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豊かな人間形成

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騨年教育

図26 子供から出発する低学年教育

『流れ』にとらわれない支援の在り方

 既成の学問体系からトップダウンした低学年教育と、児童自身を出発点 としてボトムアップしていく低学年教育とでは、学習の在り方も自ずから 異なってくる。即ち、従来の学習指導の考え方では、学問体系内での教材 の系統性や児童の探求の順序性などを考慮して、『流れ』による指導案を 作成してきた。次頁の図27に示すような、坂道型とか階段型、流水型、

樹木型、螺旋型…といった様々なモデルにより学習過程がイメージされて きた訳である。しかし、これらの学習モデルは、全ての子供達の学習方略        一 104 一

・坂道型

根    ・樹木型 ・螺旋型

図27 『流れ』を表現するイメージ図

を表現したものとは言い難い。むしろ、教師の意図する指導方略の流れで である。子供達には、一人ひとり違った認知の形式、学習の方略、探求の 方法といったものがある。これらをPLT(personal learning theoly)と 総称する研究者もいるく1()3)。教師が、どの様な学習のモデルをイメージ

しょうとも、それは特定の児童のPLTを表現しているとしか言えない訳 である。そこで、生涯理科を見据えた低学年教育では、学習の流れという

『鋳型』を取り払い、十人十色のPLTに対応する学習支援の方法を模索 していく必要がある。全ての子供達の探求の方法を認め、多様な学習形態 を内包するような授業の在り方が望まれるのである。

授業を学習空問として捉らえること

  生涯理科を見据えた低学年教育では、授業を流れで捉らえるのではなく、

 学習空間として捉らえたい。即ち、児童の多様な学習活動を包含する空間  を用意し、その中で児童が主体的に探求していくことを支援するのである。

 この場合の学習空間には、①河原、野原、森林、公園、学校農園…なξを  含む物理的空間、②多様な学習活動の可能性を意味する方略としての空間、

 ③教材、教具、人的資源…などの学習を支援する道具の範囲としての空間、

 などの多義的な空間が含まれる。例えば、河原という物理的な空間へ行く。

 そこには、魚、水鳥、昆虫、植物、石、水…などの子供達の興味や関心を  引きつける事物や現象としての空間が存在する。ある者は魚捕りに夢中に  なり、ある者は草花遊びに熱中する。また、別の者は石積みをしたり堤防  を作ったりする。そこには学習活動の方略としての空間がある。更に、こ  の学習空間からは、魚や昆虫の飼育や草花の栽培、水鳥の観察や船の製作  などの発展的な学習空間が設定できるであろう。そこでは、理科や生活科  といった教科の枠を超えた、超教科的、合科的、総合的、領域的な支援が  必要となるのである。

       食司育

言言査

面HIS

表現

栽培

        ]ニイ田

観察

図28 広がりのある空間で捉らえる学習支援案

106

2. 『這い廻り』や『いじくりまわし』の重視

這い廻らせ、いじくりまわらせること

  低学年教育では、寄り道や無駄なことを大切にしたい。従前の教育では、

 あまりにも無駄なことを忌み嫌い、効率ばかりを追求する傾向が見られtc。

 しかし、近視眼的に効率の良い教育が、生涯と言う長期的視野に立っても  効率的であり得るか否かには疑問が残るところである。これから長い人生  を送る児童にとっては、一見無駄なことが実は最も重要なのかも知れない。

 低学年という発達段階が、人生の基盤を形成する時期であるとするならば、

 この時期に効率的な教育に偏向し、学問的な高まりばかりを狙ったのでは、

 やがて軟弱な基盤の為に破綻をきたすであろう。むしろ、一見非効率的に  見えても、時間をかけて確固たる基盤を形成する方が、将来的には大きな  建造物を構築出来るのである。「急がば回れ」が教育上の鉄則なのである。

 この様な理由から、這い廻り、いじくりまわし(messing about)を低学年  教育の主要な方略としたい。

低学年教育

学29 人間形成の確固たる基盤を作る低学年教育

五官を通した学習を意識的に取り入れること

  生涯理科を見据えた低学年教育では、五官を通した学習を意識的に取り  入れることが大切である。特に、触覚、嗅覚、味覚は視聴覚による情報の  氾濫する現代社会においては軽視されがちであり、これを矯正するという  意味においても低学年の教育が重要である。山田らは、五官を通した経験  を以下の様に例示している。

表13 山田らによる体験させたい感覚の例(抜粋) (川

感覚 表現 動  物 植  物 そ  の  他

ヌルヌル フナ・ドジョウ・ウナギ Iタマジャクシ・ナマコ

ジュンサイ・ナメコ 純Jメ・ミル・モズク

粘土・ヤマイモのイモ

、       、   

sハ不ハ ナメクジ・クモの巣 モウセンゴケ ヤドリギの実の汁 触覚

ザラザラ カナヘビ・ネコの舌 トウモロコシの葉 ツルツル カブトムシ・クワガタ ツバキ・ヤツデなどの葉

チクチク ウニ アザミ・クリのイガ

嗅覚

アゲハチョウの幼虫 Jメムシ・カブトムシ M乳類の二二

ヨモギ・クスノキ・セリヘクソカズラ・ギンナン

qノキ・スイカズラ

草いきれ・カビ・腐欺:臭

あまい レンゲの蜜・サトウキビ 蜂蜜

味覚 しぶい 渋ガキ・グミ・ドングリ

すっぱい イタドリ・スイバ・ウメ

 第IV章・第2節で述べた通り、直観は全ての認識の絶対的な基礎であり、

直観的経験の無い認識は根無し草のように脆いものである。従って、将来 の知的発達の為にも、上記の様な五官を通した体験を学習の中に意識的に 取り入れることが肝要である。

       一 108 一

3.多元的学習支援案の構築

学習支援の方略を多元的に構築すること

  授業を『流れ』ではなく、『学習空間』として捉らえる低学年教育では、

 教師の『学習空間のコーディネイター』としての役割が重要になってくる。

 何故なら、従前の教師主導による単線型の教授形態では、単一の学習過程  に必要な教材準備を行うだけで間に合ったが、子供達の多種多様な活動を  許容する複線型の学習形態では、子供達の千差万別の興味に対応する学習  空間を準備する必要があるからである。例えば、地域の人材、季節の植物、

 季節の動物、文献・資料、地域マップ…等についての情報を収集し、季節  や場所、活動内容などの項目により分類し、データベースとして構築する。

 そして、児童の興味・関心に合わせて必要な情報を引き出し、臨機応変に  支援するような体制作りが重要となる訳である。

季節

 く一N一一一一 l」

 隔陶騎鞠隔馳嘲

・「軸趣曝鞠 喚舳

ρ口

 一一一一

   場所

 。ノア

      植物リスト       動物リスト       人材リスト       材料・道具       文献・資料       l

      i         i

図30 学習支援の為の多元的データベース

以下では、r学習空間』を支援する多元的データベースについて例示する。

①地域マップ・

  まず、最も基礎になるのが下図の様な地域マップである。地域マップに  は学区の全てを網羅する必要はない。学校から徒歩で15分以内の距離を  目安にして作成する。それよりも遠方では移動に時間が費やされ、十分な  活動時間が確保できないからである。地域マップの中では、安全性や学習  対象物の量などを考慮して、学習空間の候補地を挙げておくとよい。

公園 川

田河原

森林

畑     小学校  野原

110

②動物・植物マップ

  前頁の地域マップをベースにして、動物マップや植物マップを作成する。

 これらのマップには、動植物を見つけた日付や冠それらの記載された文献  資料のページ(下図は児童用図鑑の頁であるq(,5》)等のデータを継続的  に書き加えていく。こうす弓ことで、地域の自然環境を知る貴重な資料が  得られ、子供達の学習支援に役立つと考える。低学年の発達段階に於ける  教材の妥当性については、巻末に昭和33年から昭和63年までの教科書  記載の教材名を添付しているので、これらを参照することが望ましい。

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ドキュメント内 生涯理科を見据えた小学校低学年教育の再考 (ページ 108-115)

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