WATER SPEED
Shear Force ALS-ON/OFF Water Speed
Shear Force (N)
Fig. 2.53 Results of ship bottom observation (Vs=9.8kn, ALS-ON→OFF) and location of shear force sensors.
相当空気膜厚さ
t
bと局所摩擦抵抗低減効果の関係の一例を Fig. 2.54 に示す。Fig. 2.54 は Fig.2.53の破線で囲ったせん断力計③で計測されたせん断力を (2.8.1)式で無次元化し、ALS非作動時
(
t
b=0mm)に対するALS作動時(t
b=3、5、7mm)の局所摩擦抵抗の比を摩擦抵抗低減効果(Cf /Cf0) として示している。s s f f
S ρV C R
2
2
1
(2.8.2)ここで、Rf はせん断力計出力、ρは海水密度、
V
sは船速、S
sはせん断力計の検力部面積を示 Fig. 2.51 に示す せん断力の計測 位置③
②
①
す。
Fig. 2.54 Local skin friction reduction with ALS operation.
本船の ALSによる局所摩擦抵抗は、空気吹出部より約65m下流においても、最大で約50%程度 低下することを確認した。
日夏らは 50m 長尺模型を用いて、吸出空気量を変化させて抵抗を計測している。長尺模型である ことから抵抗成分のほとんどが摩擦抵抗であると考えられる。そこで、日夏ら[95]の実験結果と本研究 の実船計測結果を比較して、Fig. 2.55 に示す。本研究において実施した実船計測結果と日夏らの実 験結果の傾向は良く一致していることが確認できた。
Fig. 2.55 Correlation between drag reduction and air layer thickness [95].
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 3 5 7
Ta:mm
Cf/Cf0
tb [mm]
実船実験結果と予測計算結果の比較
本船を対象に気泡流計算を実施した。摩擦抵抗低減効果の推定には、Model-B を使用した。境界 条件は、2.6.2項と同一である。計算結果の一例として船速14.9kn、直進時、相当空気膜厚さ
t
b=7mm における船体周りのボイド率分布をFig. 2.56に、プロペラ位置のボイド率分布をFig. 2.57に示す。船 底に設置した3か所の空気吹出部から空気が吹き出され、気泡となって船底を流れる。計算結果から 以下のことが分かる。・ 気泡は船底から漏れずに船尾に向かって流れている。
・ 気泡は船尾のプロペラシャフトを覆うスケグ周りに集まる傾向がある。
・ 気泡は船尾バトックの傾斜部で船の深さ方向に拡散し、プロペラへ流入する。
・ プロペラ面における平均ボイド率は約0.1%と小さい。
Fig. 2.56 Void fraction distribution prediction on the bottom.
Fig. 2.57 Void fraction distribution prediction at the propeller position (port side).
Fig. 2.58に相当空気膜厚さ
t
b=0mm(ALS非作動状態)、3mm、5mmおよび7mmにおける船底部 のせん断力分布(局所摩擦抵抗分布)を示す。Fig. 2.56 のボイド率分布に対応したせん断力分布と なっている。すなわち、ボイド率の高い領域のせん断力は小さく(摩擦抵抗低減効果が大きい)、ボイド 率の低い領域のせん断力は大きい(摩擦抵抗低減効果が小さい)。本船の特徴として、船体中心線付 近のボイド率が低く、摩擦抵抗の低減効果が小さい。Fig. 2.58 Distribution of computed skin friction on the bottom.
船速14.9knと13.5knにおける付録Eに示す船底に配置した3個のせん断力計①、②および③に
対する局所摩擦抵抗低減効果(Cf /Cf0)の計算と実験の比較をFig. 2.59に示す。せん断力計②と③で は、相当空気膜厚さ tbが増加するほど局所摩擦抵抗低減効果が増加する傾向は計算で評価できて いる。また、定量的にもほぼ一致した結果が得られている。しかし、空気吹出口に近い位置に設置して いるせん断力計①における局所摩擦抵抗低減効果の計測値は、せん断力計②および③と異なる傾 向を示した。せん断力計①の幾つかの計測結果は、相当空気膜厚さ
t
bが増加(供給空気量が増加)しているにもかかわらず、局所摩擦抵抗低減効果が小さくなる傾向を示した。一方、船速 13.5kn の相 当空気膜厚さ
t
b=7mmにおいて摩擦抵抗低減効果は90%以上と大きな低減効果が得られている。Fig. 2.59 Comparison of computed and measured local skin friction reduction at positions of shear force sensors in 14.9kn and 13.5kn.
空気吹出口近傍で、計算結果と異なる実船計測結果を示した理由を考察する。本実船実験で得ら れた空気吹出口近傍のせん断力計①の計測結果から、摩擦抵抗の低減効果が悪化したり、増大した 物理現象は、Fig. 2.60に概念図として示す気泡状態の変化が影響していると考えた。すなわち、空気 吹出口直後の気膜状態から気泡が分裂して、気泡流となって流れていく過程で、摩擦抵抗低減効果 に変化が生じると考えた。空気吹出口から吹き出された空気は、はじめ膜状気膜(Sheet-type air film)
となり、その後、船体周りの流れによるせん断力の影響で分裂して雲状気膜(Cloud-type air film)とな り、最終的に気泡群となると考えられる。シート状の空気膜は、空気吹出口直後に発生する。雲状気
膜は膜状気膜が幾つかの大きな気泡に分かれた状態であり、気泡群は雲状気膜がさらに細かく分裂 した状態である。これらの分裂の様子は、キャビテーション水槽等で実施した空気吹出実験でも見ら れる以下の現象と同様の現象と考えられる。
・ 船速が速くなるにつれて膜状気膜による被覆面積は小さくなる。
・ 空気供給量が多くなるにつれて膜状気膜の被覆面積増加率が小さくなり、ある一定の空気供 給量を超えると被覆面積は増加しなくなる。
・ 膜状気膜から雲状気膜にちぎれていくとき、渦巻き、船底から離れながら切れていき、小さくな るにつれて、自身の浮力により船底に張り付く。
・ 船速が速くなると、膜状気膜の被覆面積が小さくなるので雲状気膜と気泡群が成長する(空気 の分布が前に移動する)。空気供給量が増えると、逆に膜状気膜の分布は下流側に増加する。
Fig. 2.60 Schematic view of changes from air film to bubbles.
これらの実験結果をもとにFig. 2.59のせん断力計①の局所摩擦抵抗低減効果について考察する。
・ 船速 13.5kn、相当空気膜厚さ
t
b=7mm では、せん断力計位置まで膜状気膜であると予想される。このため摩擦抵抗低減効果は90%以上と大きな低減効果が得られている。
・ 船速 14.9kn、
t
b=7mm および船速 13.5kn、t
b=5mm では、摩擦抵抗低減効果が非常に低くなっている。これは、船速 13.5kn、
t
b=7mm の状態と比べると、船速が速いもしくは、供給空気 量が少ない場合なので、空気の分布が船首側(空気吹出口側)に移動した雲状気膜の状態で あると思われる。雲状気膜の状態では 20%程度の低い摩擦抵抗低減効果しか得られないと考 えられる。・ 船速14.9kn、
t
b=5mmにおける摩擦抵抗低減効果は約35%であり、船速13.5kn、t
b=5mmと 比べると摩擦抵抗低減効果が高くなっている。船速が速くなっているので、空気の分布がさらに 前に移動し、せん断力計位置は気泡群の状態になっていると思われる。供給空気量と船速に よるが、気泡群の状態では低減量が最大60 %程度まで上昇することが分かる。Fig. 2.59のせん断力計②および③の局所摩擦抵抗低減効果について考察する。
・ 相当空気膜厚さ
t
b=7mm の船速14.9kn と 13.5kn でのせん断力計②および③比べると、船速が速い 14.9kn の方が摩擦抵抗低減効果が大きいことが分かる。この結果より、たとえ供給空気
量が多くても船速によっては気泡が分裂しにくく、低減量が小さくなると考えられる。また、供給 空気量が多ければそれだけ高い摩擦抵抗低減効果が得られるというわけではなく、本実験で は最大でも60%程度であると考えられる。
・ 一方、
t
b=3mm の結果より、供給空気量が少ない場合は後方への気泡の到達量が少ないため 十分な摩擦抵抗低減効果は得られない。・ 気泡群と考えられる状態の摩擦抵抗低減効果のせん断力計による計測結果は計算結果にほ ぼ一致している。
以上より、空気吹出口から船尾に沿った空気膜の状態と摩擦抵抗低減効果の関係は、空気吹出口 直後に摩擦抵抗低減効果の高い膜状気膜の領域があり、その後方に摩擦抵抗低減効果の低い雲状 気膜の領域が続き、さらにその後方では摩擦抵抗低減効果が高い気泡群の状態となっている。船尾 に近づくにつれて気泡径は小さくなり気泡群は船底に沿って流れるが、気泡到達量が低下するため 摩擦抵抗低減効果が低くなっていく。また、十分な供給空気量があれば気泡群の領域で最大 60%程 度の摩擦抵抗低減効果が得られるが、これをピークに船尾後方ほど摩擦抵抗低減効果は低くなって いく。空気吹出口から吹き出された空気の大部分が気泡群になると考えられるため、気泡群が存在す る領域で十分な低減効果が得られるようにすることが重要であると考えられる。
船速14.9knにおける全摩擦抵抗の抵抗低減効果(Cf /Cf0)の計算結果をFig. 2.61に示す。この摩 擦抵抗低減量で推定した ALS の省エネ効果は、ほぼ実船実験で得られた省エネ効果に相当してい る。このことから、船体周りを流れる気泡の状態は局所的には空気膜状や雲状気膜になるが、大部分 の領域は気泡群となっており、気泡群を対象にモデル化した本研究で開発した空気潤滑法による摩 擦抵抗低減効果の予測手法は、ALSの開発・設計に十分に使用可能であることが分かった。