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(出所)小林(2004a)より引用。

これは、以下のような問題点が指摘できる。

 ①  GARCHモデルを用いている。しかし、株価の下落が金融不安を増長させるには、

    分散不均一性および非対称性を考慮したモデルを用いるべきである。

 ②  株価変化率の条件付分散(ゲ)のグラフを見ると、金融不安を適切に捉えていると     はいえない(図2−3参照)。例えば、1986年のバブル経済の時期に条件付分散が大     きくなっており、この時期に資金需要が低下しているとはいえない79。条件付分散が     1985年以降を1とするダミー変数のようなものとなっている可能性が高い80。

最後に得田(2003)の検証結果を示す81

〃g、=α。十α1〃、十α。〃、.1+μ、 (2.12)

蝸流動性資産の割合/、岩膿高金〕

Zσ、(LifeUneasy):生活不安度指数

79小林(2004a)自身も指摘している[小林(2004a)53頁を参照1.

80この点は塩路も、日本金融学会2004年度春季大会で討論者として指摘している[/』・林

(2004b)3頁を参照]。

81(2.5)式の被説明変数に関して、M1,M2+CDを10億円単位、郵便貯金を1億円単位とし て計算式に組み込み、同じ設定で再検証した。

工∫2c=o.690632+o.000744zo「、十〇.000476zσ、.1+μ、

   (1037,479)   (7.032456)    (4.518586)

イ:(1.95E−05)十〇.992199μ二、・0.11569批、4.、一0.170752σ二、

   (3.989251)  (4.674093)   (O.293277)   (一2.375749)

       推定期間:77/Q3〜02/Q1。()内はz値。

(2.13)

(2.14)

図2−4得田(2003)検証結果に基づく条件付分散(σ戸)

.0010

.0008

.0006

.0004

.0002

.0000

78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00

(year)

一GJR_LlQ_TOKuDA_t+1(77Q3−02Q1)

得田(2003)には以下のような問題点が指摘できる。

 ①  〃9を作成する際に山1,M2+CD]の単位を10億円に、郵便貯金残高の単位を

     1億円にしている。

 ②GARCH項(σ三1)の係数の符号条件が満たされていない。

 ③  (2.5)式と条件付分散(σ戸)の理論上の矛盾点は無いが、解釈を間違えている。

     つまり、「生活不安が高まれば、高流動性が高まる」ということは、∬9の高まりに寄      与することであり、プラスのショックである。

 ④  生活不安度指数が予測値である82。木村・藤田(1999)ではDIは全て実績値を

82消費者を対象として「今後1年間の暮らし向き(良くなる〜悪くなる)」を2か月ごとに調査し、

CSI(Consumer s sentiment index)としてとりまとめている。

【生活不安度指数の計算方法】

①「今後1年間暮らし向き」に対する回答である「悪くなる」「やや悪くなる」「やや良くなる」「良く   なる」について構成比を求める。

59

   用いている。しかし、得田(2003)が用いている生活不安度は、「今後1年間暮ら    し向き」に対する回答であるため、予測を基にしている。生活不安度が現在の生活    水準を基準にして予測していると仮定すると、現在を反映しているとも考えられる。

   しかしながら、予測は外れるものである。

⑤  木村・藤田(1999)では、(2.1)式に企業心理状態を考慮した変数をいれておらず、

   マイナスのショックから派生する分散を金融不安の代理変数としている。しかし、得    用(2003)では、高流動性資産の割合を生活不安度指数によって回帰し、その関    係で説明しきれないマイナスのショックを「金融不安要因」と呼ぼうとしているが納    得できるものではない。なぜならば、生活不安度指数が分かっているのなら、それ    を直接、金融不安要因と定義すればよいので、GARCH,GJRなどのモデルは全    く不要と考えられる。

[得田モデルの再推定]

(2.5)式の被説明変数に関して、得田モデルでは、単位に問題があるので、[M1,M2+CD、郵 便貯金]の単位を同一(億円)に揃え、GJRモデルを用いて再推定を行うと以下のようになる。

〃ρ、=α。十α1〃C+α。〃、.1+μ、 (2.15)

蝸流動性資産の割合/、㌍鶉金〕

Zσ、(Life Uneasy):生活不安度指数

〃g、=0−073524+O.001661〃、十〇.0017021〃、.1+μ、

   (5.620474)   (5.067732)    (4.376670)

σ7=O.000145+0.964080μ二、十〇.056665μ二、D、.、一〇.251709σ二、

  (3.190998)  (3.210286)     (0.091320)     (一4.545904)

       推定期間:80/Q4〜02!Q1。()内はz値。

(2.16)

(2.17)

②構成比について「悪くなる」2点、「やや悪くなる」1点、「やや良くなる」一1点、「良くなる」一2点  のウェイトをそれぞれ与え、合計点を求める。

③②の値に①を加え100倍する(合計点が0のとき100になるようにする)。

図2−5得田型モデルの条件付分散(σ戸)

0024

.0020

.0016

.0012

.0008

.0004

10000

82  84  86  88  90  92  94  96  98  00

      (year)

一GJR_LlQLt+1(80Q4−02Q1)

この再推定結果を見ると、(2.17)式の係数は非負制約を満たしていないことがわかる83。一方、

条件付分散(σ戸)の波形をみると、得田(2003)で見られた1990年から1992年における高まり は、解消している(図2−5参照)。しかし、上記のモデルでは、生活不安度指数という家計の心理状 態を表す変数を回帰式に組み込んでおり、その変数では説明がつかない回帰式の残差を、金融 ショックとみなし、その分散を金融不安と呼ぶという論理には問題がある。何故なら、生活不安度

指数をはじめから家計の金融不安要因とみなせばGARCHやTARCHモデルを使う必要がない

と考えられるからである。

 以上のように先行研究には、問題点が多数存在しており、これら問題点を改善した金融不安要 因を推定・抽出する必要性がある。

皿.ボラティリティ変動84の非対称性とGJRモデル,EGARCHモデル85

 本節では、先行研究におけるモデルと本章で用いるモデルの概要およびその特徴について説

明する。

83推定期間を2005年Q4まで延長した場合においても、条件付分散式の係数の非負制約を満 たすことは出来なかった。

84ボラティリティ変動モデルとは、ボラティリティが時間を通じて一定ではなく変動する特性を明 示的に定式化したものである[渡部(2000)p.iを参照]。

85ボラティリティ変動モデルについては渡部(2000)に負うところが多い。

61

 金融資産の時系列データを詳しく調べてみると、実は残差はホワイトノイズの性質を満たしてい ない。金融資産時系列データの残差の分散は一様ではなく、ばらつきに特徴があることが知られ ている。その特徴に関して株式の収益率でいえば、収益率に予期せざる大きな変動があると、そ の復しばらくの間収益率の変動の大きな期間が続くという性質である。このような性質を「分散の 不均一性(Heteroscedasticity)」と呼んでいる。分散の不均一性を組み込んだ時系列モデルが ARCHモデル(Auto−Regressive Conditiona1Heteroscedasticity Mode1)であり、Eng1e

(1982)が提案したモデルである。彼は、ボラティリティを過去の予測誤差の2乗の線形関数として 定式化した。

 その後、Bo11ers1ev(1986)は、GARCHモデノレ(Genera1izedARCH Mode1)を発表しており、

そこではボラティリティの説明変数に過去のボラティリティの値が加えられている。GARCH(1,1)は ARCH(。。)に基づいている。ARCHモデルでは、長い次数が選ばれるが、GARCHモデルでは

次数をたった2に減らすことを可能にしている。ARCHモデルの登場後、それを発展させたモデ ルが次々と登場することになる。

1.GJRモデルについて86

 ARCHモデルやGARCHモデルには、問題点が1つ指摘できる。それは、ボラティリティを対 称的と考えている点にある。株式収益率のボラティリティはレバレッジ効果を示すのである。つまり、

株価が上がった目の翌日よりも株価が下がった目の翌日のほうが上昇する傾向にあることが知ら れている。ARCHモデル、GAR−CHモデルとも、このようなボラティリティの非対称性を捉えきれて

いない。

 GJRモデルは、G1osten,Jagamathan,and Runk1e(1993)によって提案されたものである。

このモデルは、条件付分散を導入するにあたり、ARCHモデルやGARCHモデルでは扱えない 誤差項の非対称性を仮定したものである。具体的には、GJR(p,q)モデルはボラティリティ変動を 次のように定式化する。

86その後、Zakoian(1994)によってTGARCHモデル(Thresho1dGAR−CHMode1)が提案さ

れている。

σ1一ω・玄凧・乏いノ1㌦ノ1・・α7・ニノ1㌦ノ1・)

       仁1      ノ昌1

このモデルはGJRモデルと酷似しているが、フ・=1としたものがTGARCHモデルであり、

7=2としたものがGJRモデルである。

   巧=X、φ十εc       (2.18)

         ρ      9

   σ月一ω十Σβ、σ二、十Σ(αノεニノ十7〆ノDニノ)        (2.19)

         j=1      ノニ1

   ω>0;  β㌧,αノ,7ノ≧O;  ゴ:1,2,_,ρ;  ノ=1,2,_,g

       ω:定数項

       εニノ:予測誤差の2乗(ARCH項)

       σ二、:過去のボラティリティ(GARCH項)

       7戸二ρニノ:レバレッジ項

       D7:ε、.1く0であれば1、それ以外では0であるようなダミー変数

 このモデルでは、ボラティリティの値が負にならないために、係数に非負制約が必要となる。ま た、このモデルでは、グッドニュースをε、.1>0、バッドニュースをε、.1くOと定義している。最も単 純なGJR(1,1)モデソレ

   σ戸・ω十βσ二1+αεえ1+〆lD二1         (2.20)

   ω>0;  β,α,フ・≧O

について考えると、予測誤差(ε丘.一)が負であれば、D二一=1となり、(2−20)式は、

    σア=ω・βσ二1・(α・γ)εえ1  ・       (2.21)

となる。また、バッドニュースによるインパクトは、(α十7)に現れることになる。これに対して、ε、.1 が正であれば、D二1=0であるので、

  σア=ω十βσ二1・αε二1      (2.22)

となる。また、グッドニュースによるインパクトは、αに現れることになる。そこで、7>0であれば、

レバレッジ効果が発生する。また、7≠0であれば、ボラティリティ変動の非対称性が成り立つ。

63

2.EGARCHモデルについて

GJRモテソレはボラティリティ変動の非対称性を捉えることが出来るように定式化されている。しか し、GJRモデルでは、ARCHモデル、GARCHモデル同様、ボラティリティが負にならないように 係数に非負制約を課す必要がある。

他方、EGARCHモデル(Exponentia1GARCH1Mode1)1まNe1son(1991)によって提案された モデルであり、そこではボラティリティをそのまま被説明変数にするのでなく、ボラティリティを対数 値化して被説明変数にしている。このことによって、係数の非負制約を取り除いている。具体的に は、EGARCH(p,q)モデルはボラティリティ変動を次のように定式化する。

1・(σ1)一ω・支β、・(σ二、)・支αノレノ・小ノ1一生ノ1㎜

       H      ノ=1

  ω:定数項

      εf一ノ

  Zl一ノ:一      σ1づ

  σニゴ:過去のボラティリティ

(2.23)

最も単純なEGARCH(1,1)モデルで示すと、ボラティリティの変動は次のようになる。

1・(σ1)一ω・β1・(σ二1)・&、.、・刈・、.、1一昨、.、1)) (2.24)

 ボラティリティの対数値を被説明変数にすることで、係数の非負制約が必要なくなり、さらに負 の値をとるような変数でも説明変数に加えることが出来る。

 Ne1son(1991)は、z、.ノを説明変数に加えることによりボラティリティ変動の非対称性を捉えて

いる。

z、.1>Oであれば、

㎞(σ1)一ω・β㎞(σ二、)・(γ・θ)1・、.、1一帥、.、1)

(2.25)

となり、z、.1くOであれば、

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