2. 資源・エネルギー政策とその影響
2.1 鉱物資源利用税 (MRRT, Mineral Resources Rent Tax)
2.1.1 制度概要
表 2-2 MRRTとRSPTの主な違い
事項 RSPT MRRT
課税対象 全ての石油・資源プロジェクト。 石炭・鉄鉱プロジェクト。MRRT の 計 算 式 に お け る 利 益 が 、 年 50millionを越す会社。
課税率 RSPT の計算式における利益の
40%。損失は 10 年ものの政府国
債に5%を足した年率で、翌年に
キャリーオーバーできる。
MRRT の計算式における利益に
対して 30%。損失は長期国債に
7%を足した金額で、翌年にキャ リーオーバーできる。
控除制度 採掘コスト(cost of extraction)、 及び課税ポイント(taxing point、
生産から輸送される中で、どの時 点での資源利益に対して課税す るかということ)までの輸送コス トは、控除対象となる。
Extraction Allowance として、
MRRT 税額の 25%を控除する。
従って、実質税率は22.5%になる。
この他にも、各種ロイヤリティー を控除できたり、法人税支払時に MRRT を控除できたりと控除制 度が多い。
資産額の設定 課 税 開 始 時 の 資 産 額 は 、 資 本
(existing capital)の簿価(book value)を使う。
課税開始時の資産額として、資源 会社は簿価(book value)か、市場 価格(market value)かをプロジ ェクトごとに選択できる。
なお、MRRTは表 2-3に示す制度となっており、MRRT利益(MRRT profit、課税点は 議論中であるが、石炭が炭鉱から外に出る時点での価値からコストを差し引いて算出され る金額となる見込み) に対し 30%の課税を行なうが、当該税率のうち 25%が資源採掘特別
税額 (extraction allowance) として控除されるため、実質では22.5%の課税となる。この
他、MRRT損益の損失分については翌年以降に長期国債利子率に7%を加えた利率でキャリ ーフォーワードが可能である。また、ロイヤルティ (州税) がMRRT税額から一定額控除50 されるなど、資源業界にとって有利な制度が盛り込まれている。MRRT利益が AUD50百 万に満たない事業者は、課税対象から外される。現地ヒアリングでは、7%の上乗せ金利、
及び各種控除制度の導入がされたことにより、当初の RSPT と比較してキャッシュフロー への影響がかなり軽減されたのことの指摘が複数あった。
なお、MRRTの導入に向けて豪州政府はPolicy Transition Group (PTG)と呼ばれる組織 を設立しており、豪州資源大臣であるMartin Ferguson氏と元BHP Billiton会長のDon
Argus氏を筆頭に、鉄鉱石および石炭業者との意見交換や税制の詳細の議論を行っている。
50 ある年度内においてRoyaltyおよびUplifted Royalty offsetの合計がMRRT after extraction allowance を上回る場合は、その差にCapital Uplift Rateを掛けることで、該当年度以降のMRRT税の控除を行な
表 2-3 MRRTにおける概要
項目 概要
利 益 に 対 す る
22.5%の課税 MRRT利益に対して 30%の課税後、当該税率のうち25%が資源採掘特
別税額 (extraction allowance) として控除される。 30%課税率 x 25%
控除であり、全体に対して7.5%が控除され、実質税率は22.5%になる MRRT利益は、炭鉱から輸送される時点(first saleable form at mine gate)における価値からその時点までにかかったコストを差し引いて求 める。
資産額の設定 MRRT 導入時点で既に生産活動が開始されているプロジェクトに関し ては、その資産価値を、納税者が下記の2つから選択をすることが可能 である。
帳簿価額(資源の価値は除く。帳簿価格を選択した場合は、当初の 5年間は加速償却を行う。原価償却後の残りの金額に対して、LTBR
(長期国債利率)に7%を加算した利率でキャリーオーバーする)
時価:資産に対する減価償却を行なう (最長25年)。
小規模事業者の除 外
年間のMRRT利益がAUD50百万に満たない事業者は、課税対象から除
外される。
課 税 点 (Taxing Point) の設定
課税点は、資源の採掘時点に可能な限り近く設定する。それにより、資 源権益に伴わない利益へのMRRT課税を極力小さくする。
損金の割り増し MRRT損失は長期国債利率に7%を加えた利率で翌年以降にキャリーオ ーバーされる。
プロジェクト利益 の相殺
プロジェクトからのMRRT損失は、当該事業者が行なう他プロジェクト のMRRT利益との相殺が可能である。
ロイヤルティ (州 税) の控除
ロイヤルティ (州税) は継続して課税されるが、MRRT税額から一定額 控除される。当該控除の上限額は現時点では指定されていない。
出所)PTG, “Issues Paper”および豪州首相官邸プレスリリースより作成
具体的には、初年度に10億豪ドル(AUD 1 billion)投資するプロジェクトで、収入が2年 目に5億2000万豪ドル(AUD520 million)、3年目に8億3000万豪ドル(AUD830 million)
と増えていく場合、MRRTの税額は表 2-4のとおり算出される。
まず、初年との投資額は全額10億豪ドル(AUD 1 billion)がMRRT損失として計上さ
れる。MRRT損失は13%の利率で翌年に繰り越される。2年目は5億2000万豪ドル(AUD
520 million)の収入に対し、営業経費が1億3000万豪ドル(AUD 130 million)かかり、
さらに前年からキャリーオーバーされたMRRT損失10億豪ドルと13%の繰越分1億3000 万豪ドルを差し引き、MRRT損失は7億4000万豪ドル発生する。従って、2年目より営業 利益は計上されるが、MRRTの税負担は発生しないことになる。
MRRT損失は3年目まで解消されず、4年目よりMRRT利益がはじめて計上される。と ころが4年目においても、これまで支払ったロイヤリティーを控除できるためMRRT税負 担は発生せず、MRRT税負担が発生するのは5年目からとなっている。
この例では、当初6年間のMRRT税負担は1億260万豪ドルに留まることになり、特に MRRT
表 2-4 MRRTによるプロジェクトへの影響の事例 [AUD Million]
項目 算出式 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目
収益 A 0 520 830 910 1090 1100
操業費 B 0 130 210 230 270 280
投資経費(初年度に全額償却) C 1000 0 0 0 0 0
前年度のMRRT損失を年率13%で
翌年に持ち越し D E x 13% 0 130 96.2 28.1 0 0
MRRT未使用損失 E FPrevious Year 0 1000 740 216.2 0 0 MRRT利益/損失 F A-(B+C+D+E) -1000 -740 -216.2 435.7 820 820 MRRT @ 30 % (MRRT利益の30%
分が課税される) G F x 30% 0 0 0 130.7 246 246
採鉱控除(Extraction allowance)
@ 25% H G x 25% 0 0 0 32.7 61.5 61.5
採鉱控除差し引き後MRRT I F-G 0 0 0 98 184.5 184.5 州のロイヤリティー@ 7.5 per cent J A x 7.5% 0 39 62.3 68.3 81.8 82.5 増額調整後ロイヤルティー51 K [(J+K)-I] x 113% 0 0 44.1 120.1 102.1 0
MRRTの実質税額 L I-(J+K) 0 0 0 0 0.6 102
資源関係の税金合計 M J+L 0 39 62.3 68.3 82.4 184.5
法人税 0 0 0 0 0 0
収益 A 0 520 830 910 1090 1100
操業費 B 0 130 210 230 270 280
減価償却費 C 0 200 200 200 200 200
資源関係の税金合計 M 0 39 62.3 68.3 82.4 184.5
法人税課税所得 N A-(B+C+M) 0 151 357.8 411.8 537.6 435.5
法人税 @ 29 per cent O N x 29% 0 43.8 103.7 119.4 155.9 126.3
税引き前利益 P M+N 0 190 420 480 620 620
税金額合計 Q M+O 0 82.8 166 187.7 238.3 310.8 出所)Policy Transition Group資料より作成
51 ある年度内においてRoyaltyおよびUplifted Royalty offsetの合計がMRRT after extraction allowanceを上回る場合は、その差にCapital Uplift Rateを掛けることで、