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第6章  実験結果・検討

6.4   Te doped AlGaSb

Teの蒸発温度が410℃におけるH

(

T,0.172

)

を図4.6.1の実線で示す。350 K付近にpeak が見られることから少なくとも1種類のエネルギー準位が存在することがわかる。350 K付

近にあるpeak1からドナー密度とドナー準位を決定する。

Zhuらによると、Te doped AlGaSbでは、TeはDX-center-like trapsであるとされ、Te doped AlxGa1-xSbにおいて、x>0.2では、深いドナー準位を形成すると報告されている24) Te doped Al0.5Ga0.5Sbでは、Hall効果測定より得られたn

( )

T からln

(

n

( )

T

)

1/Tのグラフを

用いて、不純物領域の傾きからドナー準位を110 meVと求めている。Teは深いドナー準位 を形成することから、励起状態を考慮した分布関数を適用する。

図6.4.2より、ピーク温度Tpeak1は374 K、ピーク値H

(

Tpeak1,

0 . 172 )

2.72×1041 cm-6 eV-2.5 となる。 を励起状態を考慮したn型半導体における分布関数 は以下の式で 表される。

(

A

FD E

f

)

f

(

ED

)

( )



 

 

 

∆ −∆

+

 

∆ −∆

⋅



 + 

=

=2

F F

D 1

ex D

exp exp

-exp 2 1 1

1

r

r

r kT

E g E

kT E g E

kT E E

f (6.4.1)

但し、Erは励起準位、grは縮退度、Eex は励起状態の平均エネルギーである。3.1節の(3.2.1)

式 Vegard 則より、比誘電率は 14.9とした。励起準位は、r =7 まで考慮し、励起準位はそ

れぞれ、∆E1= 7.4 meV, ∆E2= 1.8 meV, ∆E3= 0.82 meV, ∆E4= 0.46 meV, = 0.29

meV, = 0.20 meV, = 0.15 meVを用いて、ドナー準位は166 、ドナー密度は

、アクセプタ密度は

1

と求められた。これを用いて、シミュレー ションした を図6.4.2の破線で示す。また、従来のFermi-Dirac分布関数を用い てドナー準位は119 、ドナー密度は

1

、アクセプタ密度は

1

求められた。これを、図6.4.2の点線で示す。励起状態を考慮した分布関数を用いたほうが、

良い一致を示していることが見られる。これらの値を用いて、シミュレーションした E5

18

10

E6

18

cm

10

E7

)

meV

. 1

-3

. 3

×

T

-3 16

19

8

. cm

×

10 10 4 .

×

(

,0.172 meV H

cm

-3

8

×

cm

-3

( )

T

n

図6.4.3 に示す。励起状態を考慮した分布関数、Fermi-Dirac分布関数を用いた両方の場合に おいて良い一致が見られた。そこで、ドナー準位、ドナー密度、アクセプタ密度の妥当性に ついて検討する。

ここで、Undoped Al0.6Ga0.4Sbの正孔密度温度依存性p

( )

T を図6.4.4 に示す。AlGaSb層の成 長条件は表 3.4.3 のとおりである。高温領域で、急峻な正孔密度の増加が見られる。これは、

真性領域であると考え、ln の傾きより、エネルギーギャップ を求めると、1.33 eVと求められた。表3.3.2よりAl

( )

(

pT

)

−1/T Eg

0.6Ga0.4Sbの は1.39 eVであると理論計算により求めら れた。従って、この領域では、真性領域であると考えられる。145 K〜400 K付近では、飽和 領域が見られ、アクセプタ密度は少なくとも10

Eg

14〜1016 cm-3であると考えられる。

Te doped Al0.6Ga0.4Sbにおいて、Fermi-Dirac分布関数を用いた評価では、アクセプタ密度 は

1

と求められ、励起状態を考慮した分布関数を用いたアクセプタ密度は

よりも多くなっている。Undoped Al

-3 18

cm 10 8 .

×

-3 16

cm 10 4

×

16

cm 10 4 .

×

.

1

0.6Ga0.4Sbで、アクセプタ密度は少なくと も1014〜1016 cm-3であることから、励起状態を考慮した分布関数を用いて求めたアクセプタ 密度

1

-3は妥当であると考えられる。

Temperature [K]

peak Te doped Al0.6Ga0.4Sb

Te Evaporate Temperature 410

Experimental data Simulated results

: f(∆ED) ED = 166 meV ND = 3.1×1018 cm-3 NA = 1.4×1016 cm-3 : fFD(∆ED) ED = 119 meV ND = 1.8×1019 cm-3 NA = 1.8×1018 cm-3

H (T ,0.172) [ × 10

41

cm

-6

eV

-2.5

]

150 200 250 300 350 400

0 1 2

図6.4.2 H

(

T,0.172

)

特性

Temperature [K]

E lect ro n Co ncen tr at on [ cm

-3

]

Te doped Al0.6Ga0.4Sb Te Evaporate Temperature 410

Experimental data Simulated results

: f(∆ED) ED = 166 meV ND = 3.1×1018 cm-3 NA = 1.4×1016 cm-3 : fFD(∆ED) ED = 119 meV ND = 1.8×1019 cm-3 NA = 1.8×1018 cm-3

150 200 250 300 350 400

1015 1016 1017 1018

図6.4.3 実験値とシミュレーション曲線の比較

同様に、Teの蒸発温度を330℃としたTe doped Al0.6Ga0.4Sbの場合において、励起状態を考 慮した分布関数を用いて求めたドナー準位、ドナー密度、アクセプタ密度を表6.4.1に示す。

図6.1.5に励起状態を考慮した分布関数を用いて求めたドナー準位、ドナー密度、アクセプ タ密度を用いてシミュレーションしたものを実線で示す。実験値とシミュレーション曲線と良い 一致を示していることから、求めたドナー準位、ドナー密度、アクセプタ密度は妥当であると 考えられる。表6.4.1よりTeの蒸発温度が上がるとドナー密度が増すことから、136meV〜

166meVの準位はTeのドナー準位であることが言える。

1000/T [K

-1

] Hole C on ce ntr at ion [ cm

-3

]

Undoped Al0.6Ga0.4Sb :Experimental data : Eg = 1.33 [eV]

Saturation Range

2 3 4 5 6 7 8 9

108 1010 1012 1014 1016 1018

図6.4.4 Undoped Al0.6Ga0.4Sb正孔密度温度依存性p

( )

T

表6.4.1 励起状態を考慮したFCCS法で求めたTe doped Al Ga0.6 0.4Sb におけるドナー密度及び準位

Te evaporative Temperature 330 ℃ 410 ℃

NA Density[cm-3] 2.7×1015 1.4×1016

Energy Level[meV] 136 166

Donor 1

Density[cm-3] 1.3×1017 3.4×1018

Temperature [K]

E lect ro n C on cen tr at on [ cm

-3

]

Te doped Al0.6Ga0.4Sb

Experimental data Evaporate Temperature

: 330 : 410

:Simulated results

150 200 250 300 350 400

1014 1015 1016 1017 1018

図6.4.2 実験値とシミュレーション曲線の比較

第 7 章 結論 

・Hall効果測定により求めた多数キャリア密度の温度依存性から不純物の密度および準位を 求める方法に我々が提案しているFCCS法を適用することにより、不純物の種類、密度、準 位の仮定を用いないで、アクセプタ密度および準位を高精度に決定できることを実証した。

   

・半絶縁性GaAs上にMBE法でSbとGaの分子線強度比を6、8、10と変化させて成長さ

せたundoped GaSb薄膜中には、5種類のアクセプタが存在することがわかり、各アクセプ

タの密度及び準位を評価できた。このとき、不純物、欠陥の少ないundoped GaSbの最適な 成膜条件はSb/Ga比が8のときである。

・Undoped InGaSb中には40meVと90meVのアクセプタ準位が存在する。40〜45 meV の アクセプタ準位は、Inと結合していたSbのVacancyによるもの、87〜100 meV のアクセ プタ準位は、Gaと結合していたSbのVacancyによるものと考えられる。

・4H-SiCにおいて励起状態を考慮した分布関数を用いて求めたアクセプタ密度の妥当性につい て述べた。Al implanted 4H-SiC中ではAlのアクセプタ準位として185 meV〜189 meVと見積 もることができた。Al doped 4H-SiC Wafer中では深いAlのアクセプタ準位として289 meVと 見積もることができた。

・Te doped Al0.6Ga0.4Sbにおけるドナーは励起状態を考慮した分布関数を用いる必要があり、

Teの蒸発温度が上がるとドナー密度が増すことから、136meV〜166meVの準位はTeのド ナー準位である。

謝辞

本研究を進めるにあたり、多くの方に御支援を頂きましたので、ここに感謝の意を述べさせて いただきます。

本研究を進めるにあたり、日頃から丁寧に、終始暖かく御指導していただきました大阪電気通 信大学工学部電子工学科の松浦秀治助教授に心より深く感謝いたします。

GaSb等の多くの試料をご提供していただき、また多くの御助言をいただきました、本学の須 崎渉教授と須崎研究室の皆様に心より深く感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、多くの御助言をいただきました、本学の佐々木昭夫教授に心より深 く感謝いたします。

Alをイオン注入した4H-SiC試料を提供していただきました三菱電機(株)先端技術総合研究 所の杉本博司氏およびイオン工学研究所の方々に深く感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、測定装置に関して多くの御助言を頂きました(株)東陽テクニカの 吹田尚久氏、(株)インターナショナルサーボデータの浦田篤浩氏、並びに実験器具に関して多く の御助言、ご協力を頂きました(株)双英理研の三好弘記氏に心から感謝いたします。

本研究で用いた、高周波スパッタリング装置を扱うにあたり多くの御助言を頂きました、京都 セミコンダクター株式会社の西川憲次氏に心より感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、三年間苦楽を共にし、日頃から公私にわたってご協力いただきまし た、関本安泰氏に深く感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、日頃から公私にわたって御協力いただきました、須崎研究室の瀬川 昌治氏、臼井 健氏、岡田憲二氏、田中 豪氏、夜久宏幸氏、井上満嘉氏、上辻哲也氏、藤崎研 究室の大野義之氏に感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、一年間測定装置との格闘、苦楽を共にし、日頃から公私にわたって ご協力いただきました、福永展也氏に深く感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、一年間苦楽を共にし、日頃から公私にわたってご協力いただきまし た、椙山浩一氏、石田卓也氏、北川修久氏、永田敬氏、切畑屋泰史氏、加々見貴士氏、中尾良昭 氏を始め松浦研究室の皆様に深く感謝いたします。

本研究を進めるにあたり、多くの御助言を頂きました、長谷貴志氏、近藤健治氏をはじめ、諸 先輩方々に深く感謝いたします。

共に実験に取り組んでいただきました水越猛夫氏、西川明宏氏、上野裕貴氏、立川実幸氏、森 田康平氏、黒田知宏氏、市山誠氏に深く感謝いたします。

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