第 5 章 半極性 (11¯ 22) GaN 基板上への LD 構造の設計と作製 89
5.5 電流注入型デバイスの作製
p
-GaN (100 nm)
p
-Al
0.025Ga
0.975N clad (220 nm)
p
-GaN WG (300 nm)
p
-InGaN/GaN SLWG (avg. 2.2%, 65 nm)
p
-Al
0.13Ga
0.87N EBL (20 nm) GaN Barrier (10 nm) In
0.22Ga
0.78N SQW (4.5 nm)
GaN Barrier (10 nm)
n
-InGaN/GaN SLWG (avg. 2.2%, 65 nm)
Mg: 2x10
19cm
-3n
-GaN WG (300 nm)
n
-Al
0.025Ga
0.975N clad (220 nm)
n
-GaN (2 µm) (1122) GaN sub.
Si: 2x10
18cm
-3図5.19 デバイス加工に用いたLD構造の概略図.
射率ミラーの設計には注意が必要である.
62 64 66 68 70 72 2θ [degree]
XR D in tens ity [a rb. u nits ]
配置M 配置C*
In 22.0%SQW
In 2.2%SLWG Al 2.5%
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4
∆ω [degree]
XR D in tens ity [a rb. u nits ]
GaN
InGaN/GaN SLWG AlGaN clad
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4
∆ω [degree]
XR D in tens ity [a rb. u nits ]
GaN
InGaN/GaN SLWG AlGaN clad
(c) 配置C*
(b) 配置M
図5.20 MOVPEにより作製したLD構造のXRD測定結果. (a) 配置Mおよび配置C∗ における対称面(11¯22)のXRD 2θ/ωスキャンプロファイル. (b) 配置M, (c)配置C∗に おける対称面(11¯22)のωスキャンプロファイル.
えられる. ピークが複数観測されるが, その包絡線のピークからSLWGの平均In組成を見積
もると, 2.2%であった. GaNのピークの高角側にはAlGaNクラッド層の回折ピークが観測
され, そのAl組成は2.5%と見積もられた.
図5.20(b), (c)には, それぞれ配置M, C∗ におけるGaN, AlGaN, SLWGのωスキャンプ ロファイルを示す. このとき, いずれのω スキャンプロファイルにおいても各層のピークは
∆ω=0の位置に並んでおり, 傾きは検出されなかったことから, 全ての層が(11¯22) GaN基板 上にコヒーレント成長していることが確認できた.
P L in te ns ity [a rb . u ni ts ]
Ti:sapphire 400 nm, RT
450 500 550 600 650
Wavelength [nm]
P L in te ns ity [a rb . u ni ts ]
図5.21 MOVPEにより作製したLD構造の室温におけるPLスペクトル.
次に, 同試料のPLスペクトルを図5.21に示す. 励起光はTi:sapphireレーザの2倍高調波 (400 nm)であり, QWのみを選択励起した. 励起密度は8.0 µJ/cm2であり, 初期キャリア密 度は1.2×1018 cm−3 である. 測定は室温で行い, 図3.9にと同様の測定系を用いた. ピーク波 長は554 nm, FWHM は60.4 nmである. InGaN系LDでは, 自然放出光に比べてレーザ発 振波長は短波長になるため, この試料に関しては, 500–550 nmの緑色領域でのレーザ発振が 期待される.
この試料を用いて, LD のデバイス加工を行った. 図5.22に, 端面から見たデバイス構造の 概略図を示す. 基本構造図はリッジ導波路構造であり, ストライプ幅は5 µm, ストライプ長は 600 µmとした. 端面を劈開後, 高反射率コーティングを施した. 前面, 後面の反射率はそれぞ
れ93%, 99%とした. 作製したデバイスをチップごとに切り分けた後, TO-CAN にマウント
し, 電流を流せるようにした.
電流源にはHewltt-Packard製パルス電源HP 8114Aを用い, 周波数1 kHz, デューティ比 0.1% (パルス幅: 1 µs)のパルス電流を印加した. また, EL測定時には, 温度調整器によりデ バイス温度が293 Kで一定になるようにした. 受光系には図3.9と同様の測定系を用いた.
図5.23(a)は, 加工したデバイスのELスペクトルの注入電流依存性である. 約540 nmに ピークを持つ自然放出光スペクトルを観測した. また, 図5.23(a)の挿入図はチップ切り分け
pパッド電極
SiO2 SiO2
[1123]
N電極(Ti系)
リッジ導波路構造
(5 µm
×600 µm)
端面
:
劈開+
⾼反射率コート(R
front= 93%, R
rear= 93%)
活性層
図5.22 端面から見たLDのデバイス構造の概略図.
前のEL像であるが, 緑色発光を確認することができる. しかしながら, 電流を大きくしていっ てもスペクトルの狭線化は観測されず, むしろ素子が破壊されてしまい, 全く光らなくなって しまった. 図5.23(b)に示すように, I-V特性の立ち上がり電圧は20 V以上である. InGaN系 発光デバイスの典型的な立ち上がり電圧が約3 Vであることを考えると, 非常に立ち上がり電 圧が高いといえる. この要因としては,p型GaNと電極とのオーミック接触がうまく形成され ていないことが考えられる. したがって,電極部分に熱が集中し,それによって素子が破壊され てしまったと考えられる.
図5.23(c)には, EL積分強度および積分強度/注入電流の注入電流密度依存性を示す. EQE を正確に定量するためには積分球による評価が必要であるが, 積分強度を注入電流で割った値 はEQEに比例するため, この値を用いてEQEの電流密度依存性について議論する. EL積分 強度は電流密度が増えるにつれて, やや飽和傾向にあり, また積分強度を注入電流で割った値 は電流密度が増えるにつれて低下している. このような特性は, InGaN系LEDでよく見られ る効率ドループ現象に良く似ている. 本研究の場合は駆動電圧が非常に高いため, 電流密度を 大きくすることで発生した熱により発光効率が低下したことがEQE低下の原因であると推測 される.
図5.23(d)には, ELピークエネルギーおよび FWHMの注入電流密度依存性を示す. EL ピークエネルギーは, 電流密度が大きくなるにつれて高エネルギー側にシフトしているが, こ れはバンドフィリングとスクリーニングの両方の効果を見ていると考えられる. どちらが支配 的であるかを定量的に切り分けられていないが, 過去に{11¯22}GaN 基板上に作製した LED の内部電界が極めて小さいことが報告されているため [85], バンドフィリングの効果が支配的 であると考えられる.
また, 注入電流密度が大きくなるにしたがって FWHMは大きくなっている. このことは,
EL inte nsity [arb . uni ts]
20 Hz, duty 1%
@25 °C 15 mA 12 mA 10 mA 9 mA 8 mA 7 mA 6 mA 5 mA
EL image
1
Integ rated EL i ntens ity [a rb. un its]
EL in tensit y / cu rrent dens ity [n ormali zed]
(a)
(c)
0 10 20 30
0 10 20 30 40 50 60
0 0.5 1 1.5 2
Voltage [V]
Curre nt [m A]
@293 K
Curre nt de nsity [kA/
2cm]
(b)
350 400 450 500 550 600 650
Wavelength [nm]
EL inte nsity [arb . uni ts]
5 mA 4 mA 3 mA 2 mA 1 mA
0 100 200 300 400 500
2.2 2.25 2.3 2.35 2.4
210 220 230 240 250
Current density [A/cm2] EL pe
ak en ergy [ eV]
EL FW HM [m eV]
0 100 200 300 400 500 0
0.5
Current density [A/cm2] Integ
rated EL i ntens ity [a rb. un its]
EL in tensit y / cu rrent dens ity [n ormali zed]
(d)
図5.23 (11¯22) GaN基板上に作製したLDのEL特性. (a) EL像およびELスペクトル の注入電流依存性, 挿入図: チップ切り分け前のデバイスのEL像, (b) I-V特性, (c) EL 積分強度および積分強度を注入電流密度で割った値 (EQEに比例) の注入電流密度依存性, (d) ELピークエネルギーおよびFWHMの注入電流密度依存性.
を示唆している. しかしながら, 上述したように素子が破壊されてしまったために, レーザ発振 を示すようなデータは得られなかった.