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異方的な格子緩和の観察

第 4 章 非極性面 GaN 系ヘテロ構造の臨界膜厚 65

4.3 異方的な格子緩和の観察

(b) X線の入射面に[1123]を含む配置 (配置C*)

[1100]

[1123]

⊥(1122)

入射面

[1100]

[1123]

⊥(1122)

(1122)

X-ray

(a) X線の入射面に[1100]を含む配置 (配置M)

⊥(1122) ⊥(1122)

(d) (1124) (配置C*) (c) (2022) (配置M)

[1100]

[1123]

[1100]

[1123]

4.2 XRD測定における試料の配置. (a)対称面(11¯22), X線入射面に[1¯100]を含む配 (配置M), (b)対称面(11¯22), X線入射面に[¯1¯123]を含む配置(配置C), (c)非対称面 (20¯22),配置M, (d) 非対称面(11¯24),配置C.

をより系統的に理解することができるようになると期待される.

して配置C で測定を行う. こうすることで, それぞれ[1¯100], [¯1¯123]方向の面内格子定数のず れを検出できる.

(11¯22) InGaN単層膜に対して XRD RSM測定を行った結果を図 4.3に示す. 図4.3(a), (b)に示すように, 配置MではGaNとInGaNの逆格子点が垂直に並んでいるのに対し, 配置 C では逆格子空間上で InGaNのピークがGaN に対して横にずれている. これはすなわち, InGaNの格子面がGaN に対して[1¯100]軸回りに傾いていることを表している. この試料の 場合, 傾きは0.27 であった.

次に, 非対称面のXRD RSM測定を行った結果について説明する. 図4.3(c)に示すように, (20¯22)に関してはGaNInGaNの逆格子点がほぼ垂直に並んでおり, [1¯100]方向の面内格 子定数がほぼ一致している, 一方, 図4.3(d)に示すように, (11¯24)に関しては逆格子点が垂直 に並んでいない. しかし, これは対称面の測定で明らかになったように格子面の傾きを含んで いるため, [¯1¯123]方向の面内格子定数が一致しているか否かを判別するには傾きを補正する必 要がある. 図4.3において, InGaN のピーク位置を, 原点を中心に反時計回りに 0.27 回転さ せると ×印の位置にくる. これとGaN の逆格子点を比較すると垂直には並んでいないため, 面内格子定数が一致していない, すなわち格子緩和していることが分かった.

以上の結果をまとめると, これまでに他研究機関で報告されているように[149, 150], [¯1¯123]

方向への格子緩和が優先的に起こり, その結果としてInGaNの格子面が[1¯100]軸回りに傾く ことが確認できた.

以上の結果から, 対称面(11¯22)の傾きは格子緩和の指標となる. しかし, RSMの性質上, 測 定に時間がかかってしまうため非効率的である. そこで,以下では[¯1¯123]方向からX線を入射 した場合の対称面ω-scanのピーク位置のずれからInGaNの傾きを測定し, 格子緩和している か否かを判断した. (11¯22) InGaNの結晶格子が(11¯22) GaNに対して傾いているとき, それ ぞれの逆格子点は逆格子空間において図4.4(a)のようになる. このとき, XRD ω-scanを行う と, 図4.4(b)に示すように, GaNとInGaNのピーク位置がずれる. コヒーレント成長してい る場合には, 同じ位置にピークが並ぶ. なお, 4.4(b)では逆格子空間の原点と(11¯22) GaN の逆格子点を結ぶ軸上を ω-scanの原点としている. このようにして, 逆格子マッピングを行 わずに, (11¯22) InGaNの格子緩和を調べることができる.

4.3.2 蛍光顕微鏡像

次に, もう1つの格子緩和の指標について説明する. 図4.5(a), (b)はそれぞれコヒーレント 成長および格子緩和したInGaN/GaN MQW の蛍光顕微鏡像である. 励起光には水銀ランプ の405 nmの輝線を用い, 100倍の対物レンズを用いた. 測定は室温で行った. これら2つの 像の比較から, 格子緩和している場合には[1¯100]方向に暗線が生じることが分かった. これは

0.00 0.02 0.04 0.06 7.28

7.30 7.32 7.34 7.36 7.38 7.40

Qz

[nm

-1]

Qx [nm-1]

101 102 103 104

XR D in tens ity [a rb. u nits ]

-0.02 0.00 0.02

7.28 7.30 7.32 7.34 7.36 7.38 7.40

Qz

[nm

-1]

Qx [nm-1]

101 102 103 104

XR D in tens ity [a rb. u nits ]

(a) 対称面(1122), 配置M (b) 対称面(1122), 配置C*

GaN

InGaN

GaN

InGaN

[1123]

[1100]

3.26 3.28 3.30 3.32 3.34 9.30

9.32 9.34 9.36 9.38 9.40

Qz

[nm

-1]

Qx [nm-1]

101 102 103 104

XR D in tens ity [a rb. u nits ]

-3.64 -3.63 -3.62 -3.61 -3.60 7.30

7.32 7.34 7.36 7.38

Qz

[nm

-1]

Qx [nm-1]

101 102 103

XR D in tens ity [a rb. u nits ]

(c) 非対称面(2022), 配置M (d) 非対称面(1124), 配置C*

傾き補正 GaN

InGaN

GaN

InGaN

[1123]

[1100]

4.3 (11¯22) GaN基板上に成長したInGaNXRD RSM. (a) 対称面(11¯22),配置 M, (b)対称面(11¯22),配置C, (c) 非対称面(20¯22),配置M, (d)非対称面(11¯24),配置 C. ×印は,傾きを補正したInGaNの逆格子点を表す.

GaN

InGaN ω-scan

XR D In tens ity [a rb. u nits

] [-1-123]入射

GaN

InGaN QW (b)

O q

x’

||[1123]

-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3

∆ω [degree]

XR D In tens ity [a rb. u nits ]

InGaN QW

4.4 (a) XRD ω-scanによるInGaNの傾き評価の模式図. (b) 格子緩和したInGaN QWXRD ω-scanプロファイルの例.

[1100]

(a) (b)

4.5 (a)コヒーレント成長および(b)格子緩和した場合の(11¯22) InGaN/GaN MQW の蛍光顕微鏡像. スケールバーは10µmを表す.

ミスフィット転位が伸びる方向と一致していることから, 暗線の起源はミスフィット転位その もの, あるいはミスフィット転位がきっかけとなって生じた積層欠陥である可能性が高い. ど ちらであるかを結論付けるには, 断面TEM観察やSNOMによる詳細な解析が有効であると 考えられる.

4.3.3 断面 TEM 観察

格子緩和によって発生する欠陥の構造を調べるため, 断面TEM観察を行った. 図4.6(a) に(11¯22) InGaN/GaN SQWを[1¯100]方向から観察した断面TEM像を示す. 界面にはミス フィット転位は見られず, コヒーレント成長していることが分かる. 一方, 図4.6(b)に示すよ

[0001] [1120]

[1100]

(a)

(b)

(c)

GaN cap InGaN GaN [1123]

4.6 (11¯22) InGaN/GaN QW [1¯100] 方向から観察した断面 TEM . (a) In-GaN/GaN SQW, (b) 同一組成·膜厚の 3周期 InGaN/GaN MQW, (c) (b)の試料を [¯1¯123]軸回りに傾けて観察した像.

うに, 同一組成のInGaN QW3周期積層したMQWでは, 最下層のInGaN/GaN界面に ミスフィット転位が並んでいるのが見られる. このことから, 1層では緩和しなくても, 歪エネ ルギーの蓄積によりInGaN/GaN MQW全体として格子緩和したと考えられる.

また, 回折ベクトルが[11¯20]のときには図4.6(b)のようにミスフィット転位が見られるが, 回折ベクトルが[0001]のときには見えなくなったため, 転位の消滅則から, バーガースベクト ルは1/3[11¯20]であることが分かった.

また, 図4.6(c)には図4.6(b)の試料を[¯1¯123]軸(紙面横方向)回りに傾けて観察したTEM

像を示す. 図4.6(b)では点状に見えていた転位が図4.6(c)では縦方向に伸びる線状に見える

ようになったため, 転位線は[1¯100]方向に沿って伸びていることが分かった.

以上のことから, 格子緩和しているかどうかを判断し, 統計的にデータを集めることで臨界 膜厚を “実験的に” 得る準備が整ったといえる. 一方で, それを理論的に説明できるモデルを 構築できれば汎用性の高いデータを提供できると考えられる. そこで, 次節以降では臨界膜厚 の基本的なモデルから出発して窒化物半導体の非極性面のように異方性を持つ系に対しても使

h < h

c

h = h

c

InGaN GaN

h > h

c

貫通転位

h

c

: 臨界膜厚

ミスフィット転位

b

バーガースベクトル

b

すべり面

刃状成分

らせん成分

b

e

b

b

s

λ

刃状成分

すべり面

α

4.7 ミスフィット転位発生のメカニズムと各種パラメータの定義.

える臨界膜厚モデルを構築していく.

4.4 異方性を考慮した臨界膜厚モデルの構築