第 5 章 結びにかえて 〜 J-REIT の利益相反と Stapled Securities の提案〜
第 4 節 LPT 市場の変遷概観
LPTは、1971年に上場したGeneral Property Trustが第1号とされている。オーストラリア では、複数の投資家が特定の事業に出資し、運営・管理業務は専門家に委託するPublic Unit
Trustという投資手法が一般化していたため、LPTは特別な立法により誕生したのではなく、
既存のトラスト法、会社法、所得税法に則して登場した。また、初期のLPT は、不動産開 発資金の調達、回収手段としての位置づけが大きかった。
1980年代までは、UPTを中心に発展してきた。UPTは不動産開発会社にとっては低コス トの資金調達手段であり、投資家にとっては資本の流動性及び資産の分散という付加価値 を持つ、直接不動産投資に代わる投資商品であり小規模投資家の間で人気があった。
しかし、1990年代初頭の景気後退とこれに伴う不動産市場の暴落により、UPTの買戻し 請求が多発することとなる。UPT は買戻し請求に応じるため市場の下落局面で資産売却を
行い、これが一層下方スパイラルに拍車をかけることとなった。この結果、多くのUPTが 清算に追い込まれ51、またLPTとなるUPTなどもあり、UPTの市場は急速に縮小していっ た52。
一方、LPTはこの時期に割安な価格で不動産を取得していった。1993年のLPTによるオ ーストラリアの投資適格不動産への直接投資は、全取引の 37%を占め、前年比 362%増で あった。以来、LPTは急速に市場規模を拡大していった。
1993年頃からはショッピング・センター、ホテル、産業施設などに特化したLPTが登場 している。その後、1996年頃からは生命保険会社、銀行系LPTが参入するようになり、LPT の市場規模拡大がさらに加速した。
1998年頃からは多くの買収・合併が行われた。1997年からのアジア各国の経済危機を背 景に、株価維持には規模の拡大によりLPTの流動性を確保する必要があったためである。
1998年7月にはLPTを含む共同投資商品における投資家保護を目的として、会社法の一 部を改正したMIA法が施行された。この改正によりREが導入され、LPTの運営体制は大 きく変化した。
LPT 市場の拡大には、退職年金ファンドの存在が大きい。オーストラリア連邦政府は、
1992 年に強制加入方式の退職年金保証制度を導入している。この制度により退職年金ファ ンドの保有資産は急拡大し、2006年 6月の時点で6,850 億米ドルに達している。退職年金 ファンドの多くは小規模であり、バランスよく分散された不動産ポートフォリオへの直接 投資を行うことができない。このため不動産投資への配分の多くが LPT に向けられ、LPT 市場拡大を促進することとなっている。
近年のLPT市場の動向としては、海外不動産への投資とStapled Securitiesの採用の2点が 挙げられる。オーストラリアでは、国内物件はほぼ全て証券化しつくされているといわれ ており、多くの LPTが国内不動産とともに海外不動産を取得し、また海外不動産にのみ投 資をするLPTの数も増加しつつある53。既に、日本の不動産のみを投資対象とするLPTも4 銘柄上場している54。また、2007年4月末時点においてStapled Securitiesの形態をとってい るLPTは、LPT70銘柄中、25銘柄となっている。
51 当時の会社法は、投資家から買戻し請求があれば60日以内に応じなければならないと規定していた。
52 現在では老齢退職年金基金などの少数の投資家に保有されている。
53 LPTの約40%、2005年で300億豪ドル(約2兆6000億円)は海外投資である。
54 Babcock & Brown Japan Property Trust、Rubicon Japan Trust、Galileo Japan Trust、Challenger Kenedix Japan Trust。
付録 2 J-REIT 銘柄一覧表
名称 日本ビルファンド 投資法人
ジャパンリアルエ ステイト投資法人
日本リテールファ ンド投資法人
オリックス不動産 投資法人
証券コード 8951 8952 8953 8954
上場日 2001年9月10日 2001年9月10日 2002年3月12日 2002年6月12日 決算期 6月・12月 3月・9月 2月・8月 2月・8月 発行済口数 508,000口 410,000口 386,502口 225,372口
出資総額 346,446百万円 264,683百万円 250,764百万円 120,860百万円
S&P A+ A+ A+ A−
R&I AA AA AA A+
格付
Moody`s A1 A1 A1 未取得
負債比率 40.5% 31.7% 30.2% 43.8%
投資対象用途 オフィスビル 特化型
オフィスビル 特化型
商業施設特化型 総合型(オフィス ビル中心)
投資対象地域 全国主要都市
(関東圏中心)
全国主要都市 全国主要都市
(3大都市圏中心)
全国主要都市
(首都圏中心)
物件取得額 6,564億円 4,410億円 4,484億円 2,195億円
取得棟数 55棟 50棟 42棟 41棟
平均取得額 119億円 88億円 106億円 53億円 平均築年数 13.5年 13.6年 9.3年 10.1年 上場時公募価格 625,000円 525,000円 470,000円 520,000円 上場来高値 1,990,000円 1,590,000円 1,190,000円 1,110,000円 上場来安値 471,000円 480,000円 433,000円 447,000円 終値平均 857,178円 800,532円 757,622円 653,469円 時価総額 985,520百万円 660,100百万円 467,667百万円 263,685百万円
資産運用会社
日本ビルファンド マネジメント㈱
ジャパンリアルエ ステイトアセット マネジメント㈱
三菱商事・ユービ ーエス・リアルテ ィ㈱
オリックス・アセ ットマネジメント
㈱
認可取得日 2001年3月7日 2001年3月7日 2001年4月5日 2001年6月20日
運用会社の上位株主
三井不動産㈱
住友生命保険(相)
三菱地所㈱
東京海上日動火災 保険㈱
三菱商事㈱
UBS A.G.
オリックス㈱
名称 日本プライムリア ルティ投資法人
プレミア投資法人 東急リアル・エス テート投資法人
グローバル・ワン 不動産投資法人
証券コード 8955 8956 8957 8958
上場日 2002年6月14日 2002年9月10日 2003年9月10日 2003年9月25日 決算期 6月・12月 4月・10月 1月・7月 3月・9月 発行済口数 625,000口 101,400口 169,380口 76,400口
出資総額 156,725百万円 51,435百万円 98,020百万円 45,722百万円
S&P A− 未取得 A 未取得
R&I A+ A+ A+ 未取得
格付
Moody`s A2 A3 A2 A3
負債比率 37.6% 48.8% 38.0% 58.5%
投資対象用途
複合型(オフィス ビル中心+都市型 商業施設)
複合型(オフィス ビル+住宅)
複合型(オフィス ビル+商業施設)
オフィスビル 特化型
投資対象地域
全国主要都市
(地域分散型)
東京経済圏特化 首都圏特化(東京 都心5区+東急沿 線中心)
全国主要都市
(3大都市圏中心)
物件取得額 2,469億円 995億円 1,717億円 1,057億円
取得棟数 48棟 36棟 19棟 5棟
平均取得額 51億円 27億円 90億円 211億円 平均築年数 12.8年 12.3年 15.6年 10.3年 上場時公募価格 200,000円 480,000円 530,000円 510,000円 上場来高値 519,000円 1,050,000円 1,320,000円 1,660,000円 上場来安値 199,000円 434,000円 503,000円 494,000円 終値平均 302,035円 638,110円 780,882円 905,534円 時価総額 341,250百万円 101,299百万円 225,275百万円 154,071百万円
資産運用会社
㈱ 東 京 リ ア ル テ ィ・インベストメ ント・マネジメン ト
プ レ ミ ア ・ リ ー ト・アドバイザー ズ㈱
東急リアル・エス テート・インベス トメント・マネジ メント㈱
グローバル・アラ イアンス・リアル ティ㈱
認可取得日 2001年6月20日 2002年2月19日 2003年6月16日 2003年4月2日
運用会社の上位株主
東京建物㈱
明治安田生命保険 (相)
㈱ケン・コーポレ ーション
日興プロパティー ズ㈱
東急急行電鉄㈱
東急不動産㈱
明治安田生命保険 (相)
キャップマークジ ャパン㈱
名称 野村不動産オフィス ファンド投資法人
ユナイテッド・ア ーバン投資法人
森トラスト総合リ ート投資法人
日本レジデンシャ ル投資法人
証券コード 8959 8960 8961 8962
上場日 2003年12月4日 2003年12月22日 2004年2月13日 2004年3月2日 決算期 4月・10月 5月・11月 3月・9月 5月・11月 発行済口数 265,903口 159,843口 160,000口 186,809口
出資総額 156,767百万円 89,839百万円 80,000百万円 105,593百万円
S&P A 未取得 未取得 未取得
R&I AA− A 未取得 A+
格付
Moody`s A2 A3 未取得 A3
負債比率 45.9% 43.5% 40.4% 60.5%
投資対象用途
オフィスビル 特化型
総 合 型(オ フ ィ ス ビル・住宅・商業 施設・ホテル)
総合型
(オフィスビル中 心)
住宅特化型
投資対象地域 全国主要都市
(都心部中心)
全国主要都市
(首都圏中心)
東京都心部及びそ の他主要都市
全国主要都市
物件取得額 2,828億円 1,606億円 1,420億円 2,289億円
取得棟数 31棟 34棟 11棟 119棟
平均取得額 91億円 47億円 129億円 19億円 平均築年数 20.8年 16.0年 21.2年 4.5年 上場時公募価格 500,000円 480,000円 730,000円 500,000円 上場来高値 1,560,000円 1,070,000円 1,760,000円 808,000円 上場来安値 505,000円 481,000円 748,000円 509,000円 終値平均 843,058円 686,997円 977,958円 630,368円 時価総額 396,195百万円 159,044百万円 243,200百万円 144,217百万円
資産運用会社
野村不動産投信㈱ ジ ャ パ ン ・ リ ー ト・アドバイザー ズ㈱
森トラスト・アセ ットマネジメント
㈱
パシフィック・イ ンベストメント・
アドバイザーズ㈱
認可取得日 2003年7月23日 2001年6月20日 2002年9月27日 2003年3月19日
運用会社の上位株主
野村不動産ホール ディングス㈱
丸紅㈱、クレディ・
スイス・プリンシパ ル・インベストメン ツ・リミテッド
森トラスト㈱
パルコ㈱
パシフィックマネ ジメント㈱
第一生命保険(相)
名称 東京グロースリー ト投資法人
フロンティア不動 産投資法人
ニューシティ・レ ジデンス投資法人
クレッシェンド投 資法人
証券コード 8963 8964 8965 8966
上場日 2004年5月17日 2004年8月9日 2004年12月15日 2005年3月8日 決算期 6月・12月 6月・12月 2月・8月 5月・11月 発行済口数 53,899口 110,400口 164,068口 60,492口
出資総額 19,134百万円 58,583百万円 85,791百万円 28,412百万円
S&P 未取得 A+ 未取得 未取得
R&I 未取得 未取得 A+ 未取得
格付
Moody`s 未取得 A1 A3 未取得
負債比率 53.5% 4.9% 55.3% 53.6%
投資対象用途 総合型(オフィス ビル・住宅中心)
商業施設特化型 住宅特化型 総合型(オフィス ビル+住宅中心)
投資対象地域 東京23区中心 全国 全国主要都市
(東京圏中心)
全国主要都市
(首都圏中心)
物件取得額 389億円 967億円 1,745億円 570億円
取得棟数 46棟 10棟 97棟 36棟
平均取得額 8億円 96億円 17億円 15億円
平均築年数 12.3年 5.5年 3.2年 11.4年 上場時公募価格 395,000円 550,000円 550,000円 500,000円 上場来高値 470,000円 1,320,000円 705,000円 630,000円 上場来安値 333,000円 581,000円 490,000円 393,000円 終値平均 396,774円 823,190円 570,442円 529,166円 時価総額 21,560百万円 136,896百万円 111,730百万円 38,291百万円
資産運用会社
グロースリート・
アドバイザーズ㈱
フロンティア・リ ート・マネジメン ト㈱
シ ー ビ ー ア ー ル イ ー ・ レ ジ デ ン シ ャ ル・マネジメント㈱
カナル投信㈱
認可取得日 2001年9月14日 2004年4月26日 2004年9月17日 2001年9月14日
運用会社の上位株主
㈱バレックス 日本たばこ産業㈱ CB リチャードエ リス・インベスタ ーズ㈱
㈱ニューシティ・
コーポレーション
平和不動産㈱
轉 充宏