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6.2 定量評価

6.2.2 色差

原画像と鮮明化画像との色差で評価を行う。コントラスト評価と同じく、各1800フレームから なる36本の動画像を晴天画像、降雪画像、夜間画像の3つに分類し、それぞれの平均値で評価し た。色差は、各画像中の輝度が平坦な箇所の画素値の差分平均値で計測する。L*a*b*色空間の色 差から、画像の過強調を評価する。鮮明化によりコントラストを改善するため、原画像と鮮明化画 像には色差が生じるが、過強調した画像では色差が過度に大きな値となる。色差が大きすぎる値の 定義には、JIS規格の色の許容差( [43])を用いる。表12に、JIS規格の色の許容差を示す。

色差の評価では、「L*a*b*色差」「L*色差」「a*b*色差」の3種類を用いた。「L*a*b*色差」は

L*a:b*色空間の色差、「L*色差」は明度の色差、「a*b*色差」は彩度の色差である。偽色の原因は、

彩度の過強調であるため「a*b*色差」を用いて評価する。霞画像や夜間画像では、明度が霞の色や 暗闇に集中するため、「L*色差」を用いて明度の改善効果を評価する。表13に各色差の評価結果 を示す。

ここで表12から、過強調によって生じた、原画像と結果画像の色差の指標を定義する。全ての 画像において、原画像と鮮明化画像の色彩を同じ色と判定するために、a*b*色差が「B級許容差」

を超える場合を過強調の状態と評価する。鮮明画像においては、コントラストを強調する必要は 無いため、L*a*b*色差とL*色差が「C級許容差」を超える場合を明度整合を崩す過強調と評価す る。霞画像においては、明度整合を保持した鮮明化は「D級許容差」を限界とし、L*a*b*色差と

L*色差が「D級許容差」を超える場合に明度整合の崩壊と評価する。夜間画像においては、特に

明度のコントラストが改善されなければならないため、L*色差が高い値程、コントラスト改善性 能が高いと評価する。

表 12: 色の許容差 呼び名 色差の範囲 知覚される色差の範囲

評価不能領域 0〜0.2 特別に調整された測色器械でも誤差の範囲にあり、人が識 別不能。

識別境界 0.2〜0.4 十分に調整された測色器械の再現精度の範囲で、訓練を積

んだ人が再現性をもって識別できる限界。

AAA級許容差 0.4〜0.8 目視判定の再現性からみて、厳格な許容色差の規格を設定

できる限界。

AA級許容差 0.8〜1.6 色の隣接比較で、わずかに色差が感じられるレベル。一般

の測色器械間の器差を含む許容色差の範囲。

A級許容差 1.6〜3.2 色の離間比較では、ほとんど気付かれない色差のレベル。一

般的には同じ色だと思われているレベル。

B級許容差 3.2〜6.5 印象レベルでは同じ色として扱える範囲。塗料業界やプラ

スチック業界では色違いでクレームになることがある。

C級許容差 6.5〜13.0 JIS標準色票、マンセル色票などの1歩度に相当する色差。

D級許容差 13.0〜25.0 細分化された系統色名で区別ができる程度の色の差で、こ

の程度を超えると別の色名のイメージになる。

表13に各手法における全シーンの平均色差の数値結果、表14に各シーンにおける色差の数値 結果、図116〜図118に比較のグラフを示す。図116はL*a*b*色差、図117はL*色差、図118は a*b*色差の比較グラフである。

鮮明画像に対して、従来手法のDCPとMSRは、全ての色差が大きい。これは、鮮明画像はコ ントラストを強調する必要が無いため、明らかにDCPは過強調をしている事を表す。MSRは定 性評価の各図からも分かる様に、コントラストを改善したためではなく、不鮮明な画像にしたため である。一方、CLAHE、DBCP、RBD、MHSは、全ての色差が低いため、鮮明画像を過強調し ない事が分かる。

霞画像に対して、各手法でL*a*b*色差に大きな差は無いが、L*色差とa*b*色差には大きな差 がある。これは、各鮮明化手法の強調性能が異なる事を表す。DCPはL*色差よりa*b*色差の値 が大きい。つまり、DCPは明度よりも彩度を強調する性質があり、このため偽色を発生させやす い。その他の手法は、L*色差の方が高く、特に提案手法の3つの手法は、a*b*色差が概ね「B級 許容差」以内であるため、偽色を抑制してコントラストを改善する事を表す。提案手法と比べて

CLAHEの各色差は小さいため、CLAHEは鮮明化効果が少し弱い。

夜間画像に対しては、ほとんどの手法でL*色差よりもa*b*色差の値が高くなり、特にDCPと MSRは、L*色差よりも明らかに高くなりすぎている。しかし、夜間画像は画像全体が暗いため、

明度のコントラストが大幅に改善されなければならない。よって図117と図118の比較は、DCP とMSRが偽色を多数発生させる事を表している。また、CLAHE、DBCP、RBDは、L*色差の 値が低く、夜間画像の明るさを改善していないため、夜間画像を鮮明にする効果は低い。しかし MHSは、他手法と比べてL*色差が最も高く、夜間画像の明度のコントラストを大幅に改善してい る事が分かる。MHSのa*b*色差は「B級許容差」の範囲であり、偽色が目立つレベルではないた め、MHSは偽色を抑制して夜間画像を鮮明化する。

従来手法の中で、CLAHEは鮮明画像と霞画像で鮮明化効果を調節しているが、夜間画像には対 応できない。DCPとMSRは、霞画像においてa*b*色差が「D級許容差」まで高くなるため、偽 色を抑制する事はできない。また、DCPとMSRは、霞画像における各色差よりも鮮明画像にお ける各色差の方が大きいため、鮮明画像の明度整合を保持する能力が低い。一方提案手法では、霞 画像に対しても夜間画像に対しても、a*b*色差は概ね「B級許容差」に収まるため、偽色抑制の 効果は高い。さらに、L*色差の値が各シーンに適した値となっている事から、提案手法は各シー ンに応じて明度整合を保持した鮮明化を行う。特にMHSでは、鮮明画像、霞画像、夜間画像の順

にL*色差を高くするため、明度整合を保持した鮮明化効果は、比較手法の中でMHSが最も高い

事を表す。

表13から、全シーンにおいて従来手法のa*b*色差は非常に高い。これは、従来手法が彩度を過 剰に強調して偽色を発生させている事を表す。しかし、各提案手法のa*b*色差は従来手法よりも 低く、提案手法は偽色を抑制できる事が分かる。L*色差とa*b*色差の結果から、提案手法は明度 整合の保持と偽色の抑制を同時に満たしている事が分かる。

表13: 原画像と鮮明化画像の平均色差 average

L*a*b* L* a*b*

DCP 26.06 15.03 18.85 CLAHE 11.37 7.35 7.32 MSR 24.60 15.07 17.05 DBCP 11.77 9.21 5.29

RBD 9.56 7.48 4.64

MHS 18.67 17.14 5.51

表14: 原画像と鮮明化画像の色差

fine hazy night

L*a*b* L* a*b* L*a*b* L* a*b* L*a*b* L* a*b*

DCP 27.31 13.09 21.37 17.71 10.97 11.48 36.32 22.34 26.59 CLAHE 13.46 8.52 8.91 8.54 5.95 4.96 13.33 8.19 9.09 MSR 23.93 15.40 16.61 17.20 13.77 8.44 35.31 16.54 29.19 DBCP 15.24 11.72 7.24 14.65 12.86 4.95 4.70 1.95 3.99 RBD 8.69 6.68 4.46 11.12 9.74 4.16 8.21 5.13 5.47 MHS 11.96 9.96 5.23 15.55 14.10 5.12 29.04 27.81 6.30

図 116: L*a*b*色差の比較グラフ

図117: L*色差の比較グラフ

図118: a*b*色差の比較グラフ