3. 石炭輸送インフラの実態と開発動向
3.1 New South Wales 州
3.1.2 港湾
(1)New South Wales州における港湾の概要
前節で説明したとおり、New South Wales州ではNewcastle港とPort Kembla港の2 港で石炭の輸出を行っている(図 3-11)。両港には表 3-5に示す4つのターミナルがあり、
さらに 1 つのターミナルが新設予定である。本節では(2)で Newcastle 港を、(3)で Port
Kembla港の概要を解説する。
Sydney Newcastle
Singleton
Port Kembla Wollongong GUNNEDAH
BASIN
GLOUCESTER BASIN
SYDNEY BASIN
OAKLANDS BASIN
Bomaderry Goulburn
Kandos Dunedoo
Ulan
Bylong
Muswellbrook Narrabri
Gunnrdah
Oaklands
NSW NSW NSW
GUNNEDAH HUNTER NEWCASTTLE WERTERN GLOUCESTER SOUTHERN OAKLANDS
Coal Terminal Future Terminal COALFIELD
GUNNEDAH HUNTER NEWCASTTLE WERTERN GLOUCESTER SOUTHERN OAKLANDS
Coal Terminal Future Terminal COALFIELD
Lithgow
Albury
Moss Vale
PWCS T4 Newcastle Coal Infrastructure Group
PWCS Kooragang PWCS Carrington
図 3-11 New South Wales州の石炭輸出港湾と鉄道網の立地(再掲)
出所)NSW Department of Primary Industries, Mineral Resources Division
表 3-5 New South Wales州内における石炭輸出ターミナルの概要
港湾名 石炭輸出タ
ーミナル名 開業年
所有者
運営者 監督機関
輸出量・能力
接続する鉄道
土地 設備 実績 輸出能力
拡張前 拡張後
Newcastle 港
PWCS
Kooragang 1984年
Newcastle Port Corporation
Port Waratah Coal Services Ltd
Port Waratah Coal Services Ltd
Newcastle Port
Corporation 97.1MT (2009)
88MT (2009)
120MT (2010)
Hunter Valley Coal Rail Network PWCS
Carrington 1976年
Newcastle Port Corporation
Port Waratah Coal Services Ltd
Port Waratah Coal Services Ltd
Newcastle Port Corporation
25MT
(2009) N/A
PWCS T4 20/16年
(予定)
Newcastle Port Corporation
Port Waratah Coal Services Ltd
Port Waratah Coal Services Ltd
Newcastle Port Corporation
95MT (予定)
NCIG Coal Export Terminal
2010年
Newcastle Port Corporation
Port Waratah Coal Services Ltd
Newcastle Coal
Infrastructure Group Pty Ltd
Newcastle Port Corporation
約10MT (2010)
30MT (2010)
53MT (2012) 66MT (N/A)
Port Kembla港
Port Kembla Coal Terminal
1964年
Port Kembla Port
Corporation
Port Kembla Coal Terminal Limited
Port Kembla Coal Terminal Limited
Port Kembla Port
Corporation
13.1MT (2008)
18MT (2008)
24MT (株主の1社
が拡張の意 向を示す) 出所)NSW州政府資料、各社ウェブサイト等より作成
(2)Newcastle港
Newcastle港における石炭輸出ターミナルの位置関係は、図 3-12のとおりである。Port
Waratah Coal Services(PWCS)とNewcastle Coal Infrastructure Group(NCIG)の2つ の運営会社があり、図 3-12 に示す 3 つのターミナル(PWCS Carrington、PWCS
Kooragang、NCIG)が運営されている。さらに、PWCSがT4(Terminal 4)の新設を検
討中である。
図 3-12 Newcastle港における石炭輸出ターミナルの位置関係
1)PWCS Kooragang 石炭輸出ターミナル
① PWCS Kooragang石炭輸出ターミナルの現状
Kooragang石炭輸出ターミナルは、図 3-13の赤線で囲まれた部分である。
図 3-13 PWCS Kooragang石炭輸出ターミナルの立地
出所)PWCS
Kooragang
Carrington
Kooragang石炭輸出ターミナルの概要を表 3-6に示す。
表 3-6 Kooragang石炭輸出ターミナルの概要
開業年 1984
所有者 土地 Newcastle Port Corporation
設備 Port Waratah Coal Services Ltd
運営者 Port Waratah Coal Services Ltd
港湾の監督機関 Newcastle Port Corporation
輸出量・
能力
実績 97.1 MT (Kooragang、Carrington の合
計値)
能力 拡張前 88 MT
拡張後 120 MT56
バース数 3
接続する鉄道 Hunter Valley Coal Rail Network
他社による使用 可
貯炭管理
ストックヤード
最大360万トン(実働220万トン)
2.5km長×56m、2面 1.3km長×56m、2面 スタッカー 6,600トン/時×2基
8,500トン/時×4基 リクレーマー 8,000トン/時×4基
石炭積出
シップローダー 10,500トン/時×3基
バース
3バース
3船同時着岸可能
最大LOA300m、最大Beam50m、
水深16.5m
最少40,000dwt、最大232,000dwtの本船 受入可能
チャネル 2009年5月時点で水深15.2m 出所)PWCS website
Kooragang石炭輸出ターミナルはNewcastle港内のKooragang Islandに位置する敷地 面積255ヘクタールの石炭輸出ターミナルであり、1984年に開業した。当初はBHPによ り管理されていたが、1990年にPort Waratah Coal Services (PWCS) により買収された。
1994年から2008年の間に、PWCSはAUD 10億の投資を行い、2010年には輸出能力は
8,800万トン(88MT)まで拡張された。バース、シップローダーはともに3つあり、後述
のとおり4つ目のバース、シップローダーを新設すると、敷地をほぼ使い切ることになる。
② PWCS Kooragang石炭輸出ターミナルの課題と投資計画
Kooragang 石炭輸出ターミナルのこれまでの拡張の経緯と、今後の拡張計画の概要は表
3-7のとおりである。
表 3-7 Kooragang拡張計画の概要 拡張プロ
ジェクト 名
認可取
得年 開始年 完了年 輸出能
力 備考
Stage 3
(1993-96) 1997 1999 200257 64 MT5 Stage 3開発の認可は、公称
取り扱い能力77MT4に対す るもの。
Stage 3
(2005-07) 1997 2005 2007 77 MT
PWCSは、認可能力77 MT5 達成に向け、’Project 3D’構 築の認可を取得。
Stage 3
(2009+) 200758 2009 2009 88 MT
PWCSは、Stage 拡張追加 および公称取り扱い能力各 階(77MT→120MT)の認 可 を 取 得 。Reclaimer、 stackerを追加導入し、現在 拡張進行中。現在の輸出能 力は88 MT59。
Stage 4 2010 2010 201260 120 MT
効率アップと120MTへの輸 出能力アップに向け石炭タ ーミナルの改良。バース、
シ ッ プ ロ ー ダ ー の 新 設 な ど。工事予定期間は24ヶ月。
出所)PWCSウェブサイト.
2010年6月、PWCSはNSW政府よりKooragang Coal Terminal (KCT) ‘Stage 4’プ ロジェクトの認可を取得した。この拡張により、KCT の輸出能力は、2010 年の88MTか
ら120 MT まで拡大できる。Stage 4計画の中心は第4バース、シップローダーの新設で
あり、この拡張でKCTの敷地をほぼ使い切ることになる。従って、さらに拡張が必要な場 合は、T4の新設が必要になる。
57 http://www.pwcs.com.au/pages/history.php
58 http://majorprojects.planning.nsw.gov.au/index.pl?action=view_job&job_id=4
59 http://www.pwcs.com.au/pages/terminals/kooragang.php
60
http://www.pwcs.com.au/pages/design/links/uploaded/06-Stage4ResponsetoSubmissions
図 3-14でKoorang拡張計画の概要、 図 3-15 で輸出能力の見通しを示す。
図 3-14 Kooragang 拡張計画
出所)Kooragang Publication, ‘Proposed Increase to Throughput Capacity’, 2006
40 50 60 70 80 90 100 110 120 130
2002 2007 2009 2012
輸送容量[年MT]
Kooragang石炭輸出ターミナル
図 3-15 Kooragang 石炭輸出ターミナルの輸出能力の見通し
2)PWCS Carrington 石炭輸出ターミナル
① PWCS Carrignton石炭輸出ターミナルの現状
PWCS Carrington石炭輸出ターミナルはKooragang Island南部に位置し、Newcastle
のCarringtonにおいて51ヘクタールの土地を占める石炭輸出ターミナルである。図 3-16
にその立地を示す。
図 3-16 Carrington石炭輸出ターミナルの立地
出所)PWCS website
Carrington石炭輸出ターミナルの概要は、表 3-8のとおりである。Carrington石炭輸出 ターミナルは1976年に輸出能力1600万トン(16MT)で開業した。後の拡張により、当 該ターミナルの輸出能力は現在の2500万トン(25MT)となった。敷地はほぼ使い切られ ており、これ以上の拡張計画はない。
石炭の搬入は、鉄道に加えて道路(トラック)でも可能であるが、ほとんどの石炭は鉄 道を通じて搬入されている。シップローダーは2機あり、1隻に対し1機のシップローダー で 積 み 込 む ほ か(‘single-head’)、1 隻 に 対 し シ ッ プ ロ ー ダ ー2 機 を 同 時 に 使 う (‘dual-headed’) ことも可能である。
表 3-8 Carrington輸出ターミナルの概要
開業年 1976
所有者 土地 Newcastle Port Corporation
設備 Port Waratah Coal Services Ltd
運営者 Port Waratah Coal Services Ltd
港湾の監督機関 Newcastle Port Corporation
積込量
実績 97.1 MT (Kooragang、Carrington の合
計値)
能力 拡張前 25 MT
拡張後 N/A
バース数 2
接続する鉄道 Hunter Valley Coal Rail Network
第三者アクセス 可
貯炭管理
ストックヤード 最大100万トン(実働60万トン)
1.0km長×40m、4面 スタッカー 2,500トン/時×4基 リクレーマー 2,500トン/時×4基
石炭積出
シップローダー 2、500トン/時×2基
バース
2バース
2船同時着岸可能
最大 LOA290m、最大 Beam47m、水深
16.5m
最少20,000dwt、最大180,000dwtの 本船受入可能
チャネル 2009年5月時点で水深15.2m 出所)PWCSウェブサイト
3)PWCS T4石炭輸出ターミナル (新設計画)
① PWCS T4石炭輸出ターミナルの概要
2009年、PWCSはNewcastle Port Corporationを通じてNSW州政府とAgreement for
Leaseを結び、第4石炭輸出ターミナルを建設のFSを実施することとなった。Terminal 4
(T4) と呼ばれる建設予定地は、Tourle Street BridgeおよびNCIGターミナルの間に存在 し、その北部には PWCS へ輸送を行う鉄道が走る。T4 建設予定地の空中写真を図 3-17 に示す。
図 3-17 T4 建設予定地の空中写真 出所)Googleマップ画像を編集
Terminal 4 の概要を表 3-9 に示す。輸出能力については決定されていないが、PWCS
へのヒアリングによると最大 95MT 程度で検討しているとのことである。ただし、初期は 30MT程度で運転開始し、徐々に拡張していくものとみられる。
表 3-9 Newcastle Terminal 4の概要 開業年 (予定) 2016
所有者
土地 Newcastle Port Corporation 設備 Port Waratah Coal Services Ltd
運営者 Port Waratah Coal Services Ltd
港湾の監督機関 Newcastle Port Corporation 最大輸出能力(予定) 95 MT
バース数 (予定) 5
接続する鉄道 Hunter Valley Coal Rail Network
第三者アクセス 可
出所)PWCSへのヒアリング
② スケジュール
PWCSに2009年11月、及び2010年11月に実施したヒアリングによると、PWCSで は2009年後半にT4のプロジェクトチームを結成し、コンセプトスタディーを行っている 他、建設予定地の実地調査を行った。実地調査の結果、Tourle Street Bridge付近に船舶の 運行するためには、浚渫が必要になること、川沿いの一部の土地を削る必要が生じる可能
性、汚染土壌の処理、その他環境影響への対策などが必要とのことが判明しており、それ らの費用見積もりなどをしている。
なお、現地の港湾関係者によれば、EIS にはそれなりの時間を要するのではないかとの 指摘もあった。これは、当該敷地がかつてBHPの鉄工所であったことから、土壌汚染が確 認されていること、また敷地内に湿地帯があり、子キンスジアメガエル(Green and Golden
Bell Frog)や渡り鳥が確認されているためで、Newcastle大学の専門家を雇ってEISを実
施するとのことである。
PWCS によれば、建設には4年程度かかるとのことである。最短で 2011年6月ごろに 投資判断ができる状況になるとのことであった。
なお、T4 の拡張スケジュールは表 3-10 の通りとなっている。予定通りに進めば、2013 年に着工、運用開始は2016年となっている。
表 3-10 Terminal 4拡張スケジュール
出所)PWCS website
③ 建設コストとハンドリングチャージ
建設コストはAUD 28億 ~ 35億程度と予想され、浚渫が多く必要になるといった理由 から、既存の 2 つの港湾よりも建設コストは高くなり、ハンドリングチャージについても 割高になる見込みである。現時点ではNCIG>PWCSの順でハンドリングチャージが高い61 が、T4が完成すると PWCSのハンドリングチャージの方がNCIGよりも割高になる可能 性がある。なお、PWCSの既存 2ターミナルと T4 のハンドリングチャージを別途に設定
リングでは示していた。
④ レイアウト
鉄道およびストックヤードの構成レイアウトについての検討が行われた(図 3-18)。ス トックパイルを7つ設置し、一体型のスタッカー・リクレイマーを採用する見込みである。
なお、既存のPWCSの2ターミナルではスタッカーとリクレイマーは別々になっており、
NCIGでは一体型を採用している。一体型を採用する理由はその方が別々に導入するよりも 安価だからである。
図 3-18 Terminal 4のレイアウト案 出所)PWCS website
4)NCIG (Newcastle Coal Infrastructure Group) 石炭輸出ターミナル
① NCIG石炭輸出ターミナルの現状
NCIG 石炭輸出ターミナルはNewcastle港の3つめのターミナルとして、図 3-19に示
すとおり Kooragang ターミナルの隣接地に建設され、2010 年に運転開始をした新しいタ
ーミナルである。所有者は、BHP Billitonを筆頭に表 3-11に示す石炭会社6社である。