてセーブへ供与された資 金額を参考に決定されたものである。その後、前 PPA の契約期間終了に伴い、セーブは DFIDと2005年4月1日から2011年3月31日までの6年間に渡るPPA(以下、現PPA)
を新たに締結し、現在に至っている。
また、セーブはPPAのみならず、他の資金供与スキームを通じてもDFIDから資金供与を 受けている。この資金供与はセーブが活動する約半数の国・地域における幅広い活動領域
(ブルガリアにおける児童養護施設での保護に代わる措置111、モンゴルにおけるストリー ト・チルドレンの収容施設112等)をカバーするものとなっている113。
(3) セーブのPPAの詳細について
現PPAにおけるDFIDとセーブの連携の目的は「世界のもっとも貧しく脆弱な子どもたち に対するミレニアム開発目標を達成するために多大な貢献をすること」とされている114。 この目標の下、子どもの貧困、HIV/AIDS、基本的サービス、開発における子どもたちの 参加、開発に対する意識向上の 5 つの分野を特定領域として選定し、各領域における一つ の達成目標を設定している。領域ごとの達成目標の下には、セーブ・DFIDそれぞれがこの 目標達成のために行う活動が記述されているが、活動を行うべき国・地域や予定されるプ ロジェクトの内容等についての記載はない。これらの活動の詳細及びそのための予算配分 決定にDFIDが介入することはなく、PPA締結後にセーブ自身が目標の達成を鑑み決定する こととなっている 115。なお、現PPAの締結交渉に当たり、セーブはDFIDにプロポーザル を提出したが、プロポーザルに含めるべき内容についてもDFIDから特別な指示はなく、そ の内容はセーブに委ねられた。そのため、セーブはプロポーザル内で活動の優先地域とし て、自らの団体の優先地域であると同時にDFIDの優先地域として指定されている地域を選 2001-2004(以下、PPA2001-04)、http://www.dfid.gov.uk/pubs/files/scf-ppa.pdf
111
http://www.savethechildren.org.uk/scuk/jsp/wherewework/country.jsp?ukww=ww§i on=europe&subsection=bulgaria&pagelang=en&page=3
112
http://www.savethechildren.org.uk/scuk/jsp/resources/details.jsp?id=644&group=resour ces§ion=project&subsection=details&pagelang=en
113 その他、詳細については下記URL参照。
http://www.dfid.gov.uk/aboutdfid/DFIDwork/ppas/savethechildren-ppa-outside.asp
114 DFID-SAVE THE CHILDREN PARTNERSHIP PROGRAMME AGREEMENT 2005-2011(以下、PPA2005-11、http://www.dfid.gov.uk/pubs/files/scf-ppa-2005.pdf
115 DFIDへのフォローアップ調査による。
んで記述した、とのことである116。
その他、PPAに規定される各事項の詳細については以下の通りとなっている。
①モニタリング
前PPAはセーブの活動に対するモニタリングの方法として、セーブが行う年次戦略レビュ ーへDFIDが参加すること、及びこのレビュー後にセーブがDFIDへ年次報告書を提出する ことを定めている。この年次報告書には、セーブの活動によってもたらされた成果、PPA に定められた活動についてのセーブ・DFIDの実践の評価、及び次年度の共同事業計画が含 まれることとなっている。公開されている現PPAにおいて具体的なモニタリングの方法に関 する記述はないが、DFIDでの聞き取り調査及びフォローアップによると前PPAと同じ方法 でモニタリングを行うことが合意されている、との回答が得られた117。
以下、2004年度のモニタリングのプロセスを紹介する。2004年度の年次報告書において、
セーブはPPAに規定される自らの活動をグローバル・インパクト・モニタリング(GIM) というフレームワークを用いて評価し、その活動によって生じた子どもたち及び若者たち に関わる 5 つの側面における変化ついて、具体的な国及び受益者の数を引用して進捗状況 を報告している118。例えば、PPAの目的2に定められる教育分野の活動成果の一例として、
ソマリランドにおける学校数の増加、及びインドにおいてセーブが支援する学校の就学率 の向上を取り上げている。なお、提出された年次報告書に対してはDFIDから活動のアプロ ーチ、活動によってもたらされた変化及びその効果(impact)についてコメントが付され ている。教育分野に関しては、DFIDはセーブの示した政策と実践における変化の事例を評 価する一方、報告書内でセーブが記述する政府とコミュニティーの間の対話及び責任の連 帯を促進する役割については、自らが主張するのでなく、あくまでも促進を促す立場をと ることが重要である、とのコメントを付している。なお、このモニタリングの結果として 付されたDFIDのコメントに対して、セーブが実施した行動を次年度の年次報告書において 説明することが決定されていた119。
116 2007年2月に行われたセーブへの聞き取り調査及びEメールでのフォローアップによ
る。
117 2007年2月に行われたDFIDへの聞き取り調査及びフォローアップによる。なお、
OxfamとDFIDとのPPAは、DFID担当部署とOxfamとの定期的会合、及びPPAに記述 する指標に基づく成果を示した年次報告を通じてOxfamが目標に対する進捗状況を報告す ることをモニタリング方法として規定している。
http://www.dfid.gov.uk/pubs/files/oxfam-ppa-2005.pdf
118 Save the Children UK (2004)。
119 DFID担当者へのフォローアップによる。
②評価
公開されている現PPAにおいて、活動に対する評価方法については記述がない。DFID担 当者によると、その評価方法についてはセーブと交渉中であり、決定には至っていないと のことである 120。なお、現在DFIDのウェブサイトで公開されている他のCSOとのPPAも 正式な評価プロセスについては記述がない、若しくは契約の最初の 2 年以内に協議・合意 されるという記述があるのみとなっている。
前PPAはPPA最終年度の最初の6ヶ月の間、もしくはDFID・セーブのどちらかによって 要求され双方が合意すれば他の時期に、独立した外部評価を実施することを規定している。
また、その評価の内容には、連携の効果と価値を調査し確定すること、活動の見直し、モ ニタリングシステムの評価、連携の発展のあり方、将来の連携にとって有効なDFIDの予算 レベルでの提言を含むこと、を規定している。しかしながら、セーブ担当者に確認したと ころ、現在まで規定された外部評価は実施されていない、とのことである。なお、DFIDウ ェブサイトには前PPAに基づきCAFOD、International Service、Progressio、Skillshare
International、WWF-UKが実施した外部評価報告書が公開されている121。
③会計報告
現PPAは2005年4月1日から2011年3月31日までの6年間に渡るDFIDからセーブ への資金供与を規定している。2005年からの最初の3年間の資金供与額は年640万ポンド と決定しているが、残りの3年間についてはセーブとDFID の間で順次合意される予定と なっている。また、詳細な会計及び手続事項に関しては、DFID とセーブの間で覚書
(Memorandum of Understanding)を設定する旨を規定している。
現PPAにおける会計報告に関する詳細な規定はないが、DFID及びセーブ担当者に確認し たところ、前PPA同様、セーブがDFIDへ外部監査法人によって承認された年次会計報告書 のコピーを提出することが合意されている 122。年次会計報告書のフォーマットはチャリテ ィ団体を管轄するチャリティ委員会(Charity Commission)によって統一されたものとな っている123。
120 DFID担当者へのフォローアップによる。
121 PPA締結団体一覧
(http://www.dfid.gov.uk/aboutdfid/DFIDwork/ppas/partnerprogagreements.asp)からリン クされている各団体ページ内に掲載。
122 DFID及びセーブへの聞き取り調査による。なお、前PPAにおいては、DFIDからの資
金は四半期毎にセーブからの翌四半期の総合支出を見積もった請求に基づき供与され、セ ーブは団体の総支出とその中でのPPAによる資金の割合を示した会計報告を四半期毎に提 出することとなっていた。
123 セーブはチャリティ委員会に登録されたチャリティ団体として税制上の優遇措置等を 教授する一方、団体を監督するチャリティ委員会に対して活動報告・会計報告等を行う等 の義務を負っている。詳細はhttp://www.charity-commission.gov.uk/を参照。