5. 関節軟骨平行断面の線維配向が潤滑特性に及ぼす影響
5.4. 考察
5.4.1. 摩擦速度の影響
66
67
Fig. 5-8 各摩擦速度における摩擦中の圧子周辺の変形量(z軸方向成分)分布
平行モデル 0.0220 0.0179 0.0173 垂直モデル 0.0277 0.0233 0.0214
0.1 mm/s 1.0 mm/s 10.0 mm/s
摩擦速度
Table 5-10 各摩擦速度における摩擦中の圧子前方の最大変形量(z軸方向成分)[mm]
平行モデル 垂直モデル
[mm]
摩擦速度
摩擦方向 0.1 mm/s
1.0 mm/s
10.0 mm/s
x
z
68
また,摩擦速度によらず垂直モデルと比較して平行モデルの起動摩擦係数は低値となっ た.表面摩擦のみを考慮すると,流体荷重分担比が大きいほど摩擦係数は低下すると考えら れるが,低速度(0.1 mm/s)以外の起動摩擦時の流体荷重分担比は垂直モデルより平行モデ ルの方が小さくなった.起動摩擦時のモデル表面に対して垂直方向成分の流速を見ると,全 速度において垂直モデルよりも平行モデルの方がモデル外への水分流出量が多いことがわ かった.(Fig. 5-10).これにより平行モデルにおいて流体圧が低くなり,流体荷重分担比が 低下したと考えられる.また,起動摩擦時のモデルの変形量分布をFigs. 5-11,5-12に,圧 子前方のモデルの最大変形量を Table. 5-11 に示す.起動摩擦時においては全摩擦速度で圧 子前方のモデル変形量平行モデルよりも垂直モデルの方が大きく,垂直モデルの方が摺動 時に受ける変形抵抗が大きいことが考えられる.これらのことから,起動摩擦時においては 内部流体挙動の影響よりも圧子前方のモデル変形量の違いが摩擦係数に大きな影響を及ぼ したと考えられる.
Fig. 5-10 起動摩擦時の流速(モデル表面に対して垂直方向成分)
(摩擦速度1.0 mm/s,最大接触面圧0.27 MPa)
x z
x z
Fig. 5-9 各摩擦速度における摩擦中の圧子直下の流体圧分布(平行モデル)
摩擦方向 摩擦速度:0.1 mm/s 摩擦速度:1.0 mm/s
[MPa]
摩擦速度:10.0 mm/s
摩擦方向
流速 低 高
平行モデル 垂直モデル
69
摩擦方向
[mm]
平行モデル 垂直モデル
Fig. 5-11 モデル表面側から見た起動摩擦時の変形量分布
(摩擦速度1 mm/s,最大接触面圧0.27 MPa)
x y
Fig. 5-12 モデル側面側から見た起動摩擦時の変形量分布(z軸方向成分)
(摩擦速度1 mm/s,最大接触面圧0.27 MPa)
x z
Table 5-11 各摩擦速度における起動摩擦時の圧子前方の最大変形量(z軸方向成分)[mm]
平行モデル 0.0213 0.0205 0.0202 垂直モデル 0.0320 0.0315 0.0308
0.1 mm/s 1.0 mm/s 10.0 mm/s
摩擦速度
平行モデル 垂直モデル
摩擦方向
[mm]
70
動摩擦係数に関しても摩擦速度によらず垂直モデルよりも平行モデルの方が低値となり,
高速度(10.0 mm/s)でモデル間の差は最大であった.摩擦終了時の流体荷重分担比は低速 度でのみ平行モデルよりも垂直モデルの方が大きくなった.各摩擦速度時の流速をFig. 5-13 に示す.モデル表面に対して垂直方向の流速は,低速度時のみ垂直モデルより平行モデルの 方が大きく,低速度では平行モデルの方が水分流出量が多いことが分かる.これは,低速時 は水分が流失しやすく,垂直モデルと比較して平行モデルの変形量が大きいことから,平行 モデルの方が圧縮ひずみに依存する透水率の低下度合いが低いために生じたと考えられる.
それ以外の速度では垂直モデルの方が大きくなり,高速度でモデル間の差は最大となった.
加えて,各摩擦速度における変形量分布を見ると,起動摩擦時と同様に全摩擦速度で圧子前 方のモデル変形量は平行モデルと比較して垂直モデルの方が大きかった(Figs. 5-7,5-8). これらのことから,垂直モデルは平行モデルと比較し,圧子が変形抵抗を受けやすく,流体 による荷重支持を受けにくくなったことで,摩擦係数が高値を示したと考えられる.また,
低速度では内部流体挙動よりも圧子前方のモデル変形量の違いが摩擦係数に影響を及ぼし たために,平行モデルの方が低摩擦であったと考えられる.
10.0 mm/s 1.0 mm/s 0.1 mm/s
平行モデル 垂直モデル
摩擦速度
流速 低 高
摩擦方向
Fig. 5-13 各摩擦速度での動摩擦時の流速(モデル表面に対して垂直方向成分)
)
x
z
71