第4章 Hall 効果測定
4.6 FCCS 法による不純物準位・密度の評価
Undoped GaSbのSb/Ga比10の場合において、FCCS法による不純物準位・密度の評価
をおこなう 8),9)。spline 補間したp
( )
T を用いて、(2.12)式よりH(
T,Eref)
を求める。Sb/Ga 比が10の時における を図4.6.1の実線で示す。100 K付近にpeakが1つあらわれ、200 K付近および300K付近に2つのshoulderがあらわれていることから少なくとも3
種類のエネルギー準位が存在することがわかる。また、350 K以上で増加していることから、
さらに深いアクセプタ準位が存在していることがわかる。
(
T,−0.012H
)
100 K付近にあるpeak1からアクセプタの密度とエネルギー準位を決定する。図4.6.2よ
り、ピーク温度Tpeak1は85 K、ピーク値H
(
Tpeak1, −0.012)
は4.8×1036 cm-6 eV-2.5となる。Temperature [K]
H1(T,-0.012) [×1036 cm-6 eV-2.5 ]
peak1
shoulder1
shoulder2
undoped GaSb Sb/Ga = 10
100 200 300 400
4 4.2 4.4 4.6 4.8
図4.6.1 H
(
T,−0.012)
特性Temperature [K]
H1(T,-0.012) [×1036 cm-6 eV-2.5 ]
peak1
Experimental data : H1(T,-0.012) : Simulated result EA1 = 9 meV
NA1 = 1.3×1016 cm-3 : Simulated result EA1 = 21 meV
NA1 = 4.6×1015 cm-3
∆NA = 8.6×1015 cm-3
undoped GaSb Sb/Ga = 10
80 100 120 140
4.2 4.4 4.6 4.8
図4.6.2 H1
(
T,−0.012)
特性(2.15)式より、∆EA1、NA1のみを考慮したH1
(
T,Eref)
を(
, ref)
A1exp A1 ref(
A11 I E
kT E E kT
E N T
H ∆
∆ −
−
=
)
(4.6.1) で表す。(4.6.1)式より、アクセプタ準位∆EA1は9 meV、密度NA1は1.3×1016 cm-3となる。このときのH1
(
T,−0.012)
を点線で示す。さらに、∆EA1、 に加え、補償密度 を考慮 した場合を考える。 を考慮したNA1 ∆NA
NA
∆ H1
(
T,Eref)
を( ) ( )
−∆
+ ∆
∆
∆ −
−
= kT
E E
kT N E N
kT I E E kT
E N T
H1 , ref A1exp A1 ref A1 A V0exp ref F (4.6.2) と表す。(4.6.2)式より実線のpeak1に一致させたH1
(
T,−0.012)
NA
を図4.6.2の破線で示す。この
ときの∆EA1は21 meV、NA1は4.6×1015 cm-3、∆ は8.6×1015 cm-3である。ただし、
とする。 が正の値をとることから、ドナー に補償された、80 Kで ほとんどイオン化している浅い準位に、アクセプタ が存在することがわかる。図4.6.2か ら点線よりも破線のほうがより実線と一致していることから、
D
A N
N =
∆ NA − ∆NA ND
NA
NA
∆ を考慮する必要がある。
さらに、高温部においては、実線と破線が一致しないことから、さらに深い準位のアクセプ タ存在することがわかる。
次に、さらに深いアクセプタ準位を評価するために、peak1から求めたアクセプタの影響 を取り除いた評価関数を
( ) ( ) ( )
−∆
−∆
∆
∆ −
−
−
≡ kT
E E
kT N E N
kT I E E kT
E N T H E
T
H2 , ref , ref A1exp A1 ref A1 A V0 exp ref F (4.6.3)
と定義する。図4.6.3に を実線で示す。200 K付近にあるpeak2からアクセプタ の密度とエネルギー準位を決定する。図 5 よりピーク温度T は 203 K、ピーク値
(
,0.0162T
H
)
peak2
(
0.016)
2Tpeak2,
H は7.0×1036 cm-6 eV-2.5となり、アクセプタ準位∆EA2は66 meV、密度 は 1.4×10
NA2
16 cm-3と求められる。
Temperature [K]
H2(T,0.016) [×1036 cm-6 eV-2.5 ]
: Experimental data : Simulated result peak2
100 200 300 400
0 2 4 6
図4.6.3 H2
(
T,0.016)
特性また、peak2から求めた∆EA2、NA2を用いて、評価関数H2
(
T,0.016)
を(4.6.4)式に示す。(
,0.016)
A2 exp A2 0.016(
A22 I E
kT E kT
T N
H ∆
∆ −
−
=
)
)
。 (4.6.4)
(4.6.4)式から計算した を図4.6.3の破線で示す。さらに、高温部において、実線
と破線が一致しないことから、さらに深い準位が存在することがわかる。
(
,0.016 2T Hさらに深いアクセプタ準位を評価するためにpeak2から求めたアクセプタの影響を取り除 いた評価関数を
(
, ref)
2(
, ref)
A2 exp A2 ref(
A23 I E
kT E E kT
E N T H E
T
H ∆
∆ −
−
−
≡
)
)
(4.6.5) と定義し、図4.6.4に を実線で示す。300 K付近でピークがあらわれ、ピーク温度
は309 K、ピーク値
(
,0.12 3T Hpeak3
T H3
(
Tpeak3,0.12)
は6.7×1037 cm-6 eV-2.5となり、アクセプタ準位∆EA3 は162 meV、密度NA3は3.6×1016 cm-3と求められる。また、peak3から求めた∆EA3、NA3を用いて、評価関数H3
(
T,0.12)
を(4.6.6)式に示す。(
,0.12)
A3 exp A3 0.12(
A33 I E
kT E kT
T N
H ∆
∆ −
−
=
)
)
。 (4.6.6) (4.6.6)式から計算したH3
(
T,0.12 を図4.6.4の破線で示す。これらの値の妥当性を調べるため、実験値と得られた結果より求めたシミュレーション曲 線の比較をおこなう。シミュレーション曲線おける正孔密度p
( )
T は、電気的中性条件から、( )
= ∑(
∆)
+∆= n
i N i f E i N
T p
1 A A A A (4.6.7) で与えられる。
Temperature [K]
H3 (T ,0 .12 ) [ × 10
37cm
-6eV
-2.5]
: Experimental data : Simulated result peak3
250 300 350 400
0 2 4 6
図4.6.4 H3
(
T,0.12)
特性図4.6.5において、丸印が実験値、実線がシミュレーション曲線である。実験値とシミュレ ーション曲線が非常に良く一致していることから、FCCS 法で求めたアクセプタ準位及び密 度は妥当であると考えられる。今回、350 K以上では対応している準位を評価していないた め、実験曲線とシミュレーション曲線が一致していない。
Temperature [K]
H ol e C on cen tr at io n [ × 10
16cm
-3]
: Experimental data : Simulated result
∆EA1 = 21 meV NA1 = 4.6×1015 cm-3
∆EA2 = 66 meV NA2 = 1.4×1016 cm-3
∆EA3 = 162 meV NA3 = 3.6×1016 cm-3
∆NA = 8.6×1015 cm-3
undoped GaSb Sb/Ga = 10
100 200 300 400
1 2 3 4
図4.6.5 実験値とシミュレーション曲線の比較
第 5 章 ショットキーダイオードによる評価
空乏層容量の電圧特性(CV特性)は、比較的簡単に、精度よくキャリア密度を決定できる ため、Hall効果測定と並んで不純物の基本的な評価方法となっている。ここでは、Hall効果 測定から求められる不純物密度との比較をおこなうため、ショットキーダイオードを用いて 空乏層容量−電圧測定から不純物密度の測定をおこなう。