5. 関節軟骨平行断面の線維配向が潤滑特性に及ぼす影響
5.5. Limitation
本研究の問題点として,コラーゲン線維間の間隔が広いことが挙げられる.本研究では
Split line の配向方向に対して平行/垂直方向の単純な二方向に対する摩擦挙動の議論をする
ため,軟骨モデルは,間隙圧要素(C3D8RP)にコラーゲン線維を模したバネ要(SPRING A)
で強化した線維強化多孔質弾性要素で構築した.間隙圧要素の1要素あたりのサイズが50
×50×50 μmであることから,本モデル内においては50 μm間隔でバネ要素(コラーゲン線 維)が存在している(Fig. 5-1参照).実際の関節内でのコラーゲン線維は作製したモデルよ りも高密度に配向しており,ブタの膝関節軟骨を用いた検討では,軟骨内のコラーゲン線維 径は個体成熟に伴い増大し,高密度になることが報告されている(Fig. 5-23)9).また,高橋 は繊維維強化PVAハイドロゲルを用いた検討から,繊維密度が高いと動摩擦係数が低下す ることを報告している5).これらのことから,本研究で使用したモデルではバネ要素の間隔 が広いことが摩擦挙動に影響を及ぼしている可能性が考えられる.
また,もう一つの問題点として本研究で作製したモデルではモデル表面に対して平行方 向にのみコラーゲン線維を配向させていることが挙げられる.実際の関節軟骨においては,
表層部の線維のみ表面に対して平行方向に配向しており,中・深層においては表面に対して 垂直に配向している10, 11).また,Shiraziらは軟骨深層の表面に対して垂直に配向するコラ ーゲン線維が,動的な生理学的力学条件において軟骨の高剛性化に寄与することを報告し ている 12).このことから,表面に対して垂直に配向する線維により摩擦中の軟骨の変形挙 動が変化し,圧縮ひずみに依存して変化する透水率に影響を及ぼすことが考えられる.その ため,コラーゲン線維配向が関節軟骨の潤滑特性に及ぼす影響をより詳細に検討するため には,軟骨内の線維配向を考慮し,表面に対して垂直方向に配向する線維もモデル化するこ とが望ましいと考えられる.
線維径 14.37 nm 22.91 nm 75.91 nm
Fig. 5-23 成熟度の異なるブタ軟骨表面から100 μm付近のコラーゲン線維9)
80 参考文献
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第 6 章
結言
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