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処置にてマクロファージ内のPPARα、 PPARγ発現はそれぞれ72%、77%に減弱した。また、

PPARγのsiRNAはPPARγ1、 PPARγ2ともに抑制した。このPPARα、 PPARLγ siRNA処置細胞で

は、コントロールと比較して、酸化LDLによるABCA1のmRNAの発i現を著明に抑制し、

PPAR.α、 PPARγともに阻害することにより相加効果が得られた(図9-2)。

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7一(7)マクロファージにおける酸化LDLによるMCP・・1 mRNA発現におけるPPAR活1生化の 検討

次にPPARα、 PPARγのアンタゴニストを用いて酸化LDLによるMCP-l mRNA発現に対す る各種阻害剤の効果を検討した。マウスの腹腔マクロファージにおいて、40μg/mlの酸化

LDLはMCP-1のmRNA発現を4.7倍増加した。 PPARαの阻害剤GW6472(GW)、PPARγ阻害

剤TOO70907(T)にてMCP-1のmRNA発現は増加し、 PPARα、 PPARγを同時に阻害すること でMCP-1のmRNA発現を相加的に増加させた(図10-1)。

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図10-1:マウス腹腔マクロファv・・一ジにおける酸化L肌によるMCP-1発現の検討

マウス腹腔マクロファージに “材料と実験方法”に示したように、PPARαの阻害剤GW6472(GW)、

PPARγ阻害剤Too70907(T)で1時間前処理(A)、若しくは、 PPARα、 PPARγのsiRNAを感染後(B)、

40μglmlの酸化LDLを添加し、24時間培養後、“材料と実験方法”に示したように、 MCP-1のm:RNA発 現をRT.PCR法にて測定した。“, p<0.Ol,対対象t, p<0.Ol,対酸化LDL添加の細胞群††, p<

0.Ol,対酸化L肌とGW若しくはT添加の細胞群瓶く0.Ol,対酸化LDL添加の細胞群##, p<0.01,

対酸化LDLとPPA:Rα、 PPARγのsiRNAを感染させた細胞群

酸化LDLはマクロファージにおいて抗炎症作用を呈することが報告されている

(Hamilton et al.1995,0hl sson et a11996)。PPARα、 PPARγが、この酸化LDLによる抗炎症

作用に関与しているかを検討するために、LP SによるMCP-1 mRNA発現に対するPPARα、

      48

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PPARγ特異的阻害の効果を検討した。

 1μg/mlのLipopolysaccharide(LPS)刺激にて、マウス腹腔マクロファージにおいて、MCP-1 のmRNA発現は10.5倍に上昇したが、酸化LDLはこの上昇を抑制した。 PPARα阻害剤

GW6472(GW)、PPARγ阻害剤TOO70907(T)はこの抑制を著明に回復させ、 GW6472、

TOO70907でPPARct、 PPARyを共に抑制すると、相加的に回復した。また、 PPARα、 PPARy

のsiRNAはそれぞれコントロールと比較して、酸化LDLによるMCP-1 mRNA発現抑制を著

明に回復し、PPARα、 PPARγを共にsiRNAにて処理することにより、その回復には相加効 果がみられた(図10-2)。

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      siRNA con con con ct y ct+y

  図10-2:LPSによるMCP-1発現誘導に対する酸化mしの効果

 マウス腹腔マクロファージに “材料と実験方法”に示したように、PPARαの阻害剤GW6472(GW)、

 PPARγ阻害剤Too700907(T)で1時間前処理(A)、若しくは、 PPARα、 PPARγのsiRNAを感染後(B)、

 40pg〆mlの酸化LDLを添加し、24時間培養後、“材料と実験方法”に示したように、 MCP-1のmRNA発  現をRT-PCR法にて測定した。*, p<O.O l,対対象 †, p<0.Ol,対 酸化LDL添加の細胞群 ††, p<

 0.Ol,対 酸化LDLとGW若しくはT添加の細胞群 #,<O.Ol,対 酸化L肌添加の細胞学 ##, p<0,01,

 対酸化LDLとPPARα、 PPARγのsiRNAを感染させた細胞群

一方、MCP-1の発i現は転写因子の一つであるNF-KBの活1生化に誘導を受けることが報告さ

れている(Ueda et al.1997)。そこで次に、酸化LDLによるNF一田の活性化について検討し

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た。40μg/mlの酸化LDLによりNF-KBの活性化は上昇した。 PPARα、 PPARγをそれぞれsiRNA で阻害すると、この活性化の上昇は増強され、PPARα、 PPARγをともにsiRNAで抑制する

と、相加的な増強効果が認められた。さらに1μg/mlのLPSはNF-mbの活性化を上昇させる が、酸化:LDLはこの活性化の上昇を抑制した。 PPARα、 PPARγをそれぞれsiRNAで阻害す ると、この活性化の抑制は回復し、、PPARα、 PPARyをともにsiRNAで抑制すると、相加的 な回復効果が認められた(図10-3)。

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図10-3:NF-KB活性に対する酸化LDLの影響

マウス腹腔マクロファージに “材料と実験方法”に示したように、PPARα、 PPARγ、 LacZのsilVNAを 感染後、40μg!mlの酸化LDLを単独添加し24時間培養後(A)、または、40μg!m lの酸化LDLとlpglm 1 のlipopolysaccharide(LPS)を同時に添加し24時間培養後(B)、“材料と実験方法”に示したように、

NF・KBの活性を測定した。’, p<0.Ol,対対象 ’”,p<0.Ol,対 LPS添加の細胞群 #, p<0.Ol,対 酸 化LDLとPPARα、 PPARγ、 LacZのsiRNAを感染させた(LPS添加の)細胞群 ##, p<0,01,対 酸化LDL

とPPARα、 PPARγのsiRNAを感染させた(LPs添加の)細胞群

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8.考察

酸化:LDLとPPARsの活性化

 これまで、酸化LDLによるPP ARα、 PPARyの活1生化には酸化LDLに含まれる、9-HODE、

13-HODE、酸化リン脂質などが、その直接的なリガンドとなり活1生化を誘導すると報告さ

れてきた(Lee et al.2000, Nagy et al.1998)。しかし今回の検討により、酸化LDLによるPPARα、

PPARγの活性化にはCOX-2の過剰発現も関与していることが考えられた。

 酸化LDLによるPPARα、 PPARγ活性化が、 LDLの酸化の程度に起因しているかを検討す るため、酸化の程度を弱めたmildly oxidized LDL(m-Ox-LDL)を用いて検討した。すると、

m-Ox-LDLでも著明にPPARα、 PPARγの活性化を誘導することから、酸化LDLによるPPARα、

PPARyの活性化にはその:LDLの酸化に起因するものと考えられた。さらに、硫酸銅による LDLの酸化よりも、動脈硬化病変でより生理的に起こっていると思われる、マクロファー

ジの存在下で酸化を誘導したmacrophage-mediated Ox-LDL(Mm-Ox-LDL)を作製し、その効 果を検討したところ、やはり同様にPPARα、 PPARγの活性化が認められたことから、実際

に動脈硬化巣において、酸化LDLによるPPARの活1生化が引き起こされている可能性が考

えられる。

酸化:LD:しによるPPARs活性化機序一COX-2の関与

 COX-2はprostaglandin(PG)合成における律速酵素であり、アラキドン酸から、 PGG2を 経てPGH2までの合成に関与している(Campbell W B et al.1996)。酸化LDL,が単球、マク

ロファージにおいてCOX-2の発現を誘導することは既に幾つか報告されている(Pontsler et

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al. 2002,Claus et al.1996)が、その詳細な機序、臨床的意義については不明な点が多く残

されていた。

 今回の検討により、マクロファージにおいて酸化LDLがCOX-2の発現を誘導:するが、こ の時、酸化LDLにより誘導されるp38MAPKの活性化は関与せず、 ERK 1/2の活性化が関与す ることを見出した。さらに、酸化LDLによるPPARα、 PPARyの活性化はCOX-2、 ERK1/2の 阻害により有意に阻害されることから、マクロファージにおいて、酸化LDLによるPPARα、

PPARγの活性化はEPK 1/2を介したCOX-2の発現に起因すると考えられた。興味深いことに、

申請者らはスタチン製剤がPPARα、 PPARγの活性化能を持つこと、その機序にCOX-2の過 剰発現が関与することを報告している (Yano et al.2007)。これらの事象は、 COX-2の過 剰発現に繋がる細胞応答には、PPARα、 PPARγ活性誘導の可能性が存在することを示唆し

ている。

 様’々な刺激によるCOX-2の転写調節機構としては、転写因子である

CCAAT/enhancer-binding protein一β(C/EB耶)やAP-1の関与が報告されている。一方、今回 の検討でCOX-2発現にはERK1/2が関与することを見出したが、このAP-1やC旭BPβの活性 はMAPKのシグナル伝達により制御されていると考えられている。このことから、酸化LD:し

によるCOX-2発現には、これら転写因子の関与が予想される。今後、これらの証明のため

にさらなる検討を行う予定である。

酸化:LD:しによるPPARs活性化機序

       一ERK I/2-COX-2シグナルを介した15d-PGJ2産生の関与

 本研究では、酸化LDLによるCOX-2の発現が細胞内の15d-PGJ2を増加させることを見出

した。さらに、酸化LD:Lは15d-PGJ2のみならず、 PGD2、 PGE2も増加させることから、酸化 LDLによるCOX-2発現はPGの下流のシグナルを調節していると考えられる。15d-PGJ2が、

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PPARγの強力なリガンドであることは良く知られているが、Formanらは、15d-PGJ2がPPARα の直接的なリガンドではないが、PPARαの活性化能を持ちうることを報告しており

(Forman et al.1997)、この点は本研究の実験結果と一致している。このことにより、COX-2 による15d-PGJ2の増加は酸化LDLによるPPARα、 PPARγ活性化の機序の一つと考えられる。

 様々な動脈硬化巣にはCOX-2の産生増加が認められること、さらにはLDL受容体欠損マ

ウスにおいて、COX-2を選択的に阻害すると、動脈硬化病変の形成を抑制すること(Burleigh et al.2002)などから、これまでCOX-2は動脈硬化症の促進因子であると考えられてきた。

しかしながら、最近の研究では、ヒトにおいてCOX-2阻害薬が動脈硬化病変を減少させず、

反対に心血管イベントを増加させる(FitzGerald.2004, Furberg et al. 2005, Wong et al.2005)

ことが報告されている。本研究の結果からも、COX-2は15d-PGJ2などのある種のエイコサ

ノイド産生誘導の結果、PPARsの活1生化を介して動脈硬化症に対し抑制的に働いている可 能性が考えられる。さらに本研究では、ApoEノックアウトマウスを用いた検討で、マクロ

ファージに一致した酸化LDLの存在する動脈硬化病変でのPPARα、 PPARγの活性が有意に 上昇していることを見出した。同部位においてCOX-2の発i現が増加していることも示した

が、これは既存の報告(Burleigk et al.2002, HernAndez-Presa 2002, Palinski et al.1989)と一

致したものである。加えて、本研究では、動脈硬化病変において、15d-PGJ2の発現の増加 が認められることをしていることを確認している。これらのことから、in vivoにおいても この酸化LDLがCOX-2を介した15d-PGJ2の増加により、PPA:R、α、 PPARγを活性化している 可能性が考えられる。

 一方、cox-2 siRNAの処置により酸化LD:しによるcox-2発現は86%抑制されるものの、

酸化LDLによるPPARα、 PPARγの活性化はそれぞれ50%程度しか抑制されず、さらにCOX-2

やERK 1/2の阻害剤が酸化LDLによる細胞内15d-PGJ2含有量の増加を80%以上抑制するもの

の、PPARα、 PPARγの活性化は同様に50%程度にしか抑制しないことから、酸化LDLによ

るPPARα、 PPA:Rγの活性化にはCOX-2以外の機序が存在する可能性が考えられた。これま

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