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Si 負極電極のサイクル劣化機構

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 54-70)

第 2 章

2.3. 結果と考察

2.3.3. Si 負極電極のサイクル劣化機構

試作したラミネート型電池について,室温にて電圧0Vから1.6Vの間で充放電 サイクル試験を実施した.充放電曲線をFig. 3-2 に示す.約 3500mAh/g相当のリ チウムイオンを動かす深い充放電と,約1250mAh / g 相当の浅い充放電をそれぞ れ行った.深い充電を行ったセルの放電容量は,浅い充放電を行ったセルの放電 容量と同等であり,Siに挿入した Liが脱離できていない状態であった.

内部抵抗解析

内部抵抗測定は交流インピーダンス法により行った.周波数変調した微弱電圧

(電流)を電池に印加し,応答電流(電圧)の振幅,位相差から時定数の異なる 反応素過程を分離する手法である.OCV(開回路電圧)に対し,振幅10mV を重 畳させた交流電圧を 300kHz から 1mHz まで印加し応答電流から内部抵抗を求め た.抵抗測定結果を,Fig. 2-25, Fig. 2-26に示す.3サイクル目の放電では,深 い充放電を行ったセルにて,10mHz 付近の低周波域での顕著な反応抵抗が確認さ れた.

Fig. 2-25. 初回の充放電容量.

Fig. 2-26. 3サイクル目の内部抵抗(ボード線図).

1.5

1.0

0.5

0.0

V o lt age ( V )

3500 3000

2500 2000

1500 1000

500 0

Capacity (mAh/g)

1250mAh/g charge-discharge 3500mAh/g charge-discharge

200 150 100 50 0

|Z | (Ω )

10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104 105

Frequency (Hz)

-80 -60 -40 -20 0

θ (d e gr e e )

1250mAh/g charge-discharge

3500mAh/g charge-discharge

電極の構造変化,表面被膜の調査

理論容量の 30%である 1260 mAh/g まで充電した Si負極の断面 SEM 観察像を Fig. 2-27に,満充電状態の Si負極の断面 SEM観察結果を Fig. 2-28に示す.リチ ウムイオンが挿入された箇所は暗いコントラストになっている.充電により合金 化した箇所が微粉化している.微粉化により電子伝導パスが切れることで,結果 としてリチウムイオンの脱離が阻害されていると推察される.

XRDの結果を Fig. 2.29に示す.1250mAh/gまで充電した場合には,結晶Siに 加え,非晶質に変化している.3500mAh/gまで充電した場合には,Li15Si4の結晶 が形成されている.この Li15Si4は不可逆との報告があり[27],電解液界面の電荷 移動抵抗が,交流インピーダンスにおける低周波数域に出現した反応抵抗である と考えられる.

Fig. 2-27. 理論容量の 30%である1260mAh / gまで充電した Si負極の 断面SEM観察像.

Fig. 2-28. 満充電状態の Si負極の断面SEM観察像.

Fig. 2-29. Liを挿入した Si負極の X線回折.

XPSによるSi負極表面の結合状態解析結果を Fig. 2-30,Fig. 2-31に示す.シリ サイドの形成を確認した.また,表層では Li-O-Si が存在していた.有機系被膜 の他,無機系被膜としてフッ化リチウム,炭酸リチウムの存在が確認された.

劣化機構解明のため,Si の結晶構造変化を Cs-STEM により調査した.リチウ ム イ オ ン は 水 分 と 反 応 し 容 易 に 状 態 が 変 化 す る た め , 劣 化 後 の 試 作 電 池 を 露 点 -70℃以下に調整された Ar 雰囲気下にて解体し,取り出した負極を,不活性ガス 雰囲気を保持したまま FIB(収束イオンビーム)装置に挿入した.その後,断面 マイクロサンプリング法により TEMサンプルを摘出し,FIB加工により薄片化し た.

理論容量の 30%である 1260mAh/g まで充電した Si 負極の断面 TEM 観察像を Fig. 2-32に,EELSによる結合状態マッピング結果を Fig. 2-33に示す.リチウム イオンの挿入によりアモルファス化している領域が確認された.Fig. 2-34にEELS スペクトルを示す.また,アモルファス領域の表層では EELS のスペクトル形状

より,Li-Siの化合物の存在が確認された.

Fig. 2-35,Fig. 2-36に高分解能 STEM観察結果を示す.リチウムイオンの挿入 による結晶欠陥が確認された.また,Si結晶のTd サイトに存在するLi を確認し た.

Fig. 2-30. 負極表面の狭域 XPS スペクトル.

Fig. 2-31. 負極の深さ方向 XPSモンタージュスペクトル.

Fig. 2-32. Si負極の断面 TEM観察像.

Fig. 2-33. EELSによる結合状態マッピング.

Fig. 2-34. EELSによる結合状態解析.

Fig. 2-35. 結晶 Siとアモルファス Siの界面の 高分解能 STEM観察結果(ABF像).

Fig. 2-36. 結晶 Siとアモルファス Siの界面の 高分解能 STEM観察結果(ABF像).

内部抵抗の解析

3500mAh/gまで充電した電極について,内部抵抗の温度依存性を取得した結果

を,Fig. 2-37に示す.前述の低周波数域の反応の位相遅れは温度の低下に伴って

低周波数側にシフトしている.加えて,高周波数側の反応にも同様の温度依存性 が見られることから,ここにもリチウムイオンの電荷移動抵抗が含まれているこ とが推察される.

この高周波数域の抵抗が 3成分あると仮定して,抵抗分離を行った.等価回路モ デルをFig. 2-38に,25℃での解析結果を Fig. 2-39に,0℃での解析結果を Fig. 2-40 に,-15℃での解析結果を Fig. 2-41に示す.抵抗の温度依存性を Fig. 2-42に示す.

近似直線の傾きから活性化エネルギーを算出した結果をFig. 2-43に示す.高周波 数域には,活性化エネルギーの異なる複数の反応が存在することが示唆された.

低周波数域の反応が見られたLi15Si4の他,Li12Si7,Li7Si3,Li13Si4が形成されると の報告例あり,これらの反応に対応していると考えられる.

Fig. 2-37. 内部抵抗の温度依存性(ボード線図).

Fig. 2-38. 等価回路モデル.

600 500 400 300 200 100 0

|Z | (Ω )

10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 102 103 104 105

Frequency (Hz)

-80 -60 -40 -20 0

θ (d e gr e e )

25℃ 

0℃

-15℃

Fig. 2-39. 25℃での抵抗解析結果.

Fig. 2-40. 0℃での抵抗解析結果.

Fig. 2-41.-15℃での抵抗解析結果.

Fig. 2-42 反応抵抗の温度依存性.

Fig. 2-43. 各反応の活性化エネルギー.

-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1

lo g(1 / R ) (1 / Ω )

4.0 3.8

3.6 3.4

3.2

1000/T (1/K)

R1 R2 R3

70 60 50 40 30 20 10 0

A ct iv at io n E ner gy ( kJ/m o l)

0

R1 R2 R3

0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0

A ct iv at io n E ner gy ( eV )

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