• 検索結果がありません。

線維強化多孔質弾性体モデル

ドキュメント内 首都大学東京大学院 (ページ 38-41)

3. 関節軟骨のモデリングと解析手法

3.1. 線維強化多孔質弾性体モデル

関節軟骨の主な構成成分は,水分,コラーゲン線維,プロテオグリカンであり1),これら の相互作用により軟骨特有の優れた力学特性,潤滑特性を発揮することができる.外力等を 受けた際のこれらの要素の変化を統一的に記述する方法として,Mow らは二相性理論

(Biphasic theory)を提唱している2).この理論は,力学的な観点から軟骨を等方均質な固体 相(コラーゲン線維,プロテオグリカン,軟骨細胞)と液体相の二相性の材料としてモデル 化し,その挙動を数学的に解析する方法である.軟骨の粘弾性を考慮しつつ,圧縮などに対 する軟骨の力学応答を記述することが可能である.しかし,この理論においては固体相と液 体相との相互作用が考慮されておらず,透水率のひずみ依存性も考慮されていないという 問題があった.これらの問題を解決するために,Li らは多孔質弾性体モデルによる軟骨の 弾性解析と,内部流体の流体解析を連成させた解析が可能な有限要素解析ソフトAbaqusを 用いた解析方法を提唱している3).このモデルでは,コラーゲン線維以外の軟骨基質は多孔 質弾性体要素により,コラーゲン線維はバネ要素により表現され,軟骨基質内を水分が抵抗 を受けながら透過することが考慮されている.このモデルを用いることで,プロテオグリカ ン,コラーゲン線維および間隙水の相互作用を考慮した軟骨組織の力学挙動の記述が可能 である.細胞外基質は間隙水を含む等方性の多孔質弾性体で表現され,非圧縮性であり,材 料特性として弾性率Em,ポアソン比νm,透水率kを定義する.軟骨の透水率は圧縮荷重を受 けることで非線形的に低下することが Lai と Mow によって報告されており 4),透水率kは

(3-1)式で表される.

k0は初期透水率,Mは透水係数,εはバルク材の体積ひずみを表す.Abaqus 上では土壌の 透水の解析で用いられる間隙比を利用して体積ひずみを扱うことができる.Abaqus 上で間 隙比eは(2)式で表される5)

k = k

0

exp(Mε)

(1)

e = dV

v

dV

g

+dV

t (2)

Fig. 3-1 線維強化多孔質弾性体モデル3)

35

dVv,dVg,dVtはそれぞれ,間隙の体積,固体材料の粒子の体積,媒体内にとらわれた湿潤 流体の体積である.体積ひずみ𝜀を間隙比eで表すために,Fig. 3-2のようなバルク材の圧縮 挙動を考えた.圧縮前のバルク全体の体積をV0,固体部分の体積をVc0,間隙部分の体積を Vp0とし,圧縮後のバルク全体の体積をV,固体部分の体積をVc,間隙部分の体積をVpとし た.圧縮前後の体積ひずみ

ε

は圧縮前後のバルク材全体の体積から(3)式で表される.

ここで固体部分を非圧縮性と仮定すると,Vc0 = Vcとなり,圧縮前後のバルク全体の体積は

(4)式で表される.

したがって,圧縮前の初期間隙比e0および圧縮後の間隙比eは,圧縮前後のバルク材の固体 部分,間隙部分の体積関係より(5)式で表される.

(3)式に(4)式,(5)式を代入すると

となり,(6)式を(1)式に代入することで,ひずみ

𝜀

を間隙比eと初期間隙比e0で表した3)

初期間隙比e0は任意の値に設定することができ,関節軟骨の含水率はおよそ 80%であるた

6, 7),軟骨モデルではe0=4と設定した3, 8)

ε = V - V

0

V

0 (3)

V

0

= V

p

0

+ V

c0

,V = V

p

+ V

c0 (4)

e

0

=

VVp0

c0

e =

VVp

c0 (5)

ε =

V-V0

V0

=

Vp - Vp0

Vp0 + Vc0

=

Vp Vc0 - Vp0

Vp0 Vc0

Vc0 + 1

=

e - e0

1 + e0 (6)

k = k

0

exp (M

e - e0

1 + e0

)

(7)

Fig. 3-2 バルク材の圧縮挙動

圧縮

間隙部分

固体部分

36

コラーゲン線維はひずみに依存して剛性が変化する構造要素として定義することができ,

その力学挙動はLiらによると,

と表すことができる.ここで,εfは線維のひずみ,Ef1Ef0はそれぞれ弾性定数である.

本研究の有限要素解析には,有限要素解析ソフトAbaqus 2017(Dassault Systemes)を用い た.三次元の軟骨モデルにはLiらやMengらのモデル 9, 10)を参考に,線維強化多孔質弾性 体による軟骨モデルを作製した.軟骨表面に対して垂直な方向をz軸方向とし,表面に対し て平行な方向をx軸,y軸方向とした.軟骨基質(プロテオグリカン+水分)とコラーゲン 線維をそれぞれ間隙圧要素(CP3D8RP),バネ要素(SPRING A)として表し,それらを複合 して線維強化多孔質弾性体要素とした.コラーゲン線維は圧縮には抵抗せず,引張のみに抵 抗するため 11),圧縮方向に関しては作用しないように設定し,横方向のみコラーゲン要素 を配置した.プロテオグリカンの透水率は先述した報告をもとにひずみに依存する形式で 記述した.

Ef=Ef1εf+Ef0 (8)

Fig. 3-3 線維強化多孔質弾性体による軟骨モデル

線維強化 多孔質弾性体

間隙圧要素

(C3D8RP)

バネ要素

(SPRING A)

プロテオグリカン

(+水) コラーゲン

= +

Abaqus 2017

軟骨モデル

x

z y

37

ドキュメント内 首都大学東京大学院 (ページ 38-41)

関連したドキュメント