VP N
,VO
およびV
Eはそれぞれ表現型分散,遺伝分散および環境分散である。クローン集団内に おける遺伝分散は存在しないのでクローンの表現型分散は環境分散に等しい滅。従って,本研 究においてみられたクローンにおける分散の減少は,クローンにおける遺伝分散の欠除を反挟し ていると考えられるc また,上記の筋肉の化学成分の分散が遺伝的要因により変化することが示されたことから,選抜や染色体操作といった育種技術による肉質改善の可語性が示唆されたc
外部形態的および血液性状溺)では,ヘテロクローンに比べてホモクローンの方の分散が大き くなることが報告されている。
B o n g e r s e t a l .
(19 9 7 )
紛は,この分散の増大の原因は染色体操作 による経のダメージ (ED)による影響であることを示唆している。しかしながら,本実験にお けるホモクローンの筋肉の化学成分組成の分散とヘテロクローンのそれとの間に顕著な差異はみられなかった。このことは,筋肉の化学成分組成がEDの影響を受けにくいか,あるいは本実験 に用いたホモクローンのサイズがヘテロクローンに比べて著しく小さかったことによるのかもし れない。
一方,脂肪酸組成の分散および変動係数には,クローンとノーマノレとの間にほとんど差がみら れなかった.一般的に魚類組織の脂訪酸組成は与える餌料の影響を受けるとされており
1 9
1ω鴎 跡9体 似ω8剖‑心ω州‑11附1ωi泌湖8ω)今匝の実験結果からも,これらの組成が遺伝的な影響よりも,むしろ飼料をはじめとする環境要 毘による影響を強く受けていることが示唆された。また,魚類の遊離アミノ酸組成においても,
与える飼料III)や飼育条件112)などの影響によって筋肉中の数種の遊離アミノ酸含量に差が出るこ とが報告されており ヘテロクローンで、有意に分散の低かった6アミノ酸は他の項目に比べて遺 伝的な影響を強く受ける〈または,環境要因の影響を受けにくし、)成分なのかもしれない。一方,
ホモクローンの2アミノ酸の分散はノーマルに比べ有意に高く,さらに,ヘテロクローンおよび ホモクローンの変動係数はそれぞれ 10および 12アミノ酸においてノーマルよりも高い値を示し た。魚類の遊離アミノ酸組成に影響をおよぼす諸要因に関する知見は少なく,これらの組成に関 しては今後さらに検討する必要があると思われた。また,魚類筋肉のタンパク質構成アミノ酸組 成に関しては,これら自体を諒査した例が少なく,これらの組成がどのような影響によって変動 するかは定かではない。今回の実験では,ホモクローンの変動係数がノーマルに比べ全ての項目 で低い値を示したが,逆にヘテロクローンの変動係数はノーマノレとほとんど変わらなかったこと から,タンパク質構成アミノ酸組成に関しでもクローン化の明確な影響は認められなかった。
今@J,各成分の平均値においてもノーマルとクローンとの間に様々な差が見られた。しかし,
今回の実験が同種間および同飼育条件下での比較であることから,これちの差異は各供試魚の魚 体 重1叫および系統などに起因するところが大きいと考えられるa
養殖魚の諸形質において肉質は最も重要な形質の 1つであるが,これらの染色体操作魚に関す る知見は乏しく,また,クローン魚に至ってはこれらの研究は全く成されていないのが現状であ る。水産養殖分野でクローン魚を応用するためにはこれらの知見をさらに集積する必要があると 考えられ,今後はこれらの研究を基盤として肉質面においても優長なクローン魚を作出すること が期待される。
II‑4・3.性比および生殖腺指数
( G S
I)II・4・3・1.材料および方法
(1 )供詰魚およびサンプワング
2歳魚:マダイの産卵期2)の後期から終期にあたる 2000年 6月213にヘテロクローン(解化 後782日目),ホモクローン(解化後782日目)およびノーマル〈解化後 772日目)を各10是ず つサンプリングし,尾文長,体重および生殖線重量を測定して生殖腺指数 (GSI;生 殖 線 重 量 / 魚体重
x
100)を算出した。描出した生殖腺は 10%中性ホルマヲンで酉定した後業法に従い組織 切片を作製し,へマトキシリン・エオジン染色1凶を施して顕微鏡観察を行い,組織学的に性比 の判定を行った。再クローンはランダムにサンプリングし,ノーマルは外観上婚娼色の出ている ものとそうでないもの 5尾ずつをサンプリングした。3歳魚:産卵期の後期にあたる 2001年5月22自にヘテロクローンおよびホモクローン(癖化
後 1,136l3 eJ),並びにノーマノレ(醇化後 1,126日目〉をいずれもランダムに50尾ずつサンプリ ングし, 2歳魚の場合と詞様にGSIを算出するとともに性比の判定を行った。
( 2 )
統計解析各区の尾文長,魚体重,生殖腺重量およびGSIの平均値,変動係数および分散を求め,試験 区間の分散をFisher'sFで, 3試験区間の平均値の差をSche民'sF test (多重比較)によりによ りそれぞれ有意差検定した (pく0.0針。有意差検定はコンピュータプログラム StatViewver. 5.0 (SAS Insti知teInc. Cary, USA)によった。また, 3歳魚においては各区の性比の 1: 1からのず れおよびノーマ/レとクローンとの性比の差異をど検定11勺こよりそれぞれ調べた。
11‑4‑3・2.結 果 (1)
2
歳急Table 11‑26には,各区2歳魚の是文長,魚体重およびGSI,並びに組織学的な観察により判定 した性比の結果を示した。 GSI の平均値には各試験~開に有意な差はみられなかったが,そのホ モクローンの分散はノーマルに比べ有意に低かったc また,再クローンの全信体の生殖腺が周辺 仁期の卵母紹胞を有する卵巣であり,精巣組織は認められなかったo
Table 11・26.Means, coefficients of variation (CV) and variances (V) of fork length, body weight, gonad weight and GSI, and gonadal sex of 2ぅrear‑oldnormal・2Nand cloned red sea むream
Characters Normal‑2n Hetero‑clone Homo‑clone Means CV (%) V Means CV (%) V MeamCV(%) V Fork length (cm) 32.2A 5.7 3.4 33.4A 1.9
O
.4a 26.5B 5.4 2.0Bodyweight(g) 761A 21.5 26780.1 759.8A 4.7 1251.5a 386.9B 17.0 4345.0b
*1 A~ I'\ A~ 1 ,..,*2 A~ I'¥f A 1 A*2 A A 1 f A A A*2,b
GSI(%)' 1 0.5 29.5 1.7 L 0 . 5 26.0 1.4L 0.4 16.4 0.4.L,
Number
♀ ?
5 10 103
♂ 3 0 0
offish*
♀♂
2 0 0*1 Gonado‑somatic index (GSI) = gonad weight I body weight x 100.
勺 Vxl02•
*3 n=10:♀,ovary;♂, testis;♀♂, bisexual gonad.
a, b Significantly different between normal‑2n and clones (F‑test: a, pく0.01;る,pく0.05).
A, B Means within a line not marked by the same superscript letter are significantly different (Scheffe's F‑test, p<0.05).
( 2 ) 3
歳魚τable 11・27には, 3歳魚における各区の尾文長,魚体重, GSIおよび性比を示した。両クロー ンのGSIの平均値はノーマルに比べ脊意に低かったG 各区の性比は,ノーマルが雌32尾,雄17 尾および不明 l尾で、あったのに対し,ヘテロクローンでは雄49尾および雄 1尾であり,ホモク
ローンでは50尾すべてが雌で、あった。ノーマノレの性比の 1: 1からのずれをχ2検定した結果有 意差はみられなかった (p>o.1) が,両クローンでは 1: 1から有意にずれていた (pく0.0001)。
Table 11・27.Means, coefficients of variation (CV, %) and variances (V) of fork length, body weight, gonad weight and
GSI
, and gonadal sex of 3‑year‑old normal早2nand cloned red sea breamCharacters Normal‑2n Hetero‑clone Homo‑clone 長feans CV V Means CV V Means CV V Fork length (cm) 39.3A 5.9 5.4 40.8B 3.9 2.5a 31.9C 7.7 6.0
Body weight (g) 1351.6A 19.2 67086.9 1408.7A r>. 12.5 31153.2a 691.5B 17.7 14936.0a
GSI
(%)*1 1.6A 84.1 18.0*2 0.6B 27.9 0.3*2,a 0.7B 37.4 0.7*2,aNumちer ♀ 32 49 50
of fish*4
♂
17 Oヲ
。 。
本1Gonado・somaticindex (GSI) = gonad weight / body weight x 100.
*2 Vxl02.
*4 n=50:♀,ovary;♂, testis; ,?unknown.
a. b Significant1y different between normal‑2n and clones (F‑test: a, p <0訓;る,p<0.05).
A. B Means within a line not markedるythe same superscri予tletter are significant1y different (Scheffe's F‑test, pく0.05).
またノーマルと再クローンとの関で性比の差異を検定した結果,いずれも有意差が認められた
( P <
0.0001)。 II‑4‑3・3.考察マダイの性分化過程の詳細については次章で述べるが,マダイは幼時雄雄同体性を示すことが 天熱魚を用いた研究で報告されており(著者らは選抜育種マダ、イが天然群とほぼ同じ性分化過 程を示すことを明らかにしてきた116) 選抜育種マダイにおいては 鮮化後3ヶ月言(平均魚体 重 13.3g) 頃から全ての個体の生殖腺が卵巣として分化し始め,解化後 8ヶ月目(平均魚体重 168.3g)頃には約半数の掴体で雄雄間体性生殖腺が出現し(幼時雄雄同体現象),これらが雄に 分化して完全に性分化が完了するのは 2歳魚以降である。
本研究で用いた2歳魚(解化後約2年2ヶ月間は,ノーマルで、雄雄間体性生殖線が観察され たことからも分かるように,まだ完全に性分化が完了していない個体である。また,サンプリン グした個体数も 10尾と少なかったことから, 2歳魚のデータはあくまでもクローンマダイの性 分化の途中経過に過ぎないc しかし,両クローン集団に雄および雑雄同体の存在が見られなかっ たことは大変興味深く ノーマルに比べて宥意に魚体重の値が低かったホモクローン〈平均魚体 重386.9g) も雄および雌雄同体が出現するのに十分な大きさであったことから,クEーンマダイ 集団は全錐集団となる可能性が高いと考えられた。そこでさらに性分化が完了する 3歳魚におい て分析を行ったところ,ヘテロクローンでは50尾中49尾が,ホモクョーンでは 50尾すべてが 雌であるという結果を得た。このように本実験において作出したクローンの性は著しく雌に偏っ ており,雄の二次性徴による高品価値の抵下が軽減されることから,マダイのクローン化による 高品性向上の可能性が考えられる。なお,本学水産研究所においてこれまでに作出された第二極 体放出阻止型雌性発生二倍体 (meiotic‑G2N)およびmitotic‑G2Nにおいては,高頻度に雄の出現 することが確認、されており(未発表データ),また三培体マダイにおいてはそのほとんどが雄に
なる札制など,染色体操作によってマダイの全雌集団の作出が果たされた例がない。
2歳魚においてはGSIの平均値にはノーマルと両クローンとの聞に有意な差はみられなかった が, 3歳魚ではノーマルの方が両ローンよりも有意に高い値を示した。このことは,クローン魚 の生殖腺の発達および成熟がノーマルよりも劣ることを示している可能性もあるが,両クローン とも性比が著しく雌に偏っていたために正常な産卵行動が行われず,その結果GSIが低くなっ た可能性も考えられる。ホモクローンの成熟・産卵は クローンを継代する上で重要な問題であ ることから,今後,クローンマダイの成熟・産卵についてマダイの成熟・産卵に雌雄を混合飼育 する必要があるのかどうかを含めて詳細に検討していく必要がある。
魚類の性分化あるいは性決定機構は魚種により多様で117‑12ペマダイについては天然集団にお ける性比が 1: 1となることが知られている刷ものの,性決定機構は解明されておらず,また核 型から性染色体を区別することもできないへよってクローンマダイが全て雌になる理由は明ら かではないが,ホモクローンにおいて全個体が雌であったこと,および 11‑3で示したように遺伝 的には全く均一な集団であるヘテロクローンにおいて 1尾の雄が出現したことは,本種における 遺伝的および環境的性決定機構の両方が性決定に関与したことが推察される。このように次章で も述べるが染色体操作魚によって得られた知見が性決定機構解明の一助となることは言うまでも なく,今後これらの結果を参考として遺伝的および環境的要因,双方からのマダイの性決定機構 の解明が望まれる。
第III章 マ ダ イ の 性 統 御
III‑l.選抜書種マダイの性分化過程116)
Matsuyama et al.制は,マダイ天然集団の生殖腺発達,性成熟および性比について調べ,マダ イは雄雄同捧となる稚魚期をもっ雌雄異体性魚であることを報告している。第 I章でも示したよ うに飼育条件下におけるマダイの成長は選択系の方が非選択系の天然集団に比べ著しく速い4,樹
が,このように成長の速い選択系マダイの性分化について調べた例はまだない。そこで本研究で はマダイの性統御に関する基礎的知見を得ることを目的として選択育種マダ、イの性分化過程につ いて調べた。
111‑1‑1.材料および方法 (1)供試魚
当裁魚:1993年産選抜育種マダイ親魚〈選抜7および8世代目の混合群)より自然産卵され た卵約 1万粒ずつを500I容ポリカーボネート水槽2基に収容し, II‑l ~こ示した方法で飼育した。
なお,選抜育種の過程および方法については過去に述べた通りであるヘ解化後50日目かちは7 ぱ 容FRP円形水措に収容し,成長に合わせてランダムな間引きを行い飼育密度の調整を行った。
1歳魚:和歌山県田辺湾に設置した近畿大学水産研究所白浜実験場の網生策で養成されていた 1996年産選抜育種マダイ 1歳魚 (1996年2月25
S
鮮化〉を 146尾用いた。2および3歳 魚 :1歳魚と同様に網生賓で養成されていた 1995年産選抜育種マダイ 2および3 歳魚(1995年3月5日'""‑'4月2日鮮化)を50是用いた。
(2)サンプリング
当歳魚:鮮化後60日巨までは 10日目毎に,それ以降 12ヶ月日までは1ヶ月目毎に20‑50尾 ずつをランダムに取り上げて氷海水で却殺後,標準体長および魚体重を測定した。魚のサイズに 合わせて全魚体あるいは生殖腺を 10%中性ホルマヲンでしたc
1歳魚:1997年3月26告に24是(癖化後約 l年 1ヶ月), 4月29自に25墨(約1年2ヶ月),
6丹18日に20尾(約1年4ヶ月), 9月24日に23尾(約 1年7ヶ月), 12 jj 5
S
(約 1年9ヶ 月)および 1998年1月23S
に25尾(約1年 11ヶ丹)をそれぞれランダムに取り上げて標準体 長および魚体重を測定後,生殖腺を摘出して生殖腺指数 (GSI,100X生殖腺重量/魚捧重〉を求 め,生殖腺を 10%中性ホノレマランで固定したc2および3歳魚 :2歳魚以降は産卵期およびその前後では雄の体色が二次性徴により黒化する ことから外観から雄雄の判別が可能であった。 1997年3丹23日に外観上の峰雄各5尾ずつ(鮮 化後約2年)を, 4月19日に同様に雄雄各 10尾ずつ(解化後約2年1ヶ月)を, 8月28自には 同様に雄10尾(解化後約2年5ヶ月〉を, 1998年8月 初 日 に は 雄2尾および雄8是をそれぞ れ取り上げて I歳魚と同様に処理した。