第 4 章 気泡流中で作動するプロペラによって誘起される 変動圧力
sin 1 sin sin
sin
2
1 1
1 2 2 2
1 2 1
C C C
C
(4.4.4)
気泡層厚みが薄い種類にて圧力波低減効果が大きい理由は、圧力源から離れた位置で距離減衰 した後に、気泡層にて圧力波が低減されるためと考えられる。本研究では圧力源を点としたが、実際 の圧力変動はキャビティの発生・崩壊であり、ある分布を有するため、実際の圧力源分布からの圧力 波は平面波に近く、点音源を仮定した水のみの場合との差は小さくなると考えられる。
Fig. 4.23 Comparison of pressure wave between with and without bubble layer.
現状の ALS では、プロペラ変動圧力増加の危険性は高いが、プロペラ位置におけるボイド率分布 をコントロールする技術、例えば、プロペラ上流から新たに気泡を船底近傍に流す、または、船底を流 れる気泡をプロペラ前方で回収しプロペラ上流船底近傍から再度吹き出すなど気泡流を制御すること により、現在、空気潤滑法を適用した船舶のデメリットであるプロペラ変動圧力増加リスクを、プロペラ 変動圧力低減のメリットに変える可能性があると考えられる。
プロペラ位置のボイド率分布に及ぼす気泡径の影響
模型実験では実船と相似な大きさの気泡を生成させることが困難なため、相対的に大きなミリバブ ルを用いた実験であった。このため、気泡径の影響を把握するため、CFDを用いて気泡径を変化させ た場合の模型船体周りの気泡挙動およびプロペラ面でのボイド率分布を推定した[84]。対象船は模 型実験と同じモジュール運搬船とし、平水中直進時の計算を行った。簡単化のためプロペラは考慮し ていない。
計算に用いた気泡直径(気泡径)Dbは、実船スケールで3mmの気泡をスケール比で模型スケール とした場合の 0.1mm、および船底気泡流可視化実験にて観察された平均的な気泡径であった 2mm の2種類とした。気泡径を0.1mmとした場合の船底およびプロペラ面のボイド率分布の計算結果の一
例をFig. 4.24に示す。船首船底に設置した空気吹出部から後流側のボイド率が高い値を示しており、
船底の広範囲を気泡で覆うことが可能であることが分かる。プロペラ面のボイド率分布からは、気泡が スケグに沿ってプロペラ面に流れ込む可能性があることが分かる。計算結果で求めたプロペラ面のボ イド率から、第3.5.1項および第4.2.1項で定義したボイド率
1(プロペラ特性影響用)、
2(プロペラ変動圧力影響用)を求めると、
1=0.02%、
2=0.05%となる。このボイド率とFig. 3.21とFig. 4.5に 示す実験結果から、平水中直進時におけるプロペラへの気泡流入影響は、プロペラ効率低下で0.1%以下、プロペラ変動圧力の増加で1.1倍以下と無視できる大きさである。これらの結果から、本船
におけるプロペラに対する気泡影響は小さいと予想できる。
CFD計算により求めた気泡径が 0.1mmと 2mmの場合のプロペラ面船体中心線上におけるボイド 率
2の分布を比較してFig. 4.25 に示す。模型実験で観察された直径 2mmの気泡は、浮力の影響 により直径0.1mmの気泡よりもプロペラへ流入し難く、船底に沿って流れる。気泡径を実船スケールと 相似な大きさにすることが困難な模型実験では、浮力の影響が実船と比較し大きくなるため、プロペラ 面におけるボイド率を正しく評価することは困難であると推察される。Fig. 4.24 Calculated local void fraction on ship bottom and at the position of propeller.
Fig. 4.25 Calculated void fraction α
2on center line at the position of propeller.
Air injector
Disc Area Air injector
Disc Area
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
0.00% 0.05% 0.10% 0.15% 0.20%
Void Fraction α
2Ra di al P o si ti o n (r / R)
d=0.1mm d=2.0mm
Propeller Tip
Db=0.1mm Db=2.0mm
実船実験時のプロペラ変動圧力・船体振動計測結果
プロペラ直上に設置した変動圧力計の計測結果では、空気を吹き出したときのプロペラ変動圧力 は空気を吹き出さないときのプロペラ変動圧力と同等であり、第4.2.2項で予測した結果は妥当である ことが分かった。また、船体振動についても、空気を吹き出さない場合と同等であった。本船はバトック フロー船型であり、気泡流がプロペラに巻き込まれにくい配置となっていることが、船体振動の増加が 起こらなかった主因と考えられる。
実船実験時にプロペラ周りを撮影した一例をFig. 4.26(ALS作動時)およびFig. 4.27(ALS非作動 時)に示す。本船の場合、計算で予測されたとおり、プロペラには多くの気泡は混入せずに、船体とプ ロペラの間を流れていることが分かる。
Fig. 4.26 Bubble flow around a propeller with ALS-on for full-scale ship.
Fig. 4.27 Bubble flow around a propeller with ALS-off for full-scale ship.
結 言
プロペラによって誘起される変動圧力に及ぼす気泡の影響について模型プロペラを用いた気泡流 中キャビテーション試験を実施し、気泡がプロペラ変動圧力に及ぼす影響を調査した。さらに、二相流 体音圧伝搬解析によるプロペラ変動圧力の増減効果の予測手法を用いて、数値計算結果からプロペ ラ周りに気泡が存在する場合のプロペラ変動圧力の増減メカニズムに関し考察した。
本章を要約すると次のようになる。
モジュール運搬船用プロペラに気泡が混入した場合のプロペラ変動圧力の増加量は 0%
~10%と予想される。この予測結果は、実船実験結果と概略一致し、本研究で示した予測手 法は有効であることが分かった。
気泡がプロペラに混入しない通常状態でプロペラに発生するキャビテーションが少な いプロペラの場合は、気泡のプロペラ混入影響を受けやすく、少ない気泡量でプロペラ 変動圧力が増加する可能性がある。一方、通常状態でプロペラに発生するキャビテーション が多いプロペラの場合は、気泡のプロペラ混入影響を受けにくい。
プロペラ作動面に対する平均ボイド率が0.2%以上になる場合、プロペラ変動圧力の1次成分 は 2 倍以上となる危険性がある。プロペラ変動圧力の 2次以上の高次成分は、気泡のプロペ ラへの混入により、低減される傾向にある。
プロペラ周りの気泡流の分布状況(ボイド率、気泡層厚みなど)によりプロペラ変動圧力が増減 する可能性がある。このプロペラ変動圧力の増減メカニズムは、圧力波と気泡層との干渉影響 であると考えられる。
プロペラ変動圧力の増減に大きな影響を与えるパラメータは、気泡層厚さおよび平均ボイド率 である。平均ボイド率が高く、気泡層厚さが薄いほど、プロペラ変動圧力を低減させる可能性 は高くなる。
現状のALSを搭載した船舶におけるプロペラ周りのボイド率分布では、周波数が10Hz程度と なるプロペラ翼周波数の 1 次成分変動圧力が増加する危険性が高いが、プロペラ位置にお けるボイド率分布をコントロールする技術、例えば、プロペラ上流から新たに気泡を船 底近傍に流す、または、船底を流れる気泡をプロペラ前方で回収しプロペラ上流船底近 傍から再度吹き出すなど気泡流を制御することにより、現状 ALS のデメリットと考え られるプロペラ変動圧力増加リスクを、プロペラ変動圧力低減のメリットに変える可能 性があると考えられる。