第 6 章 InGaN/AlGaN 応力補償超格子クラッド層を用いたレーザ構造 115
6.2 InGaN/AlGaN 応力補償超格子クラッド
6.2.4 光学評価
室温PL
図6.11に, SCSLの室温におけるPLスペクトルを示す. 測定されたSCSLのPLピークエ
7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7
Qz
[nm
-1]
102 103 104
XRD inten sity [ arb. u nits]
7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7
Qz
[nm
-1]
102 103 104
XRD inten sity [ arb. u nits]
(a)
対称面(1122) 配置M
(b)
対称面(1122) 配置C*
SL +1st
SL 0th GaN
SL +1st
SL 0th
SL −1st GaN
-0.1 0.0 0.1
7.0 7.1
Qx [nm-1]
3x100 101
-0.1 0.0 0.1
7.0 7.1
Qx [nm-1]
3x100 101
SL −1st SL −1st
3.26 3.28 3.30 3.32 9.34
9.36 9.38 9.40
Qz
[nm
-1]
Qx [nm-1]
3x101 102 103 104
XRD inten sity [ arb. u nits]
-3.66 -3.64 -3.62 -3.60 7.32
7.34 7.36 7.38
Qz
[nm
-1]
Qx [nm-1]
2x100 101 102 103
XRD inten sity [ arb. u nits]
GaN
SL 0th
GaN
SL 0th
(c)
非対称面(2022) 配置M
(d)
非対称面(1124) 配置C*
[1100] [1123]
[1100] [1123]
図6.8 (11¯22) InGaN/AlGaN SCSLのXRD RSM像. (a) 対称面(11¯22),配置M, (b) 対称面(11¯22),配置C∗, (c) 非対称面(20¯22),配置M, (d) 非対称面(11¯24),配置C∗.
InGaN/AlGaN SCSL
5 nm
InGaN
AlGaN 0.8 nm 2.2 nm
100 nm GaN
図6.9 [¯1¯123]方向から観察した(11¯22) InGaN/AlGaN SCSLの断面HR-TEM像. 挿 入図は同試料の拡大図.
RMS: 0.37 nm
1 µm
200 nm
0.00 Height [nm] 2.03
図6.10 (11¯22) InGaN/AlGaN SCSL表面の3×3 µm2 AFM像. 挿入図は同試料の拡大図.
SCSL
Yellow band 2 2.5
3 3.5
PL in ten sit y [ no rm ali
ze d] HeCd 325 nm, RT
Photon energy [eV]
Yellow band
350 400 450 500 550 600 650 700
Wavelength [nm]
図6.11 (11¯22) InGaN/AlGaN SCSLの室温PLスペクトル.
ネルギーは2.94 eV (波長: 421 nm)であった. また, 600 nm付近にピークを持つ深い準位 (イエローバンド)の発光が見られた.
ここで, SCSL の発光エネルギーが理論的に妥当かどうかについて議論するため, クロー
ニッヒ·ペニーモデルを用いてミニバンド構造の解析を行った [190]. ここでは簡単のため, 内 部電界はゼロとして計算を行った. クローニッヒ·ペニーモデルによれば, 超格子の分散関係 Ez′i(kz′)は, 以下の式を解くことで与えられる,
coskz(Lb +Lw) = (γ2−α2)/2αγ·sinhγLb·sinαLw + coshγLb·cosαLw. (6.3) ここで,
α ={2m∗wEz′i(kz′)/ℏ2}1/2, (6.4) γ = [2m∗b{∆E −Ez′i(kz)}/ℏ2]1/2, (6.5) である. L, m∗ はそれぞれ膜厚, 有効質量を表し, 添え字b, wはそれぞれ障壁層, 井戸層を表 す. 計算に用いたパラメータを表6.3に示す [58]. InGaN. AlGaNのバンドギャップに関して は, ボーイングパラメータをそれぞれ0.8 eV, 1.4 eVとして計算し [58], 有効質量に関しては
AlN GaN InN Eg at 300 K 6.00 3.437 0.608
me/m0 0.32 0.21 0.07 mHH/m0 3.36 1.89 1.56
線形補間を行った. (11¯22)の成長方向の有効質量は現状では不明であるため, 電子(me), 重い 正孔(mHH)ともにc軸方向の値で代用した. また, 伝導帯と価電子帯のバンドオフセットの比 を7:3と仮定した. これらの式を用いて In0.2Ga0.8N(1 nm)/Al0.2Ga0.8N(3 nm) SCSLに対 して解析を行ったところ, 遷移エネルギー(伝導帯ミニバンドの下端と価電子帯ミニバンドの 上端のエネルギー差)は3.22 eV (385 nm)となった. 一方, InAlGaN四元混晶としてバンド ギャップを計算すると3.54 eV (350 nm)となる. クローニッヒ·ペニーモデルの方が実験結 果に比較的近いため, 作製したSCSLは超格子としての物性を有していると考えられる. しか しながら, 依然として実験結果と計算結果の間には280 meVもの差がある.
励起フォトルミネッセンス (Photoluminescence Excitation: PLE) 測定により In 組成 23%, 井戸幅3 nm の(11¯22) InGaN/GaN SQW のストークスシフトを見積もったところ, 240 meVであった [191]. この値と比較的良い一致を示すため, 上記の差はInGaNのストーク スシフトによるものである可能性が高い.
分光エリプソメトリ
(11¯22) GaN基板上にコヒーレント成長したInGaN/AlGaN SCSLの実際の屈折率に関す る知見を得るため,分光エリプソメトリ測定を行った. 測定にはHORIBA UVISELを用いた. 本測定装置による測定結果の信頼性は第2章における(11¯22) および(¯1¯12¯2) GaNホモエピタ キシャル膜に対する実験結果で実証済みである.
測定したSCSLの屈折率の波長分散を図6.12に示す. 周期的な振動が見られるが,これは表
面とSCSL/GaN界面で反射した光による干渉であると考えられる. 干渉による影響を取り除
くため, Kato-Adachiモデル[192]によるフィッティングを行った. その結果を実線で示す. ま た, 同図には比較のために第2章で測定した(11¯22) GaNホモエピタキシャル膜の屈折率も示 している. InGaN/AlGaN SCSLとGaN の屈折率を比較すると, 2.7 eV以下の領域でSCSL の方が屈折率が小さくなっている. GaNとの屈折率差から考えると, これはAl0.08Ga0.92Nの 屈折率に相当する. このことと, コヒーレントに厚く成長することが可能なことから,青色より も長波長領域におけるLDのクラッド層として有望であると言える.
このことを確認するために, 従来のAlGaNクラッド層を用いた場合とSCSLクラッドを用 いた場合とで, LDの光閉じ込め係数を比較した. 図6.13(a)に示すLD構造のうち, n型層側
1 2 3 4 2.2
2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8
Photon energy [eV]
R ef ra ct iv e in de x
SCSL
GaN
図 6.12 分光エリプソメトリによって測定した (11¯22) GaN ホモエピタキシャル膜と (11¯22) InGaN/AlGaN SCSLの屈折率(◦). 実線はフィッティングにより干渉の影響を除 去した結果を表す.
のクラッド層をAl0.02Ga0.98N 280 nmまたはAl0.08Ga0.92N 460 nmとした場合の光閉じ込 め係数を計算した. 前者は従来の構造であり, 臨界膜厚を超えない範囲で構造を設計している. 図6.13(b)に示すように, この場合の光閉じ込め係数は, 0.79%であった. 一方, 後者はSCSL の屈折率と膜厚の実測値に対応した構造である. InAlGaNの屈折率の計算値と実測値には差 があるため, ここではAlGaNで代用した. 図6.13に示すように, このクラッド構造を用いた 場合の光閉じ込め係数は1.07%であり, 35%の改善が見られた. また, 伝搬モード分布を両者 で比較すると, 図6.13(c)の方がGaN基板への漏れが少ないことが分かる. したがって, 本研 究で作製したSCSLはクラッド層として有用である可能性が高いことが分かった.