5.3.2 MFHNを用いたバースト発振モデルの分岐解析
式(5.3.1)において,バースト発火の変化を調べるためにパラメータをa = −0.12,b = 0.6, c= 3.0,d= 1.8,e= 1.0と固定し,I-ε平面における分岐図を求めた.求めた分岐図を図5.3.2 に示す.ここで,図中の記号h はHopf分岐,G はリミットサイクルの接線分岐,I は周期倍分 岐を表している.G,Iの記号の右上添字は,スパイク本数,右下添字は,同じスパイク本数,分 岐の曲線を区別するためのものである.
まず,図中のI = 0.1,ε= 0.01では,系の状態は,図5.3.3-(1)に示すように静止状態である が,Iを増加させるとHopf 分岐によりリミットサイクルへと系の状態が遷移し図5.3.3-(2)に示 す単発のスパイク発振が観測される.この状態でIを減少させるとI11に周期倍分岐が発生し,そ の直後,安定なリミットサイクルが発生し,系の状態は静止状態となる.よって,hとI11に囲ま れた領域は,系の初期値によって,静止状態もしくは,単発のスパイク発振が観測される.次に,
この状態からεを減少させるとG11により,解が消滅し図5.3.3-(3)に示すスパイク本数が2本の バースト発火が観測される.この解は,εを増加させるとI12 によって,周期倍分岐が発生し,単 発のスパイク発振の時と同様にその直後,解が消滅し,単発のスパイク発振のみが観測される.さ らに,G11とI12に囲まれた領域は,単発のスパイク発振とスパイク本数が2本のバースト発火が 観測されるbistableな状態である.このような分岐構造が,εを減少させる方向に連続的に存在 しているために,G31によってスパイク本数が2本のバースト発火が消滅し,図5.3.3-(4)に示す スパイク本数が3本のバースト発火が観測され,さらに図5.3.3-(5),(6)に示すように,それぞれ スパイク本数が4本,5本のバースト発火が観測され,スパイク本数が1つずつ増加している様 子が分かる.
一方,比較的I が大きい領域,例えばI = 0.52,ε = 0.015とパラメータを固定すると,図
5.3.4-(7)に示すように,図5.3.3-(2)と同様な単発のスパイク発振が観測され,その状態からεを
減少させていくと,I21 によって,図5.3.4-(8)に示すスパイク本数が2本の2周期バースト発火が 観測され,さらに減少させていくと,I22 を経て図5.3.4-(9)に示す4周期解となり,その後,周期 倍分岐を経て図5.3.4-(10)に示すカオス的なバースト発火が観測される.また,カオス的なバー スト発火からG32 によって,図5.3.4-(11)に示すスパイク本数が3本の3周期バースト発火が観測 され,さらにε= 0.015が小さい領域では,図5.3.4-(12)に示す周期的バースト発火が観測され,
その他にも様々な周期にロックされる領域があることを確認した.3変数のHindmarsh-Roseモ デルの分岐解析は,Kass-Petersen [75]によって行われており,我々が得た分岐図とほぼ同じ結果 を示している.このモデルの速いサブシステムは,saddle-node分岐とhomoclinic分岐との組合
せであるClass 1s を持つ.つまり,同じ分岐構造を持っているのならば,速いサブシステムの方
程式の形に関わらず,バーストモデルで得られる分岐構造は同じであることを意味している.ま た,遅いサブシステムがさらに複雑な方程式になれば,さらに複雑なバースト応答がみられると 予想されるが,本論文のように速いサブシステムの分岐図を利用したバースト発振モデルの設計 は困難になると考えられる.
5.3. MFHNモデルを用いた自律系バースト発振モデルの構築と解析 59
0 0.004 0.008 0.012 0.016
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
ε →
I →
1
I
1G
22G
11G
21G
413
I
14
I
1G
31 2I
11
I
22
I
23
I
2G
324
I
2h
図5.3.2: 平衡点とリミットサイクルの分岐図
-3-2 -1012
0 500 1000
x →
t →
(1) : I = 0.1,ε= 0.01
-3-2 -1012
0 500 1000
x →
t →
(2) : I = 0.3,ε= 0.01
-3 -2-1012
0 500 1000
x →
t →
(3) : I = 0.3,ε= 0.004
-3 -2-1012
0 500 1000 1500
x →
t →
(4) : I = 0.3,ε= 0.0027
-3 -2-1012
0 500 1000 1500
x →
t →
(5) : I = 0.3,ε= 0.002
-3 -2-1012
0 500 1000 1500 2000
x →
t →
(6) : I = 0.3,ε= 0.0015
図5.3.3: 図5.3.2における時間波形図
5.3. MFHNモデルを用いた自律系バースト発振モデルの構築と解析 61
-3-2 -1012
0 500 1000
x →
t →
(7) : I = 0.52,ε= 0.015
-3-2 -1012
0 500 1000
x →
t →
(8) : I = 0.52,ε= 0.010
-3 -2-1012
0 500 1000 1500
x →
t →
(9) : I = 0.52,ε= 0.0075
-3 -2-1012
0 1000 2000 3000 4000 5000
x →
t →
(10) : I = 0.52,ε= 0.0065
-3 -2-1012
0 500 1000 1500
x →
t →
(11) : I = 0.52,ε= 0.0052
-3 -2-1012
0 500 1000 1500 2000
x →
t →
(12) : I = 0.52,ε= 0.0018
図5.3.4: 図5.3.2における時間波形図