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図3−6利子弾力性(国債利回り)

O,04

0,02

 0

−O,02

・O,04

・O,06

−O,08

・O,1

−O,12

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金利と調整マネーサプライの散布図は、図3−3と図3−4に示す。1995年以前と以後で図は区別 している。表3−2の共和分ベクトルの推定係数は、金利と所得の弾力性を示している。共和分ベク トルにおいて、それぞれの変数の係数は重要である。金利(β、)の係数は負であり、貨幣需要に おける利子弾力性を表している。図3−5と図3−6は、利子弾力性を示している。それらをみると、

金融不安が急速に拡大した1997年を境に、利子弾力性が次第に高まっていることが分かる。こ れは、1997年以降に金利に対する貨幣需要が、より敏感になったことを意味する。金利スプレッ ドの弾力性は、一〇.03[1980Q1−1997Q11から一〇.05[1980Q1−2004Q11に高まっている(図3−5参 照)。また国債の利回りの弾力性も同様に高まっており、一0.1付近までになっている(図3−6参照)。

しかし、アメリカの利子弾力性と比較すると、これら日本の弾力性は、未だ小さい。たとえば、

Laid1er(1985)は、貨幣(M2)需要の弾力性をみると短期金利に関しては、およそ一0.12から一0.15 の間であり、長期金利に関しては、一〇.2から一0.6の間で変化していることを示している106。このこと

から、2000年初頭の超低金利下でも、貨幣需要は金利にそれほど敏感ではなかったといえる

107.

 1997年以前の金利に対する貨幣需要の反応度が小さいのは、金融システムの規制緩和の結 果であると考えられる。規制緩和の進展は段階的であったが、1980年代初期からの規制緩和に よってM2+CDを構成する金融商品は魅力的な金利を提供するようになった。例えば、ある定期 預金金利では、1990年代初期に10年もの国債利回りよりずっと高い利率を提供していたほどで ある。結果として、長短の金利差は負になった。しかしながら、目録の「ゼロ金利政策」という前例 のない金融緩和政策の採用によって金利は急速に下落し、それに伴って人々の貨幣保有は金 利に対し、ほんの少し弾力的になったのである。ただし、利子弾力性を見る限り、「流動性の罠」か らは程遠いものと言える。

V.まとめ

 本章では、金融不安に伴って予備的需要が増大するという事実から、金融不安要因を定量化 し、金融不安要因の線形関数として予備的需要を推定した。調整マネーサプライ=「マネーサプ

106Laid1er(1985)p.130,今井・石垣他訳(1989−9)175頁を参照。

107われわれの利子弾力性は、厳密にいえば準弾力性である。Laid1er(1985)の結果と比較す  るには、再計測する必要がある。準弾力性は、η、/7=ηβと定義することができる。ここでは、

 [η、,7,ηβ1を、それぞれ1利子弾力性、名目金利水準、準弾力性1とする。従って、金利スフ  レッドの平均利率が1.5%と仮定すると、弾力性は一0,045から一0,075の間であり、一方国債の  平均利回りが4%と仮定すると、弾力性は一0.4辺りを変化していることになる。

ライ」一「予備的需要(金融不安)」は、GDPと金利を加えた3変数間で、直接的に作用し合ってい ると考えられる。調整マネーサプライの導入で、バブル崩壊後(1980年から2003年のデータ区 間)にさえ長期均衡関係が存在することを見出した。

 次に日本経済が「流動性の罠」に陥ったかどうかについて明らかにするために、共和分ベクトル の分析を行った。貨幣需要の利子弾力性は金利の下落に伴い次第に高まっていったが、それほ ど大きくないという結果を得ており、日本経済が「流動性の罠」に陥っていないことを明らかにした。

このことは、Friedman(1968)が述べたように、インフレとデフレは共に長い目で見れば貨幣現象 である、ということを示唆するものである108。つまり、目録はマネーサプライの動きに注意を払うべき であり、不況に対する責務から免れることはできないのである。

108Friedman(1968)は、次のように述べている。「しかもなお枢要な事実は、いかなる暗いかな  る場所においても、インフレーションは貨幣的現象であるということである。歴史上、価格の大き  な変化は、常に産出高に比較した貨幣の相対量の大幅な変化と一緒に起こったのである。私  はこの一般化に対する例外を知らないし、アメリカあるいはその他の場所で、価格が大幅に上  昇したときに貨幣量が産出高と比較して大きく膨張しなかったり、あるいは貨幣量が産出高に  比較して大幅に膨張したときに価格の大幅な上昇がなかったりした例を知らない。そして、数  多くの確証する例がある。実際、私には、経済学において、それほど広い場所と時間にわたっ  て、これほど多くの系統だった証明を持った経験的一般化がほかにあろうとは思えない  [Friedman(1968)pp.105−106,金森・丸茂監訳(1968)35頁より引用】。」

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第4章貨幣需要における構成要素間の代替関係についての一考察 I. はじめに

 貨幣需要関数の実証分析に当たっては、説明変数にどのような変数を用いるかが重要な課題 となる。貨幣を金融資産の一つとして見なした場合、金利変数としては、自己資産利回り(Own Rate)と代替資産利回り(Riva1Rate)を用いるのが一般的である。これまでの先行研究をみると、

M1需要の実証分析では、貨幣の決済性としての機能を考慮するために、自己資産利回りはOと し代替資産利回りのみを金利変数としている。これに対しM2+CD需要の実証分析では、貨幣の 貯蓄性機能が重視されるために、金利スプレッド(=代替資産利回り一自己資産利回り)または自 己資産利回りと代替資産利回りをそのまま用いることが多い。しかしながら、M2+CD需要の場合、

金利スプレッドを用いて実証分析を行えば、M1需要もまた金利スプレッドで回帰することになり、

その推定結果が信頼できなくなる可能性がある109。自己資産利回りと代替資産利回りをそれぞれ 別個に用いて回帰した場合も同様の問題が生じる。これは、決済性の機能が重視されるM1が貯 蓄性の機能を持った定期性預金などと同様に取り扱われるからである。したがって、M2+CD需要 の分析では、その構成要素に十分な注意を払って分析することが肝要である。本章では、この点 を十分考慮した上で、貨幣需要分析をおこなう。

II.先行研究とその問題点

 共和分検定を用いた貨幣需要関数の先行研究として、M2+CDに関してはSekine(1998)、

109この点は次のように説明できる。貨幣需要を次のように考える。

   ma=∫(γ,・)

・榊・・1レ!!に・・1準通餅・・l1分けて ^廿・9㎞芳十ω/1置/駄

金利スプレッドも金代替資産利回り(㌃、ソ。 )と自己資産利回り(㌦㎜)の差である(㌦ソ。 一㌦㎜)

で表現すると以下のようになる。

/廿・2㎞斉十ω/一∫[ハ(い一)1

この式から、金利スプレッドはM2+CDの構成要素であるM1と準通貨十CDの両方と関係を 結んでいることになる。したがって、そのまま回帰すれば推定結果の信頼性が損なわれる恐れ

がある。

木村・藤田(1999)、細野・杉原・三平(2001)、澤田(2005)、MiyagawaandMorita(2005)、

lMorita,Rahman and−Mliyagawa(2006)があり、lM1に関してはNakashima and Saito

(2002)、藤木・渡邊(2004)、宮尾(2006)がある。

 Sekine(1998)は、金融自由化の影響と富効果を考慮することで、1975年Q1から1994年 Q4で共和分として知られる長期均衡関係が存在すると主張した。その推定の際に、金利変数2 つ(自己資産利回りと代替資産利回り)を同時に扱っているが、マネーサプライはM2+CDのみを 用い、貨幣の構成要素を考慮していない。木村・藤田(1999)は1997年末に発生した金融シス テムショックによって長期均衡関係が大きく損なわれたと主張し、さらに金融不安要因を共和分検 定に加えることで1997年Q4以降のサンプルを含めても長期均衡関係を見出した。細野・杉原・

三平(2001)は、1999年Q4まで長期均衡関係が成立していると主張した。ただし、金融不安が 貨幣需要に大きな影響を及ぼしたが、長期均衡関係を崩すに至った確証はないとした。澤田

(2005)は、1994年Q4まで長期均衡関係を見いだした。Miyagawa and Morita(2005)は、木 村・藤田(1999)と同様に金融システムショックによって長期均衡関係が大きく損なわれたと主張 した。Morita,Rahman and Miyagawa(2006)は、調整マネーサプライ(M2+CD)の導入により、

1997年以降のサンプルを含めても長期均衡関係が成立していると主張した。

 Nakashima and Saito(2002)は貨幣需要関数を共和分推定した。そこでは、名目価格の粘 着性がチェックされ、データとして金利以外は対数値が用いられている。彼らは、構造変化を考慮 した共和分検定を用いることで、M1と実体経済との長期均衡関係を見出した。藤木・渡邊

(2004)は、1996年以前には長期均衡関係が存在するとし、また県別の横断面分析から得られた 所得弾力性の値を制約として課すことで1995年以降も安定した利子弾力性の値を得た(この際 の金利はコールレートの対数値である)。宮尾(2006)は、M2の予測力について考察する際の準 備過程として共和分検定を行っているが、M2と所得及び物価の間に長期均衡関係の存在は支 持されないとした(期間は1975年早1から2003年Q4、金利はコールレートの水準および対数 値)。また、彼はM1についても共和分検定を行い2002年Q4まで長期均衡関係を見出している が、所得係数を1とする制約を課している。

 以上の最近の先行研究の結果をまとめると、M1と実体経済との長期均衡関係は認められるも のの、わが国のマネーサプライの代表的指標であるM2+CDと実体経済との長期均衡関係は 1990年代後半に発生した金融システムショックによって大きく損なわれたとされる。それでは、な ぜ長期均衡関係がM1の組み合わせに存在し、M2+CDの組み合わせには存在しないのか。こ の相違は、貨幣需要関数の推定の際、貨幣の構成要素に注目する必要があることを示唆してい

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