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第 5 章 半極性 (11¯ 22) GaN 基板上への LD 構造の設計と作製 89

5.4 MOVPE によるレーザ構造の作製とフォトポンピング

5.4.3 緑色発光 LD

構造評価

MOVPEにより(11¯22) GaN基板上に成長した LD-Bの構造を図5.14に示す. 活性層は InGaN SQWであり, その両側にInGaN/GaN SLWG, GaNガイド層, AlGaNクラッド層を 積層している. GaNガイド層は光閉じ込めに関して補助的な役割を担うのと同時に, 構造全体 の実効的歪を小さくする目的で挿入している. また, p-n接合を形成すると, ビルトイン電界に

PL Inte nsity [arb . uni ts]

mJ/cm2

1.30 1.00 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10

PL Inte nsity [arb . uni ts]

mJ/cm2

0.50 0.20 0.10 0.07 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01

(a) (b)

10-2 10-1 100

450 460 470 480 490 500 510

2.5

2.6

2.7

Excitation energy per pulse [mJ/cm

2

] Pe ak

w av ele ng th [nm ]

Ph oto n e ne rgy [e V]

[1-100]

[-1-123]

10-2 10-1 100

Excitation energy per pulse [mJ/cm

2

]

PL Inte nsity [arb . uni ts]

[1-100]

[-1-123]

400 450 500 550 600 650

Wavelength [nm]

PL Inte nsity [arb . uni ts]

400 450 500 550 600 650

Wavelength [nm]

PL Inte nsity [arb . uni ts]

(c) (d)

[1100] cavity [1123] cavity

[1123] cavity [1123] cavity

[1100] cavity

[1100] cavity

5.13 (11¯22) GaN基板上に成長した青緑色発光LDに対する室温におけるフォトポン ピング実験の結果. (a), (b) それぞれ[¯1¯123]方向, [1¯100]方向キャビティに対するPLスペ クトルの励起密度依存性. (c) PLピーク強度の励起密度依存性, (d) PLピーク波長の励起 密度依存性.

よりQW内部に電界が加わることが懸念されるため, 全ての層をアンドープとした.

この試料に対してXRD測定により構造の解析と格子緩和の評価を行った. 図5.15(a)に示 すように, 配置 Mおよび C における対称面(11¯22)のXRD 2θ/ω スキャンプロファイルが ほぼ同じであることから, コヒーレント成長していることが示唆される. 2θ=66 付近に観測 される幅広いピークはSQWの回折であると考えられ, そのピーク位置からIn組成は22%と 見積もられた. また, GaNの低角側に位置するピークはInGaN/GaN SLWG の回折ピーク と考えられる. ピークが複数観測されるのは, 他の層に起因するフリンジが重畳しているため だと考えられる. その包絡線のピークからSLWGの平均In 組成を見積もると, 1.7%であっ

た. GaNのピークの高角側にはAlGaNクラッド層の回折ピークが観測され, そのAl組成は

GaN (100 nm)

Al

0.025

Ga

0.975

N clad (240 nm) GaN WG (300 nm)

InGaN/GaN SLWG (avg. 1.7%, 50 nm) Al

0.13

Ga

0.87

N EBL (20 nm)

GaN Barrier (10 nm) In

0.22

Ga

0.78

N SQW (4.5 nm)

GaN Barrier (10 nm)

InGaN/GaN SLWG (avg. 1.7%, 50 nm)

nominally undoped

GaN WG (300 nm) Al

0.025

Ga

0.975

N clad (240 nm)

GaN (2 µm) (1122) GaN sub.

5.14 緑色発光LDの構造概略図.

2.5%と見積もられた.

図5.15(b), (c)には, それぞれ配置M, C におけるGaN, AlGaN, SLWGのωスキャンプ ロファイルを示す. ここでは, 逆格子空間の原点とGaNの(11¯22)回折ピークを結ぶ直線上を

∆ω=0と定めている. このとき, いずれのω スキャンプロファイルにおいても各層のピークは

∆ω=0の位置に並んでおり, 傾きは検出されなかったことから, 全ての層が(11¯22) GaN基板 上にコヒーレント成長していることが確認できた.

次に, 同試料のPLスペクトルを図5.16に示す. 励起光はTi:sapphireレーザの2倍高調波 (400 nm)とし, QWのみを選択励起した. 励起密度は8.0 µJ/cm2 であり, 初期キャリア密度 は1.2×1018 cm−3である. 測定は室温で行い, 図3.9と同様の測定系を用いた. ピーク波長は 540.0 nm (2.30 eV), FWHM は52.7 nm (221 meV)である. 図3.11と比較すると, (11¯22) InGaN QWの中でもFWHMが最も小さい部類に入り, 均一性がかなり高い. InGaN系LD では, 自然放出光に比べてレーザ発振波長は短波長になるため, この試料に関しては500–540 nmの緑色領域でのレーザ発振が期待される.

62 64 66 68 70 72 2θ [degree]

XR D in tens ity [a rb. u nits ]

配置M 配置C*

In 20.9%SQW

In 1.7%SLWG

AlGaN clad Al 2.5%

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4

∆ω [degree]

XR D In tens ity [a rb. u nits ]

GaN

InGaN/GaN SLWG AlGaN clad

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4

∆ω [degree]

XR D In tens ity [a rb. u nits ]

GaN

InGaN/GaN SLWG AlGaN clad

(c) 配置C*

(b) 配置M

5.15 MOVPEにより作製した緑色発光LDXRD測定結果. (a) 配置Mおよび配 Cにおける対称面(11¯22)XRD 2θ/ωスキャンプロファイル. (b) 配置M, (c)配置 Cにおける対称面(11¯22)ωスキャンプロファイル.

フォトポンピング

LD-Bに対してフォトポンピングを行った結果を図5.17に示す. この試料に対しては, 間の制約上 [1¯100]キャビティのみの測定しか行えなかったため, その結果のみを示す. 図 5.17(a), (b)に示すように, PLスペクトルの短波長側に肩が見え始めると共に, PL強度の非 線形な立ち上がりがわずかながら見えている. 一方, 5.17(c)に示すように, スペクトルの狭 線化は見られなかったため, レーザ発振または増幅された自然放出 (Amplified Spontaneous Emission: ASE)であるという確証は得られなかった.

P L In te ns ity [a rb . u ni ts ]

Ti:sapphire 400 nm, RT

[1100]

450 500 550 600 650

Wavelength [nm]

P L In te ns ity [a rb . u ni ts ]

5.16 MOVPEにより作製した緑色発光LDの室温におけるPLスペクトル. 挿入図は 室温における蛍光顕微鏡像である. スケールバーは10 µmを表す.

緑色発光LDは(11¯22) GaN基板上にコヒーレント成長しており, ミスフィット転位の発生 が抑制されているにもかかわらず, レーザ発振を示す明瞭なデータを得ることはできなかった. その要因の1つとして, 本構造の光閉じ込めの弱さが挙げられる. これまでに実現されている InGaN系LDの光閉じ込め係数を計算すると, QW1層あたり約1%であるのに対し, 本章で 作製した構造に対して光閉じ込め係数を計算すると,約0.6%であり, 光閉じ込めが不十分であ る. 次章以降では, この問題を解決するための新規構造を提案し, その効果について検証する.

端面発光の偏光

緑色発光LD(1¯100)端面からの発光の偏光を測定した. 励起光はYAG+OPO (400 nm) とし, 励起密度は8.0 mJ/cm2 とした. 試料温度は13.5 Kとして測定を行った. 励起レーザ以 外の測定系は図3.9と同様である.

図5.18 に示すように, (1¯100) 端面からの発光は c 軸方向に偏光しており, その偏光度は 32%であった. このように伝搬光の偏光がTEまたはTMのどちらでもなく, LD構造に対し て斜めのc軸方向に偏光する現象は, 自然放出光·誘導放出光のいずれにおいても報告されて おり, 複屈折が原因であると言われている [178–180]. また, 同様の現象はGaInPでも報告さ れている [181].

したがって, 通常のTEまたはTMモードとは反射率が異なることが予想されるため, 高反

(a) (b)

(c)

2.45 500

0 10 20 30

Excitation energy density per pulse [mJ/cm2]

PL inte nsity [arb . uni ts]

density [mJ/cm 30.0 ] 16.0 8.0 4.0 2.0 0.8 0.4 0.2

PL Inte nsity [arb . uni ts]

(c)

10-1 100 101 102

2.3 2.35 2.4

100 200 300 400

Excitation energy density per pulse [mJ/cm2] Peak

energ y [eV ]

FWHM [meV ]

450 500 550 600

Wavelength [nm]

PL Inte nsity [arb . uni ts]

5.17 (11¯22) GaN基板上に成長した緑色発光LDに対する室温におけるフォトポンピ ング実験の結果. (a) [1¯100]方向キャビティに対するPLスペクトルの励起密度依存性. (b) PLピーク強度の励起密度依存性, (c) PLピーク波長の励起密度依存性.

0.6 0.8 1

PL In ten sit y [ no rm ali ze d]

[1123] 90°

c a

E ⊥c E ⊥ c

E || c E || c

0 90 180 270 360

0 0.2 0.4 0.6

Polarizer angle [°]

PL In ten sit y [ no rm ali ze d]

0° Polarizer angle [1100]

Sample

5.18 緑色発光レーザ構造の(1¯100)端面からの発光における偏光特性.

p

-GaN (100 nm)

p

-Al

0.025

Ga

0.975

N clad (220 nm)

p

-GaN WG (300 nm)

p

-InGaN/GaN SLWG (avg. 2.2%, 65 nm)

p

-Al

0.13

Ga

0.87

N EBL (20 nm) GaN Barrier (10 nm) In

0.22

Ga

0.78

N SQW (4.5 nm)

GaN Barrier (10 nm)

n

-InGaN/GaN SLWG (avg. 2.2%, 65 nm)

Mg: 2x10

19

cm

-3

n

-GaN WG (300 nm)

n

-Al

0.025

Ga

0.975

N clad (220 nm)

n

-GaN (2 µm) (1122) GaN sub.

Si: 2x10

18

cm

-3

5.19 デバイス加工に用いたLD構造の概略図.

射率ミラーの設計には注意が必要である.