第 6 章 InGaN/AlGaN 応力補償超格子クラッド層を用いたレーザ構造 115
6.3 SCSL クラッドを用いた LD の作製
(11¯22) GaN 基板上に, InGaN/AlGaN SCSL クラッド層を用いた LD の作製を試みた. SCSLは比較的低温で成長するため, ドナー型不純物が多く取り込まれ, p型化が難しいと懸念 される. 光閉じ込めにはn型層側の閉じ込め, つまり基板に光が逃げないことが重要であるこ とから, p型クラッド構造には従来通りのAlGaN/GaN SLを用いることとした. この構造は 臨界膜厚を超えないように設計されている. 以下ではその構造評価の結果について述べる.
6.3.1 XRD 測定
図6.15に, この試料のXRD 2θ/ωスキャンプロファイルを示す. X線の入射面が[1¯100]を 含む配置(配置A)と, [¯1¯123]を含む場合(配置B)の2種類の配置で測定を行った. 図6.15(a) に示すように,対称面(11¯22)のXRD 2θ/ωスキャンプロファイルにはSCSLに由来するサテ ライトピークのほかに, 活性層であるInGaN/GaN DQW由来のサテライトピークが見られ る. これらのピークは配置M, 配置C∗ のいずれにおいても観測された. DQW由来のサテラ イトピークの位置と周期から構造を解析すると, InGaN QWのIn組成: 28.7%, 井戸幅: 4.0 nmと見積もられた. この構造は理論上は約520 nmで発光する構造であり, 図5.1において目 標とした構造を作製することができた.
また, 図6.15(b), (c)に示すように, いずれの配置においても対称面(11¯22)のωスキャンで
60 65 70 75 2θ [degree]
X R D in te ns ity [a rb .u ni ts
]
SL 0th GaNSL -1st
SL -2nd InGaN/GaN SL -1st
DQW
(a)
配置M 配置C*
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
∆ω [degree]
XR D in tens ity [a rb. u nits
] GaN
SCSL AlGaN
MQW
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
∆ω [degree]
XR D in tens ity [a rb. u nits
] GaN
SLWG AlGaN
MQW
2θ [degree]
配置M
(b) (c)
配置C*
図6.15 (11¯22) InGaN/AlGaN SCSLクラッド層を用いたLD構造の(a) XRD 2θ/ωス キャンプロファイル. 配置M,配置C∗の2通りで測定を行った. (b) 対称面(11¯22) の配 置M, (c)配置C∗におけるωスキャンプロファイル.
RMS: 0.93 nm
0.00 Height [nm] 4.52
[112 3]
[1100]
1 µm
図6.16 (11¯22) InGaN/AlGaN SCSLクラッド層を用いたLD構造のAFM像.
は各層のGaN に対する傾きは検出されなかったため, コヒーレント成長していることが確認 できた.
6.3.2 AFM 測定
AFM測定の結果を図6.16に示す. RMS粗さは1 nm 以下であり, 比較的平坦性は高いと 言える. また, [¯1¯123]方向に沿ったファセット構造が見られる. これは{n¯n01}で構成されて いると考えられる.
6.3.3 断面 TEM 測定
活性層付近の断面HR-TEM像を図6.17に示す. TEM測定は破壊測定であるため, 本節に
おいてXRD, AFM, PL測定を行った試料とは異なる試料を用いた. ただし, QW以外の構造
はほぼ同じである. 各層とも, 非常に平坦なヘテロ界面を有している. 特にInGaN QW/GaN 障壁層界面が平坦であることから, 均一性の高い発光が期待される. また, InGaN/GaN
SLWG, InGaN/AlGaN SCSLに関しては, ほぼ設計通りの規則的な周期構造が観測されてお
り, 制御性良くLD構造の結晶成長を行うことに成功した.
PLスペクトル
室温において(11¯22)InGaN/AlGaN SCSLクラッド層を用いたLD構造のPLスペクトル を測定した. 励起光にはInGaN LD(波長 405 nm, CW) を用い, InGaN/AlGaN SCSLと
50 nm
SCSL GaN
InGaN/GaN SLWG InGaN/GaN SLWG
AlGaN EBL: 7.7 nm GaN: 18.0 nm GaN: 15.4 nm
GaN: 17.7 nm InGaN QW: 2.5 nm InGaN QW: 2.5 nm
[1100]
図6.17 (11¯22) InGaN/AlGaN SCSLクラッド層を用いたLD構造の断面HR-TEM像.
InGaN/GaN DQWが励起される条件で測定を行った. その結果を図6.18に示す. 430 nm付 近にInGaN/AlGaN SCSLからの発光が見られる. また, QWからの緑色発光が観測され, そ のピーク波長は552.0 nm (2.25 eV), FWHMは53.9 nm (217 meV)であった. 図3.11と比 較すると, (11¯22)InGaN QWの中では非常に均一な発光であることが分かる.