• 検索結果がありません。

第6章  実験結果・検討

6.2   undoped   InGaSb

6.3.1   Al implanted 4H-SiC

n-4H-SiCオフ基板上にn型 N doped 4H-SiCのエピタキシャル層(5 μm, ドナー密度

2.5×1015 cm-3)を形成する。n型4H-SiC層に0.9〜7 MeVのエネルギーで7回、室温で Alイオンの多重イオン注入をおこない、各段のドーズ量は、3×1014 cm-3である。

SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)(二次イオン質量分析法)評価によるn型4H-SiC 層の深さ方向の不純物(Al)分布を図6.3.1 に示す。表面より深さ1.0〜3.2 μmに約5× 1018 cm-3のAl濃度が確認された21)。SiC容器内、Ar雰囲気で、1時間アニールをおこなう。

アニール温度は、1443 ℃、1575 ℃と変化させた。SIMS測定により、表面より深さ1.0 μ mから深い位置にAlが確認されているので、表面より1.3 μm、RIE (Reactive Ion Etching)

(反応性イオンエッチング)にて、エッチングをおこなう。これより、形成されたp型4H-SiC 層の膜厚は、2 μmとなる。形成されたp型4H-SiC層の表面四隅にTi/Al電極形成する。

van der Pauw法にてHall効果測定をおこない、p

( )

T を得た。Hall効果測定における条件

を磁束密度1.4 T、測定温度200〜420 Kとした。アニール温度1443 ℃、1575 ℃におけ

る を図6.3.1.2に示す。アニール温度の増加と共に、全温度範囲にて正孔密度の増加が

見られる。

( )

T p

Al implanted 4H-SiC、アニール温度1443 ℃の場合のアクセプタ密度と準位を評価するた

めに、Spline補間したp

( )

T を用いて、(2.12)式よりH

(

T,Eref

)

を求める。 を図

6.3.1.3の実線で示す。380K付近にpeakが見られることから少なくとも1種類のエネルギ

ー準位が存在することがわかる。380 K付近にあるpeakからアクセプタの密度とエネルギー 準位を決定する。図6.3.1.3より、ピーク温度T は386 K、ピーク値 は3.1× 10

(

T,0.235

)

H

(

T,0.235

peak1 H

)

42 cm-6 eV-2.5となる。

Al Concentration [cm-3 ]

Depth from Surface [µm]

p-type layer formed by Al implantation

Eched layer

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

1015 1016 1017 1018 1019 1020

図6.3.1.1  SIMS評価によるn型4H-SiC層の深さ方向の不純物(Al)分布

Temperature [K]

H ol e Co ncen tr at on [ cm

-3

]

Al Implanted 4H-SiC at R.T.

Experimental data Anealing Temperature

: 1443 : 1575

200 300 400

1016 1017 1018

    図6.3.1.2 アニール温度1443 ℃、1575 ℃におけるp

( )

T    

 

Temperature [K]

peak Al Implanted 4H-SiC at R.T.

Anealing Temperature 1443

Experimental data Simulation results

: f(∆EA) EA = 189 meV NA = 4.6×1018 cm-3 ND = 6.8×1016 cm-3 : fFD(∆EA) EA = 167 meV NA = 2.8×1019 cm-3 ND = 1.5×1018 cm-3

H( T ,0.235) [ × 10

42

cm

-6

eV

-2.5

]

200 300 400

1 2 3  

                 

図6.3.1.3 H1

(

T,0.235

)

特性

さらに、∆EA1NA1及び補償密度∆NAを考慮した場合を考える。(2.15)式より、H1

(

T,Eref

)

を 

( ) ( )

 

 −∆ +∆

 ∆

 

 ∆ −

= kT

E E

kT N E N

kT I E E kT

E N T

H

1 ,

ref A1

exp

A1 ref A A1A V0

exp

ref F (6.3.1) と表す。また、(2.17)式より、

( )

f

(

E

kT E N E

kT E g E

E N

I V  ∆

 

∆ −∆

=



 

∆ −∆ +

=

0 A F FD

A F A

V0

A

exp

exp

)

(6.3.2)

と表す。(6.3.1)式よりpeakに一致させたH1

(

T,0.235

)

ND

を図6.3.1.3の点線で示す。このときの

は167 meV、 は2.8×10 EA

ND

NA 19 cm-3、 は1.5×1018 cm-3となる。また、 、 、 を用いてシミュレーションした

EA

NA

( )

T p

( )

T p

を図6.3.1.4 の点線で示す。点線と実線では、低温部 で、大きな不一致が見られるが、 では、全温度範囲にて良い一致を示す。

  NAに注目すると、SIMS測定においてAl濃度は約5×1018 cm-3が確認されていることか ら、今回求められたNAは2.8×1019 cm-3と大きく見積もっている。

  SiCやDiamond、GaNのようなワイドバンドギャップ半導体では、アクセプタ準位が深くな り、励起状態を考慮したアクセプタモデルが必要となることを示唆されている。そこで、我々は、

Fermi-Dirace分布関数に代えて、励起状態を考慮した分布関数を提案している22)。(6.3.2)式に おいて、(2.4)式よりFermi-Dirac分布関数 fFD

(

EA

)

は、

( )



 

∆ −∆ +

=

kT E E E

f

F A

A FD

exp 4 1

1 (6.3.3)

である。 fFD

(

EA

)

を励起状態を考慮した分布関数 f

(

EA

)

として

( )



 

 

 

∆ −∆

+

 

∆ −∆

⋅



 + 

=

=2

F F

A 1

ex A

exp exp

-exp 4 1

1

r

r

r kT

E g E

kT E g E

kT E E

f (6.3.4)

と定義する。ここに、∆Erは励起準位、grは縮退度である。ここで、r =

1

, g1 =1, Eex =0 のとき f

( )

E = fFD

(

E

)

となり、Fermi-Dirac分布関数となる。更に、Eex は励起状態の平均 エネルギーとして、

( )

2

2 2

ex ,

exp

r g kT

E g E

g

kT E g E

E E

E r

r

r A r

r r

r A r

r A

=



 

 ∆ −∆

− +



 

−∆ −∆

=

=

=    (6.3.5)

となる。

また、励起状態の準位Er

) 2 1 (

6 .

13

2 2

0

*

= r

r m E m

s

r   

ε

(6.3.6)

と与えられる。但し、

ε

sは比誘電率である。

励起準位は、r=7まで考慮し、励起準位はそれぞれ、∆E1= 136 meV, = 34 meV,

= 15 meV, = 8.5 meV, = 5.4 meV,

E2

E3

∆ ∆E4E5E6= 3.8 meV, ∆E7= 2.8 meVを用いて、

アクセプタ準位は189 、アクセプタ密度は 、ドナー密度は と求められた。ここで、比誘電率

meV

4 . 6

×

10

18

cm

-3

6 . 8

×

10

16

cm

-3

ε

s10とした。これを用いて、シミュレーションした

を図6.3.1.3の破線で示す。励起状態を考慮した分布関数を用いたほうが、実験

値と良い一致を示していることが見られる。これらの値を用いて、シミュレーションした を図6.3.1.4 に示す。励起状態を考慮した分布関数(破線)、Fermi-Dirac分布関数(点 線)を用いた両方の場合において良い一致が見られた。

(

,0.235

)

)

1T H

(

T p

表6.3.1.1に励起状態を考慮した分布関数及びFermi-Dirac分布関数を用いて求めたアクセプ タ準位、アクセプタ密度、ドナー密度を示す。SIMS測定から、Al濃度は約5×1018 cm-3と 確認されていることから、励起状態を考慮した分布関数を用いて求めたアクセプタ密度は妥当 であると考えられる。

  Al implanted 4H-SiC、アニール温度1575 ℃の場合においても同様に、励起状態を考慮し

た分布関数を用いて評価をおこなった。このときの励起準位は、r=7まで考慮し、励起準位は それぞれ、∆E1= 136 meV, ∆E2= 34 meV, ∆E3= 15 meV, ∆E4= 8.5 meV, = 5.4 meV,

= 3.8 meV, = 2.8 meVである。

E5

E6

∆ ∆E7

表6.3.1.5に励起状態を考慮した分布関数を用いてFCCS法で求めたAl implanted 4H-SiCに おけるアクセプタ密度及び準位を示す。アニール温度が上昇するほど、アクセプタ密度の増 加が見られる。アニールによる結晶回復によって、Alが格子位置に入っていないものが格子位置 に入り、アクセプタ密度が増加したと考えられる。そのため、アニール温度上昇による正孔 密度の増加したと考えられる。

Al implanted 4H-SiC中ではアクセプタ準位として185 meV〜189 meVと見積もることが

できた。4H-SiC中では、Alのアクセプタ準位は、PL(Photo Luminescence)測定により、

155〜191 meVであると報告されており23)、求められたアクセプタ準位は、Alのアクセプタ

準位であると考えられる。

表6.3.1.1 励起状態を考慮した分布関数 f

(

EA

)

を用いた評価 及びFermi-Dirac分布関数 fFD

(

EA

)

を用いた評価結果

EA

NA ND

(

A

)

FD E

f ∆ 167 meV 2.8×1019 cm-3 1.5×1018 cm-3

(

EA

)

f ∆ 189 meV 4.6×1018 cm-3 6.9×1016 cm-3

Temperature [K]

H ol e Co ncen tr at on [ cm

-3

]

Al Implanted 4H-SiC at R.T.

Anealing Temperature 1443

Experimental data Simulation results

: f(∆EA) EA = 189 meV NA = 4.6×1018 cm-3 ND = 6.8×1016 cm-3 : fFD(∆EA) EA = 167 meV NA = 2.8×1019 cm-3 ND = 1.5×1018 cm-3

200 300 400

1016 1017 1018

図6.3.1.4 実験値とシミュレーション曲線の比較

表6.3.1.5 励起状態を考慮した分布関数 f

(

EA

)

を用いてFCCS法で求めた Al implanted 4H-SiCにおけるアクセプタ密度及び準位

Anealing Temperature 1443 ℃ 1575 ℃

N [cm-3] 6.8×1016 1.0×1016

189 185 EA

∆ [meV]

NA [cm-3] 4.6×1018  6.3×1018

D

Temperature [K]

H ole C on ce ntra ton [ cm

-3

]

Al Implanted 4H-SiC at R.T.

Experimental data Anealing Temperature

: 1443 : 1575 Simulated results

200 300 400

1016 1017 1018

図6.3.1.5 励起状態を考慮した分布関数 f

(

EA

)

を用いた評価結果  からのシミュレーション曲線と実験値の比較

関連したドキュメント