図35: 昼間の画像のRetinexの例
図36: 夜間の画像のRetinexの例
2.3.2 マルチスケールRetinex
Retinexで使用するガウシアンフィルタが小さい場合はエッジ情報を良く表し、大きくなるに
つれて対象物内部の色を良く表す。よって、小さいフィルタのRetinex結果と大きなフィルタの Retinex結果を合成する手法[13]が提案されている。これをマルチスケールRetinexと呼び、複数
のRetinexの結果を平均化する事で、エッジも対象物の色も良く表す手法として研究されている。
2.3.3 マルチスケールRetinexの結果
図37に、マルチスケールRetinexの結果例を示す。図37上段は原画像、図37下段は結果画像 である。ガウシアンフィルタは、標準偏差を「15」「80」「250」として、「60×60」「320×320」
「1000×1000」の3種類とした。図37を見ると、マルチスケールRetinexは画像全体が不鮮明で 対象物が小さい画像を鮮明にするが、元々鮮明な画像を不鮮明にしてしまう場合もあり、夜間画像 も鮮明にする事は出来ない。
2.3.4 不鮮明画像の原因
マルチスケールRetinexは、大きな対象物が存在する画像を不鮮明にしてしまう。これは、巨大 なガウシアンフィルタと原画像との対比を結果画像とするため、フィルタより大きな対象物はガ ウシアンフィルタと原画像の結果の差が小さくなり、対象物を環境光としてしまうからである。ま た、複数のRetinexの結果の合成方法も問題である。不鮮明画像では小さなフィルタによるエッジ 情報と大きなフィルタによる色情報を平均的に組み合わせれば画像が鮮明化されるが、鮮明画像で
はRetinexの結果を平均化すると色情報が減ってしまうため、返って不鮮明な画像にしてしまう。
Retinex理論は、悪天候の屋外画像において図37の左側の画像の様に雪に覆われて不鮮明な対象
物が小さい場合には効果的な手法であるが、鮮明にしたい対象物の大きさが不定の場合や鮮明画像 に対しては適用が難しい。
図37: マルチスケールRetinexの例
3 ブライトチャンネル
3.1 霞除去の課題
3.1.1 白い対象物の扱い
Koschmiederの法則に従う手法 [14]は、ダークチャンネルが低い値となる暗い色を鮮明な色と
仮定しているため、鮮明化によって全体が暗い画像を生成する。よって、後処理の明度補正を行う 必要があるが、各画像に適切な明度補正処理を行う事は困難である。また、Koschmiederの法則に 則る手法は、高明度は最も霞む色(大気光)であるという仮定から、白い対象物を最も霞んだ対象 物として扱い過強調するため、偽色の発生や色飽和などを引き起こす。図29のトーンカーブから も、入力が高明度ほど出力が急激に高くなる事が分かる。手法[14]では、各対象物は小さいため、
ある程度大きな空間フィルタリングを使用してダークチャンネルを算出する事で、白い対象物に発 生する偽色の問題は解決できると仮定しているが、降雪画像において雪原や積雪は小さな対象物で はないため、手法[14]の仮定は本研究の目的に適さない。
図38に例を示す。図38(a)は原画像、図38(b)は手法[14]の明度補正前の結果、図38(c)は手 法 [14]の明度補正後の結果である。明度補正は手法[33]を使用し、全画像に同じパラメータ値を 設定した。図38の上段と中段は同じ場面で照明条件が少し異なる画像である。図38(b)の画像か ら、暗い箇所と明るい箇所が極端な明るさになっている事が分かる。また、図38(b)の下段では雪 原に多数の緑色の偽色が発生している。さらに、図38中段の(b)と(c)では、雲に偽色が発生し ている。これは、図38の上段に合わせた明度補正処理を図38の中段と下段にも適用しているた め、画像に適した明度補正のパラメータ設定に失敗したためである。結果画像の偽色を抑制するた めには、画像に合わせた明度補正を選択する事も必要である。
本研究では、降雪画像の鮮明化を行うために大きな白い対象物を避ける事は出来ないため、明る い色を鮮明であると仮定する特徴量を新たに導入する事で、この問題を解決する。そこで、ダーク チャンネルとは別に、「明るい程鮮明である」と仮定した特徴量「ブライトチャンネル」を導入す る。ダークチャンネルとブライトチャンネルの両方の特徴量を使い分ける事によって、従来手法で は明るい画素に発生していた偽色を抑制する。また、ブライトチャンネルを導入する事によりトー ンカーブがS字曲線となるため、明度補正が不要となる。
図38: 極端に変わる明るさの例