佐藤友利1),三浦慎平1),渡部大輔1),森 志朋1),天野博雄1), 小野寺信江2),石井則久3)
(岩手医科大学1),岩手県立胆沢病院2),国立感染症研究所ハンセン病 研究センター3))
4 歳女児.当科初診の 4 カ月前より左上腕に自覚症状を欠く皮下硬結 が出現した.近医を受診し抗生剤を内服したが潰瘍化したため,精査目 的で前医を受診した.皮膚生検を行い,病理組織中に多数の抗酸菌がみ られ,組織遺伝子解析の結果よりM. ulcerans 感染症による Buruli 潰瘍が疑われ当科を紹介受診した.リファンピシン,クラリスロマイシ ン,トフスロキサシンによる 3 剤併用療法を行ったが難治であり,5 mm マージンで切除を行い人工真皮を移植した.起因菌は切除標本を 用いた PCR 法,組織遺伝子解析により最終的にM. ulcerans subsp.
shinshuense と同定された.切除断端部に抗酸菌がみられたため,5 mm マージンで追加切除,植皮,併せて瘢痕周囲よりパンチ生検を 4 カ所行った.いずれの標本からも抗酸菌はみられず,3 剤併用療法を中 止した.2 カ月経過しているが再発はみられない.
P-418
BCG 接種後の乳児腋窩化膿性リンパ節炎の 1 例 中井智絵,波部幸司,山中恵一
(三重大学皮膚科)
10 ヶ月男児,生来健康.家族に結核の既往なし.生後 5 ヶ月 BCG 接種.
6 ヶ月より同側腋窩に 30mm 大の皮下結節出現.その後発赤認め近医 皮膚科にて穿刺排膿.抗生剤内服するも排膿が続くため当科紹介初診.
左腋窩に 20mm 大の表面発赤伴う皮下硬結あり中央に瘻孔伴う.皮膚 エコーで腋窩リンパ節からの皮膚への瘻孔を認め,皮膚生検で表皮下 に壊死および類上皮肉芽腫を認めた.結核菌 PCR,培養陰性.BCG 接種後の化膿性リンパ節炎と診断し,経過観察にて縮小.BCG 接種後 の副反応には,化膿性リンパ節炎,菌体成分のアレルギーとされる皮膚 結核疹,接種部位近傍に形成される真性結核などがある.2006 年に結 核予防法が感染症法に統合され,それまで 4 歳未満の幼児に接種され ていた BCG が,乳幼児の結核予防効果を高める目的で 6 ヶ月未満(そ の後 1 歳未満)の接種と変更.乳幼児の重症結核は減少したが,副反応 の報告は増加しており,若干の考察を加え報告する.
P-419 (O16-8)
熱傷瘢痕に生じた結節を伴う皮膚疣状結核の 1 例 米澤栄里1),楠谷 尚1),菅原弘二1),工藤新三2),鶴田大輔1)
(大阪市立大学皮膚科1),大阪社会医療センター2))
皮膚結核は感染様式によって,直接接種,内部病変からの直接浸潤,血 行性散布,結核疹の 4 つに分類される.皮膚への直接接種により感染し た報告は少ない.今回,熱傷瘢痕に生じた,結節を伴う皮膚疣状結核の 1 例を報告する.
67 歳男性.初診から 6 年前に右前腕部に熱傷を受傷.一旦治癒したが,
同部位に瘙痒を伴う結節が出現し,初診 1 年前に前医を受診した.ステ ロイド外用剤を処方されるも改善なく,当科へ紹介となった.初診時,
右前腕に 12×16 cm 大の馬蹄状の紅色局面を認め,辺縁には一部過角 化および痂皮を伴った結節がみられた.結節から皮膚生検し,類上皮肉 芽腫を伴う慢性炎症の所見のみであり,乾酪壊死はなかった.結核菌培 養検査で Mycobacterium tuberculosis complex が検出された.全身精 査では皮膚以外に結核病巣はなく,結核菌の直接接種により生じた皮 膚疣状結核と考えた.抗結核薬の多剤併用療法を開始し,5 ヶ月経過時 点で改善傾向である.
P-420
皮下結節を形成した
Mycobacterium chelonae
による 播種性非結核性抗酸菌症の 1 例森 智史,塚田鏡寿,池上徹栄,金井美馬,山内 瑛,小池真美,
鈴木利宏,濱崎洋一郎,井川 健
(獨協医科大学病院皮膚科学講座)
68 歳女性,SLE にてステロイド内服中.M.avium と M.chelonae によ る肺非結核性抗酸菌症の既往あり.RFP・CAM・EB の 3 剤併用で治 癒.約 8 ヶ月前より左前腕部伸側に結節を自覚,徐々に小児手拳大まで 増大.頂点部が黄色調で毛細血管拡張を伴い,多房性で弾性軟,下床と の可動性はやや不良.CT では不均一で高吸収の多房性皮下結節であ り,軟部組織腫瘍を疑った.腫瘍内容物は米粒大で黄色の脂肪滴様物質 であった.組織の Ziehl!Nielsen 染色にて抗酸菌を確認.抗酸菌培養で は,培養開始 1 週目で抗酸菌の発育を認め,M.chelonae と同定.右前 腕にも同様の病変があり,M.chelonae による播種性非結核性抗酸菌症 と診断.病変部は切除し,両鼠径からの全層植皮にて再建.術後より,
RFP・CAM の内服を開始し,治療開始約半年を経過した時点で再 発・新規病変なく経過良好.本症例の様に皮下結節を形成する非結核 性抗酸菌症は稀と考えられ,過去の報告と比較し考察する.
抄 録
ポ ス タ ー演 題 皮膚筋炎に合併した皮膚 Mycobacterium chelonae 感染
症の 1 例
指宿敦子1),吉福明日香1),多田浩一1),藤井一恭1),東 裕子1), 宮本友司2),石井則久2),金蔵拓郎1)
(鹿児島大学皮膚科学1),国立感染症研究所ハンセン病研究センター2)) 60 歳,女性.2008 年に発症した皮膚筋炎に対してプレドニゾロン 20 mg/day,シクロスポリン 100 mg/day を内服していた.2016 年 9 月,
左前腕に 2 cm 大と 5 mm 大の皮下結節が出現した.病理組織標本で はいずれも類上皮細胞肉芽腫の所見を認めた.各種染色を行うも菌体 は認めなかった.残存病変を再度生検し,塗沫検査でガフキー 2 号,
Ziehl!Neelsen 染色が陽性であった.当院での PCR 法で M. tuberculo-sis,M. avium,M. intracellulare は否定され,国立感染症研究所にて施 行した PCR 法で M. chelonae を同定した.過去の文献を参考にクラリ スロマイシン 800mg/day,レボフロキサシン 500mg/day の内服と温 熱療法を併用し,皮疹は治療開始から 4 ヶ月後には消退し,治療終了後 も再燃を認めていない.近年,非結核性抗酸菌感染症は日和見感染症と して増加傾向である.常に可能性を考え,適切な検査を行う必要があ る.
P-422
皮膚 Mycobacterium abscessus 感染症の 1 例 琴 基天1),大森 順2),日野光紀3),安齋眞一4),幸野 健1), 佐伯秀久5)
(日本医科大学千葉北総病院皮膚科1),日本医科大学千葉北総病院消化 器内科2),日本医科大学千葉北総病院呼吸器内科3),日本医科大学武蔵 小杉病院皮膚科4),日本医科大学附属病院皮膚科5))
70 歳女性.潰瘍性大腸炎の精査・治療目的の内科入院中に血液培養に て Mycobacterium abscessus 陽性であった.内臓の感染巣は認めらな かった.その後,躯幹・四肢の数ヵ所に浸潤触れる紅色局面が出現し,
Mycobacterium abscessus および潰瘍性大腸炎との関連性を疑われ皮 膚科を紹介受診された.皮膚生検を施行,病理組織像は感染性肉芽腫を 疑う所見であった.Ziehl!Neelsen 染色,Grocott!Gomori 染色は共に陰 性であった.皮疹部の開放性膿および組織培養ではいずれからも My-cobacterium absecessus 陽性であった.ミノマイシン,レボフロキサシ ン,クラリスロマイシン内服にて皮疹は改善傾向である.今後,潰瘍性 大腸炎の治療に伴う Mycobacterium abscessus感染症の再燃を考慮し 皮疹部を外科的に切除する予定である.
P-423
くすぶり型 ATLL 患者の右上腕,両大腿に生じた非結核 性抗酸菌症の 1 例
西元順子1),井上知宏2),外山孝典3),宮本友司4),石井則久4), 天野正宏1)
(宮崎大学医学部感覚運動医学講座皮膚科1),宮崎県立延岡病院皮膚 科2),宮崎県立延岡病院内科3),国立感染症研究所ハンセン病研究セン ター4))
79 歳男性.くすぶり型 ATLL に対し,免疫賦活療法,プレドニン内服 後に急性転化し,THP!COP 療法,トポイソメラーゼ II 阻害剤内服で 軽快した.初診 6 か月前に右上腕,右大腿の結節を自覚.近医にて生検 し,病理組織学的に類上皮細胞肉芽腫であり,抗酸菌染色にて無数の陽 性菌体を認め非結核性抗酸菌症が疑われた.当科の検査では,抗酸菌染 色にて 3+,TaqManPCR 法ではMycobacterium intracellulare の診 断であった.再度施行した左大腿部の結節からの DNA シークエンス 法ではMycobacterium intracellulare に近い菌種であった.REP,EB,
CAM の 3 剤併用で加療開始したが,20 日経過した時点で薬疹が出現 し,30 日間内服したところで薬剤をすべて中止した.その後,明らか な結節の再燃はみられていない.
セイブシシバナヘビ咬傷の 1 例
加藤香澄1),加藤裕史2),井汲今日子2),大口亮子2),森田明理2)
(JA愛知厚生連知多厚生病院皮膚科1),名古屋市立大学大学院医学研 究科加齢・環境皮膚科学2))
19 歳,男性.セイブシシバナヘビに給餌した際に左手背を咬まれ,受 傷から 2 時間後に当院を受診した.受診時,左手背に牙痕,前腕に腫脹 と紅斑を認めた.手指の麻痺やしびれなどの症状はみられなかった.抗 生剤内服を開始し第 8 病日に腫脹は改善したが左肘に浮腫性紅斑及び 水疱が出現したためステロイド外用を追加した.徐々に紅斑は改善を 認めたが完治までに約 2 か月を要した.セイブシシバナヘビは威嚇目 的でヒトに対して攻撃を行うことは希であり,そのため臨床的に重要 視されていなかった.しかしながら給餌の際に誤って受傷する危険性 があり,過去の報告では咬傷時間によって,腫脹や発赤,水疱形成,斑 状出血,蜂巣炎などを来すとされている.近年,ヘビをペットとして飼 うことが一般的になってきており,今まで毒蛇と考えられている蛇咬 傷だけではなく,今回の症例のようなセイブシシバナヘビなど後牙類 のヘビによる咬傷にも注意が必要と考えられる.
P-425
血液疾患が疑われた日本紅斑熱症例〜配偶者の日本紅斑 熱発症により判明した夫婦症例〜
飛田礼子,千貫祐子,新原寛之,森田栄伸
(島根大学医学部皮膚科)
患者は 80 歳男性.2017 年 10 月初旬,白血球・赤血球上昇,血小板減 少,軽度肝機能障害のために血液疾患を疑われ,当院内科入院となっ た.入院当日に 39.0 度の発熱があり,市中肺炎が疑われ,セフトリア キソンの点滴が開始されたが,4 日間解熱がみられなかった.5 日目に,
患者の妻が発熱と全身の発疹のために救急外来を受診し,皮膚科当直 医が臨床症状,血液検査所見より日本紅斑熱と診断した.同様の症状で 配偶者が入院中であることが分かり,診察の結果,臨床所見,血液検査 所見より日本紅斑熱を疑った.夫婦ともに躯幹に痂皮の付着を認め,
LAMP 法にて日本紅斑熱と確定診断した.患者はミノサイクリンの投 与にて臨床症状,血液検査所見ともに速やかに改善した.妻はミノサイ クリンとレボフロキサシンの併用療法により臨床症状,血液検査所見 とも徐々に改善した.発症前,夫婦は連日北山に栗拾いに出かけてお り,感染場所であると思われた.
P-426
ライム病と
Borrelia miyamotoi disease
を合併した 1 例 荻根沢真帆子1),折目真理1),阿部理一郎1),伊藤明子1,2),下村尚子3), 佐藤 梢4),川端寛樹4)(新潟大学皮膚科1),ながたクリニック2),新潟南病院3),国立感染症研 究所4))
61 歳,女性.登山後,38!39 度の発熱,軽度肝機能障害が出現した.左腋窩 に環状紅斑が出現し,多発した.ダニ刺咬の有無は不明だったが,臨床症状 よりライム病を疑った.患者血清において抗ライム病抗体と抗Borrelia mi-yamotoi GlpQ 抗体が陽性であり,紅斑部の皮膚生検組織を用いた PCR 法に よってBorrelia garini が検出された.以上からライム病ボレリアと Borre-lia miyamotoi の共感染と診断した.ミノサイクリン内服により症状の軽快 を認めた.ライム病では,マダニ刺咬部位を中心とした遊走性紅斑が特徴的 である.一方,Borrelia miyamotoi disease(BMD)はマダニにより媒介さ れるBorrelia miyamotoi 感染によって,発熱などの感冒症状を呈するが,発 熱は再帰性でないことが多く,皮疹も呈さない.免疫不全患者では,髄膜炎 を発症しうる.マダニ生息地に行った後のライム病を疑う症例において,発 熱や肝機能障害を呈する場合では,BMD の合併も鑑別する必要がある.