4. Victoria 州における褐炭生産状況
4.2 Victoria 州における石炭産業を取り巻く動向
(1)政権交代
2010年11月7日にVictoria州で行われた選挙の結果、自由党のテッド・ベイリュー(Ted Baillieu)率いる保守連合(自由党、国民党)がジョン・ブランビー(John Brumby)率い る労働党に勝利し、政権交代が起こった。保守連合は、2010年12月2日付けで正式に政 権に就いている。
(2)新政権の石炭政策
ビクトリア州選挙に先駆け、保守連合は「The Victorian Liberal Nationals Coalition Plan for Energy and Resources(エネルギーおよび資源に関するビクトリア州自由党国民 党保守連合の計画)」を発表した。同文書には、ビクトリア州政府は、CO2の排出レベル目 標0.8トン/MWhを超える石炭火力発電所の新規承認を制限する旨が記載された95。この ため、仮に褐炭火力発電所を新設する場合でも、非常に高効率な発電設備を導入する必要 があると考えられる。
保守連合が 11月の選挙で政権を取った際、政府は 2020 年までに温室効果ガスを 2000
年比で20%削減するという労働党の目標96に追随する予定であることを表明したが、実際に
は環境および気候変動に関する正式な政策97を発行していない。
このような情勢を踏まえ、現地の電気事業者へのヒアリングでは、CCS を付与しない褐 炭火力発電所の新設は難しいとの声が多かった。
(3)Hazelwoodの閉鎖問題
Hazelwood褐炭火力発電所はVIC州で最も古い発電所であることから、しばしばメディ
アや政治の議論の対象となっており、主にWWF98やEnvironment Victoria99等のNGOに より、Hazelwood発電所の閉鎖を迫られてきた。 例えば、2010年6月21日100には、労 働党のKelvin Thomson議員が選挙に先駆け、連邦政府に対しHazelwood101の閉鎖を求め ている。
政権交代による保守連合のHazelwood閉鎖に関する考え方が注目されるが、州政府など へのヒアリングでは、新政権はHazelwoodを閉鎖させる計画はないようである。
95 http://www.vicnats.com/policies/CoalitionPlan/Energy%20and%20Resources.pdf
96 Available at:
http://archive.premier.vic.gov.au/images/stories/climate_change/Climate%20Change%20White%20Paper%20Web%
20version.PDF
97 http://www.smh.com.au/opinion/politics/coalition-faces-a-challenging-environment-20110202-1ad2k.html
98 http://www.wwf.org.au/news/n223/
99 http://www.environmentvictoria.org.au/replacehazelwood
100
http://www.kelvinthomson.com.au/Editor/assets/speeches_2010/100621%20grievance%20debate-climate%20change .pdf
4.2.2 ライセンス関係
(1)ライセンスの概要
新しい資源開発のライセンス制度となるMineral Resources (Sustainable Development) Amendment Act 2010 (the Amendment Act)は、2010年9月に議会を通過し、2012年2 月までに施行開始が予定されている。この法令では、保持ライセンス(retention license)、 探査ライセンス(prospecting license)が導入され、ライセンスの取り消し規定を導入する ことで、資源開発の意図がないのにライセンスを保有し続けることをできなくし、確実に 資源が開発させるよう義務付けたことが特徴である。
新規ライセンスおよび既存ライセンスの変更を含むライセンスのタイプ別要件を表 4-2 に示す。
表 4-2 ライセンスの概要
ライセンス 概要 要件
Exploration 探鉱
ライセンス保持者に、ライセンス がカバーする土地の探鉱を行う 権利を与える。事業者は、鉱物資 源の特定(identifying)に向けた 計画を実行する必要がある。
既存のライセンス(変更なし):
ライセンス申請
事業計画
更新
報告
Retention 保持
目的は、特定(identify)された 資源の、評価と開発である。探鉱 ライセンスと採掘ライセンスの 中間に位置するライセンスであ る。
新規導入されたライセンス:
ライセンスの申請。採掘プロジェクトの 商業的実現可能性に向けた取り組み(事 前フィージビリティ)および鉱物資源の 詳細な評価を盛り込んだ事業プログラ ムを含む。
事業計画
更新
報告
Mining 採掘
商業的採掘事業の準備と実施。 現行のライセンス(修正あり)
ライセンスの申請。採掘プロジェクトの 商業的実現可能性の確立(全面的フィー ジビリティ)および指示された鉱物資源 の詳細な評価を盛り込んだ事業プログ ラムを含む。
事業計画
更新
報告
Prospecting License
探査
5ヘクタール以下の土地における 探査および/または採掘活動。
新規導入されたライセンス:
ライセンスの申請。事業プログラムを含 む。
事業計画
報告
出所)Department of Primary Industries, Victoria102
(2)新ライセンスの主な変更点
新しいライセンス制度の要点を以下に記述する。最も重要な変更点としては、現行の採 掘ライセンス(mining license)が変更され、ライセンス保持者は計画どおりに開発を行う 必要が生じたことにある。ライセンシーは、開発の要件を満たせない場合、ライセンスを 取り消されるため、確実に開発が進捗するように促す効果が期待される。
1)保持ライセンス(Retention License)の導入
Mineral Resources (Sustainable Development) Actの修正により新たに保持ライセンス が導入された。この新しいライセンスは、鉱物資源が確認され、当該資源が炭鉱にとって は未だ商業的な存立可能性はないが将来的には期待できる場合に適用される。保持ライセ ンスは、資源が確認された場合にその評価および開発を目的とするものである。
保持ライセンスは、探鉱ライセンスと採掘ライセンスの中間に位置するライセンスであ る。探鉱ライセンスまたは探査ライセンスの保持者は、保持ライセンスまたは採掘ライセ ンスを申請する権利を有し、保持ライセンス保持者は採掘ライセンスを申請する権利を有 する。保持ライセンスの有効期間は10年間で、更新は2回まで可能であるが、明確な作業 計画に従った時宜を得た開発の裏づけがなければ更新はできない。
2)探査ライセンス(Prospecting License)の導入
Mineral Resources (Sustainable Development) Actが修正されたことで、新たに探査ラ イセンスが導入された。探査ライセンスは、5ヘクタール以下の小規模な土地を対象に、探 査および/または採掘活動を行うことを許可するものである。主な特徴は、ライセンス有 効期間は最大 5 年間であること、更新されないこと、探査ライセンスの許諾は鉱物資源の 確認されていることが前提条件ではないこと、探査ライセンス保持者は、探査ライセンス の範囲の採掘ライセンスまたは保持ライセンスの申請できるなどである。
3)ライセンスの取り消し規定
ライセンスの主な取り消し規定を表 4-3 に示す。基本的に、予定通りにプロジェクトが 進捗しない場合に、ライセンスが取り消され、他の事業者に付与しなおせる仕組みになっ ている。
表 4-3 ライセンスの取り消し規定
項目 条項
時期
ライセンシーが、ライセンスの許諾を受けてから12ヶ月(または担当大臣が許可 した期間)以内に当局(work authority)に申請を行わなかった場合、当局がライセ ンス許諾が登録された日より18ヶ月以内に当局が当該ライセンスの許諾を受けな かった場合、ライセンスは取り消されることがある。
ライセンシーが、当局が登録されてから 6 ヶ月以内、あるいは担当省の長が書面 により許可した期間以内に事業を開始しなかった場合、ライセンスは取り消される ことがある。
探鉱ライセンス(mining license)保持者であるライセンシーの場合で、ライセン シーが当該ライセンスが付与された土地における採掘を中止し、その後 2 年間そ の土地における採掘を行わなかった場合、ライセンスは取り消されることがある。
実現可能 性
当該ライセンスが付与された土地において、資源が枯渇した場合、または、ライセ ンスがカバーする土地において資源の採掘が現実的でなくなり予見可能な将来に おいてもその可能性がなくなった場合、ライセンスは取り消されることがある。
ライセンスが保持ライセンス(retantion license)の場合、当該ライセンスが関与 する鉱物資源の採掘が将来にわたって経済的にでなくなった場合、ライセンスは取 り消されることがある。
出所)The Mineral Resources (Sustainable Development) Amendment Act 2010
4.3 褐炭炭鉱と発電設備等の概要