佐々木梓,薄井利大,小原宏哉,増澤真実子,三井純雪,天羽康之
(北里大学)
70 歳男.7 ヶ月前より両下腿の浮腫が出現し徐々に拡大した.初診時,
両側大腿,両側前腕,右側腹部に浮腫と皮膚硬化あり,びまん性の暗紅 色紅斑を伴っていた.また orange peel like appearance,groove sign を認めた.両肩関節と両膝,足関節は可動域制限を伴っていた.血液検 査では好酸球 1565/µL,IgG 4124 mg/dL と高値であった.皮膚,筋を 含めた病理学的検討では,真皮深層から筋膜にかけて著明な膠原線維 の増生と,筋膜の肥厚を認めた.膠原線維間には巣状に形質細胞,組織 球,好酸球の浸潤があり,特に筋膜は変性し,その周囲に著明な形質細 胞の浸潤を認めた.造影 MRI では,T2 強調画像で両側腓腹筋筋膜の高 信号を認めた.悪性腫瘍はなかった.以上より,好酸球性筋膜炎と診断 した.PSL60mg/日を投与開始したところ浮腫,紅斑は消退し,造影 MRI でも筋膜周囲の炎症の改善を認めた.しかし,皮膚硬化と関節の 可動域制限は残存している.
P-198
限局性強皮症を合併した TIF1!γ 陽性皮膚筋炎の 1 例 水野絵里香1),満間照之1),村上めぐみ1),日高友梨1),白井三由希1), 相山明輝1),河合正博2)
(一宮市立市民病院皮膚科1),かわい皮フ科クリニック2))
症例は 68 歳女性,初診 1 年前より左上腕に紅斑が出現し,徐々に同部 位が陥凹した.1 か月前より頚部,顔面にも紅斑が出現し増大,倦怠感 も出てきたため近医受診し当科紹介となった.頚部,上腕に萎縮性陥凹 した紅斑を認め,皮膚生検の結果,皮疹は限局性強皮症と診断した.ま た爪囲紅斑と手指関節に紅斑を認め,クレアチニンキナーゼとアルド ラーゼの上昇,TIF!1γ 陽性などにより皮膚筋炎と診断した.少量の ステロイド内服で皮膚筋炎の諸症状と検査所見は改善,限局性強皮症 の皮疹も新生なく悪化していない.全身検索では現在まで間質性肺炎 と悪性腫瘍の合併は認めていない.
抄 録
ポ ス タ ー演 題
P-199
中咽頭癌と急速進行性間質性肺炎を合併した抗 MDA!5 抗体陽性の皮膚筋炎の 1 例
小泉 遼1),尾山徳孝1),大鐘邦弘2),堤内俊喜2,3),扇 和弘3), 塩浦宏樹4)
(福井大学皮膚科1),福井県立病院腎臓内科2),福井県立病院耳鼻咽喉 科3),福井大学放射線科4))
65 歳,女性.顔面,両手の皮疹と抗核抗体陽性のため,精査目的に当科へ 紹介となった.眼瞼のヘリオトロープ疹,ゴットロン徴候に加えて両手掌 には逆ゴットロンがみられ,CT 検査で間質性肺炎が判明した.抗 MDA!
5 抗体陽性の無筋症性皮膚筋炎と診断し,近医内科でプレドニゾロン内服 とシクロホスファミドパルスが施行され,その後はタクロリムス内服の併 用で経過観察されていた.初診の 11 ヶ月後に軟口蓋の高分化型有棘細胞 癌(T2N1M0)と頚部リンパ節転移を指摘され,治療目的に当院に再度紹 介された.原発巣と頸部リンパ節に各々計 70Gy の放射線療法と陽子線治 療も施行したが肺転移が出現,カルボプラチンとドセタキセルによる化学 療法を 3 クール施行するも転移が拡大し,その後に誤嚥性肺炎のため永眠 された.間質性肺炎を伴う皮膚筋炎が悪性腫瘍を合併した際には治療に難 渋する.その際の治療選択に関して,最近の動向を踏まえて考察する.
P-200
偽性腸閉塞を合併した全身性強皮症に対し在宅中心静脈 栄養を導入した 1 例
大久保葵,指宿敦子,有村亜希子,地村 望,勝江浩未,馬場淳徳,
馬場直子,藤井一恭,東 裕子,金蔵拓郎
(鹿児島大学医学部皮膚科)
41 歳女性.初診の 9 か月前から Raynaud 現象と両手指から前腕まで の皮膚硬化が出現した.病理組織像で真皮,皮下組織に膠原線維の増生 を認め,全身性強皮症(Scl!70 抗体陰性)と診断された.初診の 4 か月後には肘,膝より近位側へ皮膚硬化が進行した.間質性肺炎,肺高 血圧,腎病変は認めなかったが,逆流性食道炎と食道蠕動低下を認め た.消化器病変は次第に増悪し,初診から 1 年半後には CT で腸管拡 張,腸管壁の浮腫性変化を広範囲に認めた.初診から 2 年後には偽性腸 閉塞の症状を繰り返すようになった.蛋白漏出シンチグラフィーで結 腸からの漏出を認めた.蛋白漏出性胃腸症と偽性腸閉塞による吸収障 害のため次第に体重が減少した.様々な治療を試みるも症状の改善が 乏しく,初診時 48kg あった体重が 29kg まで低下したため,初診から 4 年 5 カ月後に在宅中心静脈栄養を導入した.現在体重は 41kg まで増 加し,消化器症状も落ち着いている.
P-201
早期からの強力な免疫抑制療法が奏効した抗 MDA5 抗 体陽性皮膚筋炎の 1 例
佐々木洋1),石井泰江1),大橋隆宏1),井上夕菜1),高橋宏征1), 神谷崇文1),澄川靖之1),宇原 久1),山下利春2)
(札幌医科大学附属病院皮膚科1),札幌市2))
40 歳代女性.初診 1 か月前より両眼瞼が腫脹し,続いて手の皮疹と四 肢の筋痛と筋力低下が出現した.初診時,ヘリオトロープ疹,ゴットロ ン丘疹,逆ゴットロン徴候,爪囲紅斑,肘・膝,後頚部の紅斑,38℃
台の発熱,呼吸苦,咳嗽,上腕と大腿の把握痛を認めた.血液検査では CK:294U/L,フ ェ リ チ ン:1483ng/mL,抗 MDA5 抗 体:138(32 未満)だった.胸部 CT 像に間質性肺炎の所見はなかった.プレドニゾ ロン 60mg/日,シクロスポリン 300mg/日の内服に加え,ステロイドパ ルス療法,免疫グロブリン大量療法,エンドキサンパルス療法を行い,
症状は消失した.初診 7 ヶ月後も寛解を維持している.
抗 MDA5 抗体陽性皮膚筋炎では急速進行性間質性肺炎を高率に発症 し,予後が悪いことが知られている.早期からの強力な免疫抑制療法に よって間質性肺炎を起こさずに寛解導入できた可能性が高いと考え た.
P-202
ヒドロキシクロロキン(HCQ)抵抗性で DDS が奏功し た皮膚限局性エリテマトーデス(CLE)の 1 例
山崎由里子,中川誠太郎,外川八英,松江弘之
(千葉大学医学部附属病院皮膚科)
40 歳女性.2003 年前医で CLE,localized DLE と診断されステロイド 外用のみで軽快.2015 年皮疹再燃し外用再開するも無効.2016 年 12 月より当科通院.右下眼瞼に軽度浸潤を触れる小豆大の紅斑を認め CLASI 2 点.SLE 特異的血清学的所見なし.病理像で表皮真皮境界部 不明瞭化,メラニン滴落,血管及び付属器周囲の単核球主体炎症細胞浸 潤,毛包基底膜破壊像あり.2017 年 2 月 HCQ 200 mg 連日内服を開始.
4 月 400/200 mg 隔日内服に増量し 6 月禁煙するも徐々に悪化.8 月 CLASI 5 点となったため HCQ を DDS 50 mg 内服に変更し,10 月 CLASI 1 点に改善.2009!2017 年に当科で経験した CLE 27 例のうち HCQ 導入例は 6 例であり,HCQ 抵抗例は本例のみ.HCQ 奏功 5 例の 内訳は profundus 3 例,localized DLE 1 例,generalized DLE 1 例で あった.HCQ 奏功率は皮疹の亜型や喫煙の有無により異なるとする報 告がある.HCQ 抵抗例に対する免疫抑制療法は未確立であり今後の症 例蓄積が期待される.
P-203
エンドセリン受容体拮抗薬が強皮症における難治性皮膚 潰瘍に奏功した 3 例
秦 舞子1),藤井建人1),永井美貴1),岡田英之2),阿部慎太朗3), 廣瀬武司3)
(岐阜県総合医療センター皮膚科1),岐阜県総合医療センター総合診療 部2),岐阜県総合医療センター循環器内科3))
症例 1 64 歳女性,2012 年抗 Scl!70 抗体陽性の全身性強皮症と診断.2016 年 12 月指尖潰瘍の悪化あり,ボセンタン投与したが,投与後血小板減少あ り中止.2017 年 6 月肺高血圧症に対しマシテンタン開始.投与後 3 ヶ月で すべての潰瘍が上皮化.症例 2 67 歳女性,32 歳時抗セントロメア抗体陽 性の全身性強皮症と診断.2012 年右足背潰瘍が出現し,2015 年には足関節 部全周性,足背部,足趾まですべて潰瘍となった.2016 年 2 月より肺高血 圧症に対しマシテンタン開始.足背部潰瘍は徐々に改善,2017 年 12 月上 皮化.症例 3 76 歳女性,2010 年抗セントロメア抗体陽性の全身性強皮症 と診断.2017 年 1 月心不全を契機に右示指,小指の色調不良が出現,先端 の壊疽進行.ボセンタン投与開始後,壊疽の進行は停止.現在示指は改善,
小指の壊疽部は自然脱落.3 症例のうち 2 症例で肺高血圧症に対して投与 されたマシテンタンが皮膚潰瘍にも効果があった症例を経験した.
P-204
抗 MDA5 抗体および抗 ARS 抗体がともに陽性であった 稀な皮膚筋炎の 1 例
兼子泰一1),影山玲子1),石部純一2),安井秀樹3),橋爪秀夫1)
(市立島田市民皮膚科1),浜松医科大学皮膚科2),浜松医科大学呼吸器 内科3))
61 歳女.初診の 1 ヶ月前から手指や上眼瞼に皮疹が出現し近医皮膚科 へ通院していた.全身倦怠感を合併し,血液検査で肝逸脱酵素上昇があ り,当院へ紹介受診した.Gottoron 丘疹,逆 Gottoron 丘疹,V!neck sign,ヘリオトロープ疹,肘膝に角化性紅斑,肝逸脱酵素上昇,CK 上昇,両大腿筋力低下を認めた.自己抗体検査では抗 MDA5 抗体陽性
(≧150),抗 ARS 抗体陽性(112)であった.皮膚生検結果と合わせ皮 膚筋炎と診断した.浜松医科大学呼吸器内科へ転院し治療を行った.ス テロイドパルス療法 3 日間,ステロイド内服(PSL40mg)4 週間に対し て治療抵抗性であった.著明な筋力低下,皮疹悪化,手背皮疹の膿瘍化,
抑うつ状態,栄養摂取困難,間質性肺炎など様々な臨床症状を呈した.
免疫グロブリン大量静注療法とタクロリムス内服の追加治療が奏効し た.自験例のように抗 MDA5 抗体,抗 ARS 抗体ともに陽性を呈する 例は極めて稀であり,非典型的経過を呈した点が特徴的であった.